【2025/6/6更新】
リモートワークや店舗の多拠点展開、そしてAIを活用した自動化が加速するなか、「人が人に直接教える」だけの教育体制ではスピードとコストの両面で限界に達しつつあります。そこで注目されているのが、手順書・動画・FAQを一元管理できるクラウド型マニュアル作成ツールです。本記事では、国内市場が2025年に5,549億円へ伸長すると予測されるこの分野の主要サービスを、目的別に徹底比較。導入で得られる具体的なメリットや選定の勘所も交えながら、分かりやすく解説します。
マニュアル作成ツールとは
マニュアル作成ツールは、「作る」「届ける」「測る」「改善する」のサイクルをクラウド上で完結させるSaaSです。従来はWordやPowerPointで手順書を作成し、メールで配布し、最新版が分からなくなる――そんな状況を一掃し、
・クリック操作を自動キャプチャして画像化
・スマホで撮った動画をクラウドで即編集・字幕付与
・FAQをAIが自動生成し、検索率を向上
・閲覧ログから「どのページで離脱したか」を可視化
までワンストップで提供。ITリテラシーに関係なく「だれでも・かんたんに」ナレッジを共有できる点が最大の特徴です。
マニュアル作成ツールを導入する4大メリット
単なる文書作成にとどまらず、業務効率化や品質向上に直結するツールとして、多くの企業が導入を進めています。ここでは、マニュアル作成ツールを活用することで得られる4つの主要なメリットをご紹介します。
1. 属人化の解消
ベテラン社員の頭の中にしかない“暗黙知”を動画や図解付きステップとして形式知化。新人や外部スタッフでも同一品質で業務が再現でき、引き継ぎミスが激減します。
2. 教育コストを70〜90%削減
AI自動生成やテンプレート活用により、手順書1本あたりの作成時間を従来の10時間→1時間以下へ圧縮。多店舗チェーンでは年間数百万円の研修費削減例も珍しくありません。
3. リスク低減とコンプライアンス強化
バージョン管理・権限制御・操作ログが標準搭載。医療や金融など厳格な監査を求められる業界でも、最新版の文書だけを閲覧させ、改ざん履歴を追跡できます。多言語翻訳機能を使えば、海外拠点と同一プロセスを共有する際の誤訳リスクも低減。
4. 高速PDCAで業務改善を加速
「閲覧完了率が70%未満のステップは動画尺を短くする」「テスト正答率が低い工程にイラストを追加する」など、データドリブンで改訂を繰り返せるため、マニュアルが“作って終わり”ではなく“育つ資産”になります。
失敗しない選び方5ポイント
失敗しない選び方のポイントを5つご紹介します。
選定軸 | チェック例 | 解説のポイント |
制作方式 | クリック自動記録/PowerPoint感覚/スマホ撮影 | 現場がPC中心か、スマホ中心かで選択肢が変わります。非IT部門が多いなら「撮るだけ」で完成するタイプが◎。 |
対応コンテンツ | 静止画・動画・AR・eラーニング・FAQ | 技能伝承なら動画、グローバル展開なら自動翻訳付きFAQが必須。AR対応は製造ラインのミス削減に効果。 |
共有/権限管理 | 階層数、閲覧専用ID、SSO・IP制限 | 部門や拠点が多い場合はフォルダ階層上限とタグ検索性を要確認。SaaS乱立企業ならSSO対応が便利。 |
分析機能 | 利用ログ、スキルマップ、テスト・レポート | 教育効果を数値化して昇格要件やISO文書管理に転用可能かが差別化ポイント。 |
料金モデル | ユーザー課金・ID無制限・買い切り | アルバイトが多い店舗型ビジネスは“ID無制限”が安価。システム部門なら買い切りで長期コスト抑制。 |
TIP
自社で最も工数とストレスがかかっている工程(作成・配信・更新・検索)のボトルネックを30分棚卸ししてからツールを選ぶと、失敗確率が大幅に下がります。
目的別マニュアル作成おすすめツール比較22選
マニュアル作成ツールと一口にいっても、用途や現場の課題によって最適なソリューションは大きく異なります。例えば、製造業では複雑な手順書の構造化が求められる一方、店舗運営では多言語対応や動画によるOJTが重要視されるケースもあります。そこで本章では、「業務手順書・操作マニュアル向け」「動画マニュアル・現場教育向け」「ナレッジマネジメントにも活用できる」──この3つの目的別に、編集部が厳選したおすすめツール22選を徹底比較。それぞれの特長や料金目安、導入に適した企業・部門を明記しながら、導入検討のヒントを提供します。自社の課題と照らし合わせながら、最適な一手を見つけてください。
1. 業務手順書・操作マニュアル向け(9選)
ツール | 特長 | 料金目安 | 最適な企業・部門 |
COCOMITE | 最大250ステップ×5階層、AIアシストで画像整形を自動化 | 29,600円/月〜 | 製造・サービスの品質保証部門 |
Teachme Biz | 画像+動画+20言語翻訳、店舗チェックリスト連携 | 59,800円/月〜 | 多拠点チェーンの店舗運営本部 |
Dojo | PC操作を自動キャプチャしHTMLヘルプを生成 | 買切38万円〜 | 情報システム部門、社内SaaS教育 |
ManualForce | GPT‑4oが操作動画から全文マニュアルを生成 | 2,800円/ユーザー〜 | 少人数でも高速に量産したいスタートアップ |
トースターチーム | AI原稿+動画収録+教育ノートで新人研修を効率化 | 35,000円/月〜 | FC展開や現場配属が頻繁な企業 |
shouin+ | 動画+チェックリスト+検定でOJT成果を可視化 | 見積 | 離職率改善を急ぐ店舗現場 |
iTutor | ドキュメント・動画・SCORM教材を一括制作 | 38万円〜 | eラーニングまで内製化したい教育部門 |
i‑Share | 多媒体CMS+DITA変換で製品マニュアルを標準化 | 見積 | 製造業の技術文書管理 |
WikiWorks | ブラウザ完結・同時編集・AI校正で大規模改訂に強い | 要問い合わせ | 法務・IRなど修正頻度が高い部門 |
2. 動画マニュアル・現場教育向け(6選)
ツール | 特長 | 強み・活用シーン |
tebiki | スマホ撮影→100言語自動翻訳、スキルマップ連携 | 製造ラインで外国人スタッフを即戦力化 |
VideoStep | PowerPoint感覚の編集+10段階承認フロー | ガバナンス重視の大企業での動画配信 |
Video BRAIN | テンプレ量産+視聴ログ分析 | DX推進部門が社内イベントを動画で共有 |
Dive | AIフレーム分割+AR/スマートグラス対応 | 危険作業のハンズフリー手順確認 |
VideoTouch | コンタクトセンター特化、AI字幕&音声合成 | 電話応対研修を短期間で標準化 |
EZLecture | クリック自動記録・買い切り | 予算を抑えたい中小企業のサポートデスク |
3. ナレッジマネジメントにも活用できる(7選)
ツール | 特長 | 用途例 |
Quip | Salesforce連携で営業資料と手順を一本化 | SFA+マニュアルの一元管理 |
NotePM | 全文検索+「見るだけユーザー」無料 | 社員数1,000名超でもコスト最適化 |
flowzoo | テンプレ付き業務フローとマニュアルを同時生成 | BPO・業務可視化プロジェクト |
Helpfeel Back Office | 検索ヒット率98%のFAQ型AIナレッジ | コールセンターの一次回答を自動化 |
ナレカン | 自然文質問でヒット、社内知恵袋運用 | 新規事業部門のQ&A蓄積 |
learningBOX | 10名まで無料、クイズ・試験監督も対応 | 小規模研修をまず試したい企業 |
KnowledgeSh@re | コメント&ログ解析で「育つマニュアル」 | ベテランと若手が共同で改訂 |
5. 主要6サービス早見比較と選定ヒント
ここまで多種多様なマニュアル作成ツールをご紹介してきましたが、「結局どれが自社に合っているのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。そんな方のために、導入実績や評価の高い主要6サービスを一覧表で早見比較しました。用途や対応機能、料金モデルなどの基本スペックをひと目で把握できるだけでなく、「作成工数を削減したい」「動画教育を強化したい」「ナレッジを全社で共有したい」といった目的別の選定ヒントもあわせて掲載。ツール選びに迷った際の“最初の絞り込み”として、ぜひご活用ください。
COCOMITE | Teachme Biz | Dojo | tebiki | NotePM | ManualForce | |
主用途 | 手順書 | 手順書+教育 | PC操作 | 動画教育 | ナレッジWiki | AI自動生成 |
動画対応 | ◎ | ◎ | ◯ | ◎ | △ | ◎ |
階層/タグ | 5階層 | 4階層 | 3階層 | タグ | フォルダ+タグ | タグ |
AI機能 | 作成支援 | 翻訳 | ー | 自動字幕 | ー | 全文生成 |
権限制御 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
料金例 | 29,600円〜 | 59,800円〜 | 38万円買切 | 要問合せ | 4,800円〜 | 2,800円/人〜 |
迷ったときの目安
・作成工数を最短にしたい → ManualForce
・動画教育を一気に整備 → tebiki
・全社ナレッジ基盤まで拡張 → NotePM
6. よくある質問(FAQ)
マニュアル作成ツールの導入を検討する中で、多くの方が共通して抱える疑問や不安もあるかと思います。ここでは、よく寄せられる質問に対して具体的かつ実践的な回答をご紹介します。「無料で試せるツールは?」「動画と手順書の両方に対応できる?」「情報漏えい対策は大丈夫?」といったポイントを中心に、選定や運用でつまずかないためのヒントをQ&A形式でまとめました。導入前の最終確認として、ぜひ参考にしてください。
Q1. 無料で始められるツールはありますか?
A. learningBOX(10名まで)や EZLecture の体験版、tebiki の14日トライアルなどがあります。まずは2〜3部署でパイロット導入し、作成時間削減率や動画視聴完了率をKPI化してみましょう。
Q2. 動画マニュアルと手順書を両方作りたい場合は?
A. Teachme Biz、COCOMITE、ManualForce は静止画+動画のハイブリッド作成が可能。現場・オフィス混在でも運用しやすく、後からeラーニングや検定機能を追加できます。
Q3. 情報漏えい対策はどう選べばいい?
A. ISO27001やISMSクラウドセキュリティ認証の有無を確認し、SSO/IP制限/WAF対応が揃う Dojo・tebiki・ManualForce が医療・金融で採用実績多数。アクセスログの保持期間も比較ポイントです。
7. まとめ ― 最適なツール選定で“作って終わり”を卒業
ここまで、マニュアル作成ツールの導入メリットや比較ポイント、目的別のおすすめ製品について詳しく解説してきました。導入成功のカギは、ただ多機能なツールを選ぶのではなく、「自社の課題にフィットした1本」を見極めることにあります。そして、ツールは導入して終わりではなく、ナレッジを継続的に蓄積・活用してこそ本当の価値が生まれます。最適な選定とスムーズな導入に向けて、重要なチェックポイントと次のアクションを整理しました。導入を具体化する一歩として、ぜひご活用ください。
チェックポイント
・市場は拡大フェーズ:5,500億円規模に伸びる今こそ、競合より早くナレッジ資産をクラウド化することで教育コストと品質を同時に改善できます。
・“課題起点”で選ぶ:作成時間削減、動画教育、多言語対応など自社の最重要KPIを決め、その項目が強いツールを選定。
・無料トライアルで小さく始める:成功企業は例外なく「1部署・1業務」から着手し、定量効果を示して全社展開しています。
次のステップ(チェックリスト)
✅現状棚卸し:作成・検索・更新フローを30分で可視化
✅PoC実施:無料トライアルで既存資料を1本コンバート
✅KPI測定:作成時間・教育工数・検索ヒット率を比較
✅社内説明:数値と成功体験をセットで展開計画を策定
本記事が、自社に最適なマニュアル作成ツール選びと導入成功の一助となれば幸いです。ナレッジを「書庫」から「成長エンジン」へ――いまこそ一歩を踏み出しましょう。