中小企業の経営者の高齢化が進む中、後継者不足が深刻な課題となっており、黒字であっても事業継続を断念せざるを得ないケースが増えています。こうした状況を受け、国では「事業承継・引継ぎ補助金」を通じて、中小企業の事業承継やM&Aを幅広く支援しています。
本補助金は、さまざまな承継ニーズに対応する以下3つの事業で構成されています。
1.経営革新事業
事業承継後の新たな取り組みに必要な費用(設備投資や店舗の賃借料など)をサポートします。
・対象タイプ:創業支援型、経営者交代型、M&A型
・一定の賃上げを行うことで、補助上限額が600万円から800万円へ引き上げられます。
2.専門家活用事業
M&Aを進める際に必要な専門家費用(仲介手数料、企業価値評価など)を補助します。
・売り手・買い手のどちらも対象
・登録された支援機関を利用することが条件です。
3.廃業・再チャレンジ事業
事業承継に伴う廃業時の費用(在庫処分、登記手続き、建物解体など)を補助します。
M&Aが成立しなかった場合や一部廃業の場合でも対象となります。
「事業承継・引継ぎ補助金【専門家活用枠】第11次公募」がスタート
中小企業や個人事業主による事業承継やM&Aの取り組みを後押しする「事業承継・引継ぎ補助金【専門家活用枠】(第11次公募)」の受付が始まっています。
この補助金は、事業のバトンタッチや再編、統合といった節目にかかる費用の一部を支援することで、企業の持続的な成長や地域経済の活性化を目的としたものです。
■ 補助金の概要
「専門家活用枠」は、事業承継やM&Aを行う中小企業が、経営資源の引継ぎに際して必要となる専門家費用(仲介・FA、デュー・ディリジェンス等)を補助する制度です。これにより、地域経済の活性化や雇用の維持を支援することを目的としています。
■ 主な支援対象と補助内容
分類 | 補助率 | 補助上限額 | 上乗せ額(条件付き) |
買い手支援類型(I型) | 2/3以内 | 600万円 | DD費用:+200万円/廃業費:+150万円 |
売り手支援類型(II型) | 1/2〜2/3以内 | 同上 | 条件を満たすと補助率が2/3に引き上げ |
■ 補助対象となる費用(例)
・仲介・FA費用
・デュー・ディリジェンス費用(財務・法務等)
・システム利用料・外注費
・廃業に伴う費用(在庫処分、原状回復 等)
■ 公募・申請スケジュール
・要領公開: 2025年3月31日(月)
・申請受付: 2025年5月9日(金)~6月6日(金)17:00
・採択通知: 7月上旬予定
・補助事業期間: 最大12か月間
■ 申請の流れ(抜粋)
1.公募要領とWebサイトで制度内容を確認
2.M&Aや専門家活用について検討
3.gBizIDプライム取得(未取得の場合)
4.必要書類準備
5.jGrantsで申請・提出
■ 重要な注意点
・補助対象経費の契約は「交付決定後」
・DD(デュー・ディリジェンス)の実施は買い手支援で必須
・M&A支援機関登録制度に登録された専門家のみが補助対象
・補助事業期間内にクロージングが完了しない場合、補助上限が300万円に減額
【jGrants申請ガイド】「事業承継・引継ぎ補助金(第11次公募・専門家活用枠)」
事業承継・引継ぎ補助金【専門家活用枠】の申請手続きは、電子申請システム「jGrants」を通じて行います。ここでは、第11次公募に対応した申請方法をわかりやすくご紹介します。
1. 申請準備
・gBizIDプライムの取得:申請にはgBizIDプライムアカウントが必要です。取得には時間がかかる場合があるため、早めの手続きを推奨します。
・申請書類の準備:必要な書類を事前に準備し、内容を確認しておきます。
2. jGrantsへのログイン
ログイン方法:gBizIDプライムのアカウント情報を使用してjGrantsにログインします。
3. 申請手続き
1.申請フォームの入力:必要事項を申請フォームに入力します。
2.書類の添付:必要な書類を指定された形式で添付します。
3.申請の提出:入力内容と添付書類を確認し、申請を提出します。
4. 申請後の対応
・差戻し対応:申請内容に不備があった場合、差戻しの通知が届きます。通知内容を確認し、速やかに修正・再提出を行います。
・進捗状況の確認:jGrantsのマイページで申請の進捗状況を確認できます。
5. 注意点
・申請期限の厳守:申請期限を過ぎると受付ができません。余裕を持って手続きを行ってください。
・ファイル形式と容量:添付するファイルは指定された形式と容量を守ってください。
・セキュリティ:gBizIDのID・パスワードは他人と共有しないようにしてください。
まとめ ~未来への事業バトンタッチを支える制度~
中小企業の存続と発展には、円滑な事業承継と的確な支援体制が欠かせません。「事業承継・引継ぎ補助金」は、専門家の活用から廃業支援、そして事業革新まで、さまざまな承継フェーズに寄り添った制度設計となっており、実務的な費用負担の軽減や円滑な手続きに大きく貢献します。
特に今回の第11次公募では、短期間での申請が求められる一方で、申請フローや加点ポイントなども明確に提示されているため、計画的に準備を進めることで十分に活用可能です。
後継者不足や経営資源の引継ぎに悩む経営者、M&Aを通じた事業拡大を検討する企業担当者の方々にとって、本補助金は心強いサポートとなるでしょう。
事業の未来を見据えた一歩として、制度の理解と活用をぜひご検討ください。タイミングを逃さず、地域と企業の持続的な成長につながる選択をしていきましょう。