BRICSとは、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)、南アフリカ(South Africa)の頭文字をとった新興国の国際協力枠組みです。
第二次世界大戦後、世界はアメリカを中心とする西側諸国が主導する秩序によって運営されてきました。しかし近年、その構造を揺るがす新しい枠組みとして「BRICS」が急速に存在感を高めています。
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカという主要5カ国から始まったこの連合は、人口で世界の約4割、購買力平価(PPP)ベースのGDPではすでにG7を上回る規模に達しています。さらに2024年の新規加盟を経て、2026年現在は「BRICSプラス」として、西側中心の国際秩序に対抗する動きをより鮮明にしています。
この動きは単なる新興国の経済連携に留まりません。軍事、資源、金融、外交のすべてが絡み合う「新しい国際秩序の形成」と目されています。世界のルールが変容すれば、日本の企業や自治体にもエネルギー価格、サプライチェーン、安全保障、地域経済といった多方面で大きな影響が及びます。
本記事では、BRICSの最新動向と各国の思惑、そして今後予想される世界秩序の変化を整理し、日本の経営者や自治体が優先すべき視点を解説します。
BRICSとは?加盟国一覧と最新の参加国(2026年版)

BRICSとは、主要な新興国による国際的な協力枠組みを指します。もともとは2001年にゴールドマン・サックスのエコノミスト、ジム・オニールが、高い成長が期待される4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の頭文字をとって提唱した経済用語でした。
その後、2009年に4カ国による初の首脳会議がロシアで開催され、国家間の協力枠組みとして本格的に動き始めます。2011年には南アフリカが加わり、「BRICS」と呼ばれる現在の5カ国体制が成立しました。
BRICSは長らく5カ国体制が続いてきましたが、2024年以降、急速に拡大しています。2024年1月には、エジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)が新たに加盟しました。さらに2025年1月にはインドネシアが加盟し、BRICSは10カ国体制へと拡大しました。
これにより、BRICS加盟国の合計人口は世界人口の約48%、合計GDP(国内総生産)は世界全体の4分の1以上を占める規模となっています。
また、2024年10月には正式加盟とは別に「パートナー国」という準加盟制度も新設されました。2025年6月時点で、ベラルーシ、ボリビア、キューバ、カザフスタン、マレーシア、タイ、ウガンダ、ウズベキスタン、ナイジェリア、ベトナムの10カ国が参加しています。
こうした拡大により、BRICSは単なる新興国の経済協力枠組みを超え、欧米主導の国際秩序に対抗する「グローバルサウス」の政治・経済連携の軸として存在感を強めています。
BRICS加盟国一覧(2026年3月時点)
BRICSの加盟国は、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカに加え、2024年以降にエジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、インドネシアが参加し、現在は10カ国体制となっています。
BRICS加盟国は以下の10カ国です。
- ブラジル
- ロシア
- インド
- 中国
- 南アフリカ
- エジプト
- エチオピア
- イラン
- アラブ首長国連邦(UAE)
- インドネシア
| 国名 | 加盟時期 | 区分 |
|---|---|---|
| ブラジル | 2009年 | 創設メンバー |
| ロシア | 2009年 | 創設メンバー |
| インド | 2009年 | 創設メンバー |
| 中国 | 2009年 | 創設メンバー |
| 南アフリカ | 2011年 | 追加加盟 |
| エジプト | 2024年 | 新規加盟 |
| エチオピア | 2024年 | 新規加盟 |
| イラン | 2024年 | 新規加盟 |
| アラブ首長国連邦(UAE) | 2024年 | 新規加盟 |
| インドネシア | 2025年 | 新規加盟 |
BRICSパートナー国(準加盟国)
なお、BRICSでは正式加盟国とは別に「パートナー国」の制度も設けられています。2026年3月時点では、以下の10カ国がパートナー国として参加しています。
- ベラルーシ
- ボリビア
- キューバ
- カザフスタン
- マレーシア
- タイ
- ウガンダ
- ウズベキスタン
- ナイジェリア
- ベトナム
BRICSを構成する主要国の現状

BRICSの特徴は、民主主義や人権といった「共通の価値観」ではなく、脱ドル化や多極化といった「共通の利害」でつながっている点にあります。
中国
BRICS内で最大の経済規模を誇ります。GDPでは世界2位であり、圧倒的な製造業サプライチェーンを武器に影響力を行使しています。「一帯一路」政策を通じてアジア、アフリカ、中東でのインフラ投資を加速させ、地政学的な主導権を握る戦略をとっています。
インド
2023年に人口で世界最多となり、現在は世界最高水準の経済成長を続けています。西側諸国から「中国への対抗軸」として期待される一方で、ロシアからの資源輸入や軍事協力も継続しており、特定の陣営に属さない「戦略的自律」を貫いています。
ロシア
エネルギー資源と核戦力を背景に、米国主導の制裁への対抗軸を強化しています。ウクライナ侵攻後の制裁下において、中国やインドへの資源輸出を拡大させることで経済を維持しており、BRICSを自国の外交的孤立を防ぐ重要なプラットフォームと位置づけています。
ブラジル
南米最大の経済大国であり、鉄鉱石や大豆などの世界的供給源です。伝統的に欧米とも良好な関係を維持する「バランス外交」を旨としてきましたが、近年は独自通貨による決済など、西側依存からの脱却を模索する動きも見せています。
南アフリカ
経済規模は他の4カ国に比べ小さいものの、アフリカ大陸の代表格として、同大陸の資源や市場へのゲートウェイとしての役割を担っています。
BRICSの軍事的側面と地政学リスク

BRICSにはロシア、中国、インドという核保有国が含まれており、各国の軍備増強は世界の軍事バランスに影響を与えています。
特にロシアと中国は、現状の国際秩序の変更を試みる動きを見せています。ロシアは2022年以降のウクライナ侵攻により実効支配地域を拡大しており、中国は南シナ海の軍事拠点化や台湾への圧力を強めています。BRICSという枠組み自体は軍事同盟ではありませんが、加盟国間での合同軍事演習が行われるなど、西側諸国の安全保障環境に対する変数となっているのは事実です。
米国政治の変遷と国際秩序

アメリカ国内の政治状況も、BRICSの結束を後押しする要因となっています。ドナルド・トランプ前政権以降、米国第一主義による保護主義的な政策や、同盟国への負担要求、多国間枠組みからの離脱といった動きが見られました。
「世界の警察官」としての米国の役割が後退したことで、各国は自国の国益を最優先する傾向を強めました。その受け皿として、米国の制裁や干渉を受けにくいBRICSの存在価値が相対的に高まっています。
今後の世界秩序の展望

今後の国際社会は、以下の3つのポイントを中心に再編が進むと考えられます。
(1) エネルギー連携の深化
中東の主要産油国がBRICSに接近したことで、エネルギーの価格決定権が西側からBRICS側へシフトする可能性があります。
(2) 非ドル決済(脱ドル化)の進展
米ドルの武器化(金融制裁)を恐れる国々が、人民元や独自通貨、共通決済システムの構築を急いでいます。
(3) 多極化の定着
米国一極集中から、西側諸国、BRICS、そしてその間を立ち回る国々という「多極的な世界」への移行が進みます。
日本の企業と自治体への影響

この地政学的変動は、日本の経済活動にも直接的な影響を及ぼします。
(1) エネルギー・食料安全保障
資源・食料の多くをBRICS加盟国やその周辺国に依存しているため、調達コストの上昇や供給停止のリスクを想定する必要があります。
(2) サプライチェーンの再構築
中国やロシアに依存した供給網のリスク管理がより厳格に求められ、製造拠点の分散や国内回帰が加速します。
(3) 安全保障の影響
インド太平洋地域での緊張の高まりは、物流網(シーレーン)の遮断リスクとなり、企業の輸出入に甚大な影響を及ぼす恐れがあります。
優先すべき経済戦略

変化する世界秩序に対応するため、企業経営者や自治体には以下の視点が求められます。
(1) エネルギー自立の推進
再生可能エネルギーの導入や省エネ技術による、外部環境に左右されにくいエネルギー構造への転換。
(2) サプライチェーンの多角化
特定国に依存しない原材料調達や、リスクを前提とした在庫管理。
(3) 地域経済のレジリエンス強化
地産地消の促進や、域内での産業循環を構築し、外部ショックに強い経済基盤を作ること。
FAQ
BRICSとは簡単にいうと何ですか?
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字をとった新興国グループです。現在は中東やアフリカの国々も加わり、西側諸国が主導する国際秩序に対抗する多極的な勢力として活動しています。
BRICSはなぜ注目されているのですか?
加盟国の人口や資源量が圧倒的であり、世界経済の成長センターとなっているためです。また、米ドルに依存しない独自の経済圏や決済システムの構築を目指している点が、将来の世界経済に大きな影響を与えると予測されています。
日本にどのような影響がありますか?
日本はエネルギーや食料の多くを海外に依存しているため、BRICS諸国の動向によって電気代や食品価格が変動しやすくなります。また、地政学的な緊張が高まることで、企業の海外展開や物流にも影響が及びます。
まとめ
BRICSはもはや単なる「成長市場」ではありません。資源、軍事、金融、外交を背景に、戦後の国際秩序を再編しようとする巨大な力となっています。
この流れは一過性のものではなく、構造的な変化です。日本の企業や自治体にとって重要なのは、これを遠い世界の出来事として捉えるのではなく、自らの事業や地域の存続に関わる課題として理解することです。不確実性が高まる時代において、エネルギー、食料、産業の基盤を国内・地域内で強化することこそが、最も現実的で有効な戦略となります。
