「アートと地域活性化を組み合わせることで、若者の流入や定着が実現する」-そんな仮説に、2024年、世界銀行が注目しました。同機関のレポートでは、日本各地のアートを軸とした地域づくりが「文化を通じた持続可能な再生モデル」として高く評価されています。とくに、空き家や廃校を活用し、若者の参加や移住を促す取り組みは、国際的にも先進事例とされています。
私自身、このレポートをきっかけに、「人が地域に惹かれる理由とは何か」を見つめ直しました。調査を進める中で、アートが地域と若者をつなぎ、新たなコミュニティや産業を生み出している現場に出会ったのです。
本記事では、アートによる地方創生で若者人口が実際に増加している地域の最新事例を紹介します。観光だけにとどまらず、移住・定住や関係人口の増加につながった要因と成果を、世界銀行の視点も交えて紐解きます。
瀬戸内国際芸術祭(香川県・直島ほか)
瀬戸内国際芸術祭は、瀬戸内海に浮かぶ島々および周辺沿岸部を舞台に、2010年より3年ごとに開催されている現代アートの祭典です。全17エリアにわたり、春(4〜5月)・夏(8月)・秋(10〜11月)の3シーズン制をとるトリエンナーレ形式で構成され、会期は約100日間にわたります。
芸術祭の総合ディレクターを務めるのは、第1回から「大地の芸術祭」も手がける北川フラム氏。香川県・岡山県の自治体、経済団体で構成される「瀬戸内国際芸術祭実行委員会」が、ベネッセホールディングスや公益財団法人福武財団などの民間企業と連携し、企画・運営を担っています。
芸術祭の根幹には「海の復権」というコンセプトが据えられており、アートを媒介にして島々の自然・文化・人々の暮らしの価値を再発見し、地域の再生と持続可能な交流人口の創出を目指す試みです。直島、豊島、犬島、大島など個性豊かな島々の空き家・廃校・倉庫などを活用したアート作品が点在し、来訪者は島の生活文化と直接触れ合いながら芸術を体験します。
2019年には延べ117万8千人を超える来場者を記録し、2016年から約14万人増と過去最多となりました。経済波及効果は約180億円にのぼるとされ、芸術祭による観光需要と消費喚起が地域経済に大きく寄与しています。コロナ禍で迎えた2022年は来場者数約72万人に減少しましたが、2025年には第6回が開催されており、4月18日から5月25日までの春会期はすでに終了しました。期間中の来場者数は32万668人にのぼり、コロナ禍中の2022年を上回る実績となりました。一方で、過去最多だった2019年と比べると約17%少ない結果でした。
2024年の世界銀行レポートでは、瀬戸内国際芸術祭は「文化を通じた地域再生のグローバルモデル」として取り上げられています。特に以下の点が高く評価されました:
🔵空き家や産業跡地を活用した空間再生による地域資源の再評価
🔵住民との協働による作品制作(例:ソラアミ=「空を編む」プロジェクト)による社会的包摂の実現
🔵国際的な来訪者の受け入れによる地域ブランドの向上と交流人口の質的転換
🔵観光と文化投資を融合させた民間主導・行政支援型の資金モデル
また、ベネッセアートサイト直島を起点とした観光・宿泊・飲食業の創出により、Honmura地区ではレストランや宿泊施設が2004年のゼロから2012年には50件以上に増加。移住者や若手起業家の流入も確認され、離島地域での持続可能な人の流れが形成されつつあります。
このように、瀬戸内国際芸術祭は「アートの力を用いた公共空間の再編」と「経済・社会・文化の統合的な再生」の実践モデルとして、世界の開発関係者からも注目を集めています。
若者を惹きつけた施策・参加状況〜こえび隊がつなぐアートと人、地域と未来〜
瀬戸内国際芸術祭の成功を支えている重要な要素のひとつが、若者世代の積極的な関与です。なかでも注目すべき存在が、公式ボランティアサポーター組織「こえび隊」です。こえび隊は、作品制作補助、受付案内、イベント運営などを担いながら、全国および海外から集まる多様な人々を受け入れる開かれた参加のプラットフォームとなっています。
年齢・職業・国籍を問わず、誰でも1日から参加できるこの仕組みには、学生や若手社会人、親子連れ、高齢者などがそれぞれの関心やライフスタイルに応じて関わっています。特に大学生や20代〜30代の若年層の参加が目立ち、アートを媒介に島の暮らしと関わる中で、地域住民との対話や協働が自然と生まれています。
こうした若者の関与によって、来訪者への案内やイベント運営を超えた価値が創出され、地域コミュニティとの信頼関係の構築、島の魅力発信、そして地域の活性化へとつながっています。
教育との連携と次世代育成
芸術祭では、次世代の育成にも力が注がれており、地元の小中高校生がアートに関わる機会も積極的に提供されています。ワークショップ、香川県教育委員会や地元高校との連携による課外活動プログラムなどを通じて、子どもたちが芸術と地域の魅力を体験的に学ぶ場が広がっています。
このような取組みにより、島の子どもたちは来訪者との交流を通じて地域の魅力を再発見し、誇りを育むとともに、地域内外の若者同士の文化的・人的なネットワークの芽生えも促進されています。
評価と波及効果
世界銀行のレポートでは、瀬戸内国際芸術祭が、地元住民のみならず他地域からの人材も巻き込みながら運営されている点が評価されています。特に、こえび隊(Koebi Volunteers)は、作品案内や地域案内、飲食やイベント運営まで多様な役割を担っており、フェスティバルの持続性と地域との連携を支える中核的な存在として紹介されています。
🔵誰もが参加可能なオープンな設計により、多様な社会層を巻き込む包摂的構造を形成していること
🔵アート活動を通じて、関係人口や潜在的移住者が自然に育つ仕組みになっていること
🔵若者の参加が、地域住民のモチベーションや自治意識を刺激し、持続可能な地域運営の基盤を生み出していること
こうした構造は、芸術祭の一過性のイベント性を超えて、中長期的な人的循環と社会的つながりの生成へとつながっており、実際に「芸術祭をきっかけに島に移住した若者」や「定期的に島を訪れるようになった大学生・アーティスト」の事例も増加傾向にあります。
島に芽生える若者との新たな関係
住民アンケートにおいても、芸術祭の効果として「若い世代の増加」「地域の活性化」が最も高く評価されています。とくに「島に活気が出た」「若い移住者が増えてうれしい」という声が複数寄せられており、アートと人との出会いが、島に希望と変化をもたらしていることが見て取れます。
このように瀬戸内国際芸術祭は、地域に新たな世代を惹きつけ、アートを通じて持続可能な関係性と未来を紡ぐ重要な場となっています。
移住・定住者や関係人口の増加〜芸術祭がつなぐ人の循環と地域再生〜
瀬戸内国際芸術祭は、過疎化と高齢化の進行に直面している瀬戸内の島々において、新たな人の流れを生み出すきっかけとなっています。特に顕著な成果が見られるのが、香川県高松市に属する男木島(おぎじま)の事例です。
2010年の芸術祭開催を契機に、若い世代や子育て世代の移住が始まりました。当時、過疎と少子化の影響で休校状態にあった島の小中学校は、2014年に再開され、教育機関の復活という象徴的な転機を迎えます。その後も移住希望者が相次ぎ、2014年以降の移住者数は累計60人を超え、島民約150人のうち4割が新たな移住者という構成に至っています。定住率は6割を超え、子どもの誕生と入学という新しい世代の循環が、島に再び根を張りつつあります。
こうした動きにより、かつて中断されていた祭礼や地域行事が復活し、地域コミュニティに活気と連帯感が戻りつつあるという住民の声も聞かれます。また、男木島に限らず、豊島、女木島、小豆島など他の島々でも芸術祭をきっかけに、UターンやIターンによる移住が見られるようになっています。
世界銀行レポートにおける評価
世界銀行のレポートでは、瀬戸内国際芸術祭を通じた「離島地域での人口再生」は、国際的にもまれな成功例として取り上げられています。中でも次のような点が注目されています:
🔵教育・住環境・社会活動の再編につながる移住者の波
🔵アートを媒介とした地域資源の再評価と、暮らしの場としての島の魅力の再発見
🔵こえび隊をはじめとするボランティア活動は、当初は地域外からの短期参加者が中心でしたが、次第に地域住民が役割を担うようになり、継続的な関与と地域内での協働体制が形成されていること。
関係人口の創出と多様な関わり方
定住には至らずとも、芸術祭をきっかけに島を訪れた若者が繰り返し島を再訪したり、地域と都市を行き来しながら関わり続ける関係人口となる例も増加しています。たとえば、こえび隊の活動を通じて島の暮らしに魅了された若者が、のちに島内でゲストハウスを開業したり、アーティストのアシスタントとして長期滞在するケースも報告されています。
また、2022年の芸術祭には1,500人以上の企業ボランティアが参加し、海外からの観光客も多く訪れました。こうした多層的な交流人口の拡大は、将来的な移住・定住を見据えた人的基盤の蓄積とも言えます。
成果としての社会的つながりと地域の再生
芸術祭の波及効果としては、人口流出の抑制だけでなく、地域住民と外部の人々のあいだに新たな社会関係資本が構築されたことが大きく、地域再生のモデルケースとして国内外から注目を集めています。
男木島のように、一度消えかけた「暮らしの連続性」が文化と人の力で再編されていく姿は、今後の地方創生政策や国際開発分野においても極めて重要な示唆を与えるものです。
官民・住民の連携と成果〜アートを核にした多層的な協働モデルの構築〜
瀬戸内国際芸術祭は、『アートによる地域再生』を理念とし、自治体、民間企業、住民が連携して持続可能な地域活性化に取り組んできました。世界銀行のレポートでも、多様な主体が関わる参加型の事例として紹介されており、こうした取り組みは国際的にも注目される地域開発モデルの一つと評価されています。
統合的なガバナンス体制と明確なビジョン
芸術祭の運営主体である「瀬戸内国際芸術祭実行委員会」には、香川県・高松市などの自治体首長や行政関係者に加え、民間セクターからはベネッセホールディングスの創業者・福武總一郎氏が中核的に参画。公益財団法人福武財団などとともに、芸術祭の構想から実施に至るまでをリードしています。
この体制のもと、行政は制度設計や地域調整、企業は資金とネットワーク、住民は現場運営と文化継承を担うという役割分担がなされ、明確なビジョンに基づいた分権的・参加型の運営が実現されています。
住民との対話と信頼の構築
世界銀行のレポートでは、瀬戸内国際芸術祭の開催にあたり、地域住民との信頼構築と対話の積み重ねが持続可能な実施の前提であったことが評価されています。特に、当初はアートへの懐疑的な見方があったものの、丁寧な説明と協働を通じて共感が育まれ、地域ぐるみで訪問者を迎える体制へと進化したプロセスが紹介されています。レポートはこの取り組みを『住民との深い結びつきがあってこそ持続可能な芸術祭が実現する』例として位置づけています。
現場力を支えるこえび隊と島民の役割
現場では、市民ボランティア「こえび隊」や島民が中心となって、来場者の案内、作品維持管理、島の清掃、交流イベントの開催など多岐にわたる活動を担っています。これにより、芸術祭は一時的な観光イベントではなく、地域の日常に根ざした「文化的営み」として定着しつつあります。
企業・大学との連携と若者の関与
地域の企業もCSRの一環として芸術祭を支援し、社員のボランティア派遣や協賛を通じて運営を下支えしています。また、美術大学との連携により、学生の現地インターンシップや制作補助の機会も充実。こうした取り組みは、若者の社会参画の場を広げると同時に、島に新たな視点や活力をもたらしています。
常設プロジェクトによる通年型の地域活性
芸術祭は期間限定のイベントにとどまらず、通年で島に根づくアートプロジェクトを生み出す起点にもなっています。たとえば、空き家を活用した作品展示、住民が料理と交流を担う「島キッチン」(豊島)、環境再生を主題としたインスタレーションなどが常設化され、日常的な文化体験の場として地域に定着しています。
国際評価と地域再生の象徴
瀬戸内国際芸術祭は、住民自治、民間企業、自治体が連携する協働体制を築き、高齢化や人口減少に直面する離島地域に、移住や交流を通じて新たな活力をもたらしました。世界銀行のレポートでは、こうした取り組みを地域の経済再生と社会的つながりを同時に実現する先進モデルとして評価し、他国でも応用可能な地域開発の事例として紹介しています。
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ(新潟県十日町市と津南町)
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」は、新潟県十日町市と津南町を舞台に、2000年より開催されている世界最大級の地域型国際芸術祭です。3年に一度、豪雪地帯・里山地域である越後妻有の農村集落全体を“ひとつの美術館”に見立てるという斬新なコンセプトのもと、多様なアート作品と地域の生活文化が融合する取り組みが行われています。
この芸術祭もまた、総合ディレクター・北川フラム氏のもとで「アートによるまちおこし」という国内では先駆的なビジョンを実現し、全国的な注目を集めてきました。その先見性と実行力は国際的にも高く評価され、2024年の世界銀行レポートでは「文化と地域経済を結ぶ革新的モデル」かつ「持続可能な地域づくりの優良事例」として取り上げられています。
2022年の第8回開催では、145日間の会期中に約57万人が来場し、累計来場者は20年余りで300万人を超えました。新潟県内における2022年の経済波及効果は約82億円と試算されており、地域経済への実質的な貢献が明らかです。
芸術祭期間中は、野外アートや古民家を活用したインスタレーション、地域密着型の美術館など200点以上の作品が展示されます。それらの作品は地域の自然や暮らしと深く結びつき、農業、民俗、祭事など生活文化を素材とした独創的なアートが数多く登場します。
また、企画理念は「人間は里山から都市を学び、都市から里山を学ぶ」という哲学に基づいており、都市と農村の双方向的な学びと交流を生み出す場として機能。芸術祭を通じた内外からの人的・文化的交流は、地域の自己認識や住民の誇りを高める重要な触媒ともなっています。
運営体制も特筆に値します。十日町市・津南町の行政、NPO法人(大地の芸術祭実行委員会)、企業、そして地域住民が一体となって芸術祭を支えており、こうした官民連携と住民参加のモデルは、世界銀行も「持続可能な地域発展の鍵」として紹介しています。アートを軸とした包括的な地域づくりの先進事例として、国内外から高い関心が寄せられています。
若者を惹きつけた施策と参加の広がり〜世銀も注目する地域再生モデル〜
大地の芸術祭では、初回開催当初から地域内外の若者を積極的に巻き込む取り組みが行われてきました。象徴的な存在がボランティアサポーター組織「こへび隊」です。「小さな力が集まって大きな力になる」という理念のもと、延べ3,000人以上が参加し、十日町市を中心に首都圏や海外からも多くの若者が訪れています。10代・20代の学生も多く、美術大学の合宿や企業の研修の場としても活用されています。
加えて、この芸術祭は単なるボランティアの機会にとどまらず、アーティストを目指す若者にとっての登竜門ともなっています。実際にアーティストのアシスタントとして関わった若者が十日町に移住し、自らの作品を出展するまでに至った事例も複数存在します。海外からのアーティストが越後妻有に拠点を移すケースも確認されており、地域との継続的な関わりを生む土壌が築かれています。
世界銀行が2024年に発行したレポートでは、大地の芸術祭を“地域経済と社会的つながりの両面を活性化する持続可能な地域開発モデル”として評価しています。特に、①地域経済の波及効果、②空き家や耕作放棄地など地域資源の再活用、③地域外からのボランティア・移住者の関与による社会的つながりの強化、という3点が取り上げられています。また、地域の若者や学生がアートを通じて企画・運営に関与し、空間活用や表現活動を行うことで、農村地域に“人を迎え入れる文化”が育まれていることも示唆されています。
移住・定住人口と関係人口の広がり〜文化が呼び込む新しい人の流れ〜
若者によるUターン・Iターンの増加
「大地の芸術祭」を契機に、開催地・新潟県十日町市では若者層を中心としたUターン・Iターンの動きが着実に広がりを見せています。人口全体では減少傾向が続く中、芸術祭を通じて地域に関心を持った20〜30代の移住者が少しずつ増加。「アートを通じて十日町を知り、実際に暮らしてみたくなった」という声が、メディアや移住者インタビューでも多く紹介されています。
芸術祭が移住のきっかけに
芸術祭は一時的なイベントにとどまらず、地域との出会い・接点を生み出す装置として機能しています。市の報告書や地域戦略でも、芸術祭がもたらした住民協働の実績、若者層の定住促進、そして「関係人口」の創出が具体的な成果として挙げられています。行政もこの芸術祭を文化事業としてではなく、まちづくり施策の中核に位置づける方針を明確にしています。
このような取り組みは、世界銀行の地域活性化レポートでも注目されています。レポートでは、大地の芸術祭が空き家や旧校舎などの地域資源を創造的に活用することで、新たな人の流れと地域社会とのつながりを生み出し、持続可能な地域づくりに寄与していると評価されています。特に、移住や定住にとどまらず、継続的に地域と関わり支える来訪者やボランティアの存在が、地域にとって重要な人的資源となっている点が強調されています。
多様な関わり方による地域との接続
芸術祭を訪れた人々が、その後に地域おこし協力隊として移住し、地域文化やアートの発信に携わる例も少なくありません。また、アート作品の管理業務を担うために移住した若者や、古民家を改修してカフェ・ゲストハウスを開業した起業家など、「芸術祭が人生の転機となった」という実感を語る移住者が増えています。こうした動きは、地域に新しい人の流れと創造的な活力を呼び込んでいます。
国際交流の広がりと影響
大地の芸術祭には、過去の開催から継続的に海外からのアートツーリズム客が訪れており、地域に国際的な文化交流の機会をもたらしています。さらに、国際的なアーティストとの出会いを通じて地域に関心を持ち、滞在や移住につながった若者の例も報告されています。
世界銀行のレポートでは、大地の芸術祭が海外からのアートツーリズム客を継続的に受け入れ、国際的な文化交流の機会を地域にもたらしている点が評価されています。海外アーティストや来訪者との協働を通じて地域に関心を持ち、継続的に関わる人々が生まれている構造も描かれています。こうした取り組みは、地域の国際的な知名度向上と、グローバルな文化戦略の一端を担う実践としても位置づけられています。
地域住民の受け止めと評価
芸術祭終了後に行われた住民アンケートでも、「地域に変化が生まれた」「外から来る人々との交流を通じて、自分たちの地域の価値に気づいた」といった肯定的な意見が多数寄せられています。交流人口の増加や地域への誇りの醸成など、目に見える社会的変化が住民の実感として現れています。
こうした背景から、「大地の芸術祭」は今や単なる文化イベントではなく、地域活性化・地域ブランド強化の実践的モデルとして、行政・住民・民間の多方面から高く評価されているのです。
官民・住民の連携と地域への成果〜信頼と協働による持続可能な地域づくりのモデル〜
全市的な支援体制と地域密着の運営
「大地の芸術祭」は、行政・民間・地域住民が三位一体で関与する「住民総参加型」の国際芸術祭として国内外に知られています。特に十日町市では、芸術祭を市の総合戦略の中核に位置づけ、庁内の複数部門が横断的に参画。地域振興課をはじめとする部署が、行政と各集落の間に立ち、きめ細やかな調整と支援を実行しています。
このような体制は、地域文化の再評価と住民の誇りの醸成、そして地域の一体感を生む基盤となっており、世界銀行の報告書でも「地域密着型アートフェスティバルにおける先進事例」として高く評価されています。
民間との連携と多様な資金調達モデル
大地の芸術祭の企画・運営は、総合ディレクター北川フラム氏が代表を務めるNPO法人『越後妻有里山協働機構』が担っており、自治体の公的支援に加え、企業協賛、寄附、チケット収入、地域交付金など多様な財源を活用することで、持続可能な資金運営を実現しています。世界銀行のレポートでは、こうした多層的な資金構造と非営利セクターの役割が、地域の経済的自立性と透明性ある創造的運営を支えている点が評価されています。
住民の協力と現場力
芸術祭の根幹を支えているのは、地域住民の自発的かつ積極的な関与です。各集落には来訪者の案内やイベント運営を担う住民委員会が組織され、草刈りや雪かき、演出補助など現場の実務を担っています。
たとえば、地元の老人クラブがアーティストと協力して昔話を題材にした影絵劇を上演するなど、地域の物語や技能が芸術と融合するプロセスそのものがフェスティバルの核となっています。世界銀行も「地域の日常がアートと融合することで、新たな価値と誇りが生まれる」と述べ、こうした活動を地域再生の鍵として紹介しています。
行政職員の主体的関与と柔軟な組織体
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレでは、行政職員も事務的な枠を超え、アートコーディネートや地域住民との連携、現場運営などに積極的に関与する体制が取られています。こうした行政の柔軟な関与や地域との協働のあり方は、地域再生の新たなガバナンスの形として注目され、世界銀行のレポートにおいても、国際的に共有すべき実践例として取り上げられました。
信頼構築の道のりと共通理念の形成
1994年に新潟県が策定した『ニューにいがた里創プラン』に基づき、地域活性化を目的とした『越後妻有アートネックレス整備構想』がスタートしました。当初は地元議会や住民からの強い反対に直面し、1998年に予定されていた初開催は実現しませんでした。しかし、その後、行政職員や地域有志が約2,000回に及ぶ説明会を重ねるなど、粘り強い対話と説得を行い、2000年に第1回『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』が開催されました。この過程で築かれた『対話に基づく信頼関係』こそが、アートを媒介とした地域再生を可能にした鍵であり、世界銀行はこれを地域主導型の成功モデルとして評価しています。
成果と世界的評価
このような官民・住民の協働体制のもとで、過疎化の進む地域に若者が移り住み、多世代が共に活動しながら地域を支える構図が生まれています。大地の芸術祭は、今や「アートで人と地域をつなぎ直す」実践的なロールモデルとして、国内外の専門機関、都市計画家、地域開発実務者からも高い関心を集めています。
アーツ前橋×前橋市リノベーションまちづくり(群馬県前橋市)
群馬県前橋市は、人口約33万人を抱える県庁所在地でありながら、中心市街地の空洞化(いわゆる「シャッター商店街化」)が長年の課題でした。これを打開するため、市は2013年に旧西武百貨店の別館を活用し、公立美術館「アーツ前橋」を開館。単なる展示施設にとどまらず、地域のにぎわい創出を担う拠点として位置づけられています。
アーツ前橋の役割と都市政策との連動
アーツ前橋は、既存建築のコンバージョンによって“まちの記憶”を継承しつつ、新たな公共空間として再生されました。市はこれを核とする「中心市街地活性化基本計画」を策定し、アートと都市再生を連動させたリノベーションまちづくりに取り組んでいます。
また、同館ではアーティスト・イン・レジデンス事業や地域アートプロジェクトなどを通じて、住民との交流や地域課題へのアプローチを実践。芸術文化が地域と結びつき、都市再生に寄与する先進事例とされています。
アーバンデザインと空き家活用
2019年に市が策定した「前橋市アーバンデザイン」では、中心市街地の遊休不動産(空き家・空き店舗)を戦略的に利活用することが明記されました。市職員が地元自治会と連携して物件を調査し、不動産所有者にヒアリング。さらに前橋工科大学の建築学生が図面化を行い、出店希望者や空き家活用に関心を持つ若者とのマッチングが進められています。
市は「リノベパートナー登録制度」も導入し、マッチングを支援する民間事業者との連携体制を整備。官民協働のまちづくりが制度面からも支えられています。
市民参加と若者の起業・定着
2015年前後からは「リノベーションスクール」などのワークショップを開催し、ビジネスプランの公募を通じて市民参加型のまちづくりが加速しました。その結果、中心市街地ではシェアオフィスやカフェ、ギャラリー、ベーカリーなど、若者が集う多様な拠点が次々と誕生。
象徴的な事例が、空きビルを改装した複合施設「CHOCOLATE」で、1階にカフェとプリントショップ、2階にシェアオフィスが入居。これらの施設が、まちなかに新しい価値とにぎわいを生んでいます。
行政は補助金や制度面でこれらの民間プロジェクトを後押しし、自発的な創意工夫が同時多発的に起こる土壌を整えました。結果として、若者が中心街に集まり、「住む街」として前橋を選ぶ動きも生まれつつあります。
実績と成果
こうした取り組みの成果は、データにも表れています。前橋市の調査によると、休日の歩行者通行量は2021年度の8,517人から、2023年度には11,951人へと約40%増加。平日でも6,786人から12,051人へと約78%の大幅な増加が記録されました。
さらに、「中心市街地活性化基本計画」を軸に、空き店舗の利活用や起業支援、文化施設との連携が継続的に進められており、かつて“シャッター通り”と呼ばれた前橋の中心街に、少しずつ人の流れと活気が戻り始めています。
若者を惹きつける施策とその効果:前橋市の実践
1.アーツ前橋における若者の参加促進
前橋市の取り組みの大きな特徴は、地元の若者や創造的志向を持つ若手層を積極的に巻き込んでいる点にあります。アーツ前橋では、開館当初から市民参加を重視し、地元の高校生や大学生がボランティアとして企画展運営に関与してきました。
学生たちは来場者の対応やアーティストの制作補助を担うほか、展覧会の裏側を紹介する館内通信の作成や、近隣商店街と連携した交流イベントの企画なども行っています。こうした実践を通じて、若者たちはアートを媒介に地域とつながり、まちなかの担い手として育成されています。
2.学生とのリノベーション実践と創業チャレンジ
リノベーションまちづくりの分野でも、若者の実践参加が進んでいます。前橋工科大学や群馬大学の学生チームが中心市街地の空き物件に対し、改装プランを立案し、自らDIYで内装やペイントに取り組んだ事例が複数あります。
これらは単なる学外演習にとどまらず、学生自身がその物件でカフェや店舗を経営するなど、実際の創業につながるケースも生まれています。こうした実践は、若者の創業機会の提供と、地域への定着を後押ししています。
3.若手起業家の流入とまちの活性化
市外からも、クリエイティブな志向を持つ若手起業家の流入が進んでいます。たとえば、オーストラリアでの生活経験を持つ20代の若者2名が、2022年にレトロビルの空き店舗をリノベーションし、それぞれカフェを開業。こうした新しい店舗はSNSなどを通じて話題を呼び、若年層の来街を促進する一因となっています。
このように、個性ある若者による店舗開業が相次ぎ、前橋の中心市街地は若者を惹きつける新たな場へと変化しつつあります。
4.居住の魅力:シェアハウス型住宅の導入
中心市街地では「住まい」のリノベーションも進んでいます。代表例が「弁天シェアハウス」で、これは地元企業の経営者が手掛けた、学生や若手社会人向けの共同住宅です。
空きビルを活用して整備されたこの住宅には、県内外の大学院生や社会人が入居し、共同生活を通じて住人間や地域住民との交流が生まれています。こうした体験が若者の地域への愛着形成につながり、「卒業後も前橋に住み続けたい」という声も聞かれています。
5.Uターン・Iターンの傾向と市の方針
こうした「住む」「学ぶ」「働く」を一体的に支える取り組みの積み重ねにより、前橋市では若者の定着に一定の成果が見え始めています。近年では、地元出身者のUターンや、首都圏からのIターン移住の動きが徐々に増加。市の総合戦略にも、こうした流れを加速させる方針が盛り込まれています。
実際に、2019〜2022年度には転入・転出の社会増減がほぼ均衡する年もあり、若年層の定着率向上が統計上にも表れ始めています。前橋市の総人口は長期的には減少傾向にあるものの、こうした兆しは移住施策の効果を示唆しています。
結論
前橋市は、「住む」「学ぶ」「働く」の各領域においてリノベーションまちづくりを推進し、若者に選ばれる都市を目指しています。その中核には、アーツ前橋をはじめとする文化施設と、学生・若者・起業家を巻き込んだ官民連携の柔軟な政策展開があり、今後の地域定着のモデルとしても注目されます。
移住・定住人口および関係人口の増加傾向:前橋市の中心街における変化
1.若者の流入・定着の芽生え
前橋市の中心市街地では、他の過疎地域と比べて急激な変化こそ見られないものの、着実に若者の流入と定着が進みつつあります。特にアーツ前橋の開館以降、年間を通じて多くの芸術家やアートファンが訪れ、展覧会やイベントを目的に県外から足を運ぶ若年層も増加。これらの来訪者が継続的に前橋に関わる「関係人口」として、地域とゆるやかに接点を持ち続けています。
2.二拠点居住から移住への展開
リノベーションまちづくりの取り組みを契機に、市外の若手クリエイターが前橋に拠点を構える動きも広がっています。たとえば、東京在住のデザイナーが前橋の空き店舗をアトリエ兼ショップとして活用し、月の半分を前橋で過ごす「二拠点生活」を始めた事例が挙げられます。
さらに、こうした関わりが深まる中で、完全移住に至る若者も出現しています。空き家バンク制度を利用して前橋に移り住む20〜30代の若年層が徐々に増加しており、群馬県の統計でも近年、20代移住者の微増傾向が確認されています。
3.コロナ禍以降の新たな移住ニーズ
特にコロナ禍以降は、テレワークの普及により地方都市への移住ニーズが高まりました。前橋市ではリノベーション済み物件への移住例が複数報道されており、若者の移住先としての魅力が再評価されています。
前橋市は、都心に比べて安価で広い住空間、人との距離が近く温かい地域コミュニティ、そして「自分らしい働き方」を実現しやすい環境を提供しており、若者が新たなライフスタイルを始める場として注目されています。
4.市の戦略的支援とまちの変化
前橋市は「県都まえばし創生プラン」において、若年層の定着を最重要施策の一つに位置づけ、子育て支援や雇用創出と並行して中心市街地の魅力向上を進めてきました。
その成果として、街なかの週末の人出の増加、新規出店数の上昇など、いわゆる「賑わい指標」の改善が見られ、人口減少に一定の歯止めがかかりつつあります。
5.多様化する関係人口の形
関係人口の広がりも前橋市の大きな成果のひとつです。たとえば、都市部に暮らす前橋出身の若者が、リノベーションプロジェクトへの関与を通じて定期的に帰省したり、アーツ前橋のオンライン・アートプログラムに参加するなど、関わり方が多様化しています。
結論:都市型地方創生モデルとしての前橋
以上のように、前橋市では、官民連携によるリノベーション施策と文化施設の活用を軸に、中心市街地への若年層の流入と関係人口の拡大を同時に実現しつつあります。
これは単なる移住促進にとどまらず、「都市型の地方創生モデル」として、他地域にも応用可能な示唆を与える取り組みだと言えるでしょう。
官民・住民の連携とその成果:前橋市における都市再生のモデル
1.多主体連携によるまちづくりの推進
前橋市では、行政(市役所)を中心に、地元企業、大学、市民(若者を含む)との緊密な連携によって都市再生の取り組みが進められています。とりわけ「前橋市アーバンデザイン」のビジョン策定においては、有識者や市民も参加し、行政だけでなく民間の発想が積極的に取り入れられる仕組みが構築されました。
2.家守会社・パートナー制度を活用した官民連携
前橋市は、民間の家守会社(エリアマネジメント事業者)を育成し、複数の空き家・空き店舗を一括で管理・利活用する仕組みを導入。これにより、効率的かつ持続可能なリノベーションまちづくりが展開されています。
また、遊休不動産の活用にあたっては、リノベパートナー登録制度に基づき、出店希望者と不動産所有者をつなぐ支援体制が構築されており、官民連携によるまちづくりのハブとして機能しています。
3.柔軟な制度運用と金融支援による創業促進
行政は、空き店舗の改装費用に対する補助金制度を柔軟に運用することで、若者による創業のリスクを軽減。さらに、地元金融機関も創業支援融資を実施し、若手起業家を資金面から後押ししています。
このように、制度と金融の両面で支援する仕組みが整備され、若者やクリエイターの挑戦が実現しやすい環境が生まれています。
4.アーツ前橋による文化とまちの融合
公立美術館「アーツ前橋」も、市民や若手クリエイターを運営審議会に参加させ、施設の方針決定に市民視点を反映させる体制を整えています。
さらに、美術館は地元商店街やNPOと連携し、「夜のまちなかを美術で彩る」ようなアートイベントを開催。これにより、文化と商業の融合による新たなにぎわいづくりが実践されています。
5.市民の主体的チャレンジの芽生え
行政主導にとどまらず、市民の間にも「自分たちの街を良くしたい」という機運が広がっています。たとえば、古民家オーナーが自ら改修に挑戦したり、商店街の有志が空き店舗を期間限定でアートギャラリーに転用したりと、住民発のプロジェクトが多数生まれています。
こうした動きは、単なる施設整備にとどまらず、地域の人々の意識変化を伴った持続的な再生の兆しを示しています。
6.行政の「伴走型支援」という新たな立ち位置
前橋市の特徴は、行政が前面に出すぎず、民間の創意工夫を尊重しながら支援を行う「伴走型支援」を徹底している点にあります。必要な制度や資金を適切なタイミングで差し込みながら、民間主導のまちづくりを支える黒子の役割を担っているのです。
この姿勢が、創造的な取り組みの連鎖を生み、結果として若者が集い、住みたいと思える「住む街」としての再評価につながっています。
結論:地方都市再生の先進モデルとしての前橋
以上のように、前橋市ではアートとリノベーションを軸に、官民・住民が一体となった都市再生モデルを構築してきました。この取組は、地方都市が抱える中心街空洞化という課題に対し、持続可能で柔軟な解決策を提示する好例であり、全国の自治体にとっても参考となる実践モデルといえるでしょう。
神奈川県二宮町発・壁画アートプロジェクト
若者が彩るまちの未来と、新たな人の流れ
神奈川県二宮町は、湘南エリアに位置する人口約2万人の町です。海や山に囲まれた自然豊かな環境は魅力的である一方、若者の流出による人口減少が課題となってきました。そうしたなか、2020年頃から始まった「壁画アートプロジェクト」は、アートを通じた地域活性化の新しいアプローチとして注目を集めています。
この取り組みの中心人物は、アーティストの乙部遊さん。ニューヨークで10年間にわたってストリートアートや現代アートに携わった経験を持つ乙部さんは、帰国後、二宮町山西地区に移住し、アトリエ兼ギャラリー「8.5 House」を設立。町の空き壁面やシャッターをキャンバスに見立て、地域住民とともに壁画を制作するプロジェクトをスタートさせました。
プロジェクトは、乙部さんをはじめとするアートユニット「Eastside Transition(EST)」と、地元の不動産店長「プリンス・ジュン」氏ら若手住民の熱意により推進されています。クラウドファンディングで資金を調達しながら、二宮駅周辺を中心に2022年までに7カ所以上の壁画を完成させてきました。
特徴的なのは、プロのアーティストが監修するワークショップ形式を採用している点です。子どもから大人まで、地域の誰もが参加できるスタイルが、「アートのハードルを下げる」ことに成功し、普段アートに触れる機会の少ない若者にとっても貴重な創作体験の場となっています。特に高校生たちは、SNSでの情報発信やクラウドファンディングのリターン企画などにも関与し、プロジェクトを主体的に支える存在となっています。
この活動は町外からも注目を集めています。壁画制作の際には、東京や横浜といった都市部から大学生ボランティアが訪れ、民泊に滞在しながら地域と交流。「旅するように地域と関わる若者たち」が現れ始め、二宮町は“若者にとって居心地のよい町”としての新たなイメージを獲得しつつあります。
完成した壁画は“映える”スポットとしてSNS上でも話題となり、写真を撮りに訪れる若者グループが増加。商店街や駅前といったエリアに新たな賑わいを生み出し、アートが人々の交流のきっかけにもなっています。
壁画アートが生み出す移住・定住と関係人口の波
この壁画アートプロジェクトは、単なる景観改善にとどまらず、人の流れや関係性に変化をもたらしています。象徴的なのが、乙部さん自身の移住です。彼が二宮町に拠点を移したことで、湘南地域や都市部から他の若手アーティストやクリエイターが少しずつ転入する動きも見られるようになりました。町内には、空き家を活用したギャラリーやカフェの開業など、新しい地域文化の芽が育ち始めています。
2022年のクラウドファンディングには全国から数百人が支援を寄せ、支援者の中には「完成した壁画を見に来た」「いつか二宮に住みたい」と語る人も現れました。こうした人々は、地域と継続的なつながりを持つ「関係人口」として、将来的な移住候補層ともなり得る存在です。
また、2023年以降、町の移住定住相談窓口には「アートのある町に住んでみたい」といった20〜30代からの問い合わせがわずかながら増加傾向にあると報告されています。高齢住民からは「若い人が描いた絵を見るのが日課」といった声も聞かれ、アートが世代間をつなぐコミュニケーションツールとして機能していることがうかがえます。
最新の統計でも、二宮町の人口減少率は緩やかになり、若年層の転入者数も横ばいから微増傾向に転じています。こうした流れは、ハードインフラによらず「アート」というソフトな取り組みによって、人々の心を動かし、新しい関係を築いた成果といえるでしょう。
官民連携が育むアートの町―二宮町の壁画プロジェクトの展開と成果
神奈川県二宮町で進行中の壁画アートプロジェクトは、行政主導ではなく、民間によるボトムアップ型のまちづくりとして注目されています。その柔軟性と自主性が、多様な主体の協働を呼び込み、町全体を巻き込んだ新しい地域創生のモデルへと発展しています。
民間発の草の根アクションから始動
このプロジェクトは、地元で活動する若手有志たちが中心となってスタートしました。なかでも、地元不動産会社「太平洋不動産」の店長であり「プリンス・ジュン」として知られる宮戸淳氏と、ニューヨーク帰りのアーティスト乙部遊さんの存在が大きな推進力となっています。彼らは町内の企業や商店主に直接働きかけ、空き壁面の提供を得て、壁画制作を実現してきました。
地元企業や商工会による後押し
プロジェクトには商工会や地元企業の積極的な協力も見られます。印刷会社や電気工事業者などが自社ビルの壁面を開放し、制作に必要な道具の提供や安全管理にも協力。地域資源を活かした共創体制が整いつつあります。
行政の広報支援と観光振興との接続
行政は当初静観していたものの、町おこしの観点から次第にプロジェクトを後押しするようになりました。町の公式SNSでは制作の様子が紹介され、観光協会も特設の「壁画マップ」を作成して来訪者向けの案内を開始。さらに、壁画イベントには町長や地元議員も激励に訪れ、官民を超えた協調の雰囲気が醸成されています。
住民との自然な関わりと支持
地域住民の反応も好意的で、制作現場にはお茶やお菓子の差し入れが届き、「うちの壁にも描いてほしい」と申し出る声も寄せられています。アートがまちの景観を彩るだけでなく、人と人との日常的な交流を生む媒介となっているのです。
成果:資金調達、メディア露出、地域連携
2022年にはクラウドファンディングを通じて目標額を達成し、その資金により新たな壁画が複数制作されました。この資金調達のプロセス自体がプロジェクトのPR効果を生み、新聞やテレビでは「商店街に若者が壁画で彩り」といった好意的な報道も多く見られました。
プロジェクトチームはさらに、町内の子ども食堂や高齢者施設と連携した壁画制作イベントも計画中です。これは単なる景観整備を超えて、福祉や教育分野とも接続し、アートの力で地域課題の解決を目指す実践的な試みです。
地域アイデンティティの醸成へ
こうした一連の活動は、町の文化的アイデンティティ形成にもつながっています。町内に増え続ける壁画は、地域資源として定着しつつあり、「菜の花とアートの町」としての認知も広がっています。住民の誇りや愛着も高まり、若者主体の取り組みが地方創生の現実的なモデルとなりつつあります。
このように、二宮町の壁画プロジェクトは、民間主導の柔軟な発想と、官民・世代横断の連携によって、町の新たな魅力と価値を創出する取り組みへと進化しています。アートを通じた地域づくりの好事例として、今後の展開にも注目が集まっています。
考察:共通点・成功要因と今後の課題
以上4つの事例から浮かび上がる共通点として、まず「アート」を核に人をつなげる仕組みが巧みに作られていることが挙げられます。瀬戸内・越後妻有の両芸術祭では、大規模イベントで観光客を呼び込むだけでなく、ボランティア組織(こえび隊・こへび隊)を通じて外部の若者と地元住民が協働する場を作りました。
前橋市や二宮町でも、小規模ながら学生や若手アーティストが参加・主体化できるプロジェクトを設計し、「参加すること自体が目的化」するような魅力を創出しています。アートという共通言語があることで世代や出身の異なる人々が交流し、新たなコミュニティやネットワークが生まれている点は4事例に共通します。これはまさに「関係人口」の創出につながるものであり、関係人口が増えることで将来的な移住・定住(人口社会増)につながる好循環が生まれています。
次に、若者目線での地域の魅力再発見という点も重要です。どの事例も当初、対象地域は過疎化や空洞化で「魅力不足」と言われていた場所でした。しかしアートプロジェクトを通じて、島々の風景や里山の暮らし、シャッター街のレトロ建築など、地元に眠る資源が新しい価値として掘り起こされました。若い来訪者はそうした地域資源に新鮮な感動を覚え、そこに可能性や面白さを見出すことで関わり続けたいと思うようになります。
実際、瀬戸芸で島の素朴な暮らしに触れた都市部の若者が移住を決意したり、前橋のリノベ街区を訪れた県外のクリエイターが「この街ならやりたいことができる」と感じ店舗開業に踏み切った例などは、アートが地域の魅力を翻訳する媒介となった好例でしょう。アートは時に言葉を超えて人の心に訴える力があります。それが地方の魅力発信と結び付いた時、若者の心を動かし「この土地でチャレンジしたい」「住んでみたい」という意欲を引き出すのです。
成功要因としては、官民の柔軟な連携と情熱的なリーダーシップも見逃せません。瀬戸内国際芸術祭や大地の芸術祭では、行政トップやアートプロデューサーによる強力な推進力がありましたが、一方で、特に大地の芸術祭では、2,000回を超える住民対話を重ねるなど、ボトムアップによる合意形成と信頼構築にも力が注がれました。こうした両輪のアプローチが、持続可能で地域に根差したアートイベントの成功を支えています。
前橋や二宮では、むしろ民間の若手リーダー(起業家やアーティスト)が先導し、行政が後からサポートに回る形で成果を上げました。いずれの場合も、従来の縦割りに囚われず地域の未来像を共有したチームづくりができたことが成功の鍵です。特に若者世代の声を活かし、企画段階から参画させている点は共通していました。
自治体職員にとっても、アートという異分野との協働は新しい発想を生み出す機会となり、前橋市職員のように自ら現場に飛び込む事例も出ています。このような人材育成の側面も長期的には大きな財産で、芸術祭を経験した地元の若者がその後地域振興の担い手として成長する好循環が生まれています。
一方、課題もあります。まず財政面・継続性の課題です。大型芸術祭は開催ごとに多額の資金を要し、自治体負担も大きいことから、いかに経済効果や定住促進効果を持続させるかが問われます。例えば瀬戸芸では来場者数は右肩上がりでしたが、コロナ禍で一時落ち込み、持続的な収益モデル確立が課題とされています。またボランティア任せの運営に依存しすぎると担い手の高齢化や疲弊も懸念されます。今後は関係人口の層を広げつつ、地域内に雇用を生む仕組み(例:アートガイド人材の育成や、クリエイティブ産業の誘致など)が必要でしょう。前橋市のような都市型ケースでは、不動産市況や景気変動に左右される面もあります。若者起業が増えても事業継続できるか、市場原理だけでなく支援策のフォローアップが求められます。
次に、地域住民との温度差への対応です。アートに関心がない層や恩恵を直接感じられない層にも配慮し、巻き込んでいく努力が不可欠です。十日町市では当初反対していた農家の人が芸術祭で訪れた若者と話すうちに理解を深め、自主的に作品作りを手伝うようになった例があります。こうした成功体験を積み重ね、「やって良かった」という住民側の実感を醸成することが持続のカギです。二宮町でも、今は好意的な声が多いものの、将来的に壁画が色褪せ管理が必要になった時に誰が責任を持つかといった課題も出てくるでしょう。その際には行政の関与や次世代への引き継ぎ策が求められます。
最後に、若者定着のその先を見据える必要もあります。若者が増えれば次は結婚・出産や世代循環のフェーズになります。学校の再開を果たした男木島では、今後子どもたちが成長する中で高校進学などで再び島を離れる問題にも直面します。せっかく根付いた若い世代が地域でキャリアを積み、ライフステージが変わっても住み続けられるよう、仕事や教育環境の整備といった総合的な地方創生策とアート活用策を組み合わせることが重要でしょう。
その他注目の芸術祭
市原アート×ミックス(千葉県)
「ICHIHARA ART × MIX(市原アート×ミックス)」は、千葉県市原市南部、小湊鉄道沿線の中山間地域や農村集落を舞台に、2014年から始まった地域型芸術祭です。第1回は2014年に開催され、2024年には第4回が開催され、トリエンナーレ形式で実施されています。これは、作品の準備や地域との丁寧な協働を重視するスタイルであり、一過性のイベントではなく、地域に継続的な文化的影響を与えることを目的としています。
都市近郊に位置しながら、過疎化・高齢化・空き家の増加といった地方と共通の課題を抱えるこの地域において、現代アートを通じた新たな地域活性化の可能性を探る先駆的な試みとして注目されています。総合ディレクターを務めるのは、大地の芸術祭や瀬戸内国際芸術祭も手がけた北川フラム氏で、空き家や農家、駅舎、廃校などを舞台に、地域の風景と生活に根ざした作品やイベントが多数展開されてきました。
この芸術祭の特徴は、単なる観光イベントにとどまらず、地域住民の主体的な関与と、アーティストとの協働による「共創のプロセス」が重視されている点にあります。作品制作や運営に市民が携わることで、地域の内側から文化の価値を再発見し、暮らしの延長線上にアートが存在するという独自の文化環境が形成されつつあります。また、芸術祭を契機として活用された空き家や廃校の中には、芸術祭終了後も恒久的なアートスペースや地域交流の場として運用されるケースもあり、通年型の文化拠点が誕生しています。
2014年の初回開催時には約17万人が来場し、地域の交通機関である小湊鉄道の利用客数も大きく増加しました。これは地域経済や観光業への波及効果をもたらすと同時に、住民と来訪者の新たなつながりを生む「交流人口」の創出にも寄与しています。都市と農村の中間領域にある市原市という立地条件を活かしながら、従来型の観光地ではない「無名の集落」に光を当てた点が、文化政策上も新しい意義を持つ取り組みとして評価されています。
世界銀行のレポートでは、この市原アート×ミックスを「都市近郊農村における持続可能な地域再生のモデル」として紹介しています。特に、住民の巻き込みによるボトムアップ型の文化事業であること、既存の資源(空き家・廃校・農村景観など)を活かして低コストで展開している点、イベント終了後も文化活動が継続するよう設計されている点が高く評価されています。また、都市からのアクセスが良い一方で、地域性を失わずに独自の文化を発信しているという点でも、他地域への応用可能性を持った事例とされています。
このように、ICHIHARA ART × MIXは、アートを介して「見過ごされてきた地域の価値」を浮かび上がらせ、住民と外部人材がともに新たな物語を紡ぐ文化的まちづくりの実践例として、国際的にも高い関心を集めています。
奥能登国際芸術祭(OKU-NOTO TRIENNALE)(石川県)
概要
開催地:石川県珠洲市(能登半島最先端に位置し、過疎化が進行する沿岸地域)
初開催:2017年
開催履歴:2017年、2021年(2020年から延期)、2023年
開催形式:3年に一度のトリエンナーレ(通年展示も一部あり)
総合ディレクター:北川フラム氏(瀬戸内国際芸術祭や大地の芸術祭なども手がける)
奥能登国際芸術祭は、石川県珠洲市全域を舞台とした国際芸術祭です。日本海に面し、里山・里海の自然と独自の生活文化が今も色濃く残るこの地において、空き家、廃校、漁港、海岸線などの地域資源を活かしたアート作品が展開されます。
都市部から遠く離れた「日本の最果て」とも形容される珠洲市において、本芸術祭はアートを媒介とした地域の再生と外部との新たな交流を目指す取り組みです。
2025年開催の見送りと今後の展望
2024年に発生した能登半島地震の影響により、奥能登国際芸術祭は本来予定されていた2025年の開催を見送ることが決定されました。
ただし、芸術祭そのものが「中断」されたわけではありません。常設アート作品を巡るバスツアーや、アーティストによるワークショップなどの関連事業は引き続き実施されており、芸術活動は継続しています。また、公式ウェブサイトでも「次回開催に向けて歩み続ける」との前向きなメッセージを発信する準備が進められています。
市の復興計画においても、奥能登国際芸術祭は「復興への光」と位置づけられており、珠洲市長は鎮魂や地域再生をテーマにしたアート制作の可能性についても検討を進めている旨を表明しています。
地域活性化の好事例とされた理由
1.「最果てのまち」への新たな来訪動機の創出
世界銀行のレポートでは、珠洲市のように地理的に孤立した地域において、芸術祭が新たな訪問の動機(destination appeal)を創出し、交流人口を増やした点が高く評価されています。特に、山・海・神社・村落といった地域資源を活かしたサイトスペシフィック*な作品群は、訪問者が地域と住民に直接触れ合う機会を提供し、観光地とは異なる地域独自の文化的体験を促進しました。
*芸術作品やプロジェクトの性質を表わす用語で、その場所に帰属する作品や置かれる場所の特性を活かした作品、あるいはその性質や方法を指す。(引用:サイト・スペシフィック – artscape)
2.地域の案内役として住民が果たす役割とその意義
芸術祭の運営では、住民が作品の案内やガイド役を担うなど、地域の文化や日常を来訪者に伝える取り組みが行われています。こうした活動は、住民にとって自らの地域の価値を再認識する契機となっており、報告書では、来訪者が地域を巡る中で住民と交流し、地域社会の理解を深める仕組みとして評価されています。
3.空き家・未利用施設の文化的転用
珠洲市では、芸術祭を契機に空き家や公共施設の遊休スペースが作品展示・宿泊施設・滞在制作拠点として再生されており、これは他地域にも適用可能な「低コスト型地域資源活用モデル」として紹介されています。
4.地域経済・雇用創出への波及効果
芸術祭期間中は、飲食・宿泊業だけでなく、作品設営や運営補助のための短期雇用、交通手配、ガイド業務など、多くの地元雇用が発生しました。また、2021年以降は地元高校との連携によるワークショップや、地元大学生のフィールド実習なども導入され、若者と地域をつなぐ新しいルートにもなっています。
5.震災からの文化的復興の一歩に
世界銀行のレポートでは、2024年元日に発生した能登半島地震に関連して、奥能登国際芸術祭を通じて築かれた人々のつながりが、珠洲市の復興を支える力となっていることが言及されています。こうした文化的交流は、物理的復旧を超えて、人と地域の関係性を再構築する重要な契機とされており、芸術祭が長期的な地域再生の礎となる可能性が示唆されています。
総括
奥能登国際芸術祭は、『日本でも最も孤立した地域の一つ』とされる珠洲市において、アートを通じて地域との交流や経済活性化、地域資源の再認識を促進した実践事例です。世界銀行はこの取り組みを、市民参加と芸術が協働する持続可能な地域再生のモデルとして評価し、他国の周縁地域でも応用可能なアプローチとして紹介しています。
北アルプス国際芸術祭(長野県)
概要
北アルプス国際芸術祭は、長野県大町市を中心に開催される地域密着型の芸術祭で、地域住民との協働によるサイトスペシフィック・アート(場所特有のアート)を通じて、文化・経済・社会の活性化を目指しています。
この芸術祭は、越後妻有アートトリエンナーレ(ETAT)や瀬戸内国際芸術祭などを手掛けてきた北川フラム氏によるディレクションのもとで開催され、地域資源の再発見や観光資源化、地域住民との共創を通じた持続可能なまちづくりをテーマにしています。
特徴
1.サイトスペシフィック・アートによる地域再生
北アルプス芸術祭では、アート作品が「場所」に根差しており、その土地の自然・歴史・文化・課題を反映しています。たとえば、空き家や旧校舎、自然景観などが作品の舞台となり、地域の空間資源の再活用を促します。
2.地域住民の主体的な参加
この芸術祭の最大の特徴のひとつが、地域住民の深い関与です。作品制作段階から住民の知恵や労働力を取り入れ、ワークショップや地域イベントの共同開催、ガイドボランティアなども活発に行われています。
3.経済波及効果と持続可能な仕組み
芸術祭は単なるイベントで終わらず、作品の一部は常設展示として地域に残され、通年の観光資源として活用されます。これにより、芸術祭の開催期間外でも来訪者を呼び込む効果があります。また、地元産品の販売や地域飲食店の連携により、地域経済への波及効果が見られます。
4.持続可能な地域社会の構築
アートを通じて地域に新たな価値観や視点を持ち込みつつ、少子高齢化や過疎化といった課題にもアプローチしています。アート作品や活動を通して、地域の魅力を再発見し、誇りを取り戻すきっかけとなっています。
他の芸術祭との共通点と違い
北アルプス国際芸術祭は、瀬戸内国際芸術祭や越後妻有大地の芸術祭と同様に地域再生を目的としたサイトスペシフィック・アートフェスティバルですが、その特徴は山岳都市・大町市の自然資源「水・木・土・空」をテーマに、単一自治体で実施されるコンパクトかつ密接な地域協働型の構造にあります。これに対し、瀬戸内芸術祭は島々を船で巡る観光性の高い広域連携型フェスティバルであり、越後妻有芸術祭は豪雪地帯の農村文化と密着し「人間は自然の一部である」という理念に基づく長年の地域共創型モデルが特徴です。北アルプス芸術祭は比較的新しく、今後の発展を目指す段階にあり、常設展示や通年活用を通じて持続可能な地域文化の構築に取り組んでいる点が大きな違いです。
まとめ
アートを核にした地域活性化の事例からは、「人を惹きつける場づくり」「若者に役割と出番を与える」「地域資源の新たな価値化」といった普遍的な成功要因が見えてきます。地域が実践できるヒントとして、まず小規模でも良いので地域の特色を活かしたアートイベントやプロジェクトを興し、外から人を呼び込みつつ地元の若者を巻き込むことが挙げられます。
その際、行政・民間・住民が対話を重ね協働体制を築くこと、そして関わった人が「楽しい」「また参加したい」と思える仕掛けを用意することが肝要です。幸いアートは自由度が高く、予算規模に応じて柔軟に企画できます。例えば商店街のシャッターアート、学校跡地でのアートフェス、オンラインと連動したデジタルアート企画など、地域の実情に合った形で始められるでしょう。
また、本記事で紹介した事例はそれぞれ独自の発展を遂げていますが、共通して「若者が活躍できる場」を創出した点が地域にもたらすインパクトは大きいことが分かります。若者は未来の担い手であり、彼らが地域で自己実現できる環境を整えることが地方創生の近道です。アートはその呼び水となり、よそ者と言われるイノベーターたちを地域に引き寄せる力があります。今後は、紹介したような成功モデルを横展開しつつ、それぞれの地域ならではの文化や歴史と融合させた新たなアートプロジェクトが各地で生まれることが期待されます。
地域に根差したアートイベントは決して一朝一夕で成果が出るものではありません。しかし、瀬戸内海の小さな島々に子どもの笑顔を取り戻した10年の物語や、豪雪の里山に世界中から人々が集い続けて20年経った現実が示すように、その持続的な取り組みは着実に地域を変えています。「アートによる地方創生」はもはや一過性のブームではなく、若者人口を増やし地域を再生する有力な手法の一つとして定着しつつあります。重要なのは、そこから得られたエネルギーを地域の日常の営みや今後のまちづくりにどう繋げていくかです。行政はぜひ柔軟な支援策で民間の創意を後押しし、民間は行政や住民との協働を恐れずに挑戦していってほしいと思います。
地方に暮らす一人ひとりが主役となり、アートを媒介に新しい価値を創造していくーそんな未来が各地で実現すれば、日本全体の地域活性化にも大きな波及効果が生まれるでしょう。今回紹介した事例の経験と教訓が、これから地方創生に取り組む方々にとって少しでも参考になれば幸いです。地域の魅力を再発見し、若者が集い笑顔あふれるまちをつくるヒントが、アートの中にきっと見つかるはずです。