人気の道の駅には、成功のヒントが詰まっている——。
全国に1,200か所以上ある道の駅。その数は年々微増し、地域振興の拠点として定着してきましたが、すべてがにぎわっているわけではありません。
では、なぜ一部の道の駅だけが人気を集め、成功事例として注目されているのでしょうか?
今回は、そんな道の駅の魅力と、成功のポイントに迫ります。
道の駅の成功に共通する経営戦略
多くの人で賑わう人気の道の駅には、いくつかの共通した成功法則があります。個別の事例を見る前に、まずはその根底にある経営戦略のポイントを理解しておきましょう。
1.地域資源を活かした明確なコンセプト設定
成功している道の駅は、例外なく「ここでしか体験できない価値」を持っています。そのために不可欠なのが、地域の資源を最大限に活かした明確なコンセプト設定です。
例えば、その土地ならではの特産品、美しい景観、受け継がれてきた文化や歴史などを深く掘り下げ、「この道の駅は〇〇が日本一楽しめる場所だ」と断言できるような、強力なコンセプトを打ち立てることが成功の第一歩となります。曖昧なコンセプトでは、他の多くの施設の中に埋もれてしまいます。
2.体験価値を高める施設リニューアル
近年、消費者のニーズはモノの所有からコトの体験へとシフトしています。道の駅も、単に商品を売る場所から、楽しい時間を過ごす場所へと進化することが求められています。
成功事例の多くは、施設のリニューアルを機に、この「体験価値」を劇的に向上させています。美味しいグルメが楽しめるレストラン、子どもが夢中になる遊び場、絶景を眺めながらくつろげるカフェ、地元の文化に触れられる体験工房など、わざわざ訪れたくなる魅力的な体験を用意することが、リピーターを増やし、滞在時間を延ばす鍵となります。
3.SNSとイベントを組み合わせた集客施策
どれだけ魅力的な施設を作っても、その存在が知られなければ意味がありません。現代の集客において、SNSの活用は必須です。
成功している道の駅は、InstagramやX(旧Twitter)などで施設の魅力を継続的に発信し、ファンを増やしています。さらに、オンラインでの情報発信と連動させ、実際に足を運んでもらうためのイベントを定期的に開催しています。季節の収穫祭、地域のお祭りとの連携、人気キャラクターとのコラボレーションなど、ターゲット顧客が「行きたい」と思うような企画を打ち出すことで、安定した集客を実現しています。
道の駅の成功事例
近年、道の駅は単なる休憩スポットにとどまらず、「体験型」施設として進化を遂げています。画一的なスタイルではなく、それぞれの地域資源や文化を活かした、個性豊かな道の駅が注目を集めています。ここでは、そうした地域ならではの魅力を発信し、成功を収めている事例をご紹介します。
1.群馬県川場村「川場田園プラザ」|全国が注目する“体験型”道の駅
群馬県川場村の豊かな自然に抱かれた「川場田園プラザ」は、旅行情報誌『じゃらん』が実施した「全国道の駅グランプリ2025」および「もう一度利用したい道の駅ランキング2025」で、いずれも第1位を獲得するという栄誉に輝きました。単なる休憩施設にとどまらず、「訪れること自体が旅の目的となる」道の駅として、全国から高い評価と注目を集めています。
道の駅川場田園プラザは、群馬県利根郡川場村、武尊山(ほたかやま)の麓に広がる自然豊かな環境に位置しています。そのコンセプトは「一日中遊べて、美味しいモノがいっぱいのタウンサイト」。単なる道の駅ではなく、食・体験・買い物が融合した滞在型の一大複合施設として、多くの来訪者を惹きつけています。
年間利用者数 | 年間売上高 |
250万人(2022年) | 25億円(2022年) |
道の駅川場田園プラザはどのようなところ?
道の駅川場田園プラザは、広大な敷地の中に様々な施設が点在し、子どもから大人まで楽しめる工夫が凝らされています。
◆自然豊かなロケーション:
武尊山の麓という美しい自然に囲まれた環境で、四季折々の風景を楽しむことができます。
◆「田園プラザ」というコンセプト:
一般的な道の駅とは異なり、まるで小さな村のような、テーマパークのような雰囲気を持っています。各施設が独立した建物として配置され、散策するだけでも楽しめます。
◆多彩なグルメと特産品:
川場村では、訪れる人々に多彩な魅力を提供しています。
まず、ファーマーズマーケットでは、地元で採れた新鮮な野菜や果物が並びます。中でも、川場村産のブランド米「雪ほたか」は、その美味しさと品質の高さから非常に人気を集めています。
また、レストラン・飲食店も充実しており、地ビールを味わえるレストランや、自家製ハム・ソーセージを提供するミート工房、焼きたての香ばしいパン工房、風味豊かなそば処、素材にこだわったイタリアンレストラン、落ち着いた雰囲気のカフェ、そして濃厚なソフトクリームを楽しめる店など、バラエティ豊かなグルメ体験が楽しめます。
さらに、オリジナル商品も豊富に揃っており、川場村の食材を活かしたのむヨーグルトやチーズ、手作りのアップルパイなどは、観光客にとって魅力的なお土産としても好評です。
◆体験・レジャー施設:
川場村では、グルメや特産品だけでなく、体験型のレジャーや癒しのスポットも充実しています。
まず、子どもたちに人気なのがプレイゾーンです。自然の地形を活かしたアスレチックパークが整備されており、思いきり体を動かして遊べる場として家族連れに好評です。
また、陶芸体験教室では、電動ろくろを使った本格的な陶芸にチャレンジできます。初心者でも気軽に参加できる内容で、年齢や経験を問わず多くの人々に親しまれています。
さらに、道の駅から少し足を延ばすと、日帰り温泉『望郷の湯』があります。広々とした温泉施設で、旅の疲れや日常のストレスをゆったりと癒すことができます。
季節ごとの自然体験としては、ブルーベリーが旬を迎える時期には、無料でブルーベリーの摘み取り体験ができ、自然とふれあいながら季節の恵みを満喫することができます。
道の駅川場田園プラザはなぜ人気があるの?
道の駅川場田園プラザがこれほどまでに人気を集める理由は、その「一日中滞在できる魅力」と「地域資源を最大限に活かした運営」にあります。
◆「道の駅」を目的地とする観光ニーズの創出:
1.目的地そのものとしての魅力が圧倒的です。グルメ、ショッピング、遊び、体験、リラックスと、多様なニーズに応える施設が複合的に展開されており、平均滞在時間が3時間と非常に長いことからも、その満足度の高さがうかがえます。
2.農業プラス観光の継続的な取り組みが評価され、道の駅としては初めて観光庁長官表彰を受賞しています。
◆圧倒的な地産地消と高品質な地元食材:
1.川場村の豊かな自然が育んだ新鮮な農産物や、地元産のブランド肉、そして特産品を活かした加工品が豊富に揃っています。特にブランド米「雪ほたか」は全国的にも有名で、これを求める来場者も少なくありません。
2.地元の食材を活かした多様な飲食店があり、ここでしか味わえないグルメ体験ができます。
◆優れた環境と風景:
1.武尊山の麓に広がる田園風景とマッチした空間構成が、訪れる人々に非日常感と癒しを与えます。「優れた環境・風景」が、道の駅を選ぶ理由のトップに挙げられることも多いです。
2.各施設がゆったりと配置されており、混雑時でも窮屈さを感じにくい設計になっています。
◆多様な世代が楽しめる施設構成:
1.子どもが思い切り遊べるアスレチックや芝生広場があるため、家族連れに大人気です。
2.新鮮な食材や特産品を求めるシニア層、美味しいグルメや体験を楽しむカップルなど、幅広い年齢層のニーズに対応しています。リピーターが非常に多く、年間来場者数もトップクラスなのは、この多様なニーズへの対応力が高い証拠です。
◆地域一体となった村おこし:
1.川場村自体が「道の駅川場田園プラザ」を核とした村おこしに力を入れており、行政と住民が一体となって道の駅を盛り上げています。これにより、常に新しい魅力が生まれ、来場者を飽きさせない工夫がされています。
2.地元の人々の働きがいにも繋がり、地域経済の活性化にも貢献しています。
これらの要素が複合的に組み合わさることで、道の駅川場田園プラザは単なる休憩施設や物産販売所を超え、訪れる人々に特別な体験と感動を提供する、全国的にも稀有な「レジャー施設型道の駅」としての地位を確立しています。
川場田園プラザが成功した理由|“地方の直売所”を超えたフードリゾートの革新力
川場田園プラザは、地方の直売所という枠を超え、「プレミアムな体験価値」を提供するフードリゾートとして独自の地位を確立しました。その背景には、顧客体験を軸とした商品・空間設計、都市型トレンドの巧みな取り入れ、そして地域経済と連動した戦略的な経営があります。
ここでは、川場田園プラザの具体的な取り組みと成果をご紹介します。
視点 | 具体的な取り組み・特徴 | 成果につながったポイント |
①顧客体験を最優先する経営姿勢 | -社長の永井彰一氏が自ら厨房に立ち、客の表情・残食を観察して商品をブラッシュアップ-従業員を東京ディズニーランドへ視察に連れて行き、「おもてなし」を徹底教育 | “地元の直売所”ではなく“テーマパーク型フードリゾート”として記憶に残る体験を提供 |
②地元食材×プレミアム化 | -ブランド米「雪ほたか」+大和芋のふわとろ食パン、生乳を搾った直後に作るブッラータ、蜂蜜たっぷりプレミアムヨーグルト…-産直野菜も「高級スーパー並み」の品質とディスプレー | 「地産地消の押し売り」ではなく、“都会の美食家も買いたくなる一流商品”へ昇華 |
③都市の最先端トレンドをローカルに移植 | -銀座やLAの人気店を継続的にリサーチ-ベーカリーやファーマーズマーケットの売場設計・パッケージを高級デパ地下仕様に | 訪問客の約7割が県外から。首都圏の消費者が違和感なく財布を開くデザインと言語を実装 |
④滞在型・回遊型レイアウト | -東京ドーム1.5倍の広大な敷地に飲食・物販・体験施設を20棟以上配置-無料ブルーベリー園や大型プレイゾーンで「一日滞在」を誘発 | グループ客と家族客が“はしご消費”し、客単価も滞在時間も伸長 |
⑤リーダーシップと組織改革 | -赤字再建時に「商品は社長試食・承認制」という強権発動- ゴミ拾い・挨拶徹底など意識改革 | 10年で売上5億→20億円、経常赤字→黒字化という劇的V字回復 |
⑥地域経済との好循環 | -農家が自ら包装・商品開発に挑戦し、年間約5億円を農家に還元-「磨けば光る宝石=地域資源」という理念を共有 | 村外の消費マネーを地元に循環させ、村ぐるみで品質を底上げ |
まとめ
川場田園プラザは「田舎の直売所」から脱皮し、“地方産品をプレミアム体験として編集・演出する場”へ転換したことで、年間190万人・年商20億円という圧倒的集客を実現しました。
1.顧客視点での徹底したUX設計と都会の嗜好を先取りした商品づくりが、遠方からのリピーターを生む原動力。
2.リーダーの強烈なビジョンとマネジメントが組織を変え、地元農家を巻き込むエコシステムを構築。
これらが相乗効果を生み、「プレミアム道の駅」という新市場を開拓したことが成功の核心といえます。
2.道の駅まえばし赤城(群馬県前橋市)|多機能かつ地域密着型の施設づくり
道の駅まえばし赤城は、2023年3月に群馬県前橋市にオープンした大型の道の駅で、「日本一市民に愛される道の駅」という明確なコンセプトのもと、多機能かつ地域密着型の施設づくりを進めてきました。従来の「休憩所」「直売所」という枠を超え、食・癒し・遊び・体験をトータルで提供する複合型レジャースポットとして、多くの来訪者を魅了しています。
年間利用者数 |
440万人(23年度) |
人気を集める主な理由
1.充実の複合施設がワンストップで楽しめる
温浴施設「まえばし赤城の湯」は、道の駅としては珍しい本格的な日帰り温泉。塩化物泉の湯質で、車中泊や長距離ドライブの疲れを癒す利用者が多く見られます。
手ぶらBBQ・デイキャンプでは、アウトドアメーカーと提携した設備が整っており、気軽に自然体験ができると特にファミリーや若年層から好評です。
大型遊具・ドッグランの整備された芝生広場は、子ども連れのファミリーやペット連れにも人気。大人向けの健康遊具もあり、幅広い層に対応。
前橋赤城鮮魚センターでは、内陸県でありながら新鮮な魚介類が手に入る点が地域外からの来訪者にも好評です。
2.地産地消とオリジナル商品が生む価値
農畜産物直売所「あかぎ・de・マルシェ」では、赤城山麓の農畜産物がずらりと並び、生産者との「つながり」を意識したライブ感のある売り場が展開されています。
オリジナル商品の開発力も注目ポイント。前橋産麦豚を使った「豚まん」や「手作り餃子」、赤城山麓の生乳を使った「特濃のむヨーグルト」、温室栽培の「まえばしバナナ」など、ここでしか手に入らない商品が話題を呼んでいます。
3.地域交流のハブとしての機能
年間50件以上のイベント開催により、道の駅を単なる施設ではなく地域コミュニティの場として活用。季節フェアや体験型イベント、バスツアーなどが継続的に開催されています。
市民ワークショップなどの参加型の施設づくりが、地域住民の高い愛着と支持を育んでいます。
4.優れた立地とアクセス性
関越自動車道・駒寄スマートICから至近で、草津や伊香保、赤城山といった観光地へのアクセス拠点として利便性が高く、県内外からの来訪がしやすい立地です。
499台収容可能な広大な駐車場を備えており、週末の混雑時でもストレスなく立ち寄れるのも魅力の一つです。
まとめ|地域と観光をつなぐ新たなハブ
道の駅まえばし赤城は、「地域の価値を見せる場」であると同時に、「訪れる人がまた来たくなる場所」として高く評価されています。観光客にとっては発見と癒しのある立ち寄りポイント、地域住民にとっては日常的に訪れる拠点。そんな双方向の魅力が、人気の大きな理由となっています。
3.道の駅 保田小学校:廃校をリノベーションした複合型道の駅
道の駅 保田小学校は、千葉県鋸南町に位置する旧保田小学校の校舎を再活用した、全国的にも稀有な事例です。126年の歴史を持つ同校は2014年に閉校となり、翌2015年12月、「都市交流施設」として新たなスタートを切りました。施設は、観光案内所・レストラン・宿泊施設・直売所・温浴施設など多機能を備えた複合型であり、地域住民と都市部からの来訪者が交差する「地域交流のハブ」として機能しています。
年間来場者数 | 年間売上高 |
70万人超(令和6年度(2024年4月–2025年3月) | 922,379千円(令和6年度(2024))前年比+26% |
・コロナ禍後の急回復
売上はR2→R3に約25%増、来場者も65万→70万超と伸びており、施設拡張(2023年10月の「附属ようちえん」開業)と観光回復が追い風になっています。
・テナント比率の拡大
売上増の主因はテナント・直売所部門。R6年度は売上9.2億円のうちテナント分が約2.75億円で、前年より60%以上伸びています。
・目標100万人に向けて
町は2022年時点で「年間100万人集客」を掲げており、直近の70万人超はその7割達成。追加のイベント計画(R7事業計画)も公表されています。
施設と特徴
主な施設と特徴は以下の通りです:
- きょなん楽市(旧体育館):地元農水産物、花卉、特産品などを広く取り扱うマルシェ
- 里山食堂・ピザ工房など飲食施設:教室を改装した店舗で、給食メニューや地元食材の定食が楽しめる
- 学びの宿(宿泊施設):教室の面影を残した客室に泊まる体験型宿泊施設
- 里の小湯(温浴施設):日帰り利用可能な入浴サービスを提供
- 子どもひろば・保田小附属ようちえん:親子連れにも配慮した遊び場
その他設備:フリーWi-Fi、ドッグラン、RVパーク、授乳室、オリジナルグッズ販売など
このように、「買う」「食べる」「泊まる」「遊ぶ」すべてが一か所で体験できるインフラは、都市と農山漁村の交流促進に大きく寄与しています。
取り組みと成果
廃校舎を丸ごと再生した道の駅保田小学校は、“懐かしさ”と“最先端”を掛け合わせたユニークな地方創生モデルです。ここでは、施設を支える7つの取り組みをご紹介します。
No | 施策 | 内容・ポイント |
1 | 廃校アップサイクル | 校舎・体育館・備品を可能な限り再利用し、資源循環とノスタルジーを両立。視察が全国から続く。 |
2 | 都市×農漁村交流拠点 | 旧体育館を直売所「きょなん楽市」に改装し、約250軒の生産者が出荷。年間来場者は70万人超。 |
3 | 子育て&ワーケーション強化「保田小附属ようちえん」 | プレイカフェ/授乳室/コワーキング/RVパークを新設し、ファミリー層とデジタルノマドを同時に取り込む。 |
4 | 健康コミュニティづくり | 毎朝のラジオ体操、校歌チャイムで旅行者と住民が自然に交流。優良団体表彰も受賞。 |
5 | 滞在型観光メニュー | 教室宿泊「学びの宿」、給食風ランチ、日帰り浴場など“学校体験”を商品化しリピート率向上。 |
6 | 防災・エネルギー拠点化 | 指定緊急避難場所。太陽光+自家発電を備え、2019年台風では100人を受け入れた実績。 |
7 | イベント&情報発信 | 開校記念祭・花フェア・ギャラリー展示など年間通じて催事を実施し、SNSで発信して滞留時間を延伸。 |
まとめ
1.SDGs×地方創生の好例
廃校活用・再エネ・循環型デザインを組み合わせ、公共施設再生のロールモデルとして行政・民間双方から注目されています。
2.“交流”を経済に転換
地元生産者が直接収益を得られる仕組みと60人超の雇用創出により、地域経済を実質的に押し上げています。
3.ユーザー体験を徹底
「泊まれる教室」「懐かしの給食」など“学校ならでは”の体験価値がリピートとSNS拡散を促進。
4.拡張と持続へ
2023年の附属ようちえん開業で面積が約2.3 haに拡大し、2025年度は多言語案内・キャッシュレス化・ソーラーカーポート導入を計画。
これら7本の柱が相乗効果を生み、年間70万人超の来場と年商9億円超)という成果につながっています。
SNS戦略と情報発信力:ビジュアル訴求による爆発的拡散
道の駅保田小学校が爆発的な注目を集めるに至った背景には、徹底されたSNS発信戦略があります。特にFacebookやYouTubeといったプラットフォームを通じて施設の魅力を可視化・共有する取り組みが効果を発揮しました。
キーポイントとなるSNS訴求コンテンツ
◆「泊まれる学校」という非日常体験:
宿泊施設「学びの宿」では、黒板・学習机・下駄箱などがそのまま残されており、かつての教室に泊まるという体験が提供されています。この非日常性がユーザーによるSNS投稿を誘発し、「まるで修学旅行のよう」といった共感を集めました。
◆ノスタルジーを刺激する「給食メニュー」:
給食風プレートで提供されるソフト麺やミルメークなどのメニューは、30代〜50代のユーザーにとって懐かしさを喚起するフックとなり、InstagramやX(旧Twitter)での拡散に繋がりました。
◆視覚的に映えるフォトスポット:
昭和レトロな校舎外観や、ランドセル型のどら焼き、AR機能付き二宮金次郎像など、撮影映えするコンテンツが随所に配置されており、投稿の動機づけに貢献しています。
◆マスメディアとの連携によるメディアミックス効果:
開業当初からテレビ番組や旅行雑誌でも積極的に取り上げられ、SNSとオフラインメディアが相互に話題を増幅する好循環が成立しました。
このように、体験価値×ビジュアル映え×メディア露出の三位一体によって、「道の駅保田小学校」はSNS上で高いブランド認知を確立し、年間約100万人もの集客に成功しています。
ビジネス的インサイト:地方創生と持続可能な観光資源化
本施設の運営は単なる観光施設ではなく、以下の点で極めて優れた地方創生モデルとして注目されます。
◆廃校再利用による社会的資源の活用
◆地域農水産業との連携を通じた地産地消の促進
◆都市住民との継続的な接点創出
◆SNS活用による持続的なPRと集客
こうした取組は、他の自治体や地域企業にとっても再現可能な成功モデルとなり得ます。
4.道の駅むなかた【福岡県宗像市】|九州の道の駅屈指の売上
道の駅むなかたは、福岡県宗像市にある国道495号沿いの道の駅で、2008年4月12日に開業しました。九州の道の駅の中でも有数の売上を誇り、地元宗像の海の幸、山の幸が豊富に揃うことで知られています。
年間来場者数 | 年間売上 |
170万人(2023年度) | 約20億円(2023年度) |
概要
◆物産直売所:宗像で獲れた新鮮な魚介類や宗像地区で採れた野菜、加工品、工芸品などが販売されています。特に鮮魚コーナーは人気です。
レストラン「おふくろ食堂はまゆう」:地元の食材を使った食事が楽しめます。海鮮丼や玄海茶漬けセットなどが人気です。
◆米粉パン工房「姫の穂」:宗像・福津産の米粉を使用した、しっとりモチモチ食感のパンが人気です。
◆宗像観光おみやげ館:宗像や福岡県、近隣のお土産品が揃っています。
◆その他広大な芝生広場、くつろぎホール・展望デッキ、キッズスペース、EV充電器、無料Wi-Fi、RVパークなども完備されています。
◆2024年9月には観光情報コーナー・レンタサイクルステーションなどを備えた「観光ステーション むなたびラボ」もオープンしました。
特徴
◆地域に根差した「地産地消」を推進し、宗像の恵まれた自然の産物を直接販売することで、高い鮮度と品質を保っています。
◆地域の観光情報発信や、癒やしの空間提供にも力を入れています。
◆JAF会員が選んだ九州・沖縄イチオシの道の駅グランプリ2022で3部門と県別総合投票数でグランプリを獲得するなど、評価が高いです。
人気の理由
道の駅むなかたが人気を集める理由はいくつかあります。
1.圧倒的な鮮度と豊富な品揃え
宗像は海と山に囲まれた豊かな自然があり、農業と水産業が盛んです。宗像漁協は県内有数の水揚げ量を誇り、その日の朝に水揚げされたばかりの新鮮な魚介類が、漁師さんによって直接運び込まれ、店頭に並びます。
農産物も同様に、地元の農家さんが採れたての野菜や果物を持ち込むため、非常に新鮮で安全・安心な商品が手に入ります。
商品によっては、魚の締め方(野〆か活〆か)まで分かるラベルを貼るなど、品質へのこだわりが徹底されています。
物産直売所は活気に満ちており、買い物をするだけでも楽しめる空間です。
2.地元食材を活かした美味しいグルメ
併設されたレストラン「おふくろ食堂はまゆう」では、獲れたての魚介類を使った海鮮丼や、地元の米を使った定食など、宗像ならではの味が楽しめます。漁師料理や農家料理をコンセプトにしたメニューも豊富です。
米粉パン工房「姫の穂」のパンも、地元産の米粉を使用しており、しっとりもちもちの食感が好評です。
3.利便性の高い立地と充実した施設
玄界灘を一望できるロケーションの良さも魅力の一つです。
広々とした駐車場、24時間利用可能なトイレ、情報コーナー、キッズスペースなど、利用者が快適に過ごせる設備が充実しています。
SDGsの取り組みとして、フードロス対策にも積極的に取り組んでいます。
4.地域との連携と賑わい創出
道の駅むなかたは、出品者である漁師や農家との連携を重視し、「出品者と運命共同体」と位置づけています。これにより、常に新鮮で高品質な商品が提供されています。
地域全体を盛り上げるためのイベント開催や情報発信にも力を入れ、単なる休憩施設以上の、地域の交流拠点としての役割を果たしています。
これらの要素が複合的に作用し、道の駅むなかたは多くの観光客や地元住民に愛される人気の道の駅となっています。
5.あ・ら・伊達な道の駅(宮城県大崎市)
あ・ら・伊達な道の駅は、宮城県大崎市岩出山にある道の駅で、2004年4月にオープンしました。国道47号線沿いに位置し、世界農業遺産に認定された「大崎耕土」の豊かな恵みを受けた食材と、東北地方の玄関口という立地を活かした魅力的な施設として、常に全国の道の駅ランキングで上位に名を連ねる人気スポットです。
年間来場者数 | 年間売上高 |
3,004,337人(令和5年度) | 約17億円 |
概要
あ・ら・伊達な道の駅は、「地域の顔」「地域の情報拠点」をコンセプトに、単なる物産販売所や休憩施設にとどまらない多様な機能を持っています。
◆豊富な農産物・特産品:世界農業遺産「大崎耕土」で育まれた新鮮な農産物(野菜、果物、米など)が豊富に並びます。特に米どころ宮城ならではの「だて正夢」「ひとめぼれ」などのブランド米も購入できます。
◆季節ごとの旬の食材が並び、特に秋には新米、冬には大崎産のネギなどが人気です。
◆多彩な加工品・お土産:宮城の特産品を使った加工品(味噌、醤油、漬物など)やお菓子、地酒などが充実しています。特に、道の駅オリジナルの商品も多く、お土産選びに最適です。
◆バラエティ豊かな飲食店:
*フードコート:地元の食材を使った軽食や定食、麺類などが楽しめます。
*パン工房:焼きたてのパンが人気で、種類も豊富
*ソフトクリーム:地元産の牛乳を使ったソフトクリームは定番の人気商品です。
*ロイズ(ROYCE’)直営店:北海道の有名チョコレートメーカー「ロイズ」の直営店が道の駅内に併設されているのが最大の特徴の一つで、常に多くのお客さんで賑わっています。限定商品なども販売されています。
◆情報発信・休憩機能:
*観光情報コーナーでは、大崎市や宮城県内の観光情報を発信しています。
*広々とした休憩スペースやトイレ、授乳室なども完備されており、ドライブ中の休憩スポットとしても快適です。
◆屋外施設:
*広場や、季節によってはイベントが開催されるスペースもあります。
*EV充電スタンドも設置されており、電気自動車での利用も便利です。
何故人気があるのか?
あ・ら・伊達な道の駅が全国的な人気を誇る理由は、いくつかの要因が複合的に作用しています。
1.「ロイズ(ROYCE’)」直営店の存在:
これは他の道の駅にはない最大の特徴であり、最大の集客力となっています。北海道以外では珍しいロイズの直営店があることで、ロイズの商品を求める人々が、道の駅を目的地として訪れます。特に北海道物産展などでしか購入できない商品を常時購入できる点が非常に強い魅力です。
2.圧倒的な「地産地消」と高品質な地元食材:
世界農業遺産に認定された「大崎耕土」は、肥沃な土地と豊かな水に恵まれ、高品質な農産物が生産されています。道の駅では、その日の朝に収穫されたばかりの新鮮な野菜や果物、そして宮城のブランド米などが豊富に並び、消費者からの信頼と人気を集めています。
地元の生産者が直接持ち込むため、鮮度が抜群で、安全・安心な食材を手に入れることができます。
3.東北地方の主要道路沿いという立地:
国道47号線沿いにあり、東北自動車道古川ICからも比較的近い位置にあるため、東北地方を周遊する観光客や、仙台方面から山形方面へ向かう際の休憩・立ち寄りスポットとして非常に便利です。交通量の多い幹線道路沿いであることも、来客数の多さに繋がっています。
4.豊富な品揃えと魅力的なオリジナル商品:
農産物、加工品、お土産、惣菜、パン、スイーツなど、品揃えが非常に豊富で、買い物をする楽しさがあります。
地元の食材を活かした道の駅オリジナルの加工品やスイーツなども開発されており、ここでしか買えない限定感も人気を後押ししています。
5.清潔感と快適な施設:
施設全体が清潔に保たれており、快適に利用できる環境が整っています。広々とした駐車スペースも確保されており、利用者にとってストレスが少ない点も評価されています。
これらの要因が組み合わさることで、あ・ら・伊達な道の駅は、単なる休憩場所や物産販売所にとどまらず、「ロイズの買い物」を目的としたり、「新鮮な地元食材」を求めたり、「ドライブ途中の立ち寄り」を楽しんだりする、多様な目的を持った人々を惹きつけ、全国有数の人気道の駅としての地位を確立しています。
6.栃木県益子町「ましこ」|地域文化と現代デザインが融合
益子焼のふるさとに佇む美しい道の駅
道の駅「ましこ」は、焼き物の里として知られる栃木県益子町にあります。古くは江戸時代から陶器の産地として栄えてきたこの地域の象徴ともいえる益子焼をテーマに、地域文化と現代デザインが融合した施設です。
この施設は、建築家ユニット「マウントフジアーキテクツスタジオ」(原田真宏・原田麻魚)が手がけたもので、3つの大きな三角屋根が特徴的。これは周囲の山々の稜線に呼応するようにデザインされており、自然の風景に美しく溶け込んでいます。
年間来場者数 | 年間売上高 |
799千人(令和6年4月1日~令和7年3月31日) | 912,075千円(令和6年4月1日~令和7年3月31日) |
「土のおもてなし」を建築で体現
建物の内装には、町のシンボルである陶土(益子焼の原材料)が壁に使用され、まるで「土から建物が生えてきた」ような印象を与えます。これは「町のアイデンティティを表現したい」という当時の町長の思いを具現化したもの。
さらに、構造材には地元・栃木県産の八溝杉が使用されており、地域の林業にも貢献。左官職人による丁寧な仕上げが随所に施されていて、益子の手仕事文化と持続可能なまちづくりへの姿勢が建物そのものに表れています。
伝統と新しさが共存するマーケット&カフェ
施設内の「マルシェ」では、地元農家の新鮮な野菜をはじめ、地元食材を使った手作りの加工品が並びます。なかでも人気なのが、益子町の「薄場養鶏場」の卵を使った名物スイーツ「とろたまぷりん」です。併設のレストランでは、四季折々の地元食材を活かした料理を、益子焼の器で楽しむことができます。見た目も味も「ましこ」ならではのもてなしが感じられる、特別な食体験です。
地域の伝統文化を現代的なセンスで再構築し、新たな魅力を発信することで、従来のファン層だけでなく、デザインやアートに関心のある若い世代の集客にも成功しています。
7.静岡県伊東市「伊東マリンタウン」|一大リゾート施設
静岡県伊東市にある「伊東マリンタウン」は、道の駅の枠を超えた一大リゾート施設として成功しています。相模湾に面したカラフルな建物群が特徴で、地元の海産物が味わえるレストラン街、お土産が充実したショップ、海を眺めながら入れる日帰り温泉、遊覧船乗り場まで備わっています。
マリーナも併設されており、クルージングの拠点にもなっています。「海」をテーマにした多様な楽しみ方を総合的に提供することで、観光客の滞在時間を延ばし、地域全体の経済効果にも大きく貢献している経営モデルです。
年間来場者数 | 年間売上高 |
約210〜220万人/年(平均値(2001〜2024)) | 6.98億円(令和5年度(2023)) |
8.京都府京丹後市「丹後王国「食のみやこ」」
京都府京丹後市にある「丹後王国「食のみやこ」」は、西日本最大級の面積を誇る滞在型道の駅です。その名の通り「食」を一大テーマに掲げ、地元の食材をふんだんに使ったレストランやカフェ、自家製ソーセージや地ビールを製造する工房、パンやスイーツの専門店などが集結しています。
さらに、動物とのふれあい牧場やゴーカートなどのアトラクション、宿泊施設まで完備しており、食のテーマパークさながらの空間が広がっています。明確で強力なコンセプトを軸に、多様な施設を展開することで、幅広い年齢層が一日中楽しめる場所として確固たる地位を築いています。
年間来場者数 |
20万人台(2023年) (コロナ前(2015-19)で約37-53万人) |
地域のにぎわいを取り戻す──丹後王国「食のみやこ」の挑戦と成果(令和5年度)
令和5年度、丹後王国「食のみやこ」は、ポストコロナの観光・交流需要の回復を受けて、地域活性化の拠点として多様な施策を展開しました。平成27年のリニューアル以来掲げてきた「本物の食の体験」「10次産業化の推進」「観光のゲートウェイ」の3つのコンセプトを軸に、イベント開催や教育連携、施設整備など幅広い事業を実施。来園者数の回復や地域とのつながりの強化など、着実な成果が見られた1年となりました。
<取り組みと成果一覧>
区分 | 主な取り組み内容 | 主な成果・数値 |
地域交流イベントの実施 | -春の「いちごフェア」、夏の「サマーフェスタ」など食をテーマにしたイベント開催- ドッグランフェスタや防災キャンプ教室など体験型イベントの実施 | -延べ来園者数:約70,712人(前年度比+約1.5万人)-防災キャンプ教室のべ1,669人(うち32名参加) |
インバウンド・観光客誘致 | -「道-1グランプリ」を4年ぶりに実行委員会方式で開催- ナイターイベント(納涼祭・カウントダウンなど)で若年層を誘客 | -「道-1グランプリ」来場者12,465人-年末年始入園者数前年比125%-台湾からの団体旅行宿泊245名 |
農林水産体験・10次産業化推進 | -新たに「しいたけ植菌体験(ほだ木オーナー制)」を導入-地域商社と連携した農家と都市バイヤーの商談会 | -農業体験参加者のべ2,080人- 商談会:農家12戸、バイヤー6名参加 |
施設管理・インフラ整備 | -厨房機器、照明、消防設備等の修繕多数-ビール工房拡張や空調・排水設備など10次産業化対応の改修 | -安全・利便性確保のための計20件以上の施設修繕を実施 |
広報活動とSNS展開 | -SNS・広報誌・地元メディアへの情報発信強化 | -SNSフォロワー数前年比約3倍-新聞掲載記事15本以上 |
まとめ
観光復調の流れに乗り、丹後王国「食のみやこ」は地域資源を活用したイベントや体験を通じて新たな来訪者層を獲得し、来園者数・滞在体験ともに大きな成果を上げました。ドッグランやナイトイベント、しいたけ植菌体験など、地域密着かつ新規性ある取り組みが功を奏しています。施設の老朽化やインバウンド対応の課題も残りますが、年間20万人台の回復という一つの節目を迎えた令和5年度は、今後の飛躍に向けた確かな土台づくりの年となりました。
9.道の駅どまんなかたぬま(栃木県佐野市)|地域に根ざしながら伸びる
日本の“どまんなか”に位置する体験型施設
栃木県佐野市にある「道の駅どまんなかたぬま」は、日本列島の東西南北の基準点を線で結んだ交差地点、すなわち“日本の中心”にあたる場所に立地しています。この地理的な特性を活かし、地域の魅力と全国各地の逸品を融合させた、ユニークな観光・ショッピング拠点として注目を集めています。
年間来場者数 | 年間売上高 |
200万人超(2023年度) | 16億円超(直営分中心)(2023年度) |
取り組みと成果まとめ
北関東道・佐野田沼ICのすぐそばという好アクセスを背景に、道の駅「どまんなかたぬま」は年間200万人が訪れる人気スポットへと成長しました。地元のお客さまの日常使いから観光客の立ち寄りまでを包み込む同駅の取り組みと、その成果をご紹介します。
分類 | 主な取り組み(施策) | ねらい・工夫 | 得られた成果・効果 |
❶地域住民の囲い込み | 電子マネー「どまんなかカード」導入(入会金・年会費無料/チャージ額に応じボーナスポイント) | ◇決済を自社プラットフォーム化し再訪率UP◇地域ポイントとして“地元マネー”を循環 | ●カード会員の固定客化が進み、平日利用が底上げ●決済データを販促・品揃えに活用し売上効率改善 |
❷品揃え強化と買物利便性向上 | 農産物直売所を“食品スーパー級”に拡張(市内外産品+対面販売コーナー設置) | ◇ワンストップで買物が完結◇生産者‐消費者の双方向コミュニケーションを演出 | ●観光客だけでなく 日常買いの地元客を獲得●生鮮品回転率が向上し廃棄ロス低減 |
❸移動販売による商圏拡大 | 移動スーパー「とくし丸」導入(3台運行)※道の駅で全国初 | ◇買物困難者(高齢者・交通弱者)支援◇来店困難層にも道の駅ブランドを届ける | ●地域福祉貢献が評価され自治体・メディア露出増●移動販売経由のリピート客が本駅にも流入 |
❹営業時間の差別化 | レストラン夜間営業 | ◇周辺に外食が少ない夜時間帯を狙い集客 | ●「夕食需要」を取り込み客単価向上●ドライバー/仕事帰り客も新規流入 |
❺館外チャネル展開 | イオンモール小山店に農産物直売所・ベーカリー出店霞が関中央合同庁舎でカフェ運営(過去) | ◇競合立地に逆出店しブランド浸透◇道の駅外でも生産者販路を確保 | ●複数拠点の売上が相乗効果を生み年間売上規模拡大●“どまんなか”ブランドの知名度向上・観光誘客に寄与 |
❻好立地の最大活用 | 北関東道・佐野田沼IC至近+市中心北部立地をPR | ◇車利用のアクセスの良さを全面訴求 | ●来場者数全国4位規模(200万人超)を実現 |
総合評価
決済手段の拡充や品揃えの工夫、移動販売、営業時間の見直し、多店舗展開といった多角的な施策が相互に補完し合い、「観光」「日常利用」「域外販売」の3層による売上モデルを構築しています。
その結果、栃木県内の道の駅で来客数第4位、2023年度の直営売上は約16億円を超えるなど、地方の道の駅としては屈指の規模へと成長しています。
地域の買い物弱者支援といった社会的な役割と、民間的な視点による積極的な出店戦略の両立が、自治体・地域住民・観光客のいずれからも高く評価されています。
まとめ
多角的な施策をかけ合わせることで、観光・日常・域外販売の“三本柱”を確立し、来客数全国トップクラスと直営売上16億円超を達成しました。今後はカード会員データの分析高度化や移動販売エリアの拡大など、データ活用型の次なる一手がさらなる成長を後押ししそうです。
地元と全国の逸品が集うショッピングエリア
直売所「朝採り館」では、地元農家が丹精込めて育てた新鮮野菜や特産品を多数取り揃えており、品質管理委員会による厳格な審査に基づき「安全・安心・適正価格」が徹底されています。さらに、全国各地から厳選された銘品も豊富に展開されており、買い物の時間自体が楽しい体験へと昇華します。
家族で楽しめる多彩な施設とイベント
敷地内には約10店舗の飲食店をはじめ、足湯やふれあい広場、ヨーロッパの庭園をイメージしたイタリアンガーデンなど、家族連れがゆったりと過ごせる空間が整備されています。とりわけ冬季には10万球ものイルミネーションが施設全体を幻想的に彩り、訪れる人々を魅了します。また、ミニSL(有料)の運行もあり、小さなお子さまも楽しめるアトラクションが充実しています。
旅の疲れを癒す充実のリラクゼーション設備
天然成分を含む足湯は、美肌効果が期待できる泉質で、長距離ドライブのリフレッシュに最適です。加えて、無重力マッサージ機も完備されており、短時間で深いリラクゼーションが得られる点も高く評価されています。
アクセス良好で立ち寄りにも便利
「道の駅どまんなかたぬま」は、「佐野プレミアム・アウトレット」からも至近距離にあり、ショッピングの合間や旅行の途中に立ち寄りやすい立地となっています。単なる休憩所にとどまらず、目的地としても十分な魅力を備えた観光スポットです。
地域と全国をつなぐ“体験型ステーション”
「道の駅どまんなかたぬま」は、地域資源の発信拠点としてだけでなく、訪れる人々に驚きと癒しを提供する「エンターテインメント型道の駅」です。
成功事例から学ぶ明日から実践できるアクション
ここまで見てきた成功事例には、規模の大小はあれど、自らの施設運営に応用できるヒントが数多く隠されています。最後に、明日からでも始められる具体的なアクションプランを2つご紹介します。
1.地域事業者と連携したオリジナル商品開発
成功している道の駅は、必ずと言っていいほど「ここでしか買えない」魅力的なオリジナル商品を持っています。まずは、あなたの地域で活動している農家、漁師、加工業者、職人といった事業者の方々と積極的にコミュニケーションを取ることから始めましょう。
彼らの持つ素晴らしい素材や技術と、道の駅の持つ販売力や情報発信力を組み合わせることで、新たなヒット商品が生まれる可能性は十分にあります。小さなコラボレーションからでも、地域全体を巻き込む大きなうねりを生み出すことができます。
2.ターゲット顧客に合わせた情報発信とイベント企画
「誰に、何を伝えたいのか」を明確にすることが、効果的な情報発信の第一歩です。例えば、子育て世代に来てほしいのであれば、キッズスペースの充実度や子ども向けメニューをSNSでアピールし、週末に親子で楽しめるワークショップを企画するといった具体的な施策が考えられます。
シニア層がターゲットなら、平日のゆったりとした時間の過ごし方を提案したり、健康をテーマにしたイベントを開催したりするのも良いでしょう。ターゲット顧客の心に響く情報を届け、足を運ぶきっかけとなるイベントを企画することが、着実な集客増に繋がります。
まとめ:道の駅の成功に学ぶ、地域ビジネスの未来
本記事では、全国各地の道の駅の成功事例をもとに、現代の地域ビジネスが直面する課題と、その解決策としての戦略・手法を分析しました。単なる物販拠点ではなく、「地域ブランドの発信拠点」としての道の駅の役割が、近年ますます重要になっています。
成功を導いたポイントは、以下の3点に集約されます:
1.地域資源に根ざした独自性のあるコンセプト設計
2.モノからコトへ──体験価値を高める施設・サービス設計
3.ターゲットを明確にした戦略的な情報発信とイベント展開
これらは道の駅に限らず、地方創生、観光開発、商業施設運営など幅広い分野に通用するビジネス戦略です。特に、人口減少・高齢化・消費行動の変化といった構造的な課題を抱える地域においては、これらのアプローチが事業継続性の鍵を握ります。
道の駅の成功事例は「偶然のヒット」ではなく、地域の本質を見つめ直し、そこに新しい価値を設計し直すプロセスによって生まれています。都市部のマーケティング戦略とも共通する普遍的なロジックが活かされており、むしろ制約条件の多い地方での事例だからこそ、イノベーションのヒントに満ちているのです。
地域×ビジネスの可能性を真剣に模索している方々にとって、道の駅の事例は実践的な学びの宝庫です。これを機に、自社の強みや地域との接点を見直し、新たな価値創出に挑戦してみてはいかがでしょうか。