1人の「やばい社員」が、なぜ組織の生産性を壊すのか──見抜き、止め、被害を最小化するための実務論 

1人の「やばい社員」が、なぜ組織の生産性を壊すのか──見抜き、止め、被害を最小化するための実務論 

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「なぜ、たった1人の問題社員が、組織全体をこんなにも疲弊させるのか。」ミスの後始末、繰り返される説明、指摘できない空気——気づけば誰かが余計な負担を背負っている。

これは特殊な職場の話ではありません。多くの組織で静かに起きている「生産性破壊」の正体を、感情論ではなく実務の視点から解き明かします。

Contents
  1. 1人の問題社員が、なぜ3人分以上の労力を奪うのか
  2. なぜ「やばい社員」はここまで工数を奪うのか
  3. 「やばい社員」の典型的な類型整理
  4. なぜ採用段階で見抜けないのか
  5. 採用前にできる「やばい社員」を避けるための実務策
  6. すでに採用してしまった場合、組織はどうすべきか
  7. 「改善」はどこまで期待できるのか
  8. やばい社員を「辞めさせる」ことはできるのか
  9. 経営・人事が持つべき覚悟
  10. 結論:優しい組織ほど、厳しい線引きが必要である

1人の問題社員が、なぜ3人分以上の労力を奪うのか

悩むビジネスパーソン

「1人の問題社員が、3人分の工数を奪う。」この表現は、決して大げさではありません。

・本人の本来業務
・フォローに回る1人
・調整・管理に追われる1人

最低でもこれだけのリソースが吸い取られます。実際には、会議・記録・感情ケアまで含めると、 3人分でも足りないケースは珍しくありません。

被害は、組織のあらゆる層に波及していく

この問題の厄介さは、影響範囲が広いことです。

上司

・指導に時間を取られる
・トラブル対応で本来の仕事が進まない
・判断を先送りする心理的負荷が増える

同僚

・フォローが常態化する
・不公平感が積み重なる
・静かに疲弊していく

人事

・現場からの相談対応
・記録整理やリスク管理
・「切れない」問題への板挟み

経営層

・生産性の低下
・離職リスクの増大
・組織文化の歪み

問題社員は、現場だけの課題ではありません。組織全体の経営リスクとして広がっていきます。

組織コストの問題である

焦点を当てるのは、行動特性が生む「見えにくい組織コスト」です。

・時間
・感情
・信頼
・生産性

これらが、どのように失われ、どうすれば最小化できるのか。現場と経営の両方にとっての実務論として整理していきます。

なぜ「やばい社員」はここまで工数を奪うのか

疲弊するビジネスマン

「1人くらい、多少問題のある社員がいても何とかなる。」 多くの組織は、最初そう考えがちです。

ところが実際には、「やばい社員」が生み出す問題は、単なる業務遅延ではありません。仕事が止まるのではなく、見えないところで「歪みながら回り続ける。」この歪みこそが、組織の生産性を静かに、しかし確実に削っていきます。

業務が止まるのではなく「歪む」

ミスのフォロー

やばい社員のミスは、派手に炎上するとは限りません。むしろ多いのは、「誰かがこっそり直している」ケースです。

・数字が合わない資料を、先輩が夜に修正
・顧客への誤案内を、別の社員が謝罪してリカバリー
・期限を守らない分を、チーム全体で帳尻合わせ

一つひとつは小さな修正でも、積み重なると確実に工数を奪います。しかもフォローは評価されにくく、「なかったこと」にされがちです。

説明のやり直し

同じ説明を、何度も、違う言い方で、丁寧に。それでも伝わらない。

・前回説明した前提を覚えていない
・メモを取らない、資料を読まない
・自分流に解釈して、結論だけずらす

この「説明のやり直し」は、時間だけでなく、説明する側の集中力と気力を奪います。本来なら前に進むはずの会話が、常に「スタート地点」に引き戻されるのです。

クレーム・内部調整・感情ケア

やばい社員が引き起こすトラブルの後処理は、往々にして業務外です。

・顧客クレームへの謝罪対応
・関係部署との板挟み調整
・「あの人に言われて傷ついた」という感情フォロー

これらはマニュアル化しにくく、精神的な負荷も大きい。しかも、対応するのはだいたい「空気が読める人」「角が立たない人」です。

本来不要な会議と記録作成

・事後報告のための会議
・「言った/言わない」を防ぐための議事録
・念のための確認メール、CCの山

やばい社員がいることで、「信頼を前提に省略できたはずの工程」が増えていきます。結果として、組織全体が防御的で重たい仕事のやり方に引きずられていくのです。

周囲の優秀な社員ほど消耗する構造

責任感のある社員がカバー役に回る

問題なのは、フォロー役が自然発生することです。しかも多くの場合、それは「優秀で、責任感があり、空気を読む社員。」

・「自分がやった方が早い」
・「ここで放置すると、もっと面倒になる」

こうして、仕事ができる人ほど「穴埋め要員」になっていきます。

「あの人の分までやる」が常態化

最初は一時的な対応のつもりでも、やがてそれが常態化します。

・業務量は増えるが、権限も評価も変わらない
・なぜ自分だけ負担が増えるのか、説明もない
・「できる人だから」という理由で任され続ける

この状態が続くと、優秀な社員ほど疑問を抱き始めます。「頑張るほど損をする組織なのではないか」と。

結果として、やばくない社員が先に疲弊する

皮肉なことに、最初に限界を迎えるのは、やばい社員ではありません。問題を何とかしようとしてきた側です。

・モチベーションが下がる
・チャレンジを避けるようになる
・最終的には、静かに転職を考える

そして組織には、「残ったやばい社員」と「疲れ切った社員」だけが残る。生産性が落ちるのは、ある意味、必然と言えるでしょう。

「やばい社員」の典型的な類型整理

人型のシルエット

まず強調しておきたいのは、「やばい社員=性格が悪い人」ではない、という点です。多くの場合、問題は人格そのものではなく、仕事上の行動特性にあります。

ここでは、現場でよく見られるタイプをいくつかに分けて整理します。複数の特性を併せ持つケースも珍しくありません。

自己中心型

自分のことしか考えない

業務の判断軸が、常に「自分にとってどうか」だけ。チームや組織全体の最適よりも、自分の楽さ・都合・感情が優先されます。

他人の業務・感情・納期に無関心

・自分の作業が遅れても、周囲への影響を考えない
・相手が忙しそうでも、構わず話を振る
・締切よりも「自分のペース」が最優先

結果として、周囲がフォローに回る前提の働き方になります。

被害者意識が強く、常に自分が正しい

少し注意されただけで、「責められた」「不当だ」と感じやすい。議論が成立しにくく、話し合いが感情論にすり替わるのが特徴です。

学習拒否型

アドバイスを無視

表面上は「わかりました」と言うものの、行動は変わらない。助言を「自分への攻撃」として受け取ってしまうケースもあります。

思い込みで突っ走る

・確認を取らずに自己判断
・前提条件を無視して進める
・「前もこうだったから」で決めつける

結果として、手戻りや修正が頻発します。

同じミスを繰り返すが改善しない

最大の特徴は、経験が学習につながらないこと。周囲から見ると「なぜまた?」が何度も起きます。

権利過剰行使型

労働者の権利は最大限主張

残業、業務範囲、指示の出し方などについて、権利意識が非常に強い。それ自体は悪いことではありませんが、義務や責任とのバランスが崩れがちです。

指導・注意をすぐ「パワハラ」扱い

業務上の注意や改善指導であっても、「圧をかけられた」「精神的に苦痛だ」と問題化しやすい。結果として、管理職や先輩が指導を避けるようになります。

建設的対話が成立しない

話し合いの目的が「改善」ではなく「自己防衛」になるため、合意形成が極めて難しいタイプです。

責任回避・他責型

平気で嘘をつく

・「聞いていない」
・「そんな指示はなかった」
・「自分はやったつもり」

事実確認に無駄な工数がかかるようになります。

失敗は他人や環境のせい

トラブルが起きると、 「○○さんのせい」「体制が悪い」「環境が整っていない」と責任転嫁。

仕事を他人に押し付ける

曖昧なまま仕事を投げ、うまくいけば自分の成果、 失敗すれば「頼まれただけ」と距離を取るのが特徴です。

コミュニケーション破綻型

言われたことしかやらない/言われたことすらやらない

・文脈を読まない
・目的を理解しない
・例外対応が一切できない

一方で、指示通りにやらないことも多く、周囲は混乱します。

人の話を聞かない

会話が成立せず、確認やすり合わせに倍以上の時間がかかる。「伝えたはず」が通用しません。

突然キレる、感情の制御ができない

些細な指摘で感情的になり、場の空気を壊す。周囲が萎縮し、必要なコミュニケーションすら避けるようになります。

なぜ採用段階で見抜けないのか

面接を受ける男性

「こんな人だとは思わなかった」 問題社員が発覚したとき、採用担当者や上司からよく聞かれる言葉です。

しかし冷静に考えると、採用段階で完全に見抜くこと自体が難しい構造があります。それは個人の目利き不足というより、採用プロセスそのものの限界に近い問題です。

面接は「最も取り繕える場」

自己PRは得意

面接は、候補者にとって「準備ができる舞台」です。想定質問を調べ、成功体験を整理し、短時間で自分をよく見せる。

特に、自己中心型や責任回避型の一部は、言語化能力だけは高いことも少なくありません。

被害者ストーリーは巧妙

・「前職は評価制度が不透明で…」
・「上司と価値観が合わず…」
・「環境さえ良ければ力を発揮できるのですが…」

こうした語りは一見もっともらしく、共感も誘います。しかし実際には、トラブルの核心が巧みにぼかされていることも多い。

前職のトラブルは語られない

当然ですが、面接で「周囲と衝突を繰り返していました」「注意されると感情的になります」と正直に話す人はいません。

面接は、問題行動が最も表に出にくい場なのです。

人手不足・採用プレッシャーの罠

「この人しかいない」という錯覚

・欠員が長く続いている
・現場が限界に近い
・納期や繁忙期が迫っている

こうした状況では、採用判断に無意識のバイアスがかかります。「多少の懸念はあるが、今は人が必要だ」という心理です。

短期的充足を優先した結果の長期的損失

採用が決まった瞬間、現場は一時的に安心します。しかし、入社後に問題が発覚すると、

・教育コストの増大
・周囲の消耗
・マネジメント工数の肥大化

といった長期的な損失が発生します。

「空席を埋めること」と「戦力を増やすこと」は、必ずしも同義ではありません。採用段階で見抜けなかったことよりも、入社後にどう扱うかのほうが、実ははるかに重要なのです。

採用前にできる「やばい社員」を避けるための実務策

採用面接の様子

前章で述べた通り、採用段階で「完璧に見抜く」ことはできません。しかし、見抜ける確率を上げることは可能です。ここでは、現場で比較的すぐ取り入れやすい実務策に絞って整理します。

行動事実ベースの深掘り質問

「なぜそうなったか」ではなく「その時、具体的に何をしたか」を問う

面接でありがちなのが、理由や感情の説明に終始してしまうことです。

・「なぜうまくいかなかったと思いますか?」
・「なぜその選択をしたのですか?」

これらは思考力を見るには有効ですが、 行動特性を見抜くには不十分です。

代わりに有効なのは、次のような問いです。

  • 「トラブルが起きた直後、最初に何をしましたか?」
  • 「誰に、どのタイミングで、どう共有しましたか?」
  • 「自分の作業として、具体的にどこまで手を動かしましたか?」

行動を具体的に語れない場合、

  • 実際には関与していない
  • 記憶が曖昧
  • 成果だけを「後付け」している

といった可能性が見えてきます。

失敗体験・他者評価の聞き方

失敗をどう捉えているか

失敗談そのものよりも重要なのは、どう意味づけているかです。

・自分の判断や行動に触れているか
・改善点を具体的に語れるか
・同じ失敗を防ぐ工夫が出てくるか

ここが曖昧な場合、学習拒否型の兆候が見えます。

他者へのリスペクトがあるか

失敗の話の中で、 「上司が悪かった」「チームが無能だった」といった表現が頻発する場合は要注意です。

他者をどう語るかは、その人の仕事観がにじみ出るポイント。他責傾向や自己中心性は、ここで現れやすいのです。

トライアル・試用期間の設計

短期間でも「仕事の進め方」は見える

スキルや成果は短期間では測れなくても、仕事の進め方は意外と早く見えてきます。

・報連相の頻度と質
・指示の受け取り方
・修正やフィードバックへの反応

これらは、数週間でも十分に観察可能です。

試用期間は「形式」ではなく「判断期間」

試用期間を「とりあえず全員通過するもの」にしてしまうと、意味がありません。

・どの行動を評価するのか
・何がNGラインなのか
・誰が最終判断をするのか

これを事前に言語化しておくことで、「後から問題が分かっていたのに、見送れなかった」という事態を防げます。

試用期間は、候補者を試す期間であると同時に、組織が「迎え入れる覚悟」を判断する期間でもあります。

すでに採用してしまった場合、組織はどうすべきか

打合せをする会社員

問題に気づいたとき、多くの組織は一瞬ためらいます。「もう少し様子を見よう」「環境が変われば改善するかもしれない。」しかし、何もしないことは中立ではありません。実務上、それは最もリスクの高い選択になりがちです。

放置が最悪の選択である理由

被害は時間とともに拡大

やばい社員の問題は、自然に解決することはほとんどありません。
むしろ時間とともに、

・フォロー工数が増える
・関係者が増える
・トラブルが複雑化する

と、対処コストが指数関数的に膨らみます。

周囲の信頼が崩れる

周囲はよく見ています。

・問題行動が注意されない
・成果がなくても処遇が変わらない
・迷惑をかけても放置される

こうした状況が続くと、 「この組織は何を大事にしているのか」という信頼が揺らぎます。

「あの人は許される」という歪んだメッセージ

放置は、無言のメッセージになります。それは本人だけでなく、組織全体に向けたものです。

・やった者勝ち
・声を荒げた方が得
・責任を取らなくても大丈夫

このメッセージが広がると、健全な行動が損をする文化が根付きます。

まずやるべきは「事実の記録」

感情論ではなく行動記録

対処を始める際に最も重要なのは、「困っている」「ひどい」といった感情表現ではなく、事実です。

・何をしたか
・何をしなかったか
・どんな影響が出たか

これを、できるだけ具体的に記録します。

誰が、いつ、何に困っているのか

記録のポイントは、「再現性」です。

  • 日時
  • 関係者
  • 業務内容
  • 発生した問題
  • 対応にかかった工数

個人攻撃にならない形で、業務上の支障として整理することが重要です。

人事・法務と共有可能な形で残す

最終的に判断を下すのは、現場だけではありません。人事・法務と共有できる形で残しておくことで、

・指導の正当性
・配置転換や処遇変更の根拠
・最悪の場合のリスクヘッジ

につながります。「記録すること」は冷たい行為ではなく、組織と本人の双方を守るための準備です。

「改善」はどこまで期待できるのか

パソコンを前に議論する会社員たち

問題社員への対応で最も消耗するのは、「まだ改善するかもしれない」という期待と、「もう無理かもしれない」という諦めの間を行き来する状態です。ここでは、改善が見込めるケースと、そうでないケースを分ける視点を整理します。

改善可能なケース/不可能なケースの見極め

結論から言えば、スキルや経験は後からでも伸ばせます。しかし、行動特性の改善には明確な条件があります。その条件がそろわない場合、長期戦はほぼ意味を持ちません。

改善の条件①:自己認識

改善の出発点は、 「自分の行動が問題を起こしている」という認識です。

・具体的な指摘を受け止められるか
・言い訳ではなく、事実として向き合えるか
・「そう見えていたのか」と他者視点を持てるか

ここが欠けている場合、指導はすべて「攻撃」として処理されます。

改善の条件②:学習意欲

一時的に反省したように見えることはあります。 重要なのは、その後です。

・自分から質問するか
・過去の指摘を振り返っているか
・同じ場面で行動が変わっているか

学習意欲がない場合、改善は「その場しのぎ」で終わります。

改善の条件③:行動変容

最終的な判断基準は、言葉ではなく行動です。

・報連相の頻度が変わった
・期限の守り方が変わった
・他者への配慮が見えるようになった

小さくても、再現性のある変化があるかどうか。これが確認できなければ、改善とは言えません。

これが欠けている場合、長期戦は無意味

自己認識・学習意欲・行動変容。この三つのうち、どれか一つでも欠けている場合、

・指導する側だけが疲弊する
・周囲の不満が蓄積する
・問題が形を変えて再発する

という結果になりがちです。改善を信じること自体は悪ではありません。しかし、根拠のない期待は、組織全体への負担になります。

やばい社員を「辞めさせる」ことはできるのか

チームワークのイメージ、歯車

問題が長期化すると、現場では必ずこの問いに行き着きます。
「結局、辞めさせることはできないのか。」

ただし日本の労働法制下では、この問いは非常に慎重に扱う必要があります。重要なのは、感情的な排除ではなく、組織を守るための現実解を選ぶことです。

日本の法制度上の現実

即解雇は極めて難しい

日本では、正社員の解雇は「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が強く求められます。

・能力不足
・協調性の欠如
・態度が悪い

といった理由だけでは、即解雇はほぼ認められません。

だからこそプロセス設計が重要

解雇が難しいからといって、何もできないわけではありません。
むしろ重要なのは、

・指導の履歴を残す
・改善機会を明確に与える
・段階的な対応を設計する

といったプロセスの積み重ねです。これがない状態での強硬手段は、法的リスクだけでなく、組織への信頼低下を招きます。

現実的な選択肢

配置転換

対人トラブルが多い場合、業務内容や関わる人を変えることで被害を抑えられるケースがあります。「適材適所」は、能力向上だけでなく摩擦低減の意味も持ちます。

業務切り出し

・裁量を小さくする
・影響範囲を限定する
・チェックポイントを増やす

仕事の設計を変えることで、 組織全体へのダメージを最小化します。

改善プログラム

期限・目標・評価基準を明確にした改善プログラムは、本人にとっても「最後のチャンス」が可視化されます。ここで変化が見られない場合、 次の選択肢に進む判断材料にもなります。

合意退職

最終的な現実解として選ばれるのが、合意退職です。

・本人の納得
・法的リスクの低減
・組織の早期回復

を同時に考える場合、避けて通れない選択肢となることもあります。

感情ではなく「組織防衛」の観点で考える

重要なのは、「あの人をどうするか」ではありません。「この組織をどう守るか」です。

・健全に働く社員を守れるか
・ルールが機能していると示せるか
・長期的に生産性を維持できるか

この視点を失わなければ、 判断は自然と「冷静な現実解」に近づきます。

経営・人事が持つべき覚悟

やばい社員問題は、現場の愚痴でも、個人の相性問題でもありません。最終的に問われるのは、経営と人事がどこに軸足を置くかです。

「いい人そうだった」は免罪符にならない

採用や評価の場で、
「人柄は良さそうだった」
「悪気はない人だと思う」

という言葉が使われることがあります。しかし、仕事において重要なのは、「いい人そうか」ではなく、「組織にとって機能しているか」です。悪意がなくても、結果として周囲を疲弊させ、生産性を下げているなら、それは立派なマネジメント課題です。

1人を守るために、10人を犠牲にしない

やばい社員への過剰な配慮は、しばしば「優しさ」として語られます。

しかしその裏側で、

・フォローに回る社員
・声を上げられない社員
・静かに離れていく優秀層

が犠牲になっていないでしょうか。守るべきは、声の大きい1人ではなく、黙って踏ん張っている多数派です。

やばい社員問題は人事課題ではなく、経営課題

配置転換、評価、処遇、退職判断。これらは人事部だけで完結する話ではありません。

・どんな行動を評価するのか
・どこまでを許容するのか
・組織として何を大事にするのか

これらはすべて、経営の意思決定です。やばい社員問題に向き合うことは、 組織の価値観を明確にする行為でもあります。

結論:優しい組織ほど、厳しい線引きが必要である

「優しさ」と「厳しさ」は対立するものではありません。むしろ、本当に優しい組織ほど、線引きは明確です。

問題行動を見過ごすことは配慮に見えて、
・フォロー役の固定化
・努力が報われない
・声を上げない人が損をする
という歪みを生みます。やばい社員に優しい組織は、結果的に、まじめに働く社員に冷たい組織になります。

組織を守るための線引きは、切り捨てや罰ではありません。役割の変更、期待値の調整、改善期限の明確化など、組織を機能させ続けるための設計です。

組織は、日々淡々と働く多数の健全な人によって支えられています。その人たちが無理をせず、理不尽に消耗せず、正当に評価される環境を守ることが最優先です。

見抜けなかったことは責められるべきではありません。しかし、見えてから何もしないことは経営の責任です。 線引きを行い、判断を先送りせず、価値観を行動で示すこと。それこそが、優しさを持った組織が長く生き残るための条件なのです。