2年前と比べて物価はどれだけ上がったのか?日本とアメリカの比較で読み解く今後の物価見通し

2年前と比べて物価はどれだけ上がったのか?日本とアメリカの比較で読み解く今後の物価見通し

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物価高は、生活者の負担増にとどまらず、企業経営や自治体運営にも直接的な影響を及ぼしています。選挙を前に物価対策が争点化するなか、食料品やエネルギーを中心とした価格上昇は続いており、調達や物流、公共サービスの現場ではコスト圧力が一段と強まっています。

物価をめぐる議論では、消費者物価指数(CPI)の前年比が注目されがちですが、実際に家計や事業運営に影響しているのは、物価が上がった状態がどの程度定着しているかという点です。上昇率が鈍化したとしても、価格水準が高止まりすれば、生活費や事業コストは元に戻りません。

本記事では、消費者物価指数の水準に着目し、日本の物価がこの数年間でどの程度切り上がったのかを確認したうえで、アメリカとの比較を通じて、物価上昇の「質」の違いを整理します。物価上昇は一時的な現象なのか、それとも新たな前提条件となりつつあるのか。構造的な観点から検証していきます。

日本:2年前と比べて物価はどれだけ上がったか

野菜を手に取る主婦

日本の物価動向を把握するうえで重要なのは、直近の上昇率よりも、CPIの水準そのものがどの位置にあるかです。総務省統計局の消費者物価指数を見ると、日本の物価は2022年以降、上昇局面に入り、現在も高い水準で推移しています。

消費者物価指数(総合)は、2020年を100とした場合、2025年の年平均で111.9となっており、物価水準が2022年以前と比べて明確に高い水準にあることが確認できます(総務省統計局「消費者物価指数 全国 年平均」)。月次で見ても、直近(2025年12月時点)の指数は高い水準で推移しており、物価の上昇が一時的なものにとどまっていないことが分かります(総務省統計局「消費者物価指数」速報)。

前年ベースの上昇率は年や月によって変動しているものの、消費者物価指数の水準そのものは、この2年間で明確に上昇した水準を維持しています。これは、直近の前年比上昇率が鈍化する局面があったとしても、物価が「元の水準に戻った」わけではないことを意味しています。

年平均の指数値が高い水準で維持されている以上、家計や事業者が直面しているのは、物価上昇が一巡した後の価格水準が定着した状態です。すなわち、日本の物価動向を評価する際には、単年の上昇率だけでなく、指数水準そのものがどの位置にあるのかを見ることが重要であり、その観点から見れば、過去2年間にわたる累積的な物価上昇の影響は現在も続いていると言えます。

【根拠(CPI水準)】

総務省統計局の「全国・年平均(2020=100)」より、

  • 2023年平均:105.6
  • 2024年平均:108.5
  • 2025年平均:111.9(前年比+3.2%)

【参考リンク】

総務省統計局「消費者物価指数(CPI)全国 2025年平均」

食料品:家計負担を最も押し上げた分野

品目別に見ると、2年前と比べた上昇が大きいのは食料品です。食料品全体の価格は、この2年間で1割を超えて上昇しており、主食、加工食品、外食のいずれも例外ではありません。とりわけ近年は、コメ価格の高騰が全体を押し上げる形となり、家計の体感インフレを強めています。

食料品は支出頻度が高いため、上昇率以上に負担感を強く感じやすい分野です。価格が一度上がると下がりにくい性質もあり、累積的な影響が最も表れやすい分野だと言えます。

エネルギー:政策要因で変動しつつも負担水準は上振れ

エネルギー価格も、この2年間で大きく変化した分野です。電気・ガス料金は政府の価格支援によって一時的に抑制される局面がありましたが、支援の縮小や終了に伴い、足元では家計負担の水準が上振れしています。結果として、2年前と比べると、エネルギー関連支出も明確に増加しています。

ここで注意すべきなのは、価格変動が政策に強く左右されている点です。激変緩和措置(補助金)の継続・再導入や、カーボンニュートラルに伴う賦課金の動向によっては、負担水準が再び変動する可能性もあります。市場価格が下落したとしても、それが即座に家計負担の軽減につながるとは限らず、物価見通しを不透明にしています。

サービス価格は緩やかだが「下がってはいない」

一方、サービス価格の上昇は財に比べれば緩やかで、この2年間での上昇幅も限定的です。ただし、ほぼすべての分野で指数はじわりと上がっており、下落している分野はほとんど見られません。

サービス価格が大きく上がっていないことは、日本で賃金インフレが本格化していないことの裏返しでもあります。しかし、上昇が小さいからといって、家計や事業者の負担が軽いわけではありません。食料やエネルギーと組み合わさることで、総合的な生活コストは確実に押し上げられています。

日本の物価は「上がったまま」の状態にある

以上を整理すると、日本の物価はこの2年間で確実に上昇し、現在は上がった水準が定着した状態にあると言えます。重要なのは、これは一部の品目に限った話ではなく、生活や事業運営に不可欠な分野を中心に広がっている点です。

次章では、この日本の動きをアメリカと比較しながら、物価上昇の「質」の違いを確認し、今後の見通しを考えていきます。

アメリカ:2年前と比べて物価はどれだけ上がったのか

星条旗と自由の女神

次に、アメリカの物価動向を同じ視点で確認します。米国の物価指標として用いられるのは、米労働統計局(BLS)が公表するCPIです。同局が公表した「Consumer Price Index: 2025 in review」によれば、アメリカのCPIは2022年にかけて急上昇した後、上昇ペースを落としつつも、2025年時点でも物価上昇が続いていることが確認できます。

このレビューによると、2025年のCPI(総合)は前年から2.7%上昇しており、インフレ率はピーク時と比べて低下したものの、物価は引き続き上昇基調にあります。これは、アメリカでも物価が「下がった」のではなく、上昇後の水準が維持されていることを示しています。

前年ベースの上昇率は年ごとに変動していますが、重要なのは、CPIの指数水準そのものが高い位置で推移している点です。BLSの年次レビューが示すように、2025年時点でも物価は上昇を続けており、過去2年間を通じて、アメリカの家計が直面している価格水準は明確に上昇した水準にあります。

サービス価格が物価上昇を主導

品目別に見ると、アメリカの物価上昇を主導しているのはサービス分野です。2025年は、外食価格が前年比4.1%上昇したほか、医療関連サービスなど人件費の比重が高い分野で価格上昇が続きました(米労働統計局「Consumer Price Index: 2025 in review」)。

この背景には、労働市場の底堅さと賃金上昇があります。企業が人件費の上昇を価格に転嫁する動きが比較的スムーズに進み、サービス価格を中心としたインフレが継続しました。この点は、賃金上昇が限定的な日本との大きな違いです。

エネルギー・財価格は落ち着いたが、水準は高い

一方、エネルギーや一部の財価格については、2025年にかけて上昇率が鈍化し、分野によっては前年比で下落する局面も見られました。ただし、BLSのレビューが示すとおり、これらの価格動向はインフレ率を押し下げる要因にはなったものの、物価水準そのものを押し下げるまでには至っていません。

その結果、アメリカでも、インフレ率の低下と物価水準の高さが同時に存在する状況が続いています。

アメリカの物価は「上昇後、高い水準で推移」

以上を整理すると、アメリカの物価はこの2年間で大きく上昇した後、上昇ペースを落としつつも、高い水準で推移している状態にあると言えます。2025年のインフレ率は落ち着きつつありますが、家計が直面する価格水準は依然として上昇後の水準にとどまっています。

次章では、日本とアメリカを比較しながら、こうした物価上昇の「質」の違いが、今後の物価見通しにどのような影響を与えるのかを整理していきます。

【参考リンク】

U.S. Bureau of Labor Statistics,“Consumer Price Index: 2025 in review”

なぜ日本の物価高は戻りにくいのか――日米比較で見えるインフレ構造の決定的な違い

右肩上がりのグラフ

日本とアメリカでは、いずれもこの数年間で物価水準が大きく上昇しました。ただし、両国の状況を同じ「インフレ」として単純に捉えることはできません。重要なのは、物価上昇の背景や、その後の経済の動きに違いがある点です。物価が上がったあとに、賃金や消費、企業活動がどのように変化しているのか――そこに両国の決定的な差が表れています。

アメリカでは、物価上昇は賃金上昇やサービス価格の上昇と結びつき、経済の内部で循環してきました。一方、日本では、物価は上がっても賃金が十分に追いつかず、家計や企業にとっては「高い価格水準だけが残る」形になりやすい状況にあります。ここに、日本の物価高が戻りにくい理由があります。

本章では、日本とアメリカの物価上昇を分けた構造的な違いを整理し、なぜ同じ物価上昇率であっても、両国で受け止め方や影響が大きく異なるのかを明らかにしていきます。

1.日本とアメリカのインフレ構造の違い

まず、物価上昇を主導してきた分野が異なります。

日本では、物価上昇の中心は食料品とエネルギーです。いずれも輸入依存度が高く、為替や国際市況の影響を受けやすい分野であり、賃金上昇とは必ずしも連動していません。その結果、物価は上昇している一方で、賃金の伸びは限定的にとどまり、実質購買力は圧迫されやすい構造にあります。

一方、アメリカでは、物価上昇の中心はサービス分野です。BLSの「Consumer Price Index: 2025 in review」によれば、2025年も外食や医療などのサービス価格が上昇し、物価全体を押し上げました。これらの分野では人件費の比重が高く、賃金上昇が価格に反映されやすい特徴があります。

この点で、アメリカのインフレは賃金上昇を起点とした内生的なインフレであるのに対し、日本のインフレは外部要因に左右されやすいコスト主導型インフレという性格が強いと言えます。

2.賃金とサービス価格の関係が生む持続性の差

物価上昇の持続性を分けているのは、賃金とサービス価格の関係です。

アメリカでは、賃金上昇がサービス価格を押し上げ、サービス価格の上昇が企業収益や雇用を支えるという循環が形成されてきました。BLSのデータでも、2025年において外食価格が前年比4.1%で上昇しており、賃金コストの転嫁が進んでいることがうかがえます。

一方、日本では、サービス価格の上昇は緩やかで、賃金上昇も限定的です。医療、介護、公共サービスなど、価格が制度的に抑制されている分野の比重が高く、人件費の上昇が価格に反映されにくい構造にあります。このため、賃金と物価の好循環が形成されにくくなっています。

結果として、日本では物価が上がっても賃金が追いつかず、家計の負担感が蓄積しやすい状況が続いています。一方、アメリカでは、物価上昇と賃金上昇が同時に進むことで、経済全体としての耐性が保たれてきました。

3.為替・自給率・政策が構造差を固定化する

こうした違いは、為替、自給率、政策対応によってさらに強化されています。

日本は食料・エネルギーの輸入依存度が高く、円安が進むと物価が押し上げられやすい構造にあります。加えて、エネルギー価格や公共料金に対する政府介入が強く、市場価格の変動が物価にそのまま反映されにくい側面があります。その結果、国際市況が落ち着いたとしても、物価水準は下がりにくくなっています。

一方、アメリカでは市場メカニズムが比較的直接的に物価に反映され、金融政策を通じた需要調整も機能しやすい環境にあります。インフレ率が低下すれば、需要の減速や価格調整が進みやすい構造にあります。

この違いは、単なる短期的な現象ではなく、両国の経済構造の違いとして定着しつつあると言えます。

4.「同じ物価上昇率」でも意味が異なる

以上を踏まえると、同じ水準の物価上昇率であっても、その意味合いは大きく異なります。

アメリカの物価上昇は、賃金上昇と需要の強さを伴う「成長を伴うインフレ」として位置づけられます。一方、日本の物価上昇は、輸入コストや政策要因に左右されやすく、「成長を伴わないインフレ」の性格が強いと言えます。

この違いは、今後の物価見通しにも直結します。アメリカではインフレ率が低下したとしても、賃金水準が下支えとなる可能性がありますが、日本では賃金が本格的に上昇しない限り、物価高が家計の負担として残りやすい状況が続くと考えられます。

日米の物価上昇を比較する際には、単に数値の大小を見るのではなく、賃金とサービス価格を中心とした構造の違いに目を向けることが不可欠です。次章では、こうした構造差を踏まえ、日本の物価が今後どのような軌道をたどるのかを整理していきます。

今後も物価は上がるのか?短期・中期の見通し

PRICEの文字と電卓

ここまで見てきたように、日本の物価はこの2年間で明確に切り上がり、現在は高い水準で推移しています。では、今後も物価は上がり続けるのでしょうか。それとも、いずれ落ち着いていくのでしょうか。この問いに答えるには、短期と中期を分けて考える必要があります。

短期的に物価は下がるのか

短期的に見ると、日本の物価が再び大きく加速する可能性は高くありません。国際商品市況はすでにピークアウトしており、エネルギーや原材料価格が急騰する局面は想定しにくい状況です。また、前年比で見た物価上昇率も、すでに鈍化傾向にあります。

しかし一方で、物価が明確に下落する可能性も限定的です。食料品やエネルギーといった生活必需分野では、価格が一度上がると下がりにくい性質があります。加えて、円安基調が続く限り、輸入物価を通じた下押し圧力は残りやすい状況です。

その結果、短期的には、物価は「上がり続ける」というよりも、上がった水準で横ばいに近い動きを続ける可能性が高いと考えられます。

中期的に賃金と為替は物価にどう影響するか

中期的な物価動向を左右する最大の要因は、賃金と為替です。

賃金については、今後も一定の賃上げが続く可能性はあるものの、それが物価上昇を主導するほど定着するかどうかは不透明です。仮に賃金上昇が広範に定着すれば、サービス価格を中心に内生的なインフレへと移行する可能性があります。一方で、賃金の伸びが限定的にとどまれば、物価だけが高止まりする構造が続くことになります。

為替についても、物価への影響は大きい要素です。円安が続けば、輸入物価を通じた押し上げ圧力は残り、物価水準は下がりにくくなります。仮に円高に振れたとしても、その効果は物価上昇を抑制する方向に働くにとどまり、価格水準を元に戻す力は限定的だと考えられます。

物価は元の水準に戻るのか

こうした要因を総合すると、今後の日本の物価について、「以前の水準に戻る」ことを前提に考えるのは現実的ではありません。物価上昇率が落ち着く局面はあったとしても、水準そのものは高止まりする可能性が高いと考えられます。

重要なのは、物価上昇を一時的な異常事態として捉えるのではなく、経済環境の変化として受け止めることです。家計、企業、自治体のいずれにとっても、これまでの低物価を前提とした判断や制度設計の見直しが求められています。

結論:物価上昇は一時的ではなく「新たな前提条件」になりつつある

タブレット端末を持つ女性

本記事では、2年前との比較を通じて、日本とアメリカの物価動向を検証してきました。その結果、明らかになったのは、物価上昇率の変動以上に、物価水準そのものが高い水準で定着しつつあるという点です。

短期的には、物価上昇率が落ち着く局面はあり得ます。しかし、為替、賃金、政策対応といった要因を踏まえると、物価が以前の水準に戻ることを前提とするのは現実的ではありません。日本の物価上昇は、一時的なショックというよりも、経済構造の変化を反映したものと捉える方が妥当でしょう。

家計は物価高とどう向き合うべきか

家計にとって重要なのは、「物価が下がるのを待つ」という姿勢が有効ではなくなりつつある点です。生活コストが高い水準で定着するのであれば、支出構造の見直しや、固定費の管理がこれまで以上に重要になります。

同時に、賃金動向にも目を向ける必要があります。物価上昇が続く環境下では、名目賃金だけでなく、実質的な購買力が維持されているかどうかが判断基準となります。

企業・中小企業にとっての現実的な対応

企業、とりわけ中小企業にとっては、コスト上昇を一時的な要因として処理するのではなく、構造的な変化として織り込む視点が求められます。原材料費やエネルギーコストが高止まりする中で、価格転嫁や業務効率化を避け続けることは難しくなっています。

物価上昇局面では、価格設定や取引条件の見直しに加え、デジタル化による生産性向上が、収益確保のための現実的な選択肢となります。物価環境の変化に対応できる企業と、そうでない企業との差は、今後さらに広がる可能性があります。

自治体・公共部門への示唆

自治体や公共部門にとっても、物価上昇は避けられない前提条件となりつつあります。給食費や公共施設の運営費、委託費の増加など、日常業務に直結する分野で影響はすでに顕在化しています。

補助金や一時的な支援で対応することには限界があります。中長期的には、業務の効率化や支出構造の見直しを通じて、高い物価水準に耐えうる運営体制を構築する必要があるでしょう。

物価が下がらない時代に必要な視点

物価上昇を「異常事態」として捉える見方は、徐々に修正を迫られています。今後問われるのは、物価が上がった環境の中で、どのように生活し、経営し、行政を運営していくかという点です。

物価が上がり続けるかどうか以上に重要なのは、物価が下がらない可能性を前提に備えることです。本記事の検証が、その現実的な判断材料となれば幸いです。