TikTokが火付け役となった動画ブームはInstagramやYouTubeなどさまざまなプラットフォームにも波及し、近年では娯楽目的に限らず、マーケティングに有効な手段となりました。今回の記事では、TikTokマーケティングの動向と中小企業のTikTokマーケティング成功事例について、具体的にご紹介していきます。
マーケティングツールとしてのTikTok
2017年に日本に上陸してから瞬く間に利用者数が急増した動画プラットフォームTikTokは、短い映像が次々と流れ去り、アテンションを獲得し続ける独自のUIと、誰でも気軽に動画を撮影し、アップロードできる簡易さが相まって、娯楽目的での利用が拡大してきました。
また、2020年からはTikTok For Bussinesのサービス提供が開始されたこともあり、近年はマーケティングに適したプラットフォームとして非常に注目が集まっています。
TikTok For Bussinessは、アカウント開設が非常に容易で、サービス内でキャンペーンの目的設定から、予算・ターゲティング、入札方法の設定を行った上で、動画や画像をアップロードすれば、効果測定なども行えます。
アカウント開設に原資が必要ではなく、また広告配信も自身の予算を設定できる上、広告フォーマットも優れています。ビジネス目的でのSNS運用に慣れていない個人事業主や、中小企業も使いやすいデザインとワンストップでのソリューションが大きな魅力です。
フォロワー数に左右されずに情報拡散が可能
従来マーケティングに活用されてきたInstagramやTwitter、YouTubeといったプラットフォームでは、フォロワー数と拡散力が比例していました。
そのため、プラットフォームへの広告出稿だけでなく、強力なインフルエンサーに依頼してその分コストも高くなってしまう仕組みでした。
一方、TikTokの場合はフォロワー数と拡散度合いは必ずしも比例しません。独自のレコメンドシステムでフォロワー数という序列にかかわらず、拡散されたり爆発的に視聴されることができます。これはプラットフォームとしての大きな強みといえます。
マーケティング効果の高さを示すデータ
TikTok独自の調査によると、マーケティングが非常に有効であることを示すデータがすでに揃っています。
ユーザーのエンゲージメントは46%と非常に高く、集中した状態のユーザーにコンテンツを届けることができます。また視聴後に何らかの行動を起こすユーザーは92%と、その後のアクション喚起率がそのほかのSNSに比べて圧倒的に高いです。
また、TikTokにおいては広告が受け入れられやすい傾向も確認されています。
そのほか、TikTokは当初ダンス動画を中心に10代での拡散力が強いとされていましたが、近年はライフスタイルやエンタメなど動画の種類が多様化し、利用者の平均年齢も30代半ばとなりました。
つまり、TikTokは購買意欲が高い若年層に対して広告情報を効果的に拡散できるプラットフォームと考えられます。
参考: 2021年3月Kantarが実施した「TikTok Marketing Science Global Time Well Spent Study」(TikTokマーケティング・サイエンス・グローバル 有効な時間の使い方調査) | TikTok の要請によりNielsenが実施した18歳以上が対象のカスタム確実性調査
TikTokマーケティングの成功事例
次に、中小企業に主眼をおいて具体的な成功パターンを見ていきます。それぞれ分野の異なる企業がどのようにTikTokを活用して、認知向上や売上向上を実現しているのか見ていきたいと思います。
ユニークさを訴求し、ファンを獲得
株式会社SMATは、「ファインズたけだ」という佐賀県伊万里市にある地元密着型の食品スーパーを運営する企業です。現在「ファインズたけだ」のTikTokフォロワー数はおよそ7万人になります。
「日本一面白いスーパー」というキャッチコピーを掲げ、10分程度の長さの企画動画をYouTubeで、店内で放送している独特のユニークなアナウンスを切り取ったショート動画などを主にTikTokで配信しています。
「実際に自分の目で店頭パフォーマンスを見てみたい」「ファインズたけだの雰囲気を味わってみたい」という来店動機の喚起に役立っており、遠方からの来店も多くなったそうです。TikTokを活用することで全国規模に認知を高め、店舗の熱心なファンを増やすことに成功した事例と言えるでしょう。
製造プロセスを開示することで、ワクワク感を喚起
アクセサリー作家prizeさんは、アクセサリーの製作過程の動画を投稿。普段はみることが出来ない商品が完成するまでの過程をコンテンツ化したことで、ユーザーの人気を集めることに成功しています。プレゼント企画も組み合わせることでさらに興味を喚起し続けています。
こうした製造プロセスを開示していく方法もワクワク感を喚起し、購買行動につながりやすい傾向にあります。
リアル拠点の魅力を動画配信し、認知拡大
中央大学商学部は、TikTok LIVEでオープンキャンパスを行ったことで有名です。ライブ配信では現役大学生が、中央大学商学部の魅力やキャンパスライフなどのリアルな声を届けました。
1万人以上もの人が視聴し、商学部の志願者も増えるなど有意な結果を得ることができ、認知度も向上しました。
リアルな拠点を持っているビジネスモデルの企業は、このような手法で認知拡大や情報拡散が狙えます。
接客型販売においてショップスタッフの個性でアプローチ
BMWのオネーサンとは、山形県のBMW正規ディーラーYamagata BMWで働くある女性の通称。BMWのオネーサンは、コロナの影響でディーラーへの来店者数が激減する中で、2020年5月からTikTok運用を開始。BMWのオネーサンがTikTokで配信する動画では、軽快な音楽に合わせてBMWの魅力を紹介しており、山形弁やクルマの屋根に積もった雪下ろしなど、地元山形ならではの特色も取り入れつつコンテンツを展開しました。
このようにショップスタッフの個性や土地の魅力などを複合的に伝えていくことで、興味を喚起し、売上に繋げていくことも可能です。
エンターテイメント性で話題創出、情報拡散
三和交通株式会社は、神奈川県を中心としてタクシーや配送業を行っている地域密着型の企業です。
取締役部長と渉外課長代理の2人によるコミカルな動画が親しみを生み、人気を博しました。
事業とは直接関係しないエンターテイメント性が高いもので幅広くユーザーを引きつけ、パブリシティ獲得と顧客増加を実現した例と言えるでしょう。
汎用性の高い情報を通じて商品を効果的にアプローチ
株式会社クラブコスメチックスの「DAISY DOLL by MARY QUANT」というコスメブランドやファッション通販サイトfifthは、商品そのものに止まらない、メイク動画やファッション動画でファンを増やしました。
ターゲットを明確化したメイク解説動画や、「透けが気になる夏服の対策法」「リボンのキレイな結び方」などちょっとしたお役立ち情報を交えた投稿を作成しています。
ユーザーにとって見ていて飽きないアカウントとしての地位を確立し、いいね数が1万件を超える動画も少なくありません。
このような投稿戦略は、まだブランドの商品を利用したことがない潜在顧客を常に増やしながら、同時に既存顧客にも継続的にアプローチすることができるのでおすすめです。
また、こうしたTikTok施策がや卸やリテールの担当者にも知られたことで、販路開拓にも好影響を及ぼすこともあります。さまざまなステークホルダーに同時にアプローチできるのも、プラットフォームマーケティングの強みと考えられるでしょう。
動画を入口として、成約までの導線に誘導
オンライン不動産仲介サービスのスタイリー不動産は、賃料・間取り・最寄駅といった物件情報+イチオシポイントを紹介したあと、ルームツアーをして物件を紹介する動画を投稿しています。
どの動画も楽曲にナレーションがついていてテンポが良く、かつ実際に内見しているかのような分かりやすさがあって、不動産仲介サービス利用までのハードルを下げています。
キャプションで賃料や敷金・礼金や築年数などの詳細も明記されており、TikTokからLINEでの物件問い合わせへの導線が一貫しているのもポイントです。
採用活動でこれまでアプローチできなかった層に対してリーチする
TikTokは、採用活動ととても相性が良いことも事例から明らかになっています。
首都圏を中心に警備業を行う大京警備保障株式会社の公式アカウントの動画には、社長・部長・課長などのおじさん社員が出演。
中年男性がTikTokで流行っているダンスを踊ってみたり、若者に人気のスイーツを食べたり、プリクラを撮ったりと、おじさんらしからぬ投稿内容のギャップが支持につながっています。
また、製造業や派遣業を営む三陽工業株式会社も、ものづくりの技能承継をしていくために、若い人材の採用強化を狙ってTikTok運用を開始しました。
和気あいあいとした楽しそうな社内の様子が伝わる動画を投稿することで、新卒採用への応募人数も増え、最終的な内定者の3割はTikTokからの流入であったことが話題になりました。
まとめ
今回の記事では、TikTokマーケティングの動向と中小企業のTikTokマーケティング成功事例について具体的にご紹介してきました。成功パターン別に具体例を見ていくことで、自社のビジネスモデルに合致する活用方法を考える時のヒントになるかもしれません。ぜひこの記事を参考に、自社にとって最適なTikTokでのマーケティングの実施を検討してみてはいかがでしょうか。
※参考文献
『令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』