中小企業の働き方改革ガイド|今すぐ使える制度・助成金・実践例まとめ

中小企業の働き方改革ガイド|今すぐ使える制度・助成金・実践例まとめ

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少子高齢化による人手不足、多様化するライフスタイル、そして法制度の見直し。こうした社会の変化に対応するため、日本では「働き方改革」が国を挙げて進められています。

働き方改革というと大企業向けの施策に見えがちですが、実は中小企業こそこの改革のメリットを大きく活かせる存在です。職場環境の改善はもちろん、人材確保や定着率の向上、そして企業の魅力アップにもつながります。

本記事では、厚生労働省の「働き方改革ガイドライン」を中心に、中小企業が何から取り組むべきか、どんな制度や助成金が活用できるのかを、事例や制度紹介を交えながらわかりやすく解説していきます。

働き方改革ガイドラインとは?中小企業に必要な理由

会社で仕事をする人たち

働き方改革ガイドラインは、厚生労働省が企業向けに示した実務的な手引きです。法令の背景や制度の解説だけでなく、「企業としてどのように職場を整えるべきか」という運用面までをカバーしています。

特に中小企業にとっては、制度対応に不安を感じやすい労務管理の「マニュアル」として活用でき、以下のようなメリットがあります。

・就業規則や36協定の整備に活用できる

・法令違反やトラブルの未然防止につながる

・助成金申請時の条件をクリアしやすくなる

たとえば、「時間外労働の上限規制」や「年5日の有給休暇取得義務」といった制度も、ガイドラインに沿って対応を進めることで、スムーズかつ確実な運用が可能になります。

中小企業が取り組むべき具体策

中小企業が実践すべき働き方改革のポイントは、大きく以下の5分野に分かれます。

1. 労働時間の適正な管理

労働時間は、タイムカードやPCログなど客観的な方法で記録することが求められています。特に36協定を超える労働が発生する場合には、面談や健康管理の実施が必須です。

2. 有給休暇の取得推進

10日以上の有給がある従業員には、年5日の取得を企業側が確実に実施する責任があります。計画的付与制度の導入などが効果的です。

3. 柔軟な働き方の導入(テレワーク・フレックスタイム制)

テレワーク導入の際は、機器の整備・労務管理のルールづくり・評価基準の明確化などがポイントです。フレックスタイム制導入時も同様に、事前の制度設計が重要です。

4. 副業・兼業への対応

政府は副業を「原則容認」の立場としています。企業は副業に関する就業規則の整備や、労働時間の通算ルールを明確にしておくことが求められます。

5. 非正規雇用の処遇改善

「同一労働同一賃金」の考え方に基づき、正社員との待遇差に合理性があるかを説明できる体制が必要です。

働き方改革の事例|具体的な取り組みとは?

リモートワークをする女性と赤ちゃん

働き方改革と聞くと「大企業向けの施策では?」と感じる中小企業の方もいるかもしれません。しかし、小規模な組織でも、身近な工夫や制度導入によって働き方改革は実現可能です。

厚生労働省が発行した『働き方・休み方改革 取組事例集(2025年3月)』には、業種・規模を問わず実践された多様な取り組みが紹介されています。ここでは、その要点と注目の事例をわかりやすくご紹介します。

改革が求められる背景とは?

日本では、以下のような働き方に関する課題が依然として残っています:

・週60時間以上働く人の割合は8.4%(政府目標:5%以下)

・年次有給休暇の取得率は65.3%(政府目標:70%以上)

・テレワークや週休3日制など、柔軟な働き方を導入する企業は徐々に増加中

こうした背景のもと、「時間の使い方」や「休み方」を見直す動きが、全国の企業で加速しています。

働き方改革の目的タイプと対応例

ガイドラインでは、働き方改革の目的を次の3タイプに分類し、それぞれに対応する制度や工夫が整理されています:

タイプ 目的 主な取り組み例
① 適正な働き方 長時間労働の抑制、有休取得促進 36協定の見直し、有休の計画付与
② メリハリある働き方 繁閑に応じた柔軟な休暇取得 年間休日の見直し、連続休暇制度
③ 柔軟な働き方 時間・場所・日数の選択肢拡大 フレックス、テレワーク、週休3日制

注目の中小企業事例

① 株式会社コスモスケア(介護・300〜999人)

【主な取組内容】

1.選択的週休3日制の導入

1日の所定労働時間を8時間から10時間に延ばし、総労働時間・給与を維持する形で運用。 ​週休3日で働く職員が約8割。

2.業務やシフトの見直し

週休2日と週休3日の職員が同じ職場で働けるように調整。

3.制度導入時の丁寧な説明

職員の懸念を払拭し、制度のメリット・デメリットを伝える。

4.管理職の負担軽減とICT化

業務の棚卸や見守り機器の導入を進め、業務効率化を図る。

【成果】

1.離職率の低下

毎年6人程度いた離職者が0人に。

2.採用面の効果

「年間休日154日」というキーワードで応募者が増加。

3.職員の満足度向上

休みが増えたことで家族との時間が増え、精神的な満足度が高まる。

②株式会社デジス(情報通信業・29人以下)

【主な取り組み内容】

1. 長時間労働の抑制と業務の効率化

・勤怠管理ツール導入で勤務時間を分単位で正確に把握。

・日々の業務状況をチーム内で共有し、必要な残業のみを実施。

・残業理由を終業前に共有し、周囲からのフォローも可能に。

2. チーム制による業務体制と育成の両立

・3~10人規模のチームで案件対応し、属人化を回避。

・若手とベテランの混成チームにより、休みやすさと育成を両立。

・案件は設計から一貫して対応する方針とし、保守だけの案件は受注しない方針。

3. 柔軟な勤務環境の整備

・ニアショア開発をきっかけにリモートワークを導入。

・セキュリティ対策としてISMS・QMS取得、端末管理ツールの活用。

・原則出社としつつ、県外在住者や週1日の在宅勤務も容認。

4. 年次有給休暇の取得促進

・取得目標の設定、計画的付与、奨励日の設定。

・時間単位での有給取得制度を導入(2023年)。

・申請・承認をチャットツール経由で可能にし、ハードルを軽減。

5. 全社的な改革推進体制

・働き方改革を管理職に集中させず、若手も含めたチームで分担。

・管理職の負荷を軽減し、当事者意識の醸成。

・社内風土として働き方改革を日常的に見直す文化を形成。

【成果】

・年次有給休暇の取得率が76%に向上。社員が自分のタイミングで休みを取りやすくなった。

・チーム体制の導入により、社員の帰属意識やモチベーションが向上。スキルアップやチーム貢献への意識が高まった。

・リモートワーク環境の整備により、県外在住者の採用も実現。就業継続や人材確保に貢献。

・社内の雰囲気が「休めない」から「明るく働ける」ものへと転換。

・顧客との取引にも好影響。働き方改革を意識する顧客との関係性構築が進む。

③株式会社中尾清月堂(製造業・社員数:30~99人)

【主な取り組み内容】

1. 柔軟な勤務制度の導入

・選択的週休3日制:2017年より導入。理由を問わず誰でも利用可能。繁忙期以外は水曜・日曜+希望曜日を休日とする固定制。給与は勤務時間に応じて調整。

・短時間勤務制度:同年導入。育児・介護の有無を問わず、始業時間を遅らせる形で勤務可能。1日の勤務時間に応じて給与も調整。

2. 職人気質からチーム・工場生産への転換

・熟練職人の技術や勘をデータ化・可視化して標準化。

・工場の機械化と工程分担により、チームで製造を行う体制に転換。

・誰かが休んでもチーム内でカバー可能な仕組みを構築。

3. マネジメントと育成の工夫

・柔軟な働き方をしている社員でもマネジメント職に登用し、キャリア形成を支援。

・目標設定・1on1ミーティング・代替対応体制などで支援体制を整備。

・「見て覚える」育成方法から、難易度別の段階的習得法へ転換。

4. 勤務場所の柔軟化(テレワーク導入)

・2022年から一部職種(デザイン、企画、事務等)でテレワークを導入。

・導入背景は、子育て中の社員支援のため。

・製造部門では実施していないが、柔軟な風土により部門間での不公平感は生じていない。

【成果】

・残業削減:製造時間の見直し(5~6時間)や一元化された生産計画により、残業が発生しにくい環境を整備。

・人材定着・確保:柔軟な働き方の選択肢があることで、特に女性社員の定着率向上や採用時の魅力アップに寄与。

・社員のモチベーションとキャリア形成の支援:柔軟に働きながらマネジメント職を担うロールモデルの登用で、若手にも前向きな影響。

・組織風土の変化:「心の生産性向上」を重視し、社員のプライベート充実が企業の成長と品質向上に直結するとの理念のもと改革を推進。

・変化に対応する柔軟な体制:生産計画が複雑化する面はあるが、社員からは好評。今後も多様なニーズに応える改革を継続予定。

④株式会社フジワラテクノアート(製造業・社員数:100〜299人)

【主な取り組み内容】

1. 経営理念・人事制度の刷新

・社員インタビューを通じて課題を可視化し、2017年に人事制度を改革。仕事の“量”から“質”での評価へと転換。

・複雑だった資格制度を整理し、職種共通の基準で評価。報酬・昇格への納得感を重視。

・同時に経営理念を再構築し、「醸造を原点に世界で微生物インダストリーを共創する」という2050年ビジョンを策定。

2. 「個人別5か年ビジョン」の導入

・2022年より社員一人ひとりに中期的なキャリアビジョンを設定。

・専門性や希望職種に応じた目標を明確化し、同じ領域の社員同士で連携・チーム体制を構築。

・社員ビジョンは全社マップ化して相互参照を可能にし、個人商店化からの脱却を図る。

3. 多様な働き方を支える制度整備

・時間単位の年次有給休暇制度を導入(2020年、社員の発案による)。

・在宅勤務制度や短時間勤務制度を整備し、性別・年齢・ライフイベントを問わず柔軟な勤務が可能。

・例:育児と博士論文執筆を両立し、在宅勤務・短時間勤務で管理職と研究開発を継続する女性社員も。

4. 心理的安全性とダイバーシティの推進

・女性活躍推進からダイバーシティ全体へと拡大。

・制度だけでなく、社員同士のリスペクトや公平な評価文化を醸成。

・時間制約のある社員も成果を出せる組織風土を整備。

5. 育成体制とマネジメントの明文化

・マネジメントの手法を「マネジメントウェイ」として冊子に明文化し、研修・ワークショップで浸透。

・ベテラン社員が後輩育成に喜びを見出す風土が形成。

・「背中を見て学ぶ」から、言語化された育成方法への転換。

【成果】

・法定外労働時間:月平均40時間(2012年度) → **15.7時間(2023年度)**に削減。

・年次有給休暇取得率:65.9%(2012年度) → **77.9%(2023年度)**へ向上。

・働きやすさだけでなく働きがいも向上:個人ビジョンの実現が自己成長・顧客満足・チーム連携に結びつく好循環を実現。

・採用力向上:女性活躍・ダイバーシティの取組が評価され、企業認知度が向上し理系人材の採用が増加。

・若手育成スピードの向上:体系的な育成の成果として、若手の成長が早まり、社内の活力向上につながる。

・マネジメントの質の向上:管理職がプレイングからマネジメント専任へと移行し、組織運営力が向上。

⑤株式会社山本製作所(製造業・社員数:30~99人)

【主な取り組み内容】

1. 見える化と意識改革による働き方改革の推進

・2019年度から本格始動。勤怠管理システムを導入し、勤務時間を見える化。

・経営トップ自ら働き方改革の必要性を発信し、現場に浸透させた。

・「残業を減らせるのか?」という社員の疑問に応え、まずは労働時間の削減と休暇取得しやすい体制の構築に注力。

2. 多能工化・スキル表によるカバー体制の強化

・各製造部でスキル表を作成し、社員の多能工化を推進。

・一人ひとりのスキル習得を共有し、誰が休んでもチームでカバーできる体制を整備。

・管理職の自主的な改善提案や運用見直しも活発に実施。

3. コミュニケーションを重視した制度導入

・3分間面談(上司と部下の定期対話)を継続実施。

・BB(ビッグブラザー)制度を導入し、社員同士の対話促進。

・双方向のコミュニケーションを重視し、助け合いの職場風土を育成。

4. カイゼン活動・小集団活動による生産性向上

・カイゼン活動:日常業務における小さな改善を社員自ら提案(年間1,000件超)。

・小集団活動:5人前後のチームでテーマに基づき現場課題を解決。発表会を通じて成果を全社共有。

5. 柔軟な休暇制度と手当による生活支援

・年次有給休暇とは別に年1回5日間のリフレッシュ休日を全社員に設定。

・配偶者特別手当・子ども手当を導入・増額し、家庭との両立を支援。

・スケジューリングと希望調整で無理なく全社員が取得できる体制。

6. 管理職も時間制約に配慮した働き方

・育児・介護等の事情がある管理職にも配慮し、労働時間を一般社員と同様に管理。

・業務の引き継ぎや判断基準の明示によって、誰でも役割を代行できるよう体制を整備。

・将来的にはAI・DXの活用によるシフト編成の効率化も検討。

【成果】

・年次有給休暇取得率の向上と所定外労働時間の削減を実現。

・社員の意識が「夜遅くまで働く」から「時間内に終える」へと転換。

・助け合いの文化が根付き、誰もが休暇を取りやすい雰囲気に。

・業務効率の改善:一部業務では作業時間を約4割短縮した事例も。

・管理職も働きやすい環境で活躍し、若手社員にとってもロールモデルとなっている。

・家族との時間の確保や社員のモチベーション向上につながる取組が定着。

・「自分や家庭のために働く」ことを奨励する価値観の共有が浸透。

・社員アンケートによるフィードバックをもとに、取組は現在も進化中。

中小企業でも実践できる制度のヒント

以下の制度は、導入しやすく、効果が期待できる代表的な施策です。

制度名 概要 期待される効果
年休計画付与制度 有休をあらかじめ割り振る 人員調整と取得率UP
勤務間インターバル制度 終業〜次回出勤の間隔を確保 健康維持・過労防止
ノー残業デー 週または月に定時退社日を設定 長時間労働の是正
柔軟な勤務時間制度 フレックス、時差出勤等 私生活との両立促進
週休3日制 勤務日数の選択制 採用力UP・離職率低下

小さな一歩からでも始められる

働き方改革は、「制度が整ってから」ではなく、「できるところから始める」ことがポイントです。

・勤務表や社内ルールの工夫

・有休を取りやすい雰囲気づくり

・経営者が率先して休む姿勢の明示

こうした“小さな変化”が、やがて職場全体の風土を変え、働きやすく魅力ある企業へとつながっていきます。

働き方改革推進支援助成金とは?

働き方改革支援の文字とノート

国や自治体では、中小企業の働き方改革を支援するため、さまざまな助成金・補助金制度を設けています。その中でも代表的なのが、「働き方改革推進支援助成金」です。
本セクションでは、この制度の概要と、活用にあたってのポイントについて詳しくご紹介します。

たとえば、次のようなお悩みはありませんか?

・残業を減らし、労働時間を適正に管理したい

・有給休暇を取りやすい仕組みを導入したい

・勤怠管理の体制を整備したい

・業務の無駄を省き、生産性を高めたい

「働き方改革推進支援助成金」は、こうした取り組みにかかる費用の一部を国が補助してくれる制度です。自社の課題や目的に応じて柔軟に活用できるため、コストを抑えながら働きやすい職場づくりを進めるうえで、有効なサポートとなります。

対象となる企業について

この助成金は、以下の3つの条件を満たす中小企業が対象となります。

1.労災保険に加入していること
従業員の安全を守るため、労災保険への加入が前提となります。

2.年5日の有給休暇取得に向けた規則が整備されていること
就業規則などで、有給休暇の取得促進に関するルールを明文化している必要があります。

3.助成金の対象となる「成果目標」に取り組む意志があること
たとえば残業の削減や労働時間の適正管理など、具体的な目標に向けた計画を立てる準備が求められます。

※なお、たとえば小売業の場合は「資本金5,000万円以下・従業員50人以下」の企業が対象となります(業種によって基準が異なりますので、詳細は公式資料をご確認ください)。

成果目標とは?

この助成金を活用するには、あらかじめ設定された「成果目標」から1つ以上を選び、その達成に向けて取り組むことが必要です。
企業として、単に制度を整えるだけでなく、実際に行動し、働き方改革の成果を目に見えるかたちにしていくことが求められています。

以下の3つの中から、いずれか1つ以上に取り組むことが条件となります。

① 月60時間を超える残業(時間外+休日労働)を削減する

取り組み例:
これまで「月80時間までOK」としていた36協定を、「月60時間以下」に見直すことで、長時間労働の是正を図ります。

② 計画的付与制度を導入する

取り組み例:
会社側があらかじめ「○月○日に有給を取りましょう」とスケジュールを決めて通知することで、従業員が有給休暇を取りやすくなる仕組みをつくります。

③ 時間単位の有給休暇制度、または特別休暇制度を導入する

取り組み例:
有給を1時間単位で取得できるようにしたり、誕生日休暇や家族の看護休暇など、独自の休暇制度を新たに導入することで、柔軟な働き方を後押しします。

これらの目標は、従業員の働きやすさを高めると同時に、企業の魅力向上や人材定着にもつながります。「自社ではどれが実現しやすいか」を基準に選ぶと、無理なくスタートできます。

「取り組む準備があること」とは?

助成金の申請にあたっては、前述の「成果目標」のうち1つ以上に対し、すでに取り組む方針を決めていることが求められます。
つまり、「今すぐ実施していなくても、これから始める準備ができていればOK」ということです。

たとえば、次のような状態が「取り組む準備がある」とみなされます:

・社内で「この目標に取り組もう」と方向性が決まっている

・就業規則の見直しや制度変更など、必要な準備・検討を始めている

・社内周知や導入スケジュールを検討中で、実施に向けた準備が進んでいる

具体的な例:

・「有給休暇の計画的付与制度を、導入する予定がある」

・「現在の36協定を見直して、残業時間の上限を引き下げようとしている」

・「時間単位の有給休暇制度を、今期中に導入する計画がある」

このように、実際の制度変更や運用をスタートする前の段階でも、申請は可能です。
早めに準備を始めることで、申請の選択肢が広がり、よりスムーズに活用できます。

なぜ「準備段階」でOKなのか?

この助成金は、「これから働き方改革に取り組みたい企業」を支援するのが目的です。そのため、すでに目標を達成している必要はなく、「これから目指す」企業も対象になります。

どんな取組が助成対象になるの?

助成金をもらうためには、次のようなことを1つ以上やる必要があります:

・社員や管理者向けの研修(勤務間インターバルなど)

・外部コンサルのアドバイスで業務見直し

・勤怠管理ソフトやICカードの導入

・働きやすくなる機器・設備の購入(例:業務効率化の機械)

何を目指せばいいの?

この助成金を活用するためには、国が定めたいずれかの目標を達成することが条件となります。
企業として、具体的に目指すべき取り組みは以下のとおりです。

選べる目標(いずれか1つ以上)

・月60時間を超える残業(時間外+休日労働)を削減すること

→ 36協定の見直しなどにより、長時間労働を抑制します。

・有給休暇を事前に計画して取得できる制度を導入すること

→ 計画的付与制度を整備し、社員が休みを取りやすくします。

・時間単位の有給休暇や特別休暇制度を導入すること

→ 働く人の事情に合わせた柔軟な休暇制度を整備します(例:誕生日休暇・家族の看護休暇など)。

さらに、あわせて「賃金の3%以上アップ」を実施した場合は、追加の助成金を受け取ることも可能です。働きやすい職場づくりに加えて、社員のモチベーションアップや定着促進にもつながります。

目指すゴールを明確にすれば、制度の導入や社内への周知も進めやすくなります。
「自社にとって実現しやすい目標はどれか?」という視点から、最適な選択を検討してみましょう。

いくらもらえる?

助成金でもらえる金額は、取り組む内容や会社の規模によって異なります。成果目標の種類ごとに上限額が設定されており、条件によっては加算や補助率の引き上げもあります。

成果目標ごとの上限額

成果目標①(残業の削減)

最大 150万円(見直す残業時間数により変動)

成果目標②・③(有休の計画的付与・特別休暇の導入など)

それぞれ最大 25万円

成果目標④(賃金引上げ加算)

3%以上の賃上げを行った場合、最大360万円まで加算
(対象人数や引上げ率に応じて金額が変動)

補助率について

・通常は、かかった費用の3/4を補助

・従業員が30人以下で、かつ機器の導入(例:ICカード・勤怠システムなど)を含む場合は、補助率が 4/5 にアップします

具体的な例

・月60時間を超える残業を「60時間以内」に見直す → 最大150万円

・有給休暇の計画的付与制度を導入 → 最大25万円

・ICカードなどの勤怠管理ツールを導入 → 費用の最大4/5を補助(条件あり)

・賃金を3%以上アップ → 最大360万円の加算(人数に応じて)

こうした制度をうまく活用することで、職場環境の改善とコスト削減を同時に進めることができます。「うちの場合はどのくらい対象になるのか?」という個別のシミュレーションも可能ですので、気になる方は専門機関や支援窓口に相談してみるのもおすすめです。

スケジュールと申請の流れ

1.申請締切:2025年11月28日(金)まで

2.取組の実施期限:2026年1月30日(金)まで

3.助成金の申請期限:2026年2月6日(金)まで

※予算に限りがあるため、早めに締め切られる可能性があります。

どこで申請できるの?

・書類の提出先:お近くの「労働局 雇用環境・均等室」

・電子申請も可能です → jGrantsポータル

この助成金は、社員の働きやすさを整えながら、会社の生産性も上げられるチャンスです。

設備導入・業務改善・勤怠管理の見直しなどに取り組む予定がある方は、ぜひこの制度の利用をご検討ください。

2025年4月スタート!育児・介護法改正とは?

子育てをする父親

2025年4月から施行された育児・介護休業法の改正により、育児や介護と仕事の両立をより一層支援する制度が整備され、企業としてもその対応が求められるようになりました。

具体的には、子どもの看護休暇の対象が小学校3年生までに広がり、取得理由も柔軟になり、さらにパートタイム勤務者にも適用可能となりました。

また、3歳未満だった残業免除の対象が小学校入学前まで拡大され、短時間勤務が難しい場合はフレックスやテレワークの導入も推奨されます。

さらに、従業員300人超の企業では男性の育休取得状況の公開が義務化され、介護に関しても、休暇取得条件の緩和や、研修・相談窓口などいずれかの支援施策の実施が企業の義務となります。40歳以上の社員への制度案内義務も新たに加わり、該当社員への個別対応も必要です。

企業としては、これらの変更を踏まえて就業規則の見直しや柔軟な働き方の整備、社内体制の整備を進めることが重要です。

加えて、厚生労働省の「両立支援等助成金」を活用すれば、制度導入にかかる費用の一部を補助してもらえるため、金銭面での負担軽減も期待できます。

両立支援等助成金とは?

両立支援等助成金は、厚生労働省が中小企業を対象に設けている制度で、仕事と育児・介護・治療の両立を支援するための取り組みに対して支給される助成金です。
育児休業の取得促進、職場復帰支援、介護や不妊治療への対応など、多様なニーズに対応する複数のコースがあります。

主な支給コース(2025年度)

以下の6つのコースがあります。企業の状況や従業員のライフステージに合わせて活用できます。

コース名 主な目的 支給額の例
出生時両立支援(子育てパパ支援) 男性育休取得を促進 最大60万円
介護離職防止支援 介護休業や制度利用の促進 1人最大40万円+支援制度最大25万円など
育児休業等支援 育休取得・職場復帰支援 各30万円
育休中等業務代替支援 業務代替者への手当や新規雇用に対して支給 最大140万円(業務体制整備+手当支給)など
柔軟な働き方選択制度等支援 フレックスや時差出勤などの制度導入と利用 最大25万円
不妊治療・女性の健康課題支援 不妊治療や月経、更年期への対応制度の導入と活用 各30万円

どんな会社が対象?

助成金の対象となるのは、一定の規模以下の中小企業です。例えば:

・小売業・飲食業:資本金5,000万円以下 または 従業員50人以下

・サービス業:資本金5,000万円以下 または 従業員100人以下

・卸売業:資本金1億円以下 または 従業員100人以下

・その他の業種:資本金3億円以下 または 従業員300人以下

具体的な活用例

・男性社員が子どもの出生後8週以内に5日以上の育児休業を取得 → 20万円の助成金

・育休中の業務を代替するため新たに派遣社員を受け入れた → 期間に応じて最大67.5万円

・育児や介護のためにフレックスタイム制度やテレワーク制度を導入し、実際に活用された → 20〜25万円

こんな企業におすすめ!

・育児・介護・治療と仕事の両立を支援したい

・男性の育休取得を促進したい

・社内制度を整備して、採用力・定着率を高めたい

・「何から始めればよいか分からない」けど支援は活用したい

申請の流れと注意点

・準備段階でも申請可能(例:育休制度の見直しを検討中など)

・一部コースは「1事業主1回限り」や「併給不可」などの制限あり

・「仕事と家庭の両立支援プランナー」による無料支援も活用可能

より詳しい要件・手続きについては、厚生労働省の公式サイトまたは都道府県労働局にて確認できます。

働き方改革ガイドライン対応チェックリスト(2025年版)

最後に、チェックリストをご用意しましたので、ぜひご活用ください。

① 時間外労働の上限規制(36協定)

チェック項目 対応状況
36協定を最新の法定上限(年720時間・月100時間未満)で締結しているか? ✅ / ❌
特別条項の理由や健康配慮措置を記載しているか? ✅ / ❌
労基署に36協定を提出済みか? ✅ / ❌

② 年5日の年次有給休暇取得義務

チェック項目 対応状況
年10日以上の有休がある社員に、年5日を取得させているか? ✅ / ❌
時季指定の実施記録(管理簿)を3年間保存しているか? ✅ / ❌
計画的付与制度を導入している(任意) ✅ / ❌

③ 残業60時間超の割増賃金率(50%)

チェック項目 対応状況
月60時間を超える残業に50%の割増を支払っているか?(2023年4月~中小企業にも義務) ✅ / ❌

④ 労働時間の適正把握

チェック項目 対応状況
タイムカード・ICカード・PCログなど、客観的な方法で勤怠を記録しているか? ✅ / ❌
自己申告制の場合、実態との乖離を定期的にチェックしているか? ✅ / ❌

⑤ テレワーク・フレックスタイム導入(柔軟な働き方)

チェック項目 対応状況
フレックスタイム制や時差出勤、在宅勤務制度を導入しているか? ✅ / ❌
3歳未満の子を持つ社員にテレワークなどの選択肢を示しているか?(努力義務) ✅ / ❌

⑥ 育児・介護両立支援(法改正2025年4月~)

チェック項目 対応状況
子の看護等休暇の年齢上限を「小3修了まで」に見直しているか? ✅ / ❌
育児・介護に関する社内相談窓口を設置しているか? ✅ / ❌
育児・介護制度の案内を、対象者や40歳到達者に個別周知しているか? ✅ / ❌

⑦ 同一労働同一賃金(非正規雇用への対応)

チェック項目 対応状況
正社員と非正規社員の待遇差に合理性があるか? ✅ / ❌
非正規社員に待遇差の内容・理由を説明しているか? ✅ / ❌

✅=対応済み、❌=未対応 でチェック

まとめ|改革を「コスト」ではなく「投資」に変える視点

働き方改革は、単なる制度対応ではありません。中小企業にとっては、人材を集め、定着させ、生産性を上げるチャンスでもあります。

制度や助成金を活用しながら、「働きやすく、働きがいのある職場づくり」に取り組むことこそ、これからの時代に選ばれる企業への第一歩です。

「今、何から始めればよいか」を明確にし、まずは自社に合った改革の第一歩を踏み出してみましょう。

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