DXは誰のためか? 経営と現場をつなぐ地域変革の処方箋とは?

DXは誰のためか? 経営と現場をつなぐ地域変革の処方箋とは?

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2025年12月17日、岩手県一関市で開催されたIT活用セミナー「DXで企業の未来を拓く」。各登壇者による講演の後には、和やかな雰囲気の中でパネルディスカッションが行われ、会場からの質問も交えながら活発な意見交換が続きました。

登壇したのは、自治体や地方銀行のDX推進に携わってきた相澤謙一郎氏と、500社以上のデータ活用を支援してきたGene Inc.取締役の大薮悟志氏。地方・中小企業がDXを進めるうえで直面する共通課題や、パートナー選定、内製化・人材育成の考え方など、実践に即したテーマについて率直な議論が交わされました。

【講師プロフィール】

〇相澤謙一郎氏
タイムカプセル株式会社代表取締役/ヨコスカバレーボードメンバー横須賀生まれ、横須賀育ち。明治学院大学法学部卒業。19才で起業し、どぶ板通りでBARを開業。その後、株式会社ぱど、株式会社ユニメディアを経て、2010年Eagleを創業。2013年、岐阜県大垣市にてタイムカプセルを創業。

300本以上のスマホアプリの開発にたずさわり、累計のアプリダウンロード数は1,000万を超える。初期のヒット作『ちゃぶ台返し』のほか、『あべぴょん』、『横浜F・マリノスコレクションカード』などが好評を博す。県立岐阜商業高等学校、県立東濃実業高等学校にてアプリ開発の講師を担当。経営理念「熱意ある人が いつでもどこでも 挑戦できる社会を作る」ことを実現するため全国を駆け巡る。

共著「これからの自治体産業政策-都市が育む人材と仕事-」

〇大薮 悟志氏
Gene Inc.取締役
これまでに500社、30業界以上のデータ活用を支援。
新規集客からCRMまでのマーケティング全般に幅広く深い知見を持ち、お客様ごとに最適なアプローチを設計。
単なる施策提案にとどまらず、実行から伴走支援までを一貫して手厚くサポートする姿勢が評価され、多くの企業の成果創出に貢献してきた実績を持つ。

 

地方・中小企業におけるDXの“入口”と共通課題

堀内:それでは、各講師の皆さまのご講演を踏まえ、ここからパネルディスカッションに移らせていただきます。

地方都市におけるDX推進の現状や共通課題、さらに“成果につながる進め方”や地域での体制づくりについて、登壇者の皆さまと議論を深めてまいります。

まずは相澤さんにお伺いします。これまで大企業のDX支援に加え、中小企業向けプロダクトの提供にも携わってこられたご経験を踏まえ、地方・中小企業でDXに取り組む際に起点となる課題、そして最初に押さえるべきポイントについて、ご見解をお聞かせいただけますでしょうか。

相澤:講演で触れましたが、地域ごとの課題は全国的に共通していると感じています。例えば公共施設の予約システムでは、オンライン予約はできても決済まで完結しない自治体が多く、紙ベースや窓口対応が残っているケースも少なくありません。これは都市部・地方の違いというより、全国共通の課題です。教育や学校分野でも状況は概ね横並びだと感じています。

一方で、特定分野で先進的な取り組みを進めている自治体もあります。私が関わる中では、岐阜県飛騨市が窓口DX・窓口BPRを先進的に進めている好事例です。こうした事例から学び、横展開していくことが重要だと考えています。

堀内:ありがとうございます。大藪さんは各地での取り組みをどのようにご覧になっていますか。

DXが目的化してしまう現場で起きていること

大藪:現場で強く感じる点は大きく2つあります。1つ目は、DXやデジタル導入が目的化してしまっているケースが多いことです。先進事例に追随するあまり、「何のためにやるのか」という議論が抜け落ちてしまうことがあります。私たちはまず、「事業のどこをどう改善したいのか」を整理することを重視しています。DXはあくまで事業改善の手段であるべきだと考えています。

2つ目は、「早くやらなければ」という焦りから、比較検討の時間が取れず、選択肢が狭まってしまうことです。結果として相場観が持てないまま提案を受け入れてしまい、過剰な仕様や不必要に高額な見積もりにつながるケースがあります。例えば奈良県のある企業では、比較的シンプルな開発にもかかわらず約1,000万円の見積もりが提示されていました。複数社比較や要件の整理を行えば、より適正な範囲で実現できた可能性が高いと感じます。

こうした状況では、本来の課題解決よりも「導入すること」や「作ること」にコストが寄ってしまい、結果としてDXの本質から外れた投資になりかねない点を課題に感じています。

堀内:ありがとうございます。今お話にあった「本来不要な部分にコストがかかってしまう」という点については、先ほど相澤さんからも同様の指摘がありました。こうした状況に直面した際、実際にはどのような助言や支援を行っていらっしゃるのでしょうか。

DXを成功に導くパートナー選定の視点

相澤:信頼関係が築けているクライアントには、見積内容の妥当性を内部に近い視点で確認し、過剰な部分があれば率直にお伝えしています。そのためにも、外部支援者であっても単なるベンダーではなく、内部視点で伴走できるパートナーを持つことが重要です。そうした存在が、不要なコストを避け、本質的な投資判断につながると考えています。

堀内:ありがとうございます。そうした助言や支援を担うパートナーを選ぶ際には、どのような点を重視すべきでしょうか。判断の基準があれば教えてください。

相澤:私たちが重視しているのは、地域密着型であることです。理想的には、企業自身がデジタルリテラシーを高めていくべきですが、それにはどうしても時間がかかります。

そのため短期的には、地域内で信頼できるパートナーを見つけることが重要だと考えています。同じ地域で事業を行う以上、簡単に責任から逃げることはできず、信用を前提とした関係を築きやすいからです。

一関市においても、デジタルラボのような拠点が中心となり、地域全体のDXを支えていく体制が構築されていくことが理想だと思います。

堀内:ありがとうございます。地域密着という視点が示されましたが、この点について、大藪さんはどのようにお考えでしょうか。

大藪:パートナー選定においては、そもそも選択肢が限られていること自体が課題になるケースも多く、注意するだけで防げる問題ではない場合もあります。

その上で有効だと考えているのは、できる限り複数の見積もりを取ることです。対面で会える事業者に絞らず、地域外も含めて2〜3社を比較することで、相場観を持ちやすくなり、過度に高額な提案や不透明な条件を抑えることにつながります。

こうした比較のプロセスを踏むことが、結果として、より健全なパートナー選定につながると考えています。

DX内製化と人材育成はどこまで目指すべきか

堀内:ありがとうございます。外部の知見を活かす重要性がよく理解できました。一方で、最終的には内製化を目指すケースも多いかと思います。相澤さんは、内製化をどのようなプロセスで進めていらっしゃるのでしょうか。

相澤:まず、中長期的な経営リスクの観点から、内製化の必要性をご提案しています。すべてを外注し続けることは、10年、20年先を見据えると大きなリスクになり得るためです。この点は経営層から理解を得やすく、方針が固まった段階で人事部門と連携し、採用支援から関わります。

入社後の研修や育成、現場でのOJTまで、伴走型で支援しています。開発現場では、外部チームと新たに採用した人材が共同でプロジェクトを進めることで、技術面だけでなくマネジメント面の課題も補っています。こうした深い関与が可能な企業に限られますが、早いケースでは3年ほどで内製チームが立ち上がっています。

堀内:ありがとうございます。内製化を伴走型で進めていくイメージがよく分かりました。この点について、大藪さんはいかがでしょうか。

大藪:弊社では、内製化は領域ごとに考え方を分けています。大きくは、システムの開発・導入と、導入後のマーケティング運用の2つです。

システム開発の内製化については、事業理解と技術理解の双方を担うPMが必要となり、難易度が高いため、積極的にお勧めするケースは多くありません。

一方で、マーケティング領域は、業務設計次第で内製化が可能だと考えています。まず業務フローを整理し、約1年ほど伴走しながら運用を行い、段階的に役割を移行します。最終的には、クライアントが自走できる体制を目指しています。

堀内:自走段階に移行した後の人材育成は、どのように行っているのでしょうか。

大藪:基本的にはOJTに近い形です。最初の約半年は私どもが主導して実務を進め、業務内容や判断基準を現場で学んでいただきます。その後はクライアント側が実務を担い、私どもは確認や相談対応などの支援に回り、段階的に役割を移行します。座学中心の研修は行わず、実務を通じて判断基準をすり合わせていく、実践重視の育成を行っています。

経営と現場のズレがDXを失敗させる理由

堀内:ありがとうございます。では次に、実際にDXを推進する立場から見て、現場で直面する最大の障害や課題について伺いたいと思います。相澤さん、いかがでしょうか。

相澤:最大の障害は、「DXを導入しなくても、今は事業が回ってしまっている」状況そのものだと思います。

経営判断でDXに着手するケースは多い一方で、現場では必要性が十分に共有されていないことも少なくありません。その結果、導入すること自体が目的化し、システムが使われないまま終わってしまうケースが多く見られます。これは現場で見てきた中でも、非常に大きな課題だと感じています。

堀内:そうした状況に直面した場合、どのような対応が望ましいとお考えでしょうか。

相澤:残念ながら、補助金を活用して導入したものの、保守期間が終わると使われなくなってしまうケースは少なくありません。その結果、「数年取り組んだが何も変わらなかった」という評価に終わることもあります。

DX本来の目的を考えると、こうした形は避けるべきです。早い段階から現場を巻き込み、活用を前提とした設計と運用を行うことが重要だと考えています。

「何のためのDXか」を問い直す

堀内:ありがとうございます。では、無駄なDXを避けるために、特に意識している点について、大藪さんのお考えをお聞かせください。

大藪:最も重要なのは、取り組みを始める段階で「何のためにDXを行うのか」を明確にすることです。その方向性を示す経営層が、DXを正しく理解した上で意思決定することが不可欠だと思います。少し厳しい言い方になりますが、まずは経営者自身が学び、理解を深めることが重要だと考えています。

堀内:ありがとうございます。では、その前提のもとで、実際に新たな価値や現場の強みを見つけていく際には、どのような進め方やポイントを意識されているのでしょうか。

大藪:まずは、現場で日々行われているオペレーションを丁寧に紐解くことが重要だと考えています。経営層が現場業務を十分に把握しないままDXの議論が進んでしまうケースは少なくありません。

現場には、経営側が把握していない業務や工夫が数多く存在します。実際の業務を可視化していくことで、「このプロセス自体が価値になっている」と気づくこともあります。

また、現場側が自分たちの取り組みをきちんと発信することも重要です。私たちが支援に入る際も、ヒアリングを通じて想定外の業務や工夫が見えてくることが多く、こうしたギャップを可視化することが、新たな価値創出の第一歩になると考えています。

堀内:例えば、どのようなケースでしょうか。

大藪:例えばアパレル企業の事例ですが、店舗スタッフが来店客の顔や名前、購入履歴をメモし、接客に活かしているケースがありました。こうした工夫は現場では当たり前でも、経営層が把握していないことがあります。

そのまま現場を見ずにツールを導入すると、実態と合わない設計となり、従来の柔軟な対応ができなくなることもあります。

こうしたズレを防ぐには、現場が日々の工夫を共有し、経営層がそれを理解した上でDXの進め方を判断することが重要だと考えています。

地方におけるDX人材採用と育成のリアル

堀内:ありがとうございます。続いて、IT分野におけるDX人材の採用について伺います。相澤さんは採用代行にも取り組まれているそうですが、現在の施策を教えてください。

相澤:弊社の採用事例としてお話ししますと、DX人材については、地方において継続的かつ実践的な採用活動を行ってきました。各地域の高専や高校、大学と直接連携し、毎年足を運んで関係を築くことで、学校経由での採用につなげています。

首都圏では大企業と同じ土俵での採用競争は難しいため、「気仙沼にいながらフィンテックやゲーム開発に携われる」といった、地域拠点ならではの働き方を打ち出してきました。この取り組みは佐賀、岐阜、大阪など他の拠点でも行っており、これまでに約60名の採用につながっています。

こうした経験を踏まえると、地域に根差した採用活動は、地方企業にとって大きな差別化要因になり得ると考えています。例えば、大垣共立銀行さんのように地域で高い認知度を持つ企業であれば、全国一律の採用活動よりも、地元での信頼や知名度を活かした採用戦略の方が効果的ではないでしょうか。

地域に根差し、「この地域で働く意味」を明確に打ち出すことが、DX人材採用における重要なポイントだと思います。

堀内:若年層の採用は年々難しくなっていますが、どのような点を訴求することが効果的だとお考えでしょうか。

相澤:若い世代の中にも、一定数の安定志向の方がいます。例えば、大垣共立銀行さんや刃物メーカーのように地域で認知度の高い企業は、「安心感」という点で大きな強みがあります。

都市部で働きたい層もいますが、全員がそうではなく、感覚的には2〜4割程度は「地元で働きたい」と考えています。その中には優秀な人材も多いです。そうした層に対して、地域で働く価値や魅力を丁寧に伝え、掘り起こしていくことが、地域に根差した採用につながると考えています。

堀内:そのような採用の流れが一度できると、その後は進めやすくなるのでしょうか。

相澤:はい、非常に大きな効果があります。学校側に「この企業は新卒エンジニアを継続的に採用している」という認知が広がると、学校から優秀な学生を紹介していただけるようになります。

このような好循環が生まれることで、単発ではなく、継続的な採用が可能になります。弊社が50〜60名規模まで人材を拡大できたのも、この流れを早い段階で作れたことが大きかったと感じています。

地方企業にとっては、まずこの採用の好循環を意識的に作ることが、DX人材確保の重要なポイントになるのではないでしょうか。

堀内:ありがとうございます。関連して伺いますが、大藪さんのところでは、採用や採用代行まで含めた支援を行っているのでしょうか。それとも、人材育成を中心に支援されているのでしょうか。

大藪:私どもは、最終的に「社内で自走できる状態」をつくることを目的に支援しています。最初は実務を伴走しますが、人材が育つにつれて、徐々に役割を社内へ移していく形です。そのため、採用そのものを直接支援することは行わず、あくまで育成と自走化に重点を置いています。

堀内:若い世代の育成に関わる機会も多いかと思いますが、最近の若い世代の特徴や、育成にあたって意識すべき点についてはいかがでしょうか。

大藪:個人的な印象ですが、最近の若い世代は非常に真面目で、与えられたことにきちんと向き合う方が多いと感じています。

弊社でも大学生インターンを受け入れていますが、教えたことをしっかり理解しようとする姿勢が見られます。10年前と比べても、全体として真面目で勤勉な人材が増えている印象です。

DXは地域経済縮小にどう向き合えるのか

堀内:ありがとうございます。人材の定着や育成は、企業単体だけでなく、地域全体の課題でもあるように感じます。そこで次に、地方経済の縮小という大きなテーマについて伺いたいと思います。DXや意識改革によって状況を変えていくことは可能なのでしょうか。相澤さん、いかがでしょうか。

相澤:地域経済の縮小は、私自身も長年現場で見てきた課題です。最大の要因は、「人が地域に残りにくい」ことだと感じています。地元の大学や高専を卒業しても、半数以上が都市部へ流出するケースがほとんどです。実際、宮崎県高千穂町の取引先では、地元高校の同級生で地元に残ったのは一人だけ、という話もありました。多くは福岡や熊本、東京へ移っています。

統計的にも、優秀な人材ほど都市部に流れやすく、これは短期的な現象ではなく、長年続く構造的な課題です。この状況では、地域経済の活性化は容易ではありません。だからこそ、地域企業が収益力を高め、企業体力を強化していく努力が不可欠だと考えています。

福利厚生や報酬面では都市部との差がありますが、少しずつでも差を縮めていく必要があります。これは一企業だけで解決できる問題ではなく、地域全体で力を合わせて取り組むべき課題だと感じています。

堀内:ありがとうございます。地域経済については、事業としてしっかり取り組むことも重要だということですね。この点について、大藪さんはいかがお考えでしょうか。

大藪:私は、地域経済の縮小には抗えると考えていますし、弊社としても将来的に状況を変えていく構想を検討しています。

大きな課題は、地域の中で投資と消費が十分に循環していない点です。全国企業や外資系企業に地域が投資しても、利益が地域外へ流出してしまうケースは少なくありません。そこで重要なのが、投資と消費が地域内で回る仕組みをつくることです。規模は小さくても、回転数が高まれば地域経済の活力は向上します。

現在は、生協さんと連携し、各地域の成功事例やノウハウを横断的につなぐ構想を進めています。加えて、ナレッジ共有だけでなく、それを実行できる人材を育成し、再び地域へ戻す仕組みづくりも検討しています。こうした取り組みを通じて、地域内で投資と消費が継続的に循環する構造をつくることが、重要なポイントだと考えています。

会場からの質問:小規模地域・一次産業DXのヒント

司会者:ありがとうございます。ここからは会場の皆さまからご質問をお受けします。ご質問のある方はお願いいたします。

質問者①:本日はありがとうございました。私は岩手県八幡平市から参加しています。人口約2万人の町で、この10年で人口が約3割減少しており、DXは喫緊の課題だと感じています。一関市と比べると規模も産業構造も異なり、第三次産業以外、特に第二次産業や農業・林業といった一次産業では、DXの効果が見えにくく、有効な提案が難しいのが現状です。

私自身、人材関連事業とDX支援に取り組む中で、地域に根差した明確なソリューションを打ち出す難しさを感じています。ラボ型や伴走型のアプローチには可能性を感じる一方、人材を抱える負担も大きく、外部リソースに頼らざるを得ない場面も多くあります。

こうした一次・二次産業が中心の小規模地域でDXを進めるための考え方や工夫、ヒントがあれば、ぜひ教えてください。

相澤:ご質問ありがとうございます。参考になる事例として、宮崎県高千穂町での取り組みをご紹介します。高千穂はこれまでIT企業が立地したことのない地域でしたが、私どもが拠点を設けたことで、新しい職業が生まれ、高校新卒に加えてU・Iターン人材も戻ってきました。地域に「新しい働き方」をつくれた点は大きな成果だと感じています。

ただし、地域内だけでDX支援や開発案件を継続的に確保するのは難しいのが現実です。そのため現在は、東京など域外の企業の仕事を高千穂で受け、「外貨を稼ぐ」形で拠点を維持しています。地方では信頼を得るまでに時間がかかるため、私たちも10年、20年単位の長期視点で取り組んでいます。

また、インバウンド増加に対して飲食店が不足しているという地域課題を受け、「高千穂ベース」というカフェを立ち上げました。結果として黒字化し、新たに5名の地域人材を採用することができました。まずは外貨を稼ぎ事業を継続させ、その上で地域課題の解決につながる新たな事業に挑戦する。この考え方は、八幡平市のような地域でも一つの可能性になるのではないかと思います。

質問者①:ありがとうございます。私も現在、外貨を稼ぐために東京に通いながら取り組んでいますが、苦戦しているのが正直なところです。ぜひ今後、意見交換させてください。

会場からの質問②:DX推進体制と地元定着をどうつくるか

司会者:ありがとうございます。他にご質問はいかがでしょうか。

質問者②:(一関工業高等専門学校):本日は貴重なお話をありがとうございました。2点質問させてください。

1点目は、DX推進における組織体制についてです。DXには強いリーダーシップが必要だというお話がありましたが、経営層や上位層にそうした人材がいない場合でも、DXを進めることは可能なのでしょうか。必ずしも「上」にいなければならないのか、ご意見を伺いたいです。

2点目は、人材確保、とくに地元定着についてです。現場人材の高齢化が進む中で、高専としては学生に地元企業への就職を前向きに考えてもらいたいと感じています。学生にどのような視点やメッセージを伝えれば、地元で働く選択肢を魅力的に感じてもらえるのか、学校の立場からできるアプローチについてヒントをいただければと思います。

相澤:弊社では高専との連携を強化しており、一関工業高等専門学校さんからもこれまでに1名採用しています。

高専生は都市部企業からの引き合いも強い中で、採用につながっている理由は、実際に学校へ足を運び、対面で会社説明を行っている点にあると考えています。説明会では数名から20名ほどの学生が集まることもあり、継続することで「地元にこういう会社がある」という認知が広がっていきます。

また、経営者自身が学生の前で直接、会社のビジョンや挑戦を語ることも効果的です。そうした話に興味を持ち、「一度話を聞いてみたい」と感じてくれる学生もいます。

そのため、学校側で経営者が直接学生に語る機会を設け、地域企業と顔の見える関係を築いていくことが、地元定着につながる重要なポイントではないかと考えています。

大藪:まず1点目の「強いリーダーシップを持つ人材がいなければDXは進まないのか」というご質問についてですが、正直に言えば、そうした課題があるからこそ、私自身は外部支援という立場で活動しています。

組織内でどうしても担い手を育てきれない場合には、「内製できていない」ことを前提に、外部パートナーを活用するという選択も重要だと考えています。そうした役割を担える存在は、必ずしも社内に限る必要はありません。

次に、地元就職をどう増やすかという点についてです。私自身は地元を離れた立場ですが、感じているのは「企業と若い世代が接点を持つ時期が遅すぎるのではないか」ということです。多くの学生は高校までは地元にいます。その段階で、地元企業でのインターンや仕事体験などを通じて「働く」を具体的にイメージできていれば、進路選択は変わっていたかもしれません。

私自身、大学で学んだことよりも、実務を通じて得た経験の方が現在の仕事に直結しています。であれば、早い段階から仕事に触れ、成果を出し、収入を得る経験を積むことも有効です。そうした経験があれば、「地元で働く」という選択肢も、より現実的で魅力的なものになるのではないでしょうか。

司会者:ありがとうございました。お時間となりましたので、質疑応答はここまでとさせていただきます。