これまでは、大手企業を中心にDX人材採用が行われていました。しかし、DX推進に取り組むためにDX人材を採用したいと述べる中小企業が増えてきています。そのような理由で、DX推進のために人材採用へ挑戦しても失敗に終わってしまうことも多いようです。なぜ、失敗に終わってしまうのでしょうか?成功させる方法はないのでしょうか?
この記事では、中小企業がDX人材採用をする場合の正しい方法を解説します。ぜひ、DX人材の採用を実施する前に記事をお読みになってください。
中小企業がDX人材採用で失敗する理由
まずは、中小企業がDX人材採用で失敗する主な理由をご紹介します。
DX推進の目的を明確にしていない
DX人材とは「デジタルを活用してビジネスや組織を変革する人のこと」をいいます。現場の課題を洗い出して、デジタルを活用して業務効率化や生産性向上を促していく役割を担います。
しかし、DX人材を募集する際に目的を明確にしないと入社希望者も困惑してしまうでしょう。DX推進の目的を明確に定めなければ、どのような優秀な人材を採用しても、DX推進は失敗に終わってしまいます。
中小企業の場合は「どのようにDX推進に取り組めば良いかわからない」という経営者も多く、DX推進に取り組めないと悩む方が多いです。
解決方法
DX推進の目的を明確にするためには、次の3つの方法を試してみてください。
(1)現場の課題を洗い出す
業務の棚卸しをして業務効率化できるところがないかを検討してみましょう。デジタルを活用して大幅な業務改善ができるようであれば、DX推進を行う余地があります。
(2)同業界の成功事例を確認する
業界のDX推進の動向を確認しておきましょう。業界内の動向を確認しておけば、他社に引けを取らずに済みます。
(3)コンサルティング会社に相談する
DX推進で自社優位性に立ちたい方は、コンサルティング会社に相談する選択肢も1つです。数多くのDX推進に携わってきたコンサルタントであれば、優良な方法を提案してくれるでしょう。
(参照元:日経X-TECH「「少しは役に立つ」程度の技術者がDX人材だと?企業や行政の人集めを笑う」)
DX人材の定義が不明確である
DX人材の定義を不明確にしてしまうと、企業と求職者の間でミスマッチが発生してしまいます。どのような業務を行うのか、どのような目的を持って、DX推進に取り組むのかを理解して入社させなければいけません。これらを理解しないままDX人材を採用しても、理想通りの成果は得られないころが多いです。
解決方法
DX人材を採用する場合は、業務内容や採用の目的を具体的に定義しておきましょう。これらの定義を採用面接時に伝えておくことで、採用後に活躍してもらえるようになります。
DX人材と呼ばれる方の業務内容はさまざまです。現在は6職種に分かれているため、自社に必要な職種を見極めて人材募集をしましょう。
人材 | 定義 | 内部 | 新卒 | 中途 | 外注 |
プロデューサー | DXやデジタルビジネスの実現を主導する人材 | ◎ | – | △ | – |
ビジネスデザイナー | DXビジネスに関する企画立案を担う人材 | ◎ | – | △ | – |
データサイエンティスト | 事業・業務に精通したデータ解析できる人材 | 〇 | △ | 〇 | △ |
先進技術エンジニア | AIやブロックチェーンに関する技術を保有する人材 | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
UI・UXデザイナー | DXサービスのUIデザインを担当する人材 | 〇 | – | △ | 〇 |
エンジニア・プログラマ | システムの実装を担う人材 | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
(参照元:Monstarlab Blog「DX人材に必須のスキルや資格、マインドセットとは?育成事例も紹介」)
DX人材が市場に出回っていない
2021年7月30日に総務省が公表した「令和3年版情報通信白書」では、日本のDX人材不足が深刻化していることが分かります。人材不足を課題として挙げているのが、米国・ドイツ・日本です。しかし、DX人材不足を感じる日本企業は約5割と突出しています。
ITに関連する有効求人倍率も5倍を超えており、日本ではDX人材不足が深刻な問題となっているのです。DX人材が市場に出回っていないので、思い通りの採用できずに難航する企業の多さも問題となっています。
解決方法
DX人材不足の課題は、外部委託を利用することで解決できます。また、社内教育をしてDX人材を育成する方法も1つです。DX推進に取り組むためには、組織全体でITリテラシーを高めなければいけません。そのため、DX研修を実施する企業が増えています。社内育成をすれば、外部からDX人材を採用せずに済みます。
また、近頃はローコードツールと呼ばれるプログラミング言語が不要でシステム開発できるものも登場しました。これらを活用すれば、高い知識がなくてもDX推進を加速させられます。
(参照元:総務省「情報通信に関する現状報告(令和3年版情報通信白書)」)
DX人材を採用する前に行う準備
DX人材の採用が失敗に終わる理由をご紹介しました。これらの失敗を防止するために、事前準備をしておきましょう。ここでは、DX人材を採用する前に行うべきことをご紹介します。
1.経営者がDX推進を決意する
DX推進に取り組むと企業文化や組織変革が必要となる恐れがあります。組織のメンバーの中には、デジタルを取り入れることに抵抗を抱く方もいるでしょう。このような場合は、経営者がリーダーシップを発揮しなければいけません。
中小企業がDX推進を成功させるためには、経営者の強い意思が必要不可欠となります。そのため、経営者がDX推進を決意することが第一歩目となります。
2.DX推進のビジョンを立てる
DX推進を決意したらビジョンを明確にしていきます。DXジャーニーマップを作成して、DX推進の目的など細かく記載しておきましょう。目標を立てる場合は数値化できる指標を設けることが、成功するための秘訣です。
- デジタル設計図(目的・業務プロセス・指標・デジタルツール・CX)
- ステークホルダーマップ
- デジタル連携図
- デジタル投資シミュレーション
しかし、DX推進に詳しい経営者ばかりではないでしょう。そのような場合は、DX推進に詳しいコンサルタントと現場責任者を交えて上記の計画を立ててみてください。
3.社内の従業員から同意を得る
中小企業がDX推進を行うと組織変革せざる得ない場合もあります。デジタル活用や組織変革に抵抗感を抱く従業員も少なからずいるはずです。そのため、DX推進に取り組む前に社内の従業員に同意を得ておきましょう。
DX推進を成功させるためには、組織全体の協力が必要です。そのため、従業員のモチベーションを高めるためのインセンティブ制度を設けるなど、DX推進が浸透する仕組みづくりを考えてみることもおすすめします。
4.DX推進部門を設置する
DXジャーニーマップを策定して周囲の同意を得たら、DX推進部門を設置します。DX推進部門は、デジタル技術を活用して業務効率化やビジネス改革に取り組む場所となります。適材である従業員を配置させましょう。社内に適正な従業員がいない場合は、DX人材を採用を検討してみましょう。
DX推進の実績を豊富に持つコンサルタントにリーダーを任せると成功しやすいです。そのため、コンサルタントに依頼することも検討してみてください。
(参考元:中小企業補助DX情報館「中小企業のDX推進は人材不足で難しい?課題解決方法とは?」)
DX人材採用を成功させるコツ
DX推進部門に適材な人材を配置させたい場合は、DX人材の採用を行ってみましょう。DX人材の有効求人倍率は5倍と高い倍率ですが、採用方法によっては優秀な人材が採用できます。実際に、どのようにDX人材を採用していけば良いのでしょうか?ここでは、DX人材採用を成功させるコツをご紹介します。
業務内容を具体的に提示する
DX人材の求人を出す場合は、業務内容を具体的に提示しておきましょう。業務内容を曖昧にしてしまうと、求職者側も不安を抱きます。具体的な業務内容を提示しておくことで、DXジャーニーマップ通りに計画を進めていくための人材採用であることを理解してもらえます。
DX人材採用で失敗する理由に、業務内容が曖昧でミスマッチが起きたというケースが多いです。このような問題を防止するために、業務内容は具体的に提示しておきましょう。
ビジョンを共有する
DX人材はデジタル技術を駆使してビジネス変革を起こす人材のことをいいます。そのため、企業への理解と探求心が求められます。従って、DX人材を採用する場合は、具体的な業務内容の他にビジョンを共有するようにしましょう。面接時にビジョンを共有して共感をしてくれる人材であれば、理想以上の成果を出してくれるはずです。
自社の魅力を訴求する
優秀なDX人材は競合他社からスカウトを受けていることが多いです。そのような人材に自社に来てもらうためには、競合他社にない自社の魅力を訴求しましょう。
自社で働くと得られるエンゲージメントを上げることで、採用確率が高まります。そのため、競合他社に勝つ自社の魅力について説明できるようにまとめておきましょう。
(参考元:Talent Clip「【DX人材の採用】DX人材の特徴や採用活動のポイント」)
DX人材を社内育成する方法
DX人材の採用方法をご紹介してきました、IT人材の有効求人倍率は約5倍です。また、ビジネス変革を起こしたいという強い野心を持った人材の割合はより低くなるでしょう。そのため、DX人材採用は難航してしまうのです。DX人材が難航したら、DX人材を社内育成する方法も検討してみましょう。ここでは、DX人材を社内育成する方法をご紹介します。
1.デジタルリーダーを選任する
まずは、DX推進部門を牽引するデジタルリーダーを選任します。デジタルリーダーにはAIやビッグデータなど最新技術に関する知見や活用方法を見出すアイデアが必要となります。適材な人材がいない場合は、コンサルティング会社を利用する方法も1つです。
2.従業員全体にITリテラシーを学んでもらう
DX推進を成功させるためには、デジタルリーダーの力だけではなく、組織全体にITリテラシーを学んでもらう必要があります。ITリテラシーが不足するとデジタル導入におけるコミュニケーションコストがかかります。このようなコストが大きな負担とならないためにも、ITリテラシーを学んでもらいましょう。
3.DXに適した人材を見極める
ITリテラシーを学んでもらう際に、自発的に楽しく学べている方はDX推進部門に適している人材です。ITに関する知識や経験で判断するのではなく、マインド面で適材な人材と思えたら、DX推進部門に配置させましょう。
4.OJT機会の場を設ける
DX推進部門に配置した人材には、OJTの機会を設けるようにしましょう。デジタルリーダーが牽引してOJTを実施します。書籍や座学では学べない実践的な経験を積むことで、社内で活躍できる人材が輩出できます。
5.自主学習できる場を提供する
DX推進部門に配置した人材に学習支援を行いましょう。資格取得費用やセミナー参加の費用を社内で負担するなど、学びやすい環境を整えてあげることが大切です。また、社内にて定期的な勉強会を主催すると相乗効果が発揮できます。
6.実践させる
DX人材を育成するためには、失敗を恐れない環境づくりが大切です。そのため、ある程度の失敗を許容して実践をさせましょう。チャレンジしやすい環境を整備してあげると、DX推進が加速していきます。
(参考元:マーケドリブン「DX人材とは?6つの職種・4つのスキル・5つのマインドセット」)
まとめ
今回は中小企業がDX推進のために人材採用するための方法をご紹介しました。人材採用の手順を間違えてしまうとDX人材採用は失敗に終わってしまいます。そのため、正しい手順を覚えておきましょう。
中小企業はDX推進に取り組めていない方が多いですが、早期にDXに取り組めば大きなビジネス機会が得られるはずです。DX推進の実績を豊富に持つ実業家(コンサルタント)をプロデューサーやビジネスデザイナーに置き、社内で取り組めば成功しやすくります。ぜひ、この記事を参考に、DX推進に取り組んでみてください。