ビールフェスタの経済効果について

ビールフェスタの経済効果について

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地域で開催されるビールフェスタは、単なる「ビール好きの集まり」にとどまらず、観光誘致や地元産業の活性化を担う重要なイベントです。本稿では、フェスタの概要から来場者層・動機、日本の代表的イベント、経済波及効果、メーカー視点、課題と具体例までを掘り下げ、「地域活性化の切り札」としての可能性を検証します。

ビールフェスタとは?

ビールで乾杯する4人

ビールフェスタは、クラフトビールや輸入ビール、地ビールなど、多彩な銘柄を一堂に集め、試飲や販売を行う大規模なイベントです。会場内では飲料の提供だけでなく、地元の飲食ブースや物販に加え、音楽ライブやワークショップなども開催され、来場者を楽しませる工夫が凝らされています。

このイベントの目的は、来場者の滞在時間を延ばし、飲食や物販、観光など地域での消費を喚起することにあります。地域観光コンテンツとしての役割も担っており、地域経済の活性化にも寄与しています。

開催形態は多様で、入場無料のものからチケット制のものまであり、会場も屋外の公園や商業施設など、さまざまな場所で実施されています。

日本で有名なビールフェスタ

代表的なイベントを「イベント名/開催地/推定集客数/公式HP」の形式でまとめました。

イベント名 開催地 推定集客数 公式HP
けやきひろば春のビール祭り 埼玉県さいたま市 約10万人 公式サイト
大江戸ビール祭り 東京都中野区 約4万人 公式サイト
ベルギービールウィークエンド 東京・大阪・名古屋等 約1万人/会場 公式サイト
オクトーバーフェスト in 芝公園 東京都港区 約3万人/会場 公式サイト
全国地ビールフェスティバルin一関 岩手県一関市 約3万人 公式Facebook
よなよなエールの超宴 群馬県北軽井沢 約1万人 公式サイト
ニッポンクラフトビアフェスティバル in すみだ 東京都墨田区 公式サイト
World Beer Gate 大阪府大阪市 Instagram
はまテラスクラフトビールフェス 神奈川県横浜市 約2,000人 横浜観光情報
EBISU Bloomin’ Jazz Garden 東京都渋谷区 約10万人 公式サイト
Future Beer Garden 東京都千代田区 約1万人 公式サイト

ビールフェスタの経済効果とは?

ビールフェスタでビールを飲む女性

前掲「けやきひろば春のビール祭り」の事例をもとに経済効果を考察してみましょう。

本イベントの来場者数は約10万人とされており、1人あたりの平均消費額(飲食・物販・交通を含む)はおよそ8,000円と見積もられます。これを単純に掛け合わせると、直接的な経済波及効果は約8億円にのぼります。

加えて、宿泊施設の稼働率上昇、周辺商業施設の売上増加、さらには警備員や運営スタッフといったイベント関連の雇用創出など、間接的な経済効果も見逃せません。

一方で、自治体側が負担する整備費や警備費といったコストは一定程度発生しますが、それを差し引いたとしても、税収増や観光イメージの向上といった中長期的なメリットにより、全体としてプラスの経済効果を生むケースが多く見られます。

このように、大規模イベントは地域経済に対して多面的な恩恵をもたらす存在であると言えるでしょう。

ビールメーカーにとってのメリット

また、ビールフェスタは、ビールメーカーにとっても大きなメリットをもたらす貴重な機会です。

まず、新商品や限定醸造ビールを来場者に直接体験してもらえる場として、ブランド認知の向上に役立ちます。リアルな接点を通じて、消費者の印象に強く残るプロモーションが可能です。

また、イベント後にアンケートの実施やSNSフォローを促すことで、ファンとの継続的な関係性が生まれ、リピーターの育成にもつながります。

さらに、ECサイトや小売店での取り扱い促進といった形で、販路開拓のきっかけにもなりやすい点も見逃せません。

近年では、コロナ禍を経て補助金などを活用し、設備を拡充したクラフトビール醸造所が増えています。しかし一方で、実店舗での販売やオンライン販路の確保に苦戦する事業者も少なくありません。

こうした中で、ビールフェスタは認知拡大と販売促進の両面で有効な施策となります。特に、クラフトビールメーカーが多く集まる地域では、イベントを通じて地域全体の魅力を発信でき、地域ブランドの向上や観光・地場産業の活性化にも貢献することが期待されます。

ビールフェスタの課題とは?

雨と傘

次に、ビールフェスタの課題を見ていきましょう。

若者のビール離れという課題

近年、若年層におけるビール離れが深刻な課題となっています。背景には、健康志向の高まりや他のアルコール飲料(チューハイやワインなど)への嗜好シフトがあり、20〜30代の飲酒量は年々減少しています。

たとえば、総務省の調査によると、20代男性のビール消費量は2010年と比べて約30%減少しており、ビール市場への影響は軽視できません。

現在、ビールの飲用率が最も高いのは40〜60代の男性層であり、20代女性における飲用率はわずか1割程度という点も課題です。

天候リスクと集客の不安定さ

屋外で開催されるビールフェスタには、天候リスクという大きな課題があります。雨天や強風といった悪天候により、来場者数が大幅に減少してしまうケースも少なくありません。

競合イベントの増加と差別化の難しさ

近年は、同じ時期に多くのイベントが乱立しており、集客や出店企業が分散してしまう傾向があります。このような中で差別化が難しくなると、

イベントの特徴が埋もれる

→ 集客が減少する

→ 出店企業も減る

→ コンテンツが縮小する

→ さらに集客が減る

という悪循環に陥るリスクがあります。

これらの課題に対しては、ターゲット層の再設定、コンテンツの多様化、天候リスクへの対策(屋内開催や予備日設定など)、他イベントとの差別化戦略が求められます。

海外のビールフェスタ

海外の二組のカップルがビールを飲んでいる

これらはいずれも世界規模で注目される大型フェスティバルであり、地域経済への波及効果も非常に大きい点が共通しています。

Oktoberfest(オクトーバーフェスト)

ドイツのオクトーバーフェスト

・開催地:ドイツ・ミュンヘン(Theresienwiese)

・期間:毎年9月中旬〜10月初旬の約18日間

・来場者数:2023年は約7.2 百万人が来場(参考:Preliminary final report – Oktoberfest.de

・特徴:世界最大級のビール祭典。伝統的衣装のパレードや巨大テントでの乾杯、ドイツ料理も魅力。

・公式HP:Oktoberfest.de

Great American Beer Festival(グレート・アメリカン・ビア・フェスティバル)

 コロラド・コンベンション・センター

・開催地:アメリカ・コロラド州デンバー(Colorado Convention Center)

・期間:毎年9月末〜10月初旬の3日間

・来場者数:約60,000人(参考:GABFの集客に関する公式調査(Coalition Brewing)

・特徴:Brewers Association主催の国内最大級インドア・ビール祭典。800以上の醸造所が出展し、4,000種以上のビールを提供。

・公式HP:Great American Beer Festival

Belgian Beer Weekend(ベルギー・ビア・ウィークエンド)

 ブリュッセルのグラン・プラス

・開催地:ベルギー・ブリュッセル(Grand Place)

・期間:毎年9月初旬の3日間

・来場者数:2024年は約62,000人が参加(参考:Brussels Times

・特徴:ベルギービールの魅力を一堂に集めたイベント。国内外の約50醸造所が400種類以上のビールを提供し、音楽や地元グルメも楽しめる。

・公式HP:Belgian Beer Weekend | City of Brussels

まず、世界最大級のオクトーバーフェスト(ドイツ・ミュンヘン)には、400以上の醸造所が出展し、約720万人が来場します。次に、グレート・アメリカン・ビア・フェスティバル(米デンバー)は800以上の醸造所が参加し、4,000種を超えるビールを提供、約6万人規模の来場者を誇ります。さらに、ベルギー・ビア・ウィークエンド(ブリュッセル)では50社が400種以上を出展し、6万人強が集まります。いずれも音楽や地元グルメを楽しめる総合フェスとして知られています。

こうした規模を鑑みると、ミュンヘンのオクトーバーフェストは世界トップレベルですが、米デンバーやブリュッセルのフェスにおいても、来場者数や開催規模の点で日本のビールフェスタも、規模や多様性の面で決して劣っているわけではないと言えるでしょう。

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