【更新:2025/12/13】
企業が安定した成長を長期的に続けるためには、組織が一丸となって業務を遂行できる枠組みが必要です。いわゆる社内ルールの存在は、法的な必要性こそ薄いものの、早期に作成しておくことで、低リスクで効率の良い働き方を実現できます。
この記事ではそんな社内ルール作成の必要性や、具体的な作成の手順について、解説します。
社内ルールとは

社内ルールは、各企業が独自に作成して施行する、行動規範となる社内向けの規則です。身だしなみや服装といった外見的なルールはもちろん、仕事への向き合い方や行動のあり方まで、内面・外面を問わず立ち振る舞いにおける規範の遵守を社員に求めます。
あらゆる会社には独自に培ってきた文化や規範があるものですが、これらはなんとなく現場で共有するのではなく、具体的に明文化することで、ルールに基づいた社員の行動を促す効果が期待できます。
就業規則との違い
社内ルールと似たような言葉として、就業規則が挙げられます。就業規則は労働基準法に定められている決まりごとで、労働者を10人以上雇用している企業の場合、経営者はその策定が義務付けられています。
就業規則においては、始業時刻と終業時刻を定めたり、休憩時間や賃金などの決め事を定めるものです。一方、社内ルールでは上記のような企業としての最低限の決め事を定めるものではなく、会社ごとの必要に応じた独自のルールを定めるものです。
そのため、就業規則とは別途社内ルールを設けることで、組織の活性化を図ることが大切です。
社内ルールはなぜ必要なのか、その目的とは?

社内ルールが企業で強く求められる理由としては、以下の3つの理由が挙げられます。
(1) 社員を適切に管理するため
社内ルールの作成は、社員の適切な管理のためには欠かせない取り組みです。就業規則はあくまで会社としての最低限の決め事を定めるものであるため、業務の効率化などの効果は期待できません。
一方、社内ルールの作成は、後に紹介するような多くのメリットが得られるのはもちろん、社員の行動に統一感を持たせ、常に一定のパフォーマンスを維持する上で重要な役割を果たします。
社内ルールを通じて、一体感を持った働き方を実現できます。
(2) 社員の多様性を尊重するため
社内ルールを細かく定めることは、かえって社員の多様性や自由を奪い、働きづらい環境に陥ることを危惧する声もあります。しかし社内ルールの策定はむしろ、社員の多様性を尊重し、働きがいのある会社を育むために必要な取り組みです。
例えば、リモートワークの導入や独自のインセンティブ制度の導入は、社員にとって働きやすい環境を選べるよう後押ししたり、能力のある社員がより意欲的に働けるモチベーションの厳選となります。
彼らの能力やライフスタイルに合わせた働き方を、社内ルールを通じて実現することが理想です。
(3) 組織の成長を阻害する可能性があるため
社内ルールを策定しないと、かえって組織の成長を阻害する可能性があります。わかりやすいケースが、権限委譲の遅れです。
決裁者が一部の人間に限定され、必要に応じて権限を委譲できないなどの事態に陥ると、迅速な意思決定や行動を妨げ、重大な機会損失を招く可能性があります。
こういった現場でのトラブルやアクションの遅れをもたらさないためにも、社内ルールで権限についてのルールを明文化し、行動しやすい環境を整備する必要があります。
社内ルールを定めるメリット

具体的な社内ルールを定めるメリットについては、以下のような点が挙げられます。社内に足りていないものを、ルール策定によって得られる可能性があります。
(1) 業務の質向上につながる
社内ルールを定めておけば、業務のクオリティを高められます。「こういう時はこうする。」というマニュアルを社内に広く共有しておくことで、経験の浅い人物でも適切な判断を下し、会社の成長につながる意思決定と行動を実現できます。
能力のある社員はよりスムーズに動けるようになり、業務に慣れていない社員は業務への理解をすぐに深められるため、社員の能力の均一化や底上げが期待できます。
(2) マネジメント業務負担の削減につながる
社内ルールを広く浸透させることで、マネジメント担当者の負担軽減にもつながります。逐一業務の手続きや取り組み方を指導したり、フィードバックしたりする必要性が減るので、少ない人数でも正しく社員を管理できます。
基本的なルールは社内ルールを読んで把握し、それ以外の部分を管理者が補完するという業務が可能です。
(3) 企業理念の浸透を促せる
社内ルールを通じて、企業理念を正しく普及させることにもつながります。理念に則った行動とはどういうものか、ということを明文化するので、社員と経営者の意思疎通がスムーズになり、同時に高いモチベーションを持って社員に働いてもらえるようになります。
※企業理念に関してはこちらの記事「ザ・リッツ・カールトンなど成功事例で学ぶ企業理念を浸透させる方法」と「中小企業の経営理念(MISSION・VISION・VALUE)の作り方【3STEP】」も併せて参考にしてください。
(4) セキュリティ対策に貢献する
社内ルールの作成は、セキュリティの面からも重要です。近年は社用のPCやスマホの紛失、あるいは不審なメールやファイルの取扱ミスから、重大なセキュリティインシデントにつながるケースが多発しています。
日本は、サイバーセキュリティのリテラシーがまだまだ低く、多くの企業がサイバー犯罪の標的となっています。サイバー犯罪の被害を受けると、業務がそのまま停止したり、企業の信用が大きく失墜したりなどの重大なリスクをもたらしかねません。
こういった事態を未然に防ぐためにも、社内ルールの周知によってリスクを少しでも小さくする必要があります。
社内ルールの作り方とは?

社内ルールの作成手順としては、以下のフローに基づいて実行するのが理想です。それぞれのプロセスについて確認しましょう。
(1) 社内の課題や改善点を整理する
社内ルールを作成する場合は、まず、社内でどのような課題を抱えているのかを確認しましょう。社内ルールは漠然と定めるのではなく、これまで発生してきた問題を解決するためのきっかけとして運用できるとベターです。
どんなインシデントがこれまでにあったのか、社員のモチベーションが上がらない理由は何かをリサーチし、ルール作成の基盤としましょう。
あるいは、サイバーセキュリティ対策の必要性など、世の中の動向も踏まえながら、「この決まりはあった方が良い」という点も検討し、未知の脅威やリスクにも備える必要があります。
(2) ルール化したい項目を整理する
課題や改善点を洗い出した後は、具体的なルール項目を整理します。定めたい社内ルールを箇条書きで書き出しながら、一つずつ具体的に文章を検討します。
ルールの内容を考える際には、5W1Hにも配慮するなど、主語や述語、そして対象の人物も明らかにする必要があります。曖昧なルールを定めてしまうと、社員が当事者意識を持ってルールを遵守してくれなくなる可能性もあるためです。
(3) 項目が業務に支障をきたさないか確認する
定めたいルールが決まったら、それぞれの項目が業務に支障をきたさないかどうかをチェックしましょう。ルールは具体的に決まっていることが望ましいとはいえ、ルールがかえって業務を束縛してしまうようでは、作成の意味がありません。
社内ルールはあくまで現実の業務を上手く遂行するための枠組みなので、干渉がないことを確認して運用を開始することが大切です。
(4) ルールを社内に周知する
ルールを作成した後は、広く社内に周知します。ルールを定めても、社内で広く浸透しなければ、ルールはまたたく間に形骸化してしまいます。
社内ルールを普及させるためには、上の立場にいる人物が率先してルールを周知したり、実行したりすることが効果的です。社内ルールを文化として醸成するためにも、積極的に行動しましょう。
社内ルール作成のポイント

社内ルール作成に成功するためには、以下のポイントにも注意する必要があります。ルールを形だけのものにしないためにも、注意して作成しましょう。
会社の理念や事業に則ったルールを策定する
社内ルールは、会社の理念やビジネスに則ったものであることが理想です。社内ルールと企業の理念にギャップがあると、ルールの運用が企業理念の実現に合致しなくなってしまうだけでなく、現場に混乱をもたらす場合もあります。
社内ルールを作成する場合には、それぞれの項目が企業理念に一致しているかどうかも踏まえた上で、検討を進めましょう。
社員の同意を得ながらルールを検討する
社内ルールの作成は、経営者が主体的に取り組むことは良いことではありますが、現場社員の声を無視して作成するのは控えるべきでしょう。
社内ルールは、いわば経営者の考える組織のあり方も明文化したものでもあります。その姿勢を広く共有することは大切ですが、現場の状況やニーズと離れたルールとなってしまうと、社員のモチベーション向上どころか、かえってモチベーションの低下や離職を促進してしまう可能性も出てきます。
社内ルール策定時には現場の声にも寄り添いながら、必要なルールを選定することが大切です。
例外を増やさない
社内ルールは基本的に、その会社の全社員に適用されるべきルールをまとめたものです。そのため、ルール適用の例外となるケースや人物があまりに多いと、ルールが形骸化してしまいます。
もちろん、不測の事態に備えて例外事項を設けておくことは大切ですが、そのバランスに気をつけるべきでしょう。
社内ルール順守の必要性、自主チェックと内部監査
社内ルールの作成は、組織運営における基本的な統制基盤を整える行為であり、不正防止や業務品質の均一化、リスク低減を目的として行われます。しかし、ルールは定めただけでは十分とは言えず、実際に「遵守されているか」を継続的に確認する仕組みが不可欠です。形骸化した社内ルールは、いざ問題が発生した際に組織防衛として機能せず、かえって管理体制の甘さを露呈させる結果になりかねません。
自主チェック
ルール遵守を担保する手段として、定期的な自主チェックの実施が重要となります。現場レベルでのセルフチェックは、日常業務の中で逸脱や曖昧な運用に早期に気づくことを可能にし、是正コストを最小限に抑える効果があります。また、チェックを習慣化することで、社員一人ひとりのコンプライアンス意識の醸成にもつながります。
内部監査
さらに、自主チェックだけでは見落とされがちな構造的課題や慣習的な違反を把握するためには、内部監査の実施が不可欠です。第三者的視点を持つ内部監査は、客観性と網羅性を担保し、経営層に対して実態を正確に報告する役割を果たします。定期的な自主チェックと内部監査を組み合わせることで、社内ルールは「守られる仕組み」として機能し、組織の信頼性と持続的成長を支える基盤となります。
内部監査の実施方法は、企業規模や組織体制、リスクの大きさによって最適解が異なります。代表的な方法として、以下の2つのパターンが挙げられ、企業の成長段階に応じて組み合わせる運用も現実的です。自社の規模やリスク特性に応じ、最適な内部監査体制を設計することが重要です。
① 内部監査室を設置し、専門組織として定期監査を行う方法
最もオーソドックスな方法が、内部監査室(または内部監査部)を設置し、専任担当者が計画的に監査を行う体制です。
監査計画の策定、現場ヒアリング、証憑確認、改善勧告までを一貫して担えるため、監査の独立性・専門性・継続性を確保しやすい点が強みです。特に、一定規模以上の企業や、上場企業、ガバナンスを重視する組織に適しています。一方で、人員確保やコスト負担が発生する点は留意が必要です。
② 内部監査室を設けず、部門横断型プロジェクトとして実施する方法
専任組織を置かず、総務・法務・経理・ITなど複数部門からメンバーを選出し、横断的なプロジェクトチームとして内部監査を行う方法です。
現場実務に精通したメンバーが関与することで、実態に即した監査が可能となり、改善提案の実効性も高まりやすいのが特徴です。中小企業や成長フェーズの企業にとって、コストを抑えながら監査機能を持たせやすい手法といえます。ただし、監査対象部門との利害関係には配慮が必要です。
外部監査
公認会計士、監査法人、コンサルティング会社などの外部専門家に監査業務を委託、または共同で実施する方法です。高い専門性と客観性を確保できる点が最大のメリットで、内部リソースが不足している場合や、特定テーマ(コンプライアンス、情報セキュリティなど)に限定した監査にも有効です。一方で、社内業務への理解を深めるには一定の時間を要するため、内部担当者との連携体制を併せて整えることが重要となります。
まとめ:社内ルールで組織全体の効率化と成長を促進

社内ルールは、企業理念に則った働き方を実現するための指針であると同時に、社員一人ひとりが安心して高いモチベーションを維持しながら働くための土台となるものです。ただし、その価値は策定しただけでは十分に発揮されず、実際の業務の中で適切に運用・遵守されてこそ意味を持ちます。
そのためには、日常業務の中で行う定期的な自主チェックや、客観的な視点で運用状況を検証する内部監査を通じて、社内ルールが形骸化していないかを継続的に確認することが不可欠です。こうした取り組みは、リスクや不正の早期発見につながるだけでなく、組織全体のコンプライアンス意識を高める効果もあります。
安定した企業成長やセキュリティリスクの回避を実現するためにも、社内ルールは早期に検討・整備したうえで、周知と定期的な見直しを行い、「守られる仕組み」として社内に定着させていくことが重要です。
