マッキンゼーによれば、インドネシアのGDPは2030年には世界のGDPランキング7位になるという予測しています。一方で2035年ごろには日本のGDPを超える可能性もあることについて述べているシンクタンクもあります。
このような経済成長に加えて、多様性を重視する国のスタンスや東南アジアでの政治的なリーダーシップなど、国際社会においてインドネシアの存在感はますます高まるばかりです。
この記事では、そのようなインドネシアの将来の可能性や魅力について解説していきます。
魅力的なベンチャー企業が多い
時価総額が1,000億円を超える、いわゆるユニコーン企業が多数あります。例えば以下のような会社はユニコーン企業として成長しています。
・J&T Express
電子商取引(EC)向け物流事業を手掛けるため 2015 年に設立。現在、インドネシア全体のECによる貨物取扱数は1日当たり300~400万件で、このうち約100万件を同社が請け負っており、世界中に 35 万人の従業員を擁する規模にまで成長。インドネシア最大級のECサイト『Shopee』、『トコペディア(Tokopedia)』、アリババ傘下の東南アジアEC大手『ラザダ(Lazada)』、ECユニコーン企業『Bukalapak』などと提携している。CEOのRobin氏はインドネシア華僑3世で、中国大手スマホメーカー「OPPO(オッポ)」インドネシアのゼネラルマネージャーを務めていた人物です。時価総額は200億米ドル規模と言われています。
(公式ホームページ:J&T Express)
・Traveloka
旅行とチケット販売に特化したサイトを運営。6 か国で活動しており、2022 年には東南アジア最大のオンライン旅行アプリとして成長。
(公式ホームページ:Traveloka)
・Ovo
インドネシアを代表する複合企業リッポーグループが運営する電子マネーです。60,000以上の店舗で利用できます。
・Kopi Kenangan
インドネシアを代表するコーヒーチェーンで、2017年に設立されました。現在インドネシア国内には600以上の店舗があり、毎月300万杯を超えるコーヒーを提供。
・Bukalapak
インドネシアを代表するEC企業です。
インドネシアについて
インドネシア共和国、通称インドネシアは、東南アジア南部に位置する共和制国家です。
首都はジャワ島に位置するジャカルタ首都特別州で、5110キロメートルと東西に非常に長く連り、赤道にまたがる地域に17,000を超える島嶼を抱える世界最大の群島国家です。
東南アジア諸国連合 (ASEAN) の盟主であり、ASEAN本部が首都ジャカルタにあります。
人口
インドネシアの人口は、約2億7,800人と実は世界第4位となっています。これは世界の総人口の3.51%に相当し、その分世界に与える影響も大きいです。
また、15歳〜64歳の人口の割合は、インドネシアの総人口のうち70.72%となっています。
高齢化している日本や韓国などとは異なり、人口に占める生産労働人口の割合が非常に高い構成であることが大きな特徴です。
将来を牽引していく若者の割合が大きいインドネシアは、今後経済的な発展と成長の期待が持てる国であると言えるでしょう。
地理
インドネシアは、大小合わせて約17,000の島々で構成されています。各島ごとに特色があり、気候や食べ物、インフラの整備状況が全く異なります。
島によって特徴が異なるため、ビジネスの特性に合わせて進出する島を選ぶことができます。また観光面でも資源によって選択肢が無数にあり、旅行先として大きな魅力となっています。
民族構成
インドネシアには様々な民族が存在しており、その数はなんと約1,340にものぼります。中でも一番多いのは、ジャワ民族でインドネシア国民の約半数以上を占めます。
民族ごとに言語や文化や伝統や宗教が異なりますが、インドネシアでは、お互いの民族の多様性を受け入れ合って暮らしています。
インドネシアの国是は「Bhinneka Tunggal Ika=多様性の中の統一」であり、インドネシアにとって、多様性は非常に重要な国民の行動や考え方となっています。
多民族国家であるインドネシアの人々は、違いを受け入れることに寛容であり、それはインドネシアの大きな魅力の一つだと言えるでしょう。
このようなインドネシアの国風は、グローバリズムがますます進展して社会の多様化が進んでいく21世紀のあり方を占っていくうえでの成功例として、今後も大いに参照されていくことでしょう。
政治的役割と経済成長
では次に、これまでのインドネシアは世界的な政治経済の中でどのような国であったか、近年はどのように発展してきたのかをみていきます。
世界政治におけるインドネシア
インドネシアは首都ジャカルタにASEAN本部が置かれているなど、東南アジア圏において、政治的にも中心としての役割を果たしてきました。近年は、東南アジア圏に限らず国際社会全体での存在感がますます増大しています。
外交面では、ASEANを中心とした地域外交を重視する一方で、主要国や国連との外交強化を図る全方位外交を展開しています。
近年も、アジア太平洋における民主主義の普及を目的とするバリ民主主義フォーラムの主催や、タイ・カンボジア国境紛争の調停、気候変動などのグローバルな課題への取り組みなど、各側面において積極的に活躍しており、ASEANのリーダーとしての役割を果たしています。
インドネシアの経済成長
インドネシアの国内総生産(GDP)は既に世界で6番目であり、GDPが1兆ドルを超える国のなかでは過去10年間に中国、インドに次いで高成長を遂げています。
このようなインドネシア経済の背景にあるのが産業構成や人口構成です。
インドネシアの産業構成
インドネシア経済は輸出依存度がGDP全体の約3割と低く、また輸出の3割が景気変動を受けにくい資源によって構成されていることから、経済危機による影響を受けにくいと言われています。
世界経済が動揺した2009年のリーマンショック直後も2009年に4.5%、2010年には6.1%、2011年第1四半期には6.5%と好調な経済成長を果たし、株価も安定しています。
グローバル化が進んだ中にあっても、自給率の高さを維持し続け、経済的自立性を保つことは非常に重要です。
インドネシアの人口構成
また人口規模が大きいことも安定した成長要因の一つです。
人口が多いのでインドネシア経済全体が外需の影響を受けづらい上、今後も内需の伸びが予想されています。また、人口全体に占める生産労働人口の割合が非常に高いこともポイントとなっています。
2020年に世界銀行はインドネシアの格付けを「下位中所得国」から「上位中所得国」に引き上げました。この格付けは一人当たり国民総所得(GNI)を基準としています。
東南アジアではマレーシアとタイが既に「上位中所得国」とされている一方、ベトナムとフィリピンなどは依然として「下位中所得国」とされています。
このような格付けの変更が示すように、マレーシアやタイに次ぐような成長国家としてインドネシアは世界経済において期待されているのです。
インドネシアの今後
このようにインドネシアは人口構成や、産業構成から見て今後堅調な成長が見込まれることがわかりました。
それでは、具体的にどのような側面での発展が見込まれるのか、項目別に見ていきます。
人口構成
冒頭でも述べたように、インドネシアは、2030年までに日本のGDPを抜き、世界第4位の経済大国になると予測されています。このような経済規模とその伸びしろを見ると、インドネシアは世界でも有数の将来性のある国と言えるでしょう。
インドネシアはこれから人口構成によって経済成長の恩恵を受けやすい「人口ボーナス期」のピークに入ります。
タイ、ベトナム、マレーシアなどに比べて高齢化するスピードが遅いとされるインドネシアでは、十分な労働力を確保できる期間が今後も長く続くでしょう。
このような「人口ボーナス期」と言われる期間の間に、新しい技術を積極的に取り入れ人材の質を向上させていけば、順当に国際競争力を高めていくと予測できます。
資源大国
インドネシアは、鉱山資源やエネルギー資源、植物資源が豊富な国です。
ニッケルの生産量は世界第1位、石炭の産出量は世界第5位、環境にやさしい自動車タイヤの素材である天然ゴムの生産量は世界第2位となっています。
また、食品や洗剤などに幅広く使用でき、バイオ燃料の原料にもなるパーム油の生産量は世界第1位となっています。パーム油に関しては、世界総生産量のうちなんと約55%をインドネシアが単独で占めていることも大きな魅力です。
現在の脱化石燃料に向けた世相と自国の利点を活かして、インドネシアはパーム油を原料とするバイオディーゼルの利用促進に力を入れています。
軽油にバイオディーゼルを30%混合した「B30」の使用はすでに国内で義務化されており、バイオディーゼルの混合量を今後どんどん増やしていく計画をすでに発表しています。
次点となるバイオディーゼル40%の「B40」から100%「B100」までが計画されており、利用エネルギーの100%がバイオエネルギーに置き換わる将来を現実的に見据えているのです。
このようにインドネシアは、既に世界中でニーズのある資源の生産大国であるだけでなく、今後需要が見込まれるパーム油のような資源も豊富に有しています。また、国をあげてその活用方法を積極的に模索していることから、資源大国という側面においても豊かな将来性を有しています。
環境対策先進国
赤道付近に位置し、約17,000の島からなるインドネシアは気候変動によるリスクを抱えています。だからこそ、気候変動対策は国の命運を左右する一大事として捉えられており、さまざまな大規模プロジェクトが他国に先んじて推進されています。
例えば、2024年までの国家中期開発計画において、環境問題への対策を優先事項と設定し、低炭素化に取り組んでいます。太陽光発電、地熱発電といった再生可能エネルギーの活用や、上記で紹介したようなパーム油などバイオディーゼル導入など、すでにエネルギー置換に取り組んでいます。
また、インドネシアは電気自動車の開発と普及に対しても、非常に積極的な姿勢を見せています。エネルギー鉱物資源省の発表において、2040年以降に販売される二輪車はすべて電動二輪車、2050年以降に販売される新車はすべて電気自動車としています。
このように、気候変動を睨んだ抜本的な改革を国家が積極的に主導していることから、世界的に見ても有用な実績やデータがインドネシアに蓄積されていくでしょう。
つまり、今後インドネシアが世界的なグリーン・イノベーションを牽引していく大国として台頭していく可能性も十分に考えられます。
気候変動は、インドネシアにとって国に危機をもたらすリスクでもある一方で、大きなチャンスをもたらすものでもあるのです。
まとめ
本記事では、インドネシアの将来の可能性や魅力について解説してきました。
この記事でも触れてきたように、堅調な経済成長や、文化的な多様性、さらに先進的な環境問題への取り組みなど、インドネシアが国際社会で占めるプレゼンスはますます高まるばかりです。
この記事をきっかけにインドネシアに対する興味関心をさらに掘り下げ、ビジネスのヒントを探してみるのも良いかもしれません。
(おまけ)インドネシアに関する書籍
以下がインドネシアに関する書籍になります。参考にしてください。