組織の生産性向上において、プロジェクト毎のチームのモチベーションを高め、無駄のない連携を強化することは不可欠な取り組みと言えます。人海戦術を選ぶことが困難な時代では、一人一人のメンバーと向き合いながら、組織を動かしていく必要があるでしょう。
今回は、そんなチームワークを強化するために必要なポイントや、具体的なチームワーク改善に向けた取り組みについて、主な方法をご紹介します。
なぜチームワークを強化すべきなのか?
チームワークが企業には必要と言われていますが、そもそも何故、チームワークが組織活動に求められているのでしょうか。具体的なチームワークが必要な背景としては、以下の理由が挙げられます。
人材不足解消に向けた定着率改善
チームワークが求められる1つ目の理由は、人材不足の解消です。業種を問わず、多くの企業は現在人手不足に悩まされています。少子高齢化によって、中小企業を中心に若い働き手の不足が進み、現場での働き手はもちろんのこと、事業を承継できる人材の不足も顕著になってきました。
また、製造業や建設業などにおいては、ベテラン社員の高齢化による引退によって、現場での著しい作業パフォーマンスの低下や、技術を継承する若手社員がおらず、生産性を引き継げなくなる問題も懸念されています。
こういった人材不足の問題を解消するべく、取り組まれているのが雇用条件の改善、そして社員定着率の改善です。新入社員を大量に獲得することより、獲得した社員が職場から離れてしまわないよう、居心地の良い職場づくりややりがいのある働き方を実現することが大切です。
少数精鋭による業務効率化
人材不足の影響もあり、人件費の高騰も各企業で懸念されています。特にITエンジニアのような、高度なスキルセットを持った人材の獲得は難しく、好条件を提示しなければ自社に興味を持ってくれることは難しくなります。
こういった事情もあり、現場では少数のメンバーによって従来通り、或いは、それ以上の業務パフォーマンスを発揮する必要があります。従来の方法を少数のメンバーで続けるだけでは生産性は低下してしまうため、少ないメンバーでも高い生産性を実現できる仕組みやチームワークを実現しなければなりません。
働き方改革の推進
働き方改革の推進によって、社員がさまざまなスタイルで業務を遂行できるようになったことも、チームワークの強化への関心が高まる要因になっています。
従来の働き方は、社員が同じオフィスや工場に集まり、顔を突き合わせながら働くのが当たり前であったため、口頭でのコミュニケーションが一般的でした。しかし働き方改革や新型コロナウイルスの影響もあり、多くの企業でリモートワークが進み、それに合わせて休暇制度の活用やフレックス制度の導入も進んでいます。つまり、必ずしも、職場に常に社員がいるとは限らないのです。
このような状況下で、高いパフォーマンスを発揮するためには、お互いに信頼関係を構築したチームワークの発揮が求められます。人間関係が希薄で、お互いのことを理解できていない状況では、非対面での効率的な業務遂行は難しいものとなるでしょう。
チームワーク強化に必要な4つのポイント
上記のような理由から、チームワーク強化が各企業で進んでいます。チームワークを改善する上で重要なポイントとしては、以下の4つが挙げられます。
チームメンバーを信頼する
1つ目のポイントは、チームメンバーへの信頼です。「命令したことしか仕事をしない」「そもそもこんな業務に興味はないだろう」と決めつけるのではなく、「このチームに参加している以上は、成果を残してくれるはずだ」という信頼を持って、メンバーとコミュニケーションをとることが必要です。
チームメンバー同士で信頼し合うためには、まずチームリーダーから他のメンバーを信頼しているという言動を示す必要があります。リーダーは、プロジェクトやチームの存在に前向きに努め、高いモチベーションで臨んでいる様子を示しましょう。
目標を共有する
2つ目に目標の共有です。そもそもこのプロジェクトの目的は何か、どんな課題を解消しなければならないのか、という具体的な目標設定を最初に行い、そこに向けてチームで前進する姿勢を養う必要があります。
目標設定が曖昧だと、メンバーは何をすれば良いのか、そもそも何故、このプロジェクトが立ち上げられたのか、ということがわからず、モチベーションを維持することが難しくなります。シンプルで共有しやすい目標を掲げ、常に目標を念頭に置いた行動ができるよう促しましょう。
コミュニケーションを習慣化する
3つ目は、コミュニケーションの習慣化です。チームワークを強化するためには、コミュニケーションの基本である「報連相」を実施できることが大切です。
業務上のコミュニケーションはもちろんのこと、プライベートについても、ある程度お互いを理解することで、信頼関係を構築したり、お互いの行動パターンを把握し、連携の強化を促せます。
コミュニケーションがリモート環境でも途切れることのないよう、チームリーダーが積極的に声かけや会話のきっかけを設けることが大切です。
メンバー毎の役割を明確にする
4つ目は、メンバー間での役割の明確化です。チームワークを強化する上では、誰がどんな役目を果たすのかを明らかにしなければなりません。役割が明らかになっていないと、誰がどんな業務に携われば良いのかがわからず、アクションに移すのが遅れてしまったり、二重に業務を進めてしまったりするトラブルが起きるためです。
プロジェクト開始前に、予め、誰がどんな仕事を引き受けるのかを線引きしておき、円滑な業務遂行を促しましょう。
チームワーク強化につながる8つの改善施策
それではここから、チームワーク強化につながる具体的な改善施策について見ていきましょう。
チームビルディング研修
チームワーク強化を図る上で無視できないのが、チームで取り組む各種アクティビティです。チームビルディング研修は、チームメンバーがお互いのことをよく知るために、特別なアクティビティに取り組み、その中で信頼関係を養っていくものです。業務とは別に研修時間を確保することで、ストレスを抱えることなく人間関係を醸成できます。
チームビルディング研修にはいくつかの方法がありますが、ポピュラーなのはロールプレイングです。製品開発のワークショップや、実際の営業シーンを想定したプレゼンなど、現実味のあるシチュエーションを仮想的に用意することで、肩の力を抜きながらも、緊張感を持ってお互いの能力を発揮し合うことができます。
1on1ミーティング
1on1ミーティングは、上司と部下が定期的に実施することで人間関係を養い、定着率や信頼関係構築を進める方法です。いわゆる個人面談ですが、普段話せない悩みや、今後のキャリアについての相談をメンバーがリーダーに対して行えるので、踏み込んだ人間関係を構築しやすいメリットがあります。
ランチミーティング
ランチミーティングは、いわゆる昼食会です。昼食の時間をメンバーと過ごすことで、仕事の話やプライベートの話を交わす時間を確保できます。業務上のミーティングとは異なり、カジュアルな関係を築きやすいので、定期的に開催することでチームワークの強化につながります。
サンクスカード
サンクスカードは、メンバー同士がお互いの役割に対して感謝の意を示すため、手書きで感謝の言葉を書いたカードを送り、励まし合う取り組みです。
メールなどではなく、敢えて手書きにすることで気持ちを伝えられるため、対面ミーティングの際に実施すると良いでしょう。
ダイアローグ
ダイアローグは、いわゆる「対話」ですが、テーマを決めてメンバー内で好きなように意見を出し合うコミュニケーションの機会です。
フラットな立場で好きなように発言し、それを受け入れ合うコミュニケーションのため、お互いに言いたいことが言えたり、新しい価値観の発見につなげたりできます。
ディベート
ダイアローグよりも真剣な議論が求められる場合には、ディベートが最適です。特定のテーマについて賛成派と反対派に分かれ、お互いに意見を主張しあい、最終的にどちらの側が説得力があったかを判定し、勝敗を決めます。
ダイアローグとは違い、相手よりも有利な議論を展開することが目的であるため、ある程度、信頼関係が構築された中で行うと効果的です。
陰褒め
陰褒めは、その場にいない人物を褒め称えて、間接的に好意や誠意を伝える方法です。間接的にメンバーをお互いに褒めることで、直接褒めたり評価するよりも好意が伝わりやすく、人間関係の改善や信頼関係の構築に役立ちます。
機会を設けて実施するというよりも、日頃から意識的に取り組むことで、効果を発揮する施策です。
グッドオアニュース
グッドオアニュースとは、昨日今日にあった最近の出来事で良かったニュースをお互いに共有し合うアクティビティです。
ポジティブなニュースのみを共有し、お互いにそれを褒め合うことによって、モチベーションを高めあったり、その人の興味関心の方向を理解するのに役立てることができます。
まとめ
チームワークを強化するためには、ITツールの活用や仕組みづくりはもちろん大切ですが、日頃からメンバー同士でコミュニケーションをとり、居心地の良いチームづくりを進めることが必要です。
上記で紹介した施策は、いずれも日常的、あるいは定期的に取り組むべきアクティビティで、気軽に導入しやすいだけでなく、すぐ効果が現れるものが大半です。積極的に実践し、中長期的に生産性の高いチームワークを実現しましょう。