2024年4月、Forbesが発表した「世界の富豪トップ10(2024年版)」によると、LVMHの会長兼CEOであるベルナール・アルノー氏が世界で最も裕福な人物とされました。この記事では、世界富豪ランキングで上位10位に名を連ねた富豪たちの業績と彼らがどのようにしてその地位に至ったのかを紹介します。
ベルナール・アルノー氏
- Bernard Arnault & family
- LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン会長兼CEO
- 2,262億ドル(約34兆円)
ベルナール・アルノー氏は、フランスの実業家であり、高級ブランド商品を扱うLVMH(ルイ・ヴィトン モエ ヘネシー)の会長兼CEOです。彼はフランスのビジネス界で非常に影響力のある人物として知られており、しばしば「ファッションの帝王」とも称されます。
アルノー氏は1949年にフランスのルーベで生まれ、フランスの名門エコール・ポリテクニークを卒業後、家族経営の建設・不動産会社に入社しました。1980年代に入ると、彼はファッション業界に転身し、1984年にフィナンシエール・アグシュ(彼の持株会社)を通じて高級ブランドのクリスチャン・ディオールを買収しました。その後、1987年にLVMHが設立された際には、その経営を引き継ぎました。
LVMHはルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、フェンディ、ケンゾー、ギヴァンシィ、ドン・ペリニヨン、モエ・エ・シャンドンなど、70以上の高級ブランドを保有しています。2021年には、アメリカの宝飾品ブランド、ティファニーを158億ドルで買収し、これは史上最大のラグジュアリーブランドの買収とされています。アルノー氏のリーダーシップの下、LVMHは世界最大の高級品会社となり、彼自身も一時世界で最も裕福な人物の一人となりました。
彼はまた、アートと文化への支援も積極的に行っており、自身がコレクターとしても知られています。LVMHは文化プロジェクトへの投資も多く、パリのルイ・ヴィトン財団はアートと文化を支援するために彼によって設立されました。
アルノー氏はビジネスの成功だけでなく、芸術と文化への深い関心と支援で、その影響力を世界中に広げています。
ジェフ・ベゾス氏
- Jeff Bezos
- アマゾン会長兼創業者
- 1,984億ドル
ジェフ・ベゾス氏は、アメリカの実業家であり、オンライン小売り大手アマゾン(Amazon.com)の創業者兼元CEOです。彼は1964年にニューメキシコ州で生まれ、プリンストン大学で電気工学とコンピューターサイエンスを学びました。
1994年、ジェフ・ベゾス氏はシアトルのガレージからAmazonを設立しました。当初はオンライン書籍販売店としてスタートしましたが、その後、幅広い商品を取り扱う世界最大のオンライン小売りプラットフォームへと成長しました。ベゾス氏のビジョンとイノベーションにより、Amazonは電子商取引業界で革新的な役割を果たし、クラウドコンピューティングサービス、AIアシスタント、宇宙探査など多岐にわたる分野にも進出しています。
2021年にCEO職を退任し、エグゼクティブチェアマンに。その他の事業、特に宇宙探査企業ブルーオリジンおよび他の慈善的な取り組みに積極的に関わっています。
ベゾス氏はまた、ワシントン・ポスト紙を所有しており、メディア事業にも関与しています。彼の慈善活動は、教育や気候変動対策に焦点を当てており、ビル&メリンダ・ゲイツ財団と共に気候変動対策ファンドを立ち上げるなどしています。
イーロン・マスク氏
- Elon Musk
- テスラCEO
- 1,953億ドル
イーロン・マスク氏は、起業家であり、技術革新家として広く知られています。彼は複数の高プロファイルのテクノロジー企業の創設者または共同創設者であり、特に電気自動車メーカーのテスラ(Tesla, Inc.)のCEOや、商用宇宙旅行を目指す宇宙探査企業スペースX(SpaceX)の創設者兼CEOとしてその名を馳せています。
1971年に南アフリカのプレトリアで生まれたマスク氏は、カナダを経てアメリカ合衆国に移住し、ペンシルベニア大学で物理学と経済学を学びました。その後、スタンフォード大学で博士課程に進学しましたが、起業の道を選び、学業を中断しました。
マスク氏のビジネスキャリアは、インターネット黄金時代に始まりました。彼はX.comを創業し、これが後にペイパル(PayPal)として知られるようになりました。ペイパル売却後、彼はテスラとスペースXへの投資を開始し、これらの企業をテクノロジー界の先端に位置づけました。
テスラは電気自動車の普及を推進し、スペースXは商業宇宙旅行と宇宙探査の民主化を目指しています。スペースXは、再利用可能なロケット技術の開発に成功し、国際宇宙ステーション(ISS)への貨物輸送サービスを提供しています。また、彼はトンネル掘削会社ボーリング・カンパニー(The Boring Company)と、ニューラルテクノロジー企業ニューラリンク(Neuralink)を創業しています。
マスク氏のビジョンは、持続可能なエネルギーの普及と人類の火星居住を実現することに焦点を当てています。また、公共交通のイノベーション、AIの倫理的な使用、そして地球外での人類の生存可能性の増進に向けた取り組みに情熱を注いでいます。
彼の業績と挑戦的な目標は、世界中で議論を呼び、多大な影響を与えていますが、その経営スタイルと公の発言はしばしば論争の対象となっています。マスク氏は技術と起業精神の世界で最も影響力のある人物の一人と見なされています。
マーク・ザッカーバーグ氏
- Mark Zuckerberg
- メタ・プラットフォーマー
- 1,703億ドル
マーク・ザッカーバーグ氏は、アメリカの実業家であり、ソーシャルネットワークサービス「Facebook」の共同創業者およびCEOです。彼は1984年にニューヨーク州ホワイトプレインズで生まれ、ハーバード大学に進学しましたが、Facebookの開発と拡大に専念するために中退しました。
2004年に学友たちと共にFacebookを立ち上げた彼は、ソーシャルメディアの領域で急速に成長し、数十億のユーザーを抱えるプラットフォームへと発展させました。この成功のおかげで世界で最も若い億万長者の一人となりました。
プライバシー問題やデータの取り扱いに関する批判に直面しながらも、プラットフォームの改善と透明性の向上に努めています。また、彼は妻のプリシラ・チャンと共に「チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブ」を設立し、教育や健康、科学技術の進歩を促進するための慈善活動にも積極的に取り組んでいます。
2021年には、Facebookの持ち株会社の名前を「Meta Platforms Inc.」に変更し、バーチャルリアリティと拡張現実に重点を置いた「メタバース」の構築に注力していることを発表しました。これは、インターネットの次の段階としてソーシャルコネクションを深める新たなプラットフォームを目指しています。
ラリー・エリソン氏
- Larry Ellison
- オラクルCTO兼創業者
- 1,552億ドル
ラリー・エリソン氏は、アメリカの実業家であり、世界有数の企業データベースソフトウェア会社、オラクル(Oracle Corporation)の共同創業者であり元CEOです。彼は1944年にニューヨークで生まれ、シカゴ大学とイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で教育を受けましたが、卒業はしていません。
エリソン氏は1977年にオラクルを創業しました。この会社は最初はソフトウェア・デベロップメント・ラボラトリーズ(SDL)として設立され、後にオラクルと改名されました。オラクルは企業向けデータベース管理システムの開発で急速に成長し、世界中の企業で広く使用されるようになりました。彼のリーダーシップの下で、オラクルは業界のリーダーとしての地位を確立し、多岐にわたるソフトウェア製品とサービスを提供するグローバル企業に成長しました。
CEOとしての彼の時代は、積極的な買収戦略と革新的な技術開発によって特徴づけられました。エリソンは2014年にCEOを退任しましたが、その後もオラクルの取締役会長および最高技術責任者(CTO)として同社に関わり続けています。
エリソン氏はまた、ヨットレースに情熱を持っており、特にアメリカズカップでの活動で知られています。彼のチーム「オラクル・チームUSA」は複数回の優勝を果たしています。また、彼は航空機の操縦も行い、多趣味な人物としても知られています。
慈善活動にも積極的で、教育や医療、環境保護に関するプロジェクトに多額の寄付を行っています。プライベートでは、彼は自然保護活動にも関心が高く、カリフォルニア州ランチョミラージュにある自宅は、環境に配慮した設計が施されています。
プライベートでは3億ドルでハワイのラナイ島の98%を購入し、2012年に居住を移しました。2018年12月から2022年8月までテスラの取締役会に所属しており、今でも電気自動車メーカーの約1500万株を所有しています。ラリー・エリソン氏はテクノロジー業界のパイオニアであり、その影響は今日も続いています。
ウォーレン・バフェット氏
- Warren Buffett
- バークシャー・ハサウェイCEO
- 1,386億ドル
ウォーレン・バフェット氏は1930年8月30日にアメリカのネブラスカ州オマハで生まれました。彼の父は株式仲買人であり、4期にわたりアメリカ合衆国議会の議員を務めた人物です。バフェット氏は若い頃からビジネスと投資に興味を持ち、11歳で最初の株式投資を行いました。彼はペンシルバニア大学ウォートン校に進学し、その後ネブラスカ大学で学士号を取得し、コロンビア大学で経済学の修士号を取得しました。そこでベンジャミン・グレアム氏のもとで価値投資の理論を学びました。
バフェット氏は1956年にバフェット・パートナーシップ・リミテッドを設立し、その後、テキスタイル企業であったバークシャー・ハサウェイの株を購入し、徐々にその経営を掌握しました。1965年には同社の支配的な株主となり、経営の主導権を握りました。バフェット氏はこの会社を多角的な持株会社へと変貌させ、保険や他の多くの企業への投資を通じて、バークシャー・ハサウェイをアメリカの主要な持株会社の一つに成長させました。
彼の投資戦略は、「価値投資」に基づいており、本質的価値が株価に比べて低く評価されている企業株を見つけ出し、長期保有することにあります。バフェット氏はまた、経済的な堀(競争上の優位性)を持つ企業に投資することを好みます。
バフェット氏はまた、その富を慈善事業に捧げることでも知られており、彼は自分のバークシャー・ハサウェイ株の大部分を慈善団体に寄付すると公表しています。その大半はビル&メリンダ・ゲイツ財団への寄付となります。
ビル・ゲイツ氏
- Bill Gates
- ビル&メリンダ・ゲイツ財団 共同議長
- 1,313億ドル
ビル・ゲイツ氏(ウィリアム・ヘンリー・ゲイツ三世)は、1955年10月28日にアメリカのワシントン州シアトルで生まれました。彼はマイクロソフトの共同創業者として最もよく知られており、ビジネス、投資、慈善活動、および執筆活動で広く認知されています。ゲイツ氏はハーバード大学を中退し、1975年に幼なじみのポール・アレン氏と共にマイクロソフトを設立しました。この会社は、パーソナルコンピューター用ソフトウェアの開発において革命をもたらしました。
マイクロソフト設立後、ゲイツ氏はMS-DOSやWindowsなどのオペレーティングシステムを開発し、その後も同社の技術顧問として活動を続けています。また、彼は会社をいくつか設立し、環境や健康に関連する様々な技術革新に取り組んでいます。
2000年には、当時の妻メリンダと共にビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立し、世界の貧困や疾病の問題解決に尽力しています。特に教育、医療改善、そして気候変動対策に関するプロジェクトに注力しており、これらの分野での革新的な取り組みを通じて、世界中の人々の生活を改善しようとしています。
また、ゲイツ氏は2010年にウォーレン・バフェット氏と共に「ギビング・プレッジ」を立ち上げ、世界の富裕層に対して彼らの富の半分以上を慈善に捧げるよう呼びかけました。これらの取り組みは、彼の慈善活動への献身と、より良い世界を築くための彼の願いを反映しています。
ラリー・ペイジ氏
- Larry Page
- アルファベット共同創業者兼取締役
- 1,260億ドル
ラリー・ペイジ氏は、1973年3月26日にミシガン州イーストランシングで生まれたアメリカのコンピューターサイエンティストで起業家です。彼は1995年にスタンフォード大学でセルゲイ・ブリン氏と出会い、彼と世界で最も有名な検索エンジンGoogleを創設しました。
ペイジ氏は、GoogleのCEOとして1997年から2001年まで、そして2011年から2015年まで務め、その後新たに形成された親会社Alphabet Inc.のCEOに就任しました。彼は2019年までこの役職にありましたが、その後すべてのエグゼクティブポジションから退きました。今はアルファベットの取締役会のメンバーとして活動を続けています。
彼の父親もコンピューターサイエンスの教授であり、幼い頃からテクノロジーに囲まれた環境で育ちました。これが彼の技術への関心を育み、後のキャリアに大きく影響を与えたと考えられます。ペイジ氏はまた、Kitty Hawk Corporationなどのスタートアップで空飛ぶ車事業に投資しており、技術革新への彼の貢献は検索エンジン技術に留まらない広がりを見せています。
彼はミシガン大学でコンピューターエンジニアリングの学士号を取得後、スタンフォード大学でコンピューターサイエンスの修士号を取得しました。大学での研究が後にGoogle検索エンジン技術の基礎となる「ページランク」のアルゴリズムの開発につながりました。
ペイジ氏のビジョンは、テクノロジーが人々の生活にシームレスに統合され、効率を向上させ、人間の幸福を高めるものであるべきだというものです。彼は特に人工知能、ヘルスケア、持続可能性といった分野での進歩を通じて、このビジョンを実現しようとしています。
ペイジ氏はクリーンエネルギーの提唱者であり、パロアルトの自宅では燃料電池と地熱エネルギーを使用しています。
スティーブ・バルマー氏
- Steve Ballmer
- 元マイクロソフトCEO、ロサンゼルス・クリッパーズ オーナー
- 1,245億ドル
スティーブ・バルマー氏は1956年3月24日にアメリカ・ミシガン州デトロイトで生まれた実業家です。彼はハーバード大学を1977年に数学と経済学の学位を取得して卒業しました。大学卒業後、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)で働き、スタンフォード大学経営大学院に通い始めましたが、ビル・ゲイツ氏の誘いで中退し、1980年にマイクロソフトに参加しました。
バルマー氏はマイクロソフトでCEOとして2000年から2014年まで勤務し、その間に会社の年間収益は250億ドルから700億ドル以上に増加しました。彼のリーダーシップの下で、マイクロソフトはXboxゲームコンソールやエンタープライズクラウドサービスなど、新しい製品分野に進出しました。また、Skypeの85億ドルでの買収を行い、これは彼の在任中の最大の買収でした。
マイクロソフト退職後、バルマー氏はNBAのロサンゼルス・クリッパーズを購入し、教育や地方自治体に関する情報の透明性を高める非営利組織USAFactsを立ち上げるなど、慈善活動にも積極的です。彼のリーダーシップスタイルは情熱的で競争心が強く、革新と成長を推進することに重点を置いていました。
セルゲイ・ブリン氏
- Sergey Brin
- アルファベット共同創業者兼取締役
- 1,211億ドル
セルゲイ・ブリン氏は、1973年8月21日にソビエト連邦のモスクワで生まれました。彼は幼い頃に家族と共にアメリカに移住し、メリーランド大学で数学とコンピューターサイエンスを学びました。その後、スタンフォード大学でコンピューターサイエンスの博士課程に進学し、ここでラリー・ペイジ氏と出会い、共にGoogleを創業しました。
ブリン氏とペイジ氏は、ウェブページ間のリンクを分析してページの重要性を評価する「ページランク」というアルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムは、彼らが作成した検索エンジンの基礎となり、後にGoogleとして知られるようになりました。彼らは1998年にGoogleを正式に設立し、検索エンジンは急速に成長しました。
ブリン氏は技術開発においても重要な役割を果たし、Googleの数々の革新的なプロダクトの開発をリードしました。また、2006年にはYouTubeを買収し、Googleのサービス範囲を拡大しました。
2015年には、Googleはアルファベット社として再編され、ブリン氏は新会社のプレジデントに就任しました。この再編により、彼はより長期的なプロジェクトに注力しています。彼は特に、技術が社会的な利益にどのように貢献できるかについて深い関心を持っています。
独自の感性で時代を先取り
世界富豪ランキングの上位にはアメリカの起業家たちが名を連ねています。彼らは多くの挫折を経験しながらも、独自の感性と技術革新を武器に、常に時代を先取りしてきました。不確実な時代においても、鋭い判断力を養い続けることが、成功への近道であるかもしれません。
※参考文献
世界の富豪トップ10(2024年版)、1位はLVMH会長で資産34兆円 | Forbes JAPAN
Forbes Billionaires 2024