将来が不透明で先行きが見えないVUCA時代では、エンパワーメントの取り組みが必須になってきています。その理由は、経営者や管理職による判断ではなく、現場で判断するなど迅速な意思決定が求められるためです。
部下に仕事の裁量を与えて、能力を開花させ現場ベースで判断していかなければいけません。
しかし、エンパワーメントに成功する企業もいれば失敗に終わる企業も存在します。この違いは何なのでしょうか?
今回は、エンパワーメントの成功事例を踏まえながらポイントを解説します。
エンパワーメントの成功事例
最初に、エンパワーメントに成功している企業事例をご紹介します。
ザ・リッツ・カールトン
米国で有名なホテル「ザ・リッツ・カールトン」では、従業員の判断によりサービスを提供できる裁量が与えられています。
例えば、誕生日に宿泊したお客様に対して、バースデーカードやバースデーケーキを従業員の判断で用意できるのです。
従業員はお客様にサービスを提供するためなら、1日に最高2,000ドル(約22万円)を決済をもらわずに使用できます。このような仕組みにより、顧客満足度の高いサービスをスピーディーに提供しています。
グーグル
IT先進企業のグーグルでは、社内情報を積極的に公開していき、社員に権限委譲をして仕事を学んで欲しいというスタンスをとっています。
週1回の全社員ミーティングでは、経営者のトップが会社の状況を説明しているのです。この説明では「会社の決定事項」「今後の展望」「変更点」「製品の状況」に触れられており、質疑応答の時間が設けられています。
経営者と意見交換ができる場が設けられており、社員のモチベーションを上げてエンパワーメントに取り組んでいます。。
スターバックス
人気のコーヒーチェーンのスターバックスでは、細かい接客マニュアルを用意していません。基本理念や使命の共有は徹底していますが、接客マニュアルに関しては「お客様が何をして欲しいのかを考える」と記載されているだけで、「正社員もアルバイトも顧客満足度を追求するために何ができるのだろう?」と考えるようになっています。
また、顧客満足度に貢献した従業員にはインセンティブが付与されるようになっており、スタッフの働き甲斐を醸成しています。このような労働環境の整備をすることで、顧客満足度につなげているのです。
エンパワーメントを成功させる10個のポイント
エンパワーメントの成功事例をご紹介しましたが、効果が見込めている企業には共通点があります。どのような共通点があれば、エンパワーメントの効果が最大化できるため覚えておきましょう。ここでは、エンパワーメントを成功させる10個のポイントを紹介します。
1.権限委譲の文化を浸透させる
権限委譲の取り組みは、社内全体で方針として共有する必要があります。その理由は、権限委譲した部下が仕事を進める上で周囲の人の協力を得たり、予算確保したりしなければいけなくなるためです。
権限委譲の文化が社内に浸透していなければ、協力を仰いだり、予算確保したりするのが難しくなります。そのため、経営者は権限委譲の文化を浸透させていく必要があります。
2.顧客満足度を意識させる
サービスの顧客満足度を上げるためには、顧客1人1人の要望を把握して、的確にサポートする必要があります。
ホスピタリティを持ち、常にお客様の立場を考えながら、サービスを提供することが大切で、マニュアルが通用しないことが多いです。
エンパワーメントに成功している企業では、顧客満足度を上げるために、行動に自由な裁量を与えています。
3.部下の教育を実施する
権限委譲にふさわしくない部下を選んでしまうと、エンパワーメントは失敗に終わってしまいます。
エンパワーメントを成功させたい場合は、部下の育成度合いに応じた権限委譲をさせることが大切です。そのため、将来的に権限委譲させて教育させたい部下に対しては、スキルや能力を磨く教育研修を実施しましょう。
4.全社員に情報を共有している
会社全体のビジョンやミッション、必要な情報は共有するようにしましょう。その理由は、権限委譲した結果、企業や組織の方向性とズレてしまうという問題を防止するためです。
権限委譲した仕事が、どのような目的を持っているのかを共有して理解してもらうことが一歩目です。そのため、判断基準に必要な情報を共有しておきましょう。
このような情報を共有しておくことで、権限委譲された後に「やってよいこと」「やってはいけないこと」が明確になります。
5.お互いを信頼している
権限委譲を成功している企業は、上司と部下の間で信頼関係が構築できています。
権限委譲をしても、最終的な責任は上司にあることを伝えています。部下は定期的な報告をして、必要があればアドバイスが受けられることを理解できているのです。
このような信頼関係が構築できているから、部下は不慣れな仕事を遂行していけるのです。
6.権限の範囲が明確である
部下に権限委譲する場合は、明確な権限の範囲を定めておきます。守るべき基準やルールがあればガイドラインを作成して明確にしておきましょう。権限の範囲を明確にすることで、部下は自らの力で遂行していけるようになります。
しかし、ガイドラインには「していけないこと」の説明にとどめ、やり方を指示するのは控えるようにしましょう。
7.メンターを割り当てている
権限委譲する場合は、部下にメンターを割り当てましょう。メンターとは、仕事の助言者をいいます。新しい仕事に携わる部下は不安を抱えているものです。そのような部下のサポートをするメンターを割り当てることにより、困難にぶつかっても仕事を遂行していけるようになります。
8.人事評価制度に反映させる
権限委譲された部下のモチベーションを上げるためにも、人事評価制度に反映させる旨を伝えましょう。
その際に、評価基準を定めて、仕事の進捗報告を求める時期と評価を行う時期を決めておきます。
きちんと評価されることを伝えることで、意欲的に仕事に取り組んでもらえるようになります。
9.適材な人に権限委譲している
権限委譲の相手は誰でも良いわけではありません。適材な人に権限委譲させましょう。従業員の中には、大きな権限を任せられることでプレッシャーに感じてしまう人もいます。そのため、普段から部下の性格や強み、ウィークポイントを把握しておきましょう。
また、権限委譲の内容を行使できる能力を持っているかを見極めることも重要です。権限委譲に成功している企業は、適材な人を選べているという大きな特徴があります。
10.進捗状況の可視化する
権限委譲をしても、上司は、部下の仕事の進捗状況を確認できるような環境を整備しておきましょう。いつでも確認できる状況にしておくことで、部下がミスをしたときもサポートがしてあげられます。また。会社の理念とズレが生じてしまうなどの問題が起きなくなります。
まとめ:エンパワーメントに取り組む場合のポイント
今回はエンパワーメントの成功事例を踏まえながら、押さえるべきポイントについて解説しました。最後にエンパワーメントに取り組む場合のポイントをおさらいしておきましょう。
<エンパワーメントを成功させるポイント>
- 権限委譲の文化を浸透させる
- 顧客満足度を意識させる
- 部下の教育を実施する
- 全社員に情報を共有している
- お互いを信頼している
- 権限の範囲が明確である
- メンターを割り当てている
- 人事評価制度に反映させる
- 適材な人に権限委譲している
- 進捗状況の可視化する
ぜひ、これを機会に権限委譲の取り組み方を見直してみてください。
※参考文献
『HRmitas 企業の成長にとって、従業員のエンパワーメントはキーになりうるか』
『HRnote 組織のエンパワーメント(権限委譲)を成功に導く方法|成功・失敗事例をもとに徹底解説』
『日本の人事部 スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社:「自主性を引き出す」人材マネジメントとは~マニュアルがなくても人は動く~』
『13 Examples Of Empowered Employees』