中退共と経営セーフティ共済

中退共・経営セーフティ共済とは?

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中小企業が利用できる共済制度には、中退共(中小企業退職金共済制度)、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)があります。

人件費の拠出や安定した資金繰りの確保は、中小企業に常につきまとう課題ですが、そのような事業規模の企業をサポートを目的とした制度です。

この記事では、中退共と経営セーフティ共済についてわかりやすく解説していきます。

中退共・経営セーフティ共済の概要

まずは、中退共と経営セーフティ共済の概要について、それぞれ説明していきます。

中小企業退職金共済制度の概要

退職金制度の候補のひとつに、中小企業退職金共済(中退共)があります。

中小企業退職金共済(中退共)は、従業員が加入できる制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部が運営する、中小企業のための退職金制度です。

厚生労働省管轄の「独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部(中退共)」が運営母体となっています。

会社が毎月掛金を支払って従業員の退職金を積み立てていき、従業員が退職した際、退職金は中小企業退職金共済から支払われます。

年功序列の勤務体制が一般的な日本においては、長年勤め上げた従業員に退職金を支払うのが通例でしょう。とはいえ、中小レベルの企業運営の中で資金繰りを行って、十分な退職金を拠出するのは厳しいといえます。中退共に加入していれば、一度にまとまった金額を支払う退職金について、資金調達の心配が要りません。

経営セーフティ共済の概要

経営セーフティ共済とは、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産したり経営難に陥ったりすることを防ぐことを目的とした共済制度です。

加入資格は、継続して1年以上事業を行っている中小企業者で、かつ一定の要件に該当する場合に加入することができます。

この制度は、中小企業倒産防止共済法に基づいて、国が全額出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。

経営セーフティ共済は、加入後6カ月が経過して取引先企業が倒産した場合(一定要件を満たす私的整理も含みます)、売掛金や受取手形の回収が困難になった額と、積み立てた掛金総額の10倍に相当する額のいずれか少ない方の額(貸付限度額8,000万円)の貸付を受けることができます。

その事業者との取引の確認が済み次第、すぐに借入れることができるので、連鎖倒産を防ぐことに効果があるというわけです。なお、借り入れに際しては、担保・保証料の必要はありません。

中退共のメリット

中退共の利用には、以下のようなメリットが挙げられます。

節税効果

従業員への退職金は、原則としてその全額が損金として認められます。ただし、退職金は退職時に一度に支払うものですから、一時的に多額の費用が発生してしまうことになります。この退職時に発生する多額の費用は、中小企業の場合にとって負担を与えることになりかねません。

そこで、多額の費用が発生する退職金対策で中退共に加入すれば、毎年退職金を積み立てることができ、これは毎期の費用にすることができます。

また、この制度に加入する前に勤務していた期間は、過去勤務期間(最高10年)の通算でさらに充実した退職金制度を確立することができます。

掛金の設定範囲が柔軟

中退共の掛金は、5,000円~3万円で従業員ごとに任意で選択することができます。また、掛金を変更したいときは、掛金月額の種類の範囲内でいつでも行うことができます。たとえば、勤続35年で退職金1,000万円とした場合、掛金月額は2万円となります。

短時間労働者の場合には、2,000円から4,000円の範囲で設定することができるため、自社の資金繰りとの兼ね合いで柔軟に掛金を設定することができます。

国の助成がある

中退共制度に新たに加入する事業主に対して、加入後4カ月目から、掛金月額の2分の1(上限5,000円)を1年間、国が助成してくれます。

また、掛金月額が18,000円以下の従業員の掛金を増額変更する事業主に対しては、その増額分の3分の1を1年間、国が助成してくれます。

中退共を利用する際の注意点

中退共を利用する際、以下のことに注意しましょう。

支払った掛金が戻らない

掛金は、従業員ごとの「契約成立日」の属する月分から「退職日」が属する月分まで納付します。

そして、中退共が従業員個人の退職金に充当されるものであることから、支払った掛金は会社に返却されることはありません。ここが、中退共と保険制度との最も大きな違いといえます。従業員を懲戒解雇した場合、従業員に退職金は支払われます。

また、掛金は増額することはできますが、減額については原則として認められていません。被共済者が同意した時、または現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めた時のみ、減額することができます。

勤続期間2年未満は元本割れ

従業員の勤続期間が2年未満だと元本割れをしてしまいます。また、掛金の納付が1年未満の場合は、退職金は支給されません。

元本割れしないためには、2年から3年6カ月の加入が必要です。そして、3年7カ月から掛金相当額を上回る額を受けとることができます。これは中退共が、長期加入者の退職金を手厚くするためのしくみになっているためです。

自社で退職金を支払っている大企業においても、勤続年数5年未満の退職では多くの場合、退職金はありません。共済を利用した上で、元本割れを防ぐよう一定の勤続ルールを人事制度に追加しても良いかもしれません。

経営セーフティ共済のメリット

次に、経営セーフティ共済の主なメリットを紹介します。

節税効果

まず、この制度の一番のメリットが、掛金の税制優遇で高い節税効果があるという点です。経営セーフティ共済に加入すれば、確定申告の際には、その掛金を損金(個人事業主は必要経費)に算入することができるので、たとえば掛金を月額20万円にすれば最大で年間240万円を損金に算入することができます。

さらに、一括払いをすることもできるので、期末に240万円を損金として計上すれば、事業所得なら年間最大480万円を損金(個人事業主は必要経費)とすることができます。つまり、その分所得を減らし、節税することができるのです。

取引先が倒産後すぐに借入できる

取引先が倒産して、売掛金などの回収が困難になった場合には、その事業者との取引が確認され次第、すぐに借入をすることができます。

共済金の借入れが受けられる取引先の倒産は以下のとおりです。尚、取引先が夜逃げしてしまったケースについては、共済金の借入はできませんので気をつけましょう。

・法的整理

・取引停止処分

・でんさいネットの取引停止処分

・私的整理

・災害による不渡り

・災害によるでんさいの支払不能

・特定非常災害による支払不能

掛金は変更可能

掛金は、5,000円から20万円の間で自由に選ぶことができ、加入後増額・減額もできます。

なお、掛金は800万円まで積立が可能です。

掛金総額が掛金月額の40倍以上に達している場合には、事前に納付掛止届出書を提出すれば、「掛金の払い止め」をすることができます。

40カ月以上で掛金が100%戻る

40カ月以上の納付期間があれば、掛金の100%が戻ってきます。ただし、解約手当金を受け取った時には課税されるので注意して下さい。

経営セーフティ共済は、あくまで緊急時に借り入れができるという保険を掛けながら、掛金を損金にすることができる制度です。つまり、毎期の納税額は少なくなりますが、解約手当金の入金時には一気に課税されるので、税負担という意味では最終的には変わるわけではありません。

とはいえ、保険料ゼロで取引先の倒産時に借り入れができるという保証がされているという意味では、かなりお得な制度であるということは間違いありません。

無担保・無保証で利用できる

共済金の借入れは、無担保・無保証で受けられます。そして、この共済の契約者は取引先の倒産などがなくても、急に資金が必要になった場合に解約手当金の範囲内(解約手当金の95%)で、借入れをすることができます(一時貸付制度)。

公庫や保証協会系からの融資実行されるのが遅く、自社のマネーフローに関わるような事態に陥った時にはぜひ活用したい制度です。

共済金貸付額の上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ないほうの金額となります。

経営セーフティ共済の注意点

経営セーフティ共済では、次のことに気をつけましょう。

起業一年目は利用できない

加入資格は、継続して1年以上事業を行っている必要があるため、起業から1年間は加入できません。

12カ月未満は掛け捨てになる

共済契約を解約した時には、掛金を12カ月以上納めていれば、掛金総額の8割以上が戻り、40カ月以上納めていれば掛金全額が戻ります(ただし、解約時に税金はかかります)。

つまり、12カ月未満は、掛け捨てになってしまうので、注意が必要です。

まとめ

今回の記事では、中小企業退職金共済制度と経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)について解説しました。両者とも、資金繰りが常に課題である中小企業にとっては、非常に魅力的な共済制度だと云えます。

自社の状況と照らし合わせながら、賢く共済制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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