Dfinity財団によるICPはAWSを超えるのか?

Dfinity財団によるICPはAWSを超えるのか?

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特にIT関連の業務を推進している方、基盤構築を担当している方は、最近ICPという言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか?

AWSやAzureなどによるクラウドでのデータ管理が定着してきた昨今ですが、再び新たな技術革新が起こりそうな兆しが出てきました。

今回の記事ではそのような変化にいち早く対応できるよう、Difinity財団によるICPの概要と展望について、分かりやすくご紹介していきます。

ICPの概要

Blockchainのイメージ

ICPという言葉を初めて聞く方や、耳にしたことはあっても何を指しているのかわからないという方も多いと思います。まずは概要や、ICP誕生の経緯について簡単に見ていきます。

ICPとは

ICPはInternet Computer Protocol(インターネットコンピュータプロトコル)の略称で、次世代クラウドサービスや、分散型インターネットを実現するためのプロジェクトの名称です。

2015年に構想がスタートし、Dominic Williams氏率いるDFINITY財団が牽引しています。

DFINITY財団は、スイスのチューリッヒに拠点を置く非営利団体です。

ICPは、世界中の独立したデータセンターを使用した分散型インターネットクラウドの提供や。次世代ソフトウェアの開発など、さまざまな応用が展望されています。それゆえに、IT業界では大きな地殻変動を巻き起こすものとして、期待が寄せられているのです。

現在、DFINITY財団が進めている、ICPを活用した具体的なプロジェクトの例をいくつか見ていきましょう。

ブロックチェーン技術を基礎としたクラウドサービス

DFINITY財団のマイルストーンの一つに、現在のweb2.0の社会において利用が一般化しているアマゾンウェブサービス(AWS)やGoogleの「Google Cloud」、マイクロソフトの「Azure」のようなクラウドサービスを、ブロックチェーン技術によって実現することがあります。

現在、GAFAMが企業向けに提供しているクラウドサービスは、非常に画期的であった一方で、まだまだ一面的かつ発展途上なものです。

現在のクラウドサービスの持つ課題の解消が、ICPによって実現できるかもしれません。この部分については次の章でより詳しく見ていきます。

ブロックチェーン技術を基礎とした新たな開発言語

ブロックチェーン技術を活用した、これまでと全く異なる開発言語「Motoko」の実装も進んでいます。

「Motoko」は、アプリの開発に多大な人件費や手間、工数がかかってしまっている現状を課題と捉え、より簡潔なアプリ開発を目指しています。

すでに「Motoko」によるデモンストレーションは発表されており、LinkedinやTikTokを模したアプリの公表で注目を集めました。

特に、TikTokを模したCanCanは3人のエンジニアが、1.5日で開発したということも公表されており、コード数もおよそ1,000行と非常に少ないです。

Facebookが6,200万のコードによって記述されていることを鑑みると、「Motoko」がいかに画期的なのかが理解できます。

ブロックチェーン技術を基礎としたSDK

「Motoko」の開発と非常に密接に結びついていますが、「Motoko」のSDKもすでに開発されています。「Motoko」の利便性を一般社会にスピーディーに広げるために、SDKの発表も欠かせません。SDKによって互換性を担保すれば、「Motoko」の知識が十分でなくても、すぐにこのアーキテクチャを活用できます。

仮想通貨としての活用

DFINITY財団は、ICPという名称で仮想通貨も提供しています。インターネットコンピュータのガバナンスやネットワーク参加者の善行に対する報酬、および取引を行う際の手数料の支払いなどで活用できます。

イーサリアムとICPは似ている?なぜICPが必要なのか

イーサリアム

ICPは、現在よく知られているプラットフォームのイーサリアムと比較されることが多いです。また、イーサリアムがあればICPは不要なのではないか?という声もあります。

しかし、それぞれのプロジェクトが実は、相補関係にあることを理解しておきましょう。

イーサリアムの革新性

イーサリアムとは、ブロックチェーンに「スマートコントラクト」という機能を組み込んだ、分散管理型のプラットフォームです。

それまでのブロックチェーンは、情報を収めておく鍵のついたブロックが鎖でつながったものでした。しかし、非営利団体のイーサリアムが、そのブロックの中に情報だけでなく、アプリケーションを収めておくことができる技術を開発しました。

この開発によって、イーサリアムのブロックチェーン上に、分散型取引所(DEX)などのDeFi(分散型金融)に関するプラットフォームやNFT(非代替性トークン)のマーケットプレイスなどが生まれることとなりました。

この開発が与えた影響は非常に大きく、イーサリアムがインターネットコンピューターを実現したとまで称されるようになりました。

イーサリアムがあるのに、ICPは必要?

非営利団体のイーサリアムがインターネットコンピューターの実現を先導しているとすれば、後発のDFINITY財団の取り組みは、本当に必要なのでしょうか。

一見するとそのような疑問が生まれるかもしれませんが、ICPはイーサリアムを補うような特徴を兼ね備えています。

汎用性が高く、処理が早い

イーサリアム自体もビットコインになかった機能を兼ね備えた分散ネットワークとして登場しましたが、ICPはより汎用的です。

イーサリアムは、金融取引(DeFi)や所有権の記録や移転(NFT)などが得意ですが、ストレージ容量とブロック生成スピードに限界があると言われています。

一方、ICPは、WebサイトやWebサービスのホスト、大きいサイズのファイルの保存が可能です。さらにプログラムの処理も、Webサービスと同様のスピードで実行可能だと言われています。

エンドユーザーが仮想通貨を保有する必要が無い

特にICPを特徴付けるのが、エンドユーザーがICPを介したサービスを利用するために、仮想通貨を保有する必要がないということです。

イーサリアムの取引やNFTのマーケットプレイスにおいては、必ず仮想通貨ETHが必要になります。一方、ICPプロジェクトに仮想通貨は必ずしも必要でなく、エンドユーザーが、ウォレットを作ったり、仮想通貨を購入したりする必要もありません。

つまり、ICPを活用するための参入障壁が非常に低いのです。

このようにICPは、イーサリアムと異なる特徴を有していることから、ICPがあることでイーサリアムもまた、より良いものになるという相乗効果が期待されているのです。

クラウドサービスにおけるICP活用の革新性

ノートパソコンで作業する人とクラウドサービスのネットワーク

ICPが一般化した時に、多くの企業に関係してくるのは、ICPによるクラウドサービスではないでしょうか。現在多くの企業が活用しているAWSやAzureなどと比較すると、ICPによるクラウドサービスはさまざまなメリットを有しています。

一般化は少し先のことかも知れませんが、今のうちからICPによるクラウドサービスの利点を理解し、切替も検討に入れておくと長期的な事業計画や基盤構築の計画に役立つかもしれません。

特定の企業による独占を避けられる

現在多くの企業が利用しているAWSやAzureは巨大なIT企業が提供するサービスの一つです。利用する際は、データ容量によって使用量などをサービス提供企業に支払わなければなりません。

また、GAFAMのような特定の企業にサービスが集中した場合、過去にはアマゾンが提供するAWSにシステム障害が発生し、銀行送金などに多大な影響が出たこともありました。

ブロックチェーン技術をベースにしたICPによるクラウドサービスを活用すれば、一元的な管理者はいなくなるので、現状は大きく変わります。

セキュリティの向上

ICPは既存のクラウドサービスとは違って、ブロックチェーンを活用した技術であるため、そもそもセキュリティの高さが特徴です。

ブロックチェーンでは、ネットワーク内で発生した取引の記録を「ブロック」と呼ばれる記録の塊に格納し、個々のブロックには取引の記録に加えて、1つ前に生成されたブロックの内容を示すハッシュ値と呼ばれる情報などを格納します。

生成されたブロックが、時系列に沿ってつながっていくデータ構造が、ブロックチェーンと呼ばれる理由です。

もし仮に、過去に生成したブロック内の情報を改ざんしようと試みた場合、変更したブロックから算出されるハッシュ値は以前と異なることから、後続するすべてのブロックのハッシュ値も変更しなければならず、そうした変更は事実上困難です。

このように、ブロックチェーンは、改ざん耐性に優れたデータ構造を有しているのが大きな特徴です。

このような特徴を有している、ブロックチェーンをもとに開発されたICPのクラウドサービスを利用することは、セキュリティ面での向上が大幅に見込めるといえるでしょう。

コスト削減できる

AWSなどのクラウドサービスを利用する際は、データ容量によって使用量などをサービス提供企業に支払わなければなりません。

それ以外にも、クラウドを管理する最低限の担当者を自社で配置する必要があります。ICPを利用すれば、全てを無人で行えるため、そのような人件費をカットすることができます。

まとめ

global networkのアートワークとBlockchain technologyの文字

本記事では、Dfinity財団が主導しているICPの概要や競合としてのイーサリアムとの比較、また、一般化した時に業務影響が大きそうなクラウドサービスなどについて早足で解説しました。

一般化は数年先と見越されるようなテクノロジーの数々も、早くから概要を把握したり、動向を追っておくことが大切です。企業運営を行っている方は、ぜひこれからもICPの動向をチェックしてみてはいかがでしょうか。

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