スタートアップが作るべき良い数値計画とは?

スタートアップが作るべき良い数値計画とは?榊原 清隆氏へのインタビュー

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榊原 清隆(さかきばら きよたか)氏
株式会社Rasen Global Ventures 代表取締役 CEO / ゼネラルパートナー
プロフィール:上場企業の海外事業部に配属、同社東南アジア子会社の責任者として投資先事業のPMI及び現地事業マネジメントを経験後、シンガポールにてスタートアップを共同創業、ASEANにて300万インストールされたアプリビジネスを展開。その後日本にて仮想通貨取引所やD2Cプラットフォーム事業会社のCMOを歴任し、2021年スタートアップスタジオを創設。20社程度の起業支援を実行し約半数以上の企業のアップラウンドを成功。現在はベンチャーキャピタル「Rasen Global Ventures」を創業し、ファンドの組成に向けた活動を推進中。

 

ーーまずは、榊原さんのご経歴を教えてください。

榊原 清隆氏(以下敬称略):IT系の上場企業の海外拠点立ち上げメンバーとしてアサインされ、新卒3年目から東南アジアの新興国で海外法人をM&Aし、買収先のPMIを行いつつ、東南アジア現地で事業立ち上げを担当することを最初のキャリアとして経験しました。

東南アジアでの事業展開によるインパクトを肌で感じたことから、日本人3人で独立し、シンガポールを拠点にYOYO Holding Pte Ltd.を共同創業しました。

いわゆる東南アジアの現地向けモバイルアプリビジネスを立ち上げたところ、フィリピン、インドネシア、インド、タイ、ベトナムで最終的に300万インストールを達成しました。この取り組みは日本をベースとしたベンチャーキャピタルから総額数億円の資金調達を実施する支援を受けました。

東南アジアでは、トータルで約8年間ビジネスを展開していましたが、最終的には事業をスケールアップすることができず、私は撤退し、日本に帰国しました。

その後、仮想通貨取引所のCMOやファッション関連スタートアップのCOOなど、複数のスタートアップの経営陣として活躍しました。

2年前からスタートアップスタジオの立ち上げに従事し、エンジェル出資と投資先のバリューアップの実績を築きました。現在はベンチャーキャピタル「Rasen Global Ventures」を創業し、ファンドの組成に向けた活動を進めています。

ーー実際にセミナーやワークショップの開催も行っていますね。

榊原:はい、その通りです。私自身スタートアップ企業を経営陣として経営していたこともありますし、スタートアップスタジオとして立ち上げに携わった法人、事業の数は、普通の方より多いと思います。

それぞれのプロジェクトで、毎回私自身で数値計画の策定や、ブレインストーミングの段階から「事業を創る」ということをやってきました。次第に自分の中でフレームワークが出来上がり、その経験と知識を生かしてセミナーやワークショップを開催しています。また、地方自治体のインキュベーション施設でスピーカーとしても活動し、知見を共有しています。

ーー先日は岡山でのセミナーに登壇されましたね。新潟のセミナーでも登壇の予定はありますか?

榊原:はい、6月に新潟県魚沼市でセミナーを行う予定です。ありがたいことに、地方自治体の創業支援関連部門からの依頼が増え、様々な場所でセミナーを実施させていただいています。実際、昨年は沖縄県と経済産業省が主催したイベント「ワーケーションウィークオキナワ」で、30名の参加者と共に地方創生に関わるベンチャー事業の立ち上げワークショップを行いました。最近1、2年で地方におけるインキュベーション活動が増加傾向にありますね。

ーー事業創造や資金調達、事業計画の作成にあたってのポイントはありますか?

榊原:資金調達の準備としては一般的に、まずビジネスプランを含んだプレゼン資料を作成し、それを基にピッチ資料を編集したり、数値計画を立案したりといった工程があります。私がコンサルティングしているのは数値計画を作る部分が多いですね。おそらくピッチ資料の作成などに比べ、専門知識を持った人が少ないため、多くのクライアントからの支援依頼が見られます。

資金調達の準備段階では主に二つの資料を作成します。一つは事業計画であり、事業の説明やプレゼンテーションフォーマットのドキュメントが含まれます。もう一つは数値計画で、これはエクセルやスプレッドシートのような表計算ソフトを使用して詳細な計画を立てることを意味します。

補足として言及しますが、投資家や金融機関によっては、ピッチ資料だけで資金提供の決定を下す場合もあれば、収支計画だけを要求する場合もあります。さらに、資金調達の方法がデット融資かエクイティ調達かによっても、必要な資料は異なることがあります。しかし、一般的には、事業計画と数値計画の二つを準備することが基本となります。これを認識していただければ幸いです。

事業説明のピッチスライドの作成ポイントについては、他のリファレンスを参照していただきたいと思います。この前提を持って、ここでは数値計画の作成ポイントを説明いたします。

数値計画を作成する手順について

数値計画の作成における主要なポイントは二つあります。一つ目は、① ロジックツリーを利用して事業の各要素を分析し、深く理解することです。そして二つ目は、この分析を基に、② Google スプレッドシートやエクセルを使って、行動計画や経営指標(KPI)を含む数値計画を作成することです。これらの手順は私のセミナーでも実施しています。

1.ロジックツリーを作る

ここでは、自身の事業を構成する要素の洗い出しを行います。

売上を構成する要素を一つずつ書き出し、次にコストを構成する要素を明示します。まずは幅広くかつ徹底的に要素を挙げることで、その後要素の整理を進めていきます。

2.行動計画を含んだ数値計画の作成

行動計画まで具体的に落とし込んだ数値計画を作成すること、これが数値計画作成時の重要なポイントです。KGI、KPI、KDIといった行動指標を明確に設定し、それに基づいた収支計画を策定することは、戦略策定上で非常に重要な要素であると認識しています。

良い数値計画の条件について

ーー良い数値計画を作成する際に重要な要素は何だと考えますか?

榊原:良い数値計画の条件は、「戦略を作るのに役に立つ」と「外の人から見てもわかりやすい」といえます。起業家は、自身のビジネスを高い解像度で理解する必要があります。そうしないと、戦略を策定することは難しく、外部の人々にも説明することができません。

良い数値計画は、適切な戦略を構築する上で役立ち、第三者から見ても理解しやすくなっているべきです。

良い数値計画を作成する際のポイントとは?

良い数値計画を作成する際には、「要素と力学が明確かつ整理されている」という点が重要です。

要素:他人が見た際に、そのビジネスの重要な要素が理解できること。

力学:ビジネスの各要素間の関係性が明示されていること。

これにより、考察が簡便になり、利用しやすくなります。これを基に、具体的な行動計画を練り、経営者のコミットメントが数値に反映された計画が、良い数値計画となります。

数値計画における一般的な誤り

売上目標を100億円、営業利益目標を10億円と設定し、上場基準を満たす方針を目指すことは可能です。しかし、この計画を達成するために必要となる顧客数や営業戦略の実施件数が、日本市場全体を対象にしても達成が困難なレベルになってしまうケースがよく見受けられます。

実際、売上規模の目標と行動可能な計画や達成可能な数値目標、さらには顧客獲得の目標とが相互に合致しない事例がよくあります。

このような不整合を避けるためには、計画段階での早期発見が肝要であり、数値計画を効果的に立案する上での基本的なステップとなります。

売上と行動計画の整合性が取れていることが重要

ここからは、私の視点でのアドバイスとなりますが、マーケットの占有率が10〜20%程度で、上場基準よりN-1、N-2の段階に近づくような計画が望ましいです。その段階で情報の整合性を保つことが重要であり、それが達成されていない場合、ベンチャーキャピタル側から具体的な指摘を受けることがあります。

現実世界で達成可能な数値と数値計画上の行動計画が整合性を持っているかどうか、注意が必要です。その数値が現実的に達成可能な範囲で積み上げられると、大きな売上へとつながる可能性が見えてくるというものです。

これにより、出資者側も出資を検討しやすくなり、議論のポイントを整理しやすくなります。また、相手側も質問しやすくなり、議論が進行しやすくなると言えます。

資金調達の成功事例について

ーー実際にスタートアップを指導していらっしゃる中で、資金調達がうまくいった事例はありますか?

榊原はい、実際にいくつかの事例があります。ゼロからのスタートアップ創業に関わり、資金調達の段階まで進んだケースは少なくとも10件以上ございます。

初期段階のシード調達時に、起業家と共同で数値計画を策定した実績があります。数時間かけて計画を練り上げ、それを基にプレゼンテーションを行い、成功に導いたケースが幾つかあります。

具体的には、エンジェル投資を含む形で資金調達に成功した企業が5社、その中で2社はバリュエーションが10億円を突破しています。

投資ラウンドの側面では、プレシリーズA段階までに外部のCFOとして関わり、数値計画や資本計画の作成を支援してきました。

現在も進行中の案件としては、2社がバリュエーション10億円を超え、大手ベンチャーキャピタルから1億円以上の調達を進めているところです。

さらに、複数の領域でシリーズA相当のバリュエーションを設定し、進展している企業もいくつかございます。

ーーVCとの整合性があるということですよね。

榊原おっしゃるとおりですね。ベンチャーキャピタルと銀行との見方が大いに異なるという点があります。VCは、グロースに投資する側面があり、銀行は過去の実績を基に無理のない数字を重視します。この点には違いがありますが、両者とも無理なアクションを促すような数値や、不現実な行動指標を推奨する数値プランは避ける傾向にあります。

そういう意味で、私が関わった数値計画は、銀行に提案してもVCに提案しても、大変喜んでいただいています。

今後数値計画を作成する方へのアドバイス

ーー榊原さんのような専門家に相談できる機会がない場合、どのような対策を講じると良いでしょうか?

榊原事実、全てのベンチャーキャピタル(VC)が最初から数値計画を要求するわけではありません。ポテンシャルを感じさせるプロジェクトは、数値計画なしで投資を決定するVCも存在します。

初期の段階、例えばシードラウンドでは3億円や5億円のバリュエーションを設定するケースが見られます。さらに、プレシリーズAで10億円以下の調達ラウンドにVCが参画する際には、数値計画の提出が一般的に要求されることが多いです。そのような段階では、数値計画の準備は必須と言えます。

数値計画の作成にあたっては、外部のCFOに業務を委託する選択肢もありますし、自身で一歩一歩努力を重ねて作成する方もいらっしゃいます。ただし、ここで注意が必要です。虚偽の情報が含まれると、投資者が投資金の返還を求める事態にもつながりかねず、トラブルの元になります。

したがって、誠実かつ現実的な数値計画の策定は、トラブルを回避し、良好な関係を保つために不可欠です。

私自身が行っているコンサルタント業では月に10数件の案件を担当しております。数値計画の作成については、専門のコンサルタントへの依頼や、自ら積極的に学んで取り組むことを強く推奨します。

<インタビュー前編終了>

今日のインタビューでは、榊原さんからスタートアップの資金調達と数値計画作成の重要性について貴重な洞察を得ることができました。榊原さんの言葉から、成功への道のりが単なる数字の問題ではなく、深い洞察と戦略が必要であることが明らかになりました。

次回のインタビュー記事(後編)では、新たなフロンティアへの進出を考えるすべてのスタートアップにとっての貴重なガイダンスとなるであろうテーマ、「<後編> スタートアップが海外にチャレンジする場合にやるべきこととは?」に焦点を当てます。榊原さんの海外展開の経験と専門知識に基づいた具体的なアドバイスをお届けしますので、どうぞご期待ください!

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