【プロに聞く】DX支援企業の代表が語る本当のDXとは?金原正典氏インタビュー

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みなさん。こんにちは。今回はクライアントに対してDX支援を行う金原正典氏へのインタビュー記事を掲載します。

「DX支援企業の代表が語る本当のDXとは?」ということでDXについての取り組みだけではなく、本質論についても教えて頂きました。


■金原正典氏経歴
2001年にジェイズコーポレーション社にて営業に従事。
2002年イニジオ社にて当時黎明期のモバイル広告代理事業に従事。
2006年には、トランスコスモス社にてインターネット広告事業従事。金融・Eコマース企業等を担当。
その後、アイフリーク社ではモバイルコンテンツ事業に従事。
2010年には上海にて、上海爱熙商贸有限公司を設立(董事長に就任)。
2016年、カエルエックス社代表取締役就任。
その後、2021年ネットネイティブ社取締役に就任(現在退任)。
カエルエックスの全株式をMBOにて取得し、同社経営に専念。


ーまずは、これまでの経歴について教えていただけますか?

金原正典氏(以下、敬称略):

大学を辞めてから広告代理店に就職して営業をやっていました。ご縁がありまして、その後中国に渡り、上海でEコマースの立ち上げとコンテンツ配信ビジネスをやりました。

ー中国での立ち上げは大変だったのでは?

金原:

そうですね。最初は、中国は富裕層マーケットが大きいと当時言われていたことから、中国の富裕層向けにルノアールの絵画を販売することを試しに実施してみましたが結果は出ませんでした。

その後、深センに潜り込んで、日本で売れそうなものを買い付けて、日本のEコマースで売るということをはじめました。売上は数ヶ月で月次で600万円規模までなり、粗利率もかなり高かったので儲かりました。キャッシュフローが増えてきたので、ゲームコンテンツのローカライズを始めました。

エンジニアを雇って、デザイナーを雇って、翻訳者を雇ってということをやっていきました。しかしながら、始めてみたものの全然売れず、ローカライズ事業ではちょっと食っていけないなということになりました。

このままだとマズイということで、イラストの制作受託を始めたところ上手く行きました。その後、WeChatがLINEの真似をしてスタンプを始めそうな状況でしたので、日本のコンテンツホルダーから権利を借りて、スタンプを売る事業を始めました。GMVは月間1億円以上行ったのではないかと思います。

 

ーそうなると、結構儲かったのではないのでしょうか?

金原:

そうなんですが、ゲームのローカライズ事業が大幅な赤字だったので厳しかったです。ここから悩みまして、悩んだ結果カンボジアに行くという謎の選択をしました。

 

ーそれはどなたかの縁があったのですか?

金原:

そうですね。投資家の人にこういうことをやりたいので、お金を出してくださいよということで提案をしました。しかし、資本構成や事業プラン的に今回はお金を出せ無いとのことでしたので断られました。しかし、投資先のカンボジア支社の立ち上げサポートを依頼されました。そして、すぐにカンボジアに移住することに決めました。

カンボジアに半年ほど住み込んで事業立ち上げを推進していましたが、当時のカンボジアの環境と僕のイメージするシナリオが合わず、カンボジア在住時に周辺国を点々と視察した結果、ベトナムでの再出発を決めました。

ベトナムでゲームを開発して、日本や中国のマーケットにアウトプットしていく方向で進めていました。そこそこタイトルを出して、ぼちぼち上手くいくようになりました。実は、このときにオフショア受託開発もやっており、その事業も上手く立ち上がりました。

 

ーすごいですね。色々やっていますね。

金原:

そうですね。とにかく色々やりましたね。まあ、コンテンツビジネスの経験もあり、さらには海外で新規ビジネス立ち上げ経験もあり、かつ受託開発をマネージメントする経験もあるという人はあまりいないでしょうね。

 

ー今はカエルエックス社に専念されている感じですか?

金原:

そうですね。カエルエックス社でAR/VRの方向で伸ばそうかと思っています。AR/VRに関する技術はもうだいぶ枯れてきていますが、過去の案件で得た知見から切り貼りすれば、いろいろと実現できちゃうよねといういうところかと思います。なので技術やノウハウを貯めたりとか、関連サービスを出そうとも思っています。

メタバースの時代が来ても、スマホが来た時と同じく、コミュニケーションをするときにちょっとした画像はいると思います。3D空間におけるグリーティングに取り組んでいます。企画の幅はあるので、その辺の技術を織り込むことをやっています。

 

ーDX的な文脈で支援をされている事例はありますか?

金原:

音楽配信サービスの立ち上げ支援をしています。インディーズの方々で、AmazonMusicとかSpotifyとか、サブスク系のサービスに音源を出したいと思っても出せないといういう人が結構います。理由としては、有象無象の音源を投げられても、Spotifyとかプラットフォームにおいては審査の手間があるので、特定のレーベルを通さなければ、リリースできない仕組みになっています。

とはいえ、東芝EMIやエイベックスクラスになると、インディーズのアーティストはそんなに扱っていないと思います。一方で、取引先の渋谷にある小規模なレーベルの場合は、かなりインディーズ作品を扱っており、どんなアーティストでも、ウェブ経由で受け付けて審査をして、プラットフォームにリリースして、上がった収益を分配するプラットフォームサービスを作りました。

 

ー開発プロセスのお手伝いとなると、依頼主さんが割とそこら辺あんまりITに通じてないということですか?

金原:

はい、その通りです。こちらでドメインやAWSのアカウントの取得などのお手伝いから対応しました。

 

ーなるほど。そうなってくると、お客さんの仕様策定のところまで一緒に行ったということですか?

金原:

そうです。お客さんの方は、実現したいことのゴールは持っていたものの、それを実現するための具体的な手段。例えば、画面遷移だったり、機能だったり、分配の仕組みやペイメントの繋ぎ込みなどなどについては知らない状態でした。こちら側でサポートしつつ、一緒に仕様策定をしました。

その後、リリースをすることができまして、お客さんからものすごく喜んでもらえました。実際にリリースをしてみると、流通量が一気に増えました。インディーズアーティストも喜んで使っている感じみたいです。ちなみに、このシステム経由でCDのオーダーも一緒にできますので、インディーズの流通を広げるのに一役を買っているものと思います。

 

ーいけてますね、この仕組みは。他の音楽に似たような業界でも、こういうニーズあるかもしれないですね。

金原:

そうですね。サブスクか、動画とかですね。

 

ーどちらかというと支援というよりも一緒に作っていってるイメージですよね。

金原:

そう、それこそが本当の支援なんじゃないかなと思っています。

DXとはなんぞやみたいな話だと思うのですが、例えばツールを入れたり、部分的にシステム化したりすることもDXの一部ではあると思いますが、それらは本質的ではないと思います。

この案件に関して言いますと、単純な効率化が目的というよりは、ビジネスが広がるところがいいと思います。新しい価値を創造していくところが良いと思います。

 

ーありがとうございます。苦労された点はありますか?

金原:

この音楽配信案件は、依頼をしてくれるクライアントがちゃんと考えて、ゴールをブラさずに一緒に走ってくれるので、成功している例だと思いますが、別の会社の案件で苦労したことはあります。

DXの文脈で予算を取ってプロジェクト立ち上げているのですが、要件を決めることができないクライアントは一定数います。これには苦労します。こちらから提案をしても、共感していただけないというか微妙な返事が返ってきたりします。

また一方で、明らかに方向性が間違っている場合において、それを指摘しても伝わらないケースも苦労します。

 

ーモチベーション上がらないですよね・・・。

金原:

そうですね、仕方がないです・・・。そこから学べるとしたら、半端な気持ちというか、半端な体制のままでDXをやらない方がいいですよということですね。全力投球するべきだと思います。

また、ゴール設定はクライアント側がやるべきことです。そして、ゴールが設定できたら、そこの詳細な決定プロセスをできるだけこちらに任せて欲しいです。特にシステム構築に関して、こちらは専門家としてやっているので参考にしていただきたいと思います。

やはり、基礎的なITリテラシーがない担当者が、個別の仕様に関して判断してしまうケースはあるのですが、だいたいは困ったことになります。

基礎的なITリテラシーといいましたが、とにかく、ずっとネットに触ってるみたいな人じゃないとプロジェクトを回せないと思います。何もしてないけどパソコンが壊れたって言ってるタイプの人っているじゃないですか。そういうタイプの人では駄目です。

好奇心があって、行動力がある人じゃないとダメだと思います。

ネットサービスをある程度使っている人だと、どこのボタン押しても大丈夫とか、やってはいけないことについてちゃんと分かっていますが、そうでない人は、大したことがないボタンでも怖がって押さないのですよ。

 

ーなるほど・・・。そういうタイプの人は、システムに関しては絶対にエラーがないのを作れって言いそうですよね?

金原:

そうですね・・・。そうなってしまうと何も知識も伴わないし、経験値も上がらないので、一生リテラシーが上がらないと思います。

 

ー最後に金原さんにとってDXとは何でしょうか?

金原:

概念的な話になってしまいますが、「精神」だと思います。好奇心。常に学ぶ謙虚な心をインストールできるってことがDXだと思います。

一方でね、弊社内に関しても十分なDX推進はできていないと認識しておりまして、どうしても取り残されていってしまうメンバーも一定数います。僕も反省としては、そういった教育というものを明確に勉強会とかしてやってるわけではないので、僕にとっての当たり前が、彼ら彼女たちにとって、当たり前でなさすぎる部分のギャップがでてきていると思います。

それを埋めてかなきゃいけないなっていう反省もあったりします。

だから、DXは「恐れず前に進む精神である」そして、「そのインストールを全社員に行うことがDXである」と思っています。

何かこの辺、突き詰めていくと、教育であったりとか、他社がどういう感じでやってるかって非常に興味があります。

 

ー貴重なお話をありがとうございました!