人口は一億人以下に!中小企業が対策すべきことは?

23年後の日本の人口は1億人以下に!中小企業が対策すべきことは?

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日本は少子高齢化による人口減少の問題に直面しており、23年後の2046年には日本の人口は1億人以下になるとの試算もあります。

人口減少により日本社会には様々な変化が起こりますが、日本経済を下支えする中小企業も環境の激変に晒されることとなります。

中小企業・小規模事業者は日本の企業数の99.7%を占めると言われており、雇用の7割を担っています。人口減少社会の中で中小企業がどのように生き残っていくかは、日本経済の命運を左右する問題だといっても過言ではないでしょう。

そこで本記事では、人口減少が進む中で、中小企業がどのようなことに取り組むべきなのかを解説していきたいと思います。

日本の人口減少問題の現状

日本の人口減少が深刻だと言われ始めて久しいですが、いつ頃からどのような経緯を経て、今に至るのでしょうか。問題のあらましや近年までの経緯を簡単に見ていきます。

日本における人口減少問題

日本の人口がピークを迎えたのは2008年です。高度経済成長やバブルの時期かと思いきや、意外に最近だと感じる方もいらっしゃるかも知れません。

人口増加が止まり、減少に切り替わるにつれ、人口における65歳以上の割合もどんどん増えていきました。2014年の未来委員会の取りまとめ報告では、「人口急減・超高齢化」時代が到来したという宣言もなされました。

2022年の推計によると日本の人口の減少幅は11年連続で拡大していて、総人口は12年連続で自然減少しています。

また、人口ピラミッドもどんどん土台が不安定な逆三角形になってきています。現在は第一次ベビーブーム世代が完全に65歳以上になり、15年後は第二次ベビーブーム世代の高齢化が控えています。

人口減少問題に関連する指標

人口減少問題を考えるときに、着目されるのが出生率と、地域の育児環境です。

出生率

出生率は、一人の女性が一生の間に産む子どもの数と見なされています。出生率には合計特殊出生率と年齢別出生率、普通出生率の三種類がありますが、地域の特性ごとに出生率の内容は異なります。

都市部は労働人口がどんどん流入しているため、人口1000人当たりの出生率を指す普通出生率は低くありませんが、年齢別に出生率を合計して算出する特殊合計出生率は著しく低いです。

一方、地方は過疎化が激しいため、普通出生率が非常に低いが、年齢のばらつきは少なく、特殊合計出生率はさほど悪くないというケースが多いとされています。

地域の育児環境

地域の育児環境については、地域の経済状況の動きや、公的な育児支援政策の充実度などが良し悪しを左右します。

地域経済の状況を見ていく際は、都道府県単位のGDPをはじめとして、さらに細かい農業統計、工業統計、商業統計、課税状況調べなどを参照します。

これらを見ていくことで、その地域に十分な雇用が創出されているかをある程度把握することができます。雇用が多く、労働世代が集まりやすいほど地域経済も活発なので、子育てをする人口が増えるという傾向があります。これらの数値と人口減少問題は密接に関わっていることがわかります。

また、地域別の育児支援制度に関しては、より明確に充実度と出生率の相関を考えていくことができます。

人口減少が中小企業に与える影響

それでは、人口減少が企業活動にどのような影響を与えるのか、特に中小企業に焦点を当てて解説していきます。

生産年齢人口減少による人手不足

少子高齢化とともに生産年齢人口(20〜60代)が減少すると、企業は人手不足に陥ります。広く問題視はされていますが、実際にはどれだけ深刻なのでしょうか?

日本商工会議所が2022年に全国の中小企業に行った雇用に関する調査によれば、現時点で「人手が不足している」と答えた企業は既に6割を超えています。

労働人口が減ることで、求職者にとっては売り手市場に突入し、これまでと比べ就職に有利な状況が生まれているという報道もあります。

一方、労働市場の買い手である中小企業にとっては、人口減少は非常に苦しいものです。業務の激化や負担の集中、相次ぐ離職といった組織課題に対応しながら、大企業に流れがちな人材を確保していかなければならないのです。

また、人手不足に付随して起こる社員の意欲低下、教育機会の減少などといった問題にも同時に対処していかなければなりません。

国内市場の縮小による売上の頭打ち

政府の試算では、仮に生産年齢人口1人当たり家計消費支出が現在と同程度と仮定すると、40年には、生産年齢人口の減少に伴い50兆円の消費が消失すると考えられています。

これは現在の家計消費の約20%、国内総生産(GDP)の約1割に相当する減少幅です。国内マーケットの縮小が、企業の売上減少を招くことが予想されています。

中小企業がとるべき対策

中小企業にとっては大打撃となる人口減少問題ですが、今から中小企業が取れる対策にはどのようなものが挙げられるでしょうか。

労働生産性を高める

中途採用や新卒採用を強化して人材を増やすというのも手ですが、既存社員の生産性を向上することが出来れば、もっと効率がよいでしょう。

具体的な施策としては、リスキリングやITツールによる業務の自動化・効率化が推奨されています。手動で行っていた作業を自動化できれば別の事業に人材を充てることもでき、業務全体の効率性も上がります。

クラウド型のデータ管理システムの導入やビジネスチャットなどのツール、電子契約サービスの利用などは代表的な方法です。自社の課題に合致したサービスを選択しましょう。

労働条件の改善

労働条件の改善は、生産性を高めるためには、有効な方法です。

業務効率化のツール導入などを行い、コスト削減・効率性の向上を達成した後に、然るべきタイミングで必ず賃上げや労働時間の短縮、福利厚生の充実や評価制度の見直しを行うようにしましょう。労働条件や環境の改善が、より優秀な人材確保に繋がります。

今の企業体力では難しいという声も聞きますが、補助金制度を利用して、労働条件を改善できた企業の事例もあります。取り組みを支援する補助金には、賃金水準を向上させ、離職率を低下させる取り組みを行う企業に対して給付される助成金 「人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)」などがあります。

潜在的労働者の活用

労働条件を多様化し、求職者のニーズに歩み寄ることで、人材を採用できる可能性が広がります。

代表的なニーズとしては、育児や介護と仕事との両立や、通勤にともなうストレスの軽減などが挙げられます。

仕事をしたいという気持ちはあるが、企業側が提示している労働条件に合わないため、応募ができていない潜在的労働者が意外と多いということです。

子育てや介護によって一時離職した女性や、定年退職したシニア、出身地方に「Uターン」「Jターン」就職をした労働人口世代などは、代表的な潜在的労働者といえます。

こうした人材は労働力が高いにもかかわらず、生活リズムが多様なため、労働市場とマッチしづらい状況にあります。

人口減少下におけるテレワーク活用の可能性

このような人々を積極的に囲い込む施策として、着手すべきなのはテレワーク環境の整備です。

在宅勤務を含めたテレワークの実施は、一見効率性が下がるのではないか?という不安があるかもしれませんが、テレワークには実は中小企業にとって多くのリターンをもたらします。

・通勤(移動)時間がなくなることで交通費などのコストが削減され、就業時間の幅も広がる

・出社人数の減少による、オフィス賃料や維持費の削減

・オンライン面接によって遠方の優秀な人材も取り込める

・柔軟な働き方によって離職率の減少させ採用コストを減らせる

・外国人雇用や、在外邦人(日本国外に長期滞在している日本人)の採用が可能になる

特に、事業のクオリティを上げたいと思っている方、国内外を問わない企業活動を展開したい方にとって、外国人雇用や在外邦人を採用できることは、戦力獲得につながるでしょう。

テレワーク導入で、ワーキングホリデーやフリーランスビザで海外滞在している人材や、配偶者の駐在に同伴している専業主婦・主夫の雇用も可能になってきます。

テレワークを推進することで、日本政府から「時間外労働等助成金(テレワークコース)」などの補助金をもらえる場合もあります。制度を有効活用し、スムーズに環境を整えて行きましょう。

まとめ

今回の記事では、人口減少問題のあらましを踏まえた上で、人口減少問題が中小企業に及ぼす影響と、中小企業がとるべき対策について解説しました。

国の経済状況を左右する大きな問題も常に視野に入れて、事業規模に合わせて対策を練っていくことが重要です。ぜひ今後の参考にしてみてはいかがでしょうか。