未来の食糧生産を支えるアーバンファーミング(都市型農業):屋上農園の役割と展望  

未来の食糧生産を支えるアーバンファーミング(都市型農業):屋上農園の役割と展望  

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都市でできる究極の地産地消であり、サステナブルな食物生産の営みに直に触れる機会にもなるアーバン・ファーミングが注目されています。

アーバンファーミングとは、従来の農地での農業と異なり、都市内の利用されていない空間を活用して行われる都市型農業です。サステナビリティの潮流を受けて東京も屋上農園が増えており、都市部でも新鮮な野菜を生産・供給する取り組みが進んでいます。

アーバンファーミングは世界中の多くの都市で普及していますが、それぞれ特徴があります。

■ニューヨーク(アメリカ)

ニューヨークは屋上農園やコミュニティガーデンが多く、都市農業におけるイノベーションの中心地の一つです。

■トロント(カナダ)

トロントは食品アクセスを改善するための都市農業政策を持ち、多くのコミュニティガーデンや教育プログラムがあります。

■デトロイト(アメリカ)

経済的な挑戦に直面する中、デトロイトでは空き地を利用した大規模なコミュニティ農園が多数あります。

■シンガポール

国土が限られているシンガポールでは、垂直農法や屋上農園が積極的に推進されており、国の食料自給率向上を目指しています。

■ベルリン(ドイツ)

ベルリンでは、屋上農園や市内の空き地を利用した都市農園が多く見られます。また、持続可能な農業技術の開発に力を入れています。

これらの都市は、持続可能な食品生産方法としてアーバンファーミングを積極的に採用し、市民の生活に密接に組み込まれています。

海外のアーバン・ファーミング事例

香港の屋上農園

次に、屋上農園を含むアーバンファーミングの世界の事例をご紹介します。

AGRIPOLIS(フランス)

AGRIPOLIS(フランス)は、パリで世界最大の屋上菜園を運営している会社で、11の屋上菜園を国内で管理しています。パスカル・ホディー氏が創設し、都市部に住む世界の人口の半数以上への食糧供給と環境問題への解決策を提供することを目的としています。

アグリポリスの農産物は、生産地から2キロ以内の地域で消費されており、フードマイレージ*¹を極端に低く抑えています。冷蔵設備を使わず、物流にトラックも使用していないため、流通コストが非常に低いです。農業が一般的に引き起こす環境負荷—土壌や水質汚染、輸送コストなど—を削減し、太陽光を活用した栽培方法で持続可能な食糧生産を目指しています。また、高価な野菜を生産することによる利益追求ではなく、環境に優しい手法で栽培し、より多くの人々に受け入れられる選択肢を提供することを重視しています。


注*¹フードマイレージは、食品が生産される場所から消費される場所までの距離を表す指標であり、この距離が長いほど多くの輸送による炭素排出やエネルギー消費が発生します。フードマイレージが高い場合は、食品の輸送が環境に大きな影響を与えていることを意味し、逆に低い場合は地元で消費されており、環境への影響が少ないとされます。

参考:世界の都市農家インタビュー③;世界最大の屋上菜園。フランス「アグリポリス」 | EAT LOCAL KOBE

Nature Urbaine (NU Paris)|アーバンファーミングプロジェクト

Agripolisと、屋上農園の設計を手掛けるCultures en Villeが関わるプロジェクトに、Nature Urbaineがあります。ヨーロッパ最大のアーバンファーミングプロジェクトで、パリにサッカー場2個分の広さ(14,000 m2)があります。このプロジェクトは、人口密度が高く緑地が少ないパリのポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場の屋上で展開されています。サステナブルなイベント開催を目指す見本市運営会社Viparisの10年間のリノベーション計画「Better Events Viparis 2030」のロードマップに沿ったものです。

ここでは土壌を使用せず、空気や霧を利用した「エアロポニック技術」が採用されています。この技術により、軽量で、どんな平坦な場所にも設置可能な屋上農園が実現し、初期費用は1平方メートルあたり100-150ユーロとされています。現在の技術では根がしっかりと張る根菜類などの栽培には不向きで、主に夏に栽培が集中しています。

Nature Urbaineでは日に約3,000個のレタスや150パックの苺が収穫され、ピーク時には1日あたり1トンの果物・野菜・ハーブが収穫されています。元々は地元レストランへの卸売りを想定していましたが、コロナウイルスの影響で直接消費者への販売にシフトし、このモデルが順調に推移しています。

屋上農園は国民全体の食料供給には不十分かもしれませんが、その無形の価値、例えば住民同士の繋がりや自然環境に近い生活環境がもたらす幸福感があります。

参考:未活用のままの”都市の屋上”をルーフトップ・ファームへ – PLACE BLOG | ATTIQUE Inc.

参考:Notre ferme – Nature Urbaine

GrowNYC(ニューヨーク)|グリーンマーケットの運営

GrowNYCは、ニューヨーク市と連携する501c3条項で認められた非営利団体です。この組織は1970年に、当時のジョン・リンゼイ市長のもと、ニューヨーク市が直面していた環境問題に対応するためのシンクタンクとして設立されました。

設立当初は政策の形成を目的としていましたが、その活動は徐々に政策の実施にシフトしていき、現在では市内のグリーンマーケットの運営、コミュニティガーデンの支援、リサイクル活動など、さまざまな教育イニシアチブを支援しています。

グリーンマーケットの流通網はニューヨーク市内だけに留まらず、何百マイルもの範囲に拡大していますが、市の5つの区内で農作物を生産しているのは一部の生産者に限られています。GrowNYCは、GreenThumb*²と合同で90以上のコミュニティガーデンの創設を行い、何百ものガーデンに対して技術提供やグリーンインフラの整備を支援しています。

また、Grow to Learnの事業と協力して、市内の市立学校にガーデンを設置する取り組みも進めています。これらの活動を通じて、市民が環境に積極的に関与する機会を提供し、持続可能なコミュニティの発展を促しています。


注*² GreenThumbはニューヨーク市公園局(NYC Parks)に属するプログラムで、1978年に設立されました。このプログラムは、市内のコミュニティガーデンの設立と維持を支援するためのもので、ニューヨーク市内で最も大きなコミュニティガーデニングプログラムです。

参考:ニューヨークにおける都市農業について - 上

Gotham Greens(アメリカ)|水耕栽培の温室

Gotham Greensは、アメリカ各地で持続可能な水耕栽培の温室を所有・運営している企業です。2009年に創業され、食品供給の効率化と地域社会へのポジティブな影響を目指しています。最初の商業用温室は2011年にブルックリンのグリーンポイントに開設され、その後も拡張を続けています。現在では、13のハイテク温室を9つの州で運営し、合計約16万平方メートルの土地をカバーしています。

Gotham Greensの温室は、地元で持続可能な方法で生産された野菜を提供し、長距離の冷蔵輸送に依存しないため、品質保持と環境影響の削減に貢献しています。彼らのシステムでは、水耕栽培を行い、使用する水の量は従来の農法に比べて最大95%削減し、土地の使用量も97%削清しています。

温室はデータ駆動型の施設であり、最新の技術を使用して温度や湿度を自動調整することができます。この効率的な生産システムにより、地元で通年栽培を行いながら、新鮮な農作物を消費者に迅速に届けることが可能です。

さらに、Gotham Greensは社会や環境に配慮した企業として「Bコーポレーション」の認定も受けており、有機栽培の認証は受けていませんが、提供する農産物は有機栽培されたものに劣らない品質を持っていると考えています。彼らは、栽培の専門家や食の安全に関するプログラムを通じて、食品の品質や安全性、栄養価の高さを保証しています。

参考:大都会のビルの屋上で野菜を育てて販売! 持続可能な農業に取り組む「ゴッサム・グリーンズ」

Dakdokters(アムステルダム)|ルーフトップ・パーク

Dakdoktersはアムステルダムを拠点とするサステナブルカンパニーで、「屋上ドクター」という名前が示すように、都市の屋上を様々な用途に変換する事業を展開しています。

具体的には、屋上にファーム、ガーデン、公園を設けたり、時には貯水機能を備えたりしています。特に、欧州最大のコワーキングスペースであるB. Amsterdamの屋上を1750平米の「ルーフトップ・パーク」として整備し、現在はルーフトップ・レストランも併設されています。B. Amsterdamはサーキュラー・エコノミーへの貢献を目指し、農場建設やスマートシティ関連のスタートアップを集めるスマートシティ・ハブを計画しているなど、今後の動向も注目されています。

参考:未活用のままの”都市の屋上”をルーフトップ・ファームへ – PLACE BLOG | ATTIQUE Inc.

Peas&Love(ベルギー)|ルーフトップ・ファーミング

Peas&Loveは、ベルギーの料理学校の共同創業者Jean-Patrick Scheepersによって2017年に立ち上げられたルーフトップ・ファーミングのスタートアップです。

この企業は、未使用の屋上スペースを借り上げてルーフトップ・ファームに転換し、そこで育てられた野菜をユーザーが月額40ドルの会費を支払うことで収穫できるサービスを提供しています。

Peas&Loveは農作業を代行し、収穫時期が来るとアプリを通じてユーザーに通知を送ります。各4平方メートルのガーデンは2分割され、半分は会員専用の農地として利用され、残りの半分から収穫された野菜は全会員で共有されます。このサービスは都市部におけるコミュニティ形成を核としており、会員間の関係性を強化する役割も担っています。

参考:未活用のままの”都市の屋上”をルーフトップ・ファームへ – PLACE BLOG | ATTIQUE Inc.

RON FINLEY(ロサンジェルス)|空き地や空きプールを畑に

かつてファッションデザイナーだったある人物が、自分が住む街で新鮮な野菜や無農薬の果物を手に入れるためには長い距離を移動しなければならない状況に不満を感じ、ギャングスタ菜園家としての活動を開始しました。

この活動は、街の「食の砂漠」問題に対する抗議の一環として、車道と歩道の間にある「パークウェイ」というスペースを利用して野菜や果物を育てるものでした。さらに、彼は誰もが自由に収穫できる仕組みを採用しました。彼のギャングスタというニックネームは、誰の許可も得ずにゲリラ的に植物を植える行動から来ています。

当初は違法であると市から警告を受け、逮捕される可能性もありましたが、彼はこれに応じず、市民がパークウェイを自由に利用できるように嘆願し、最終的にはその活動が合法化されました。彼のモットーは「とにかく植えろ!」、「森を作れ!」、「クリエイティブであれ!」であり、これらを実践することで、パークウェイだけでなく、空き地や空きプールなど、さまざまな場所を畑や庭に変える活動を広げています。彼の活動は、市民の健康、生物多様性、街の景観保全に寄与しており、広く注目を集めています。

参考:世界の都市農家インタビュー①;「とにかく植えろ!」ロサンゼルスのギャングスタ菜園家 | EAT LOCAL KOBE

Incredible Edible Todmorden(英国)|町中の空き地に野菜を栽培

Incredible Edible Todmorden(インクレディブル エディブル トッドモーデン)は、英国トッドモーデンで始まったコミュニティ主導のアーバンファーミング活動です。2008年のリーマンショック後の社会的な不安の中、街の人々が自ら食を作ることにより、将来に希望を持とうという動きから始まりました。町中の空き地で野菜、果物、ハーブを栽培し、誰でも無料で自由に収穫できるようにしています。

このプロジェクトは、「許可ではなく、許しを得なさい」というスローガンのもと、勝手に植えてから許しを求めるゲリラ的な手法で広まりました。多くの地主が、荒れ地が有効活用される姿を見て、この活動に賛同するようになりました。インクレディブル エディブルの取り組みは、単に食を提供するだけでなく、畑作業を通じてのコミュニティ形成や交流の場を創出しています。全ての活動はボランティアベースで行われ、行政の補助金を使わず、寄付や講演料で資材を調達しています。

特筆すべきは、畑仕事が月に2回の頻度で行われることで、参加がしやすく、持続可能なコミュニティ活動になっている点です。また、この活動は街の条例にも影響を与え、新しい建物に庭を設けることが義務化されるほどになりました。それにより、食を通じて人々の信頼関係やコミュニティの絆が深まり、街の景観や住み心地が改善されています。

参考:世界の都市農家インタビュー②;野菜・ハーブ・果実が取り放題。英国市民が育てる街中農園。 | EAT LOCAL KOBE

Growing Underground(英国)|地下農園

イギリスでは、過去数年間に大型倉庫や地下空間、屋上などの予想外の場所で野菜が栽培され始めています。この分野をリードする例として、ロンドン中心部からわずか15分のクラパム地区にある「Growing Underground」が挙げられます。

ここでは第二次世界大戦時の防空壕を改造した地下農園で、バーティカルファーミング(垂直農法)を用いた水耕栽培が行われています。この方法では日光、土、農薬を一切使用せず、LED照明と栄養剤入りのリサイクル絨毯を使い、水も循環利用することで70%の水を節約しています。トレーを縦に積み重ねることで限られた空間を最大限に活用し、一年中新鮮なマイクログリーンが生産されています。

このプロジェクトは、子供の頃からの友人であるSteven DringとRichard Ballardによって始められました。彼らはパブでサステナビリティについて話している際に垂直農法に関する本に触発され、このアイデアを実現しました。2015年にはクラウドファンディングで資金を集め、2016年から商品の販売を開始しました。また、ミシェル・ルー・ジュニア氏のような著名シェフとの連携や、Ocadoをはじめとする複数の高級スーパーマーケットとの提携により、アーバンファームの作物が一般家庭にも広まりました。健康志向やヴィーガンブームの波にも乗り、アーバンファーミングが一般化する大きなきっかけになりました。

アーバンファームは、従来の農業と競合するのではなく、むしろ補完的な役割を果たします。特に、限られた空間での垂直農法には、広範囲の栽培が必要な穀物よりも、少量で高価格で取引されるマイクログリーンが適しています。伝統的な農家も新しい農業形態や技術に関心を持っており、異なる農業スタイルは共存可能といえます。

英国政府は、2040年までに食料自給率を2倍にする目標を立てています。SDGsやフードマイレージ、地産地消の観点からアーバンファーミングの重要性が増しており、未来の都市型農業の成功例として注目されています。

参考:イギリスの地下に広がる農園は防空壕の再利用 都市型農業は食問題の解決策となるか

ブルックリン・グレインジ(ニューヨーク市)|屋上農園

ブルックリン・グレンジは、現代人にサステナブルな食物生産への直接的な接触の場を提供することを目的に、2010年に創業者ベン・フラナー氏によって始められました。ニューヨークにて3つの屋上農園を運営しており、合計1.2万平方メートルの土地から年間約4.5万キロのオーガニック野菜が収穫されます。収穫された野菜は夏から秋にかけてブルックリンやクイーンズ地区のファーマーズマーケットなど4カ所で販売されています。

ブルックリン・グレンジの屋上農園のメリットは多岐にわたります。まず、都心に位置するため、収穫後すぐに新鮮な商品を配達でき、シェフなどの顧客が直接農園を訪れ、食材の価値を再認識する機会を持てます。また、太陽熱の活用や土壌の断熱効果を利用したビルの温度管理、雨天時の排水処理システムへの負担軽減など、環境保護にも寄与しています。

農園の敷地は6,000平米あり、そこに800トンの土を運び入れました。コンテナ式の屋上農園とは異なり、耕運機を利用でき、効率性を実現しています。ここで育てられる野菜は実質的に全てオーガニックで、特に高利益を見込める青菜やトマトなど約50種類の作物に絞って栽培しています。これらは主にレストランに卸され、ファーマーズマーケットを通じて一般にも販売されています。

また、ブルックリン・グレインジは養蜂や自家菜園作りなどのワークショップを年間を通じて開催し、農業の普及活動を行いつつ、冬季の収入減を補っています。さらに、農園の成功により得た知識を活かし、コンサルティング業務も行っており、これが収益の50%を占めるまでに成長しました。創業者の一人フラナー氏は、サステナブルな食物生産を支えるためには、サステナブルなビジネス経営が不可欠であり、理念と収益のバランスを日々模索していると述べています。

参考:都市農業をビジネスとして成立させた屋上農園【NY】|料理通信

参考:未活用のままの”都市の屋上”をルーフトップ・ファームへ – PLACE BLOG | ATTIQUE Inc.

Rooftop Republic Academy(香港)|広範な事業領域

Rooftop Republic Academyは香港で50カ所、合計55,000平方フィートに及ぶアーバンファームを管理し、500回以上のイベントを開催するなど、活動が注目されている団体です。この団体は、聴覚障がい者を都市農家として育成するなど、社会的な取り組みも行っています。

組織の事業領域は広範にわたり、「ファームの設計」「栽培キット・プランターの販売」「都市農場の経営」「ワークショップ・イベントの開催」「都市農業学校」「不動産資産価値のコンサル」「飲食店との協業」と多岐に渡ります。

また、軽量プラスチック製の栽培キットやプランターをWEBサイトを通じて販売しています。これらのプランターは、ビルの耐震状況を考慮した軽い素材で作られており、オートメーションの冠水システムを含む効率的な運営が可能です。アーバンファームでは香港の温暖な気候を活かし、1月でも20度を超えるため、トマトなどが育っています。肥料は作物に応じて変え、香港のオーガニック専門農家と協力しています。

さらに、都市農業について学ぶプログラムが提供されており、多くの人が自宅や軒先で栽培するための技術を学んでいます。これらのプログラムは約6カ月で一区切りとなり、WEBサイトから簡単に申し込みが可能です。

参考:香港アーバンファーミング事情レポート – URBAN FARMERS CLUB

COMMON FARM(香港)|インドアファーム・屋上ファーム

COMMON FARMは、2017年に設立されたインドアファームの会社で、香港のトップシェフやミシュランシェフから高い評価を受けているエディブルフラワーやスプラウト、ハーブを生産しています。彼らはアクアポニックスという魚と共に野菜を育てるシステムを用いており、これは魚の排泄物が有機肥料として野菜の栄養源になるという仕組みです。使用される材料はすべてネットで購入可能な手作りキットで、コスト削減と拡張性の確保を図っています。

彼らの野菜の味は水耕栽培では得られない深みがあり、その品質はミシュランシェフに認められています。現在は50種類の野菜を供給しており、レストランのニーズに合わせて珍しい品種も栽培しています。インドアファームでは香港の台風などの気候に左右されない安定した供給ができることが特徴です。

COMMON FARMは屋上ファームも運営しており、そこでは自家製の堆肥を使ってさまざまな野菜や果物を栽培しています。香港の暖かい気候を活かしてアボガドなども育てています。今後香りが良くスパイシーな日本の山椒の栽培にも注目しています。

香港では野菜の90%が輸入に頼っており、輸入品では得られない鮮度を提供するアーバンファーミングの野菜は注目されています。また、アーバンファーミングは輸送コストの削減、都市の緑化、コミュニティの形成にも貢献しています。そして屋上農園からの景観が素晴らしいのも魅力の1つです。

参考:Common Farms

アーバン・ファーミング・オフィス(ベトナム)|垂直農法

アーバン・ファーミング・オフィスは、ベトナムのハノイとホーチミンに拠点を持つVTNアーキテクツによって設計された、垂直農法を採用した自社オフィスです。このプロジェクトの目的は、急速な都市化で緑が失われつつあるベトナムの都市環境において、緑を取り戻し安全な食料生産を促進することで、都市のサステナブルな未来に貢献することにあります。

オフィスはシンプルな構造で設計されており、コンクリートの構造体とスチール製の支柱、交換可能なモジュール式プランターボックスを使用しています。これにより、植物の生育状況に応じてフレキシブルに対応可能です。ファサードにはプランターボックスが吊り下げられ、植物が十分な日照を得られるように配置されています。

このビルディングは、直射日光を遮ることで内部の微気候を快適に保ち、空気を清浄化する役割も担っています。さらに、雨水を貯水し、その水を灌漑に使用することで、気化熱を利用して空気を冷却します。北側の壁は将来の増築を考慮して強固に作られており、自然換気を促進する小さな開口部が設けられています。また、壁はレンガの二重構造で断熱性が高められ、エアコンの使用を減らす設計となっています。

敷地面積に対して190%の緑化率を実現しているこのオフィスは、屋上庭園や地上緑化を含めることで、1.1トンの収穫量を達成しています。栽培されている植物には、野菜やハーブ、果樹など地元の食用植物が選ばれており、有機栽培によって地域の生物多様性にも貢献しています。

参考:農園に包まれた森のような設計事務所の自社オフィス!?〈アーバン・ファーミング・オフィス〉

アーバンファーミングを成功させるポイント

レタスの垂直農法

理想的ともいえるアーバンファーミングですが、ビジネスとして成功させるにはどうすればよいでしょうか?ご紹介した事例から学ぶ成功ポイントをご紹介します。

■技術の選定と利用

アーバンファーミングには水耕栽培、エアロポニックス、アクアポニックス、垂直農法など、さまざまな技術があります。利用可能なスペース、目的の作物、利用可能な資源に応じて最適な方法を選択することが重要です。

また自動化とデータ管理などをICT技術を積極的に導入することで、温度、湿度、栄養素レベルなどを監査し、最適な成長条件を維持することができます。これにより、資源の使用を最適化し、作物の生産性を高めることができます。

■コミュニティとの連携

地域コミュニティと連携し、教育プログラムやワークショップを提供することで、地域住民の支持を得ることができます。

更に、地元のレストランや市場と連携し、新鮮な作物を供給することで、持続可能な収益モデルを構築することができます。

■持続可能性の確保

水のリサイクルシステムの導入、再生可能エネルギーの使用、環境に優しい農業実践を心掛け、環境への配慮をします。しかし、それを実現するための設備投資と運転資金がかかります。長期的な財政計画を策定し、効率的なリソース管理と適切な投資で経済的に持続可能な運営を目指すことが重要です。

■法的要件の遵守

都市農業に関連する法規制や政策を理解し、遵守することが重要です。これには、土地使用、水管理、農薬使用の規制などが含まれます。

これらのポイントを適切に管理することで、アーバンファーミングを成功させることが可能となり、都市部における持続可能な食料生産システムを構築することができます。

まとめ:アーバンファーミングのビジネスモデルとしての有効性について

タブレット端末を使って農場管理している

アーバンファーミングのビジネスモデルは、都市内での持続可能な食品生産を目的としており、経済的、環境的、社会的なメリットが多く含まれています。以下に、アーバンファーミングのビジネスモデルの有効性についての主要なポイントをまとめます。

■サプライチェーンリードタイム短縮

アーバンファーミングは食品の生産地と消費地が近いため、輸送コストや時間が大幅に削減されます。これにより、新鮮な食品を提供することができ、環境への影響も小さくなります。輸送中の食品廃棄も減少し、全体的なカーボンフットプリントを低減します。

■市場への直接販売

多くのアーバンファームでは、ファーマーズマーケットや自社の小売店、オンラインプラットフォームを通じて直接消費者に製品を販売します。これにより、中間マージンが削減され、生産者と消費者の間の接点が増えることで、消費者の信頼とブランドロイヤルティが向上します。

■ 追加収入を生み出す

アーバンファーミングは、伝統的な農業では困難な特殊な作物の栽培や、オーガニック・無農薬野菜の供給など、特定のニッチ市場へのアプローチが可能です。また、教育プログラムやワークショップを提供することで、地域社会との関係を深め、追加収入を生み出すことができます。

■ 継続的な技術革新

垂直農法や水耕栽培、エアロポニックスなど、最新の農業技術を利用することで、限られた空間で高い生産性を実現します。これにより、土地使用の効率が向上し、一年中安定した生産が可能になります。

■ 社会的・環境的責任

地元での雇用創出や、教育・コミュニティ参加の機会提供により、企業の社会的責任(CSR)活動としての役割も果たします。また、都市環境における生物多様性の向上や、ヒートアイランド現象の緩和にも寄与する可能性があります。

■財務面での挑戦と機会

初期投資が高額であるため、財務面での計画とリスク管理が重要です。しかし、適切な事業計画と効率的な運営が行われれば、サステイナビリティの潮流の昨今、持続可能なビジネスモデルとして成功する機会があります。補助金や助成金を活用するのもよいでしょう。

都市化が進む中での新たな食料生産方法として注目されているアーバンファーミングのビジネスモデルは、地域社会や環境にプラスの影響を与えると同時に、経済的にも自立可能なモデルとしてその存在感が増しています。

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