経済的自立を目指す若者たちのコミュニティとして注目を集める「面白ベース」。その共同創業者であり、富山大学からほど近くにこの拠点を設立した丸山修平氏に、彼らの活動や未来の展望について話を伺いました。丸山氏は、かつてソフトバンク株式会社でビッグデータ事業の新規開発に従事し、その後、スタートアップを経て、地域の活性化に力を注ぐ活動を続けています。本記事では、「面白ベース」のユニークな取り組みや、地域社会とのつながりについて詳しくご紹介します。
ソフトバンク (株)ビッグデータ戦略室 課長兼 (株)Agoop本部長にて人流ビッグデータの新規事業開発に従事後、Govtechスタートアップを経て久高 諒也氏と合同会社bancaを共同創業して面白ベースを開設
ーーまずは「面白ベース」について教えていただけますか?
丸山氏(以下敬称略):「面白ベース」は、富山大学の正門から徒歩30秒ほどの場所にある、経済的自立を目指すコミュニティです。メンバーは40歳以下が中心で、約7割が学生、残りの3割が社会人です。最近では、中学3年生の若いメンバーも加わり、さらに活気づいています。
このコミュニティでは、対話を通じて、自分の価値観や得意なこと、好きなことを仮説として立て、それを実際に試しながら自信を深めていきます。そして、その仮説をさらに磨き、強みへと昇華させます。最終的には、その強みを使って他者に貢献し、経済的な自立を目指す仕組みになっています。
ーーありがとうございます。通常であれば「起業家を目指す」という話になりがちですが、なぜそういった方向に進まれたのか、その経緯を教えてください。
丸山:そうですね、面白ベースは個人個人の強みを活かすことを第一に考えています。なので、強みの活かし方が起業であれば起業に伴走しますし、個人事業のような活かし方、会社員としての活かし方、それらは会員一人一人に合わせて強みの活かし方を決めています。結果として起業の支援をしているケースも3件ほどありますけどね。
ここは大事にしている部分なんですが、私やパートナーの久高の価値観として、他人が成長する瞬間に立ち会えることに大きな喜びを感じます。自分がその成長に関わっていると実感できると、本当に嬉しくなります。だからこそ、起業は手段であって、個々の成長にフォーカスしています。
ーーなるほど。つまり、単に起業だけにフォーカスするのではなく、個人の成長を重視し、より大きなビジョンを描いているということですね。
丸山:そうですね。誰にでも必ず才能があり、それは幼少期から自然と取り組んでいることに表れます。人と比べると実は簡単にできることがあるかもしれませんが、そうしたことこそ、夢中になり努力を続けられる才能を発揮できることだと考えています。才能を磨く過程で、起業という道を選ぶこともあれば、会社員として生き生きと働く選択をすることもあります。それは人それぞれですが、すべての出発点は「やりたいこと・やっちゃうこと」です。私たちは、メンバー一人ひとりの才能を強みに変え、その人に合った方向性を共に見つけていくという考え方です。
ーー今、会員は何名ですか?
丸山:現在、メンバーは27名に増えました。始まってからわずか1年ほどですが、それでも27名まで増加しました。昨年7月にプレオープンし、今年の3月に正式オープンしたにもかかわらず、この短期間でこれほどまでに増えたのは驚きです。
社会に出る上で「正解」を見つけなければならないというプレッシャーが、AIやLLM(大規模言語モデル)の台頭によって一層強まっているように感じます。そのため、不安を感じる瞬間も増えているのかもしれません。しかし、そうした状況の中でもサバイブし、自分の道を切り開き、幸せを掴もうとする人たちがいることは、心強く感じます。
ーーちなみに、会員の方は会費を支払っているのですか?
丸山:はい、現在はオープン記念価格として、税抜月額3,700円をいただいています。
ーー会員の方は具体的にどのようなことができるのでしょうか?
丸山:大きく分けて2つの活動があります。1つ目は、常駐している久高との対話を通じて、会員自身の価値観や得意なこと、好きなことを仮説として立てるサポートです。これが1つ目のサービスになります。
2つ目は、その仮説をさらに深め、強みに昇華させるためにプロジェクト化することです。具体的には、これまでの自分では達成できなかったようなチャレンジに取り組み、成長を実感できるように支援します。プロジェクト化に際しては、WBS(作業分解構成図)の作成や計画書、企画書の作成をサポートし、チャレンジを促進しています。これがメインのサービスです。
その他にも、コミュニティスペースを自由に利用したり、個別の就職活動相談を受けることも可能です。現在、27名の会員が在籍しており、活気ある仲間のようなコミュニティが形成されています。また、私の人脈を活かし、異なる業界や視点を持つ「異世界人」と呼ばれる方々を招いて交流の機会を提供しています。東京で活躍する方々を招いて、フラットな環境で食事をしながら対話する機会も設けています。
ーーなるほど。その中で、丸山さんの具体的な役割について教えていただけますか?
丸山:私の役割は、プロジェクトの立ち上げから進行までをサポートすることです。具体的には、WBS(作業分解構成図)の作成や、会議のファシリテーション、議事録の作成など、新卒1〜2年目の社員が学ぶ基礎的なスキルを会員に教えつつ、プロジェクトが円滑に進むように支援しています。会員のプロジェクトはどれも過去の自分じゃ達成できない120%のチャレンジをしてもらうんですが、しっかり伴走して成功まで一緒に足掻くことが役割です。
一部の会員は少額ながらもプロジェクトの立ち上げにおいて、資金調達にまで成功している会員もいます。
ーー素晴らしいですね。そうした方々のサポートや伴走もされているのですね。
丸山:そうですね、そのような形で支援しています。
ーーこの「面白ベース」という組織は、かなり珍しい存在なのではないでしょうか?
丸山:そうですね、こういった組織はあまり見かけないと思います。個人的に似ていると感じるのは、堀江貴文さんが運営しているオンラインサロンのようなものですが、同じような形態の組織は他に聞いたことがありませんね。
ーー面白ベースが「成功している」と伺いましたが、具体的にはどのような形で成功を収めているのでしょうか?
丸山:成功の定義によると思いますが、最近は非常に勢いを感じています。要因は大きく二つあります。まず一つ目は、先ほどお話しした通り、この1年で会員が27名に増えたことです。そして、その27名のうち、すでに15件以上の仮説検証や強みを磨くためのチャレンジが行われている点も重要です。単に人数が増えただけでなく、会員それぞれが基礎力を向上させ、過去の自分では成し得なかったような挑戦に取り組むメンバーが増えています。
この熱意と活気は、私自身にとっても大きな刺激であり、こうした場に立ち会えることに非常に幸せを感じます。私たちのコミュニティで大切にしているのは、「批評しない」という姿勢です。全員が自分の人生の主役であり、批評家ではなく、皆が同じ目標に向かってエネルギーを注いでいるという感覚があります。それこそが、このコミュニティの成功の一つの形だと感じています。
ーー現在、15のプロジェクトがあるとのことですが、具体的にはどのようなものがありますか?
丸山:最近取り組んだ大きなプロジェクトの一つに、「OMOWARAプロジェクト」があります。これは、富山県最大のお祭り「おわら風の盆」(来場者数約20万人)を公式LINEを活用してより便利にするという試みです。
また、最近立ち上がったばかりの「投資部」というプロジェクトもあります。メンバー全員で投資シミュレーションアプリをインストールし、誰が一番収益を上げられるかを競うゲーム形式の取り組みです。投資はビジネスマンにとって非常に重要なスキルであり、IR資料や財務指標(売上高、営業利益、PBRなど)を読み解く力を学ぶ良い機会となっています。ゲームを通じて、楽しみながらビジネスマンの基礎単語を学べる仕掛けです。
さらに、ユニークなプロジェクトとして「富山セカンドインプレッSHOW!」があります。富山の日常の魅力を愛する女性会員が主催の企画です。富山県内外の数名で集まり、富山についてあれこれ語り合うことを通して、富山の魅力を再発見してもらう取り組みです。
また、「マーダーミステリー」というゲームを活用したイベントの企画も進行中です。このプロジェクトでは、着実に集客しており、最終的には累計150人を集めることを目標にしています。
その他にも、建設業向けの勤怠管理アプリをサポートする新規事業開発のプロジェクトも進めています。
ーーさまざまなプロジェクトが進行しているのですね。
丸山:そうですね、どれも非常に面白い取り組みです。
ーーつまり、各メンバーがプロジェクトを持ち寄り、会社を設立しているわけではないものの、経営者のような形で主体的に進めているということですね。
丸山:そうですね。ただ、もっと気軽に取り組める形もあります。例えば、「飲食店の経営に挑戦してみたい」という会員がいた場合、その体験を通じて本当にやりたいことを見定めることができます。
例えば、サーターアンダギーのお店と代理販売契約のような形式で露店に出店する企画がありました。事前に事業計画を立て、管理会計を駆使して価格や売上目標を設定します。実際に運営し、その結果を振り返って改善点を見つけるという流れです。
このように、ハードルを高くしすぎず、気軽にチャレンジできる環境も大切にしています。
また、資金調達の例として、「駅前で道行く人たちを元気にしたい」というプロジェクトがありました。お立ち台にマイクを設置し、そこで一発芸や小さなチャレンジをしてもらうイベントです。事前に観客を集め、うまくいけば皆で称賛するというシンプルな内容でした。
ーーこのイベント、新聞にも取り上げられましたよね。
丸山:はい。とても楽しいイベントでしたが、実施には意外と費用がかかり、総額で15万円ほどかかりました。その際、企業スポンサーや個人からの協賛を募り、資金調達を行いました。
ーー面白いですね。かなり実践的な活動をされているのですね。単に相談に乗るだけでなく、具体的な取り組みも行っているのですね。
丸山:そうです。例えば、学生会員であれば、社会人になる頃には新卒1〜2年目のスキルをすでに身につけているような状態になっていると思います。
ーーまた、月額会費をいただいている点も大きいですね。そのあたりはどうですか?
丸山:はい、会費がなければ資金繰りが非常に厳しくなってしまいますので、会費は非常に重要な支えとなっています。
ーー会費を払って参加していることで、質の高い方々が集まっているということもあるのでしょうか?
丸山:そうですね、それはあると思います。お金を払うことで一定のハードルが設定されており、また「批評をしない」というルールなど、いくつかの基準が自然と形成されています。会費がそのフィルターとして機能しているため、コミュニティ内にはしっかりとしたメンバーが集まっていると感じています。
ーー先ほどお話に出た「おわら風の盆」で公式LINEを活用した取り組みについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
丸山:はい、具体的にはまず公式LINEを開発し、来場者に友達登録をしていただくよう促し、三つのマップを提供しました。
一つ目は見どころマップです。「おわら風の盆」では踊りの会場が11ヶ所ありますが、紙の地図では場所がわかりにくく、どこで踊っているかもわからないという課題がありました。そこで、GoogleマップAPIを活用し、会場の位置をマッピングしました。
二つ目は、トイレや休憩所の位置を表示するマップです。来場者が快適に過ごせるよう、必要な設備の位置情報をまとめました。
三つ目は駐車場やタクシー乗り場、バス停などの交通関連の情報をまとめたマップです。特に、八尾の町並みを通る観光バスのルートに関しては、帰りに一方通行で通れない場所があり、その案内をするマップも作成しました。
さらに、見どころとなる11ヶ所のうち7ヶ所にビーコンを設置し、混雑状況を検知しました。LINE上では、混雑状況を色分けして(赤が混雑、青がやや混雑、黄色が空いている)表示する仕組みを導入し、来場者が快適に会場を巡れるように工夫しました。
ーーこのプロジェクトは予算をいただいて実施したものですか?
丸山:いえ、私たちの持ち出しで行いました。今回の取り組みは、実証実験の一環として実施したものです。LINEに登録していただいた方はおよそ1,000人でしたが、このプロジェクトは学生を中心に進めており、実施にかかった費用については最後に報告しました。
また、ステッカーを作成し、その販売を促すために簡単なウェブサイトも立ち上げました。最終的なマネタイズのポイントはこのステッカーの販売で、約2.5万円の収益がありましたが、全体としては赤字でした。
ーー自治体は費用がかかることに慎重になりがちなので、自費で実施されたのは素晴らしいですね。1,000人もの登録があったのは大きな成果だと思います。
丸山:本当に良かったです。地元の新聞で取り上げられただけでなく、議会でも話題になったようでした。来場者からも好評で、特に「混雑状況がわかるだけでなく、どこで踊りが見られるかがわからなかったので、混んでいる場所=見どころだと判断できて助かりました」といった声をいただきました。
さらに、「おわら風の盆」の運営委員会の方々からも、来年に向けてどう実現できるか一緒に考えていこうというお話をいただき、来年に向けた準備も進めています。今回のチャレンジは、来年につながる良いステップになったと感じており、とても有意義な取り組みでした。
ーーこのプロジェクトは、相談された方が会員の方だったのでしょうか?
丸山:会員ではなく、「おわら風の盆」の八尾町の出身で、経営者の方です。私が人流ビッグデータに携わっていたことがきっかけで、相談を受けたのが始まりです。同時期に会員の一人が「SNSマーケティングに挑戦してみたい」というメンバーがいたため、「おわら風の盆」の関係者と話し合った結果、人流ビッグデータではなく、公式LINEを使ったSNSマーケティングがより適したソリューションだと判断しました。そこで、チームを組んで一緒にプロジェクトを進めることになったという流れです。
ーーなるほど。地元の経営者と、SNSマーケティングに挑戦したいという会員をつないでチームを作ったのですね。そういった活動もされているのですね。
丸山:今回のプロジェクトは少しイレギュラーで、どちらかというと「面白ベース」の法人向けサービスに近い形でした。8月の初めにプロジェクトが決まり、お祭りが9月1日から3日までだったので、非常に短い納期で進行しました。私も総監督としてWBS(作業分解構成図)を作成し、プロジェクトをリードしたため、少し特別なケースでした。
ーー地域の大きなイベントに深く関わり、来年に向けてさらに展開しているのは素晴らしいですね。
丸山:光栄なことです。
ーーそういう意味では、DXのような取り組みもありますし、メンバー間で「誰が一番儲かるか」を競い合うような刺激的な活動もされています。また、観客を集めて盛り上げるようなイベント的な要素もあるということでしょうか?
丸山:そうですね。イベントのような取り組みは、これからさらに増えていくと思います。
お祭りを企画し、実行し、来場者を満足させるということは、ある意味で仕事の「てにをは」をしっかり押さえることだと思っています。今後もどんどんチャレンジしていくつもりです。
ーーこれから「面白ベース」発のイベントがどんどん生まれてくるわけですね。ちなみに、そういったイベントを実行するための仕組みや工夫はどのようにされていますか?特に、若い人たちを巻き込むための工夫があれば教えてください。
丸山:基本的に「面白ベース」では、会員である若者たちの「やりたいこと」を基に物事が進むのが原則です。ですので、私たちが彼らを巻き込んでいるというより、むしろ私たちが彼らに巻き込まれている感覚があります。お互いにその流れに身を任せ、共に成長していくカルチャーが理想だと考えています。
ーーつまり、メンバーが主体となって動いていくのが基本ということですね。
丸山:そうですね。メンバー自身が主体となれないプロジェクトは、むしろやらない方が良いという方針で進めています。
ーーなるほど、そこで明確な線引きがされているわけですね。そして、先ほどお話されていた「批評をしない」という大原則もありますね。
丸山:その通りです。批評だけをする人は「面白ベース」には向いていないと考えています。そうした姿勢は私たちのコミュニティにはそぐわない、という共通認識があるんです。
ーーちなみに、会員になるための審査などはあるのでしょうか?
丸山:特に審査や特別な条件は設けていません。
もし一つ挙げるとすれば、先ほどお話しした「批評をしない」という原則でしょうか。私たちはこれを「面白ベースな振る舞い」と呼んでいます。例えば、フィードバックの際も「これがダメだ」という批判ではなく、「どうなりたいのか」「もっとこうすれば最高になるのでは」といったフィードフォワードの姿勢を重視しています。お互いに何ができるのか、どう成長していきたいのかを探り合い、前向きにサポートし合う文化を大切にしています。この原則に共感していただける方であれば、会員として問題ありません。
ーー会員の方が「こういうことをしたい」と思った場合、まず久高さんに相談するとおっしゃっていましたが、それ以外にもフィードフォワードの機会があるのでしょうか?
丸山:もちろん、「こういうことをやりたい」「まだやりたいことが見つからず、悩んでいる」という相談はよくあります。ただ、相談しにくい方もいらっしゃるので、そういった場合は久高が積極的に声をかけ、相談の機会を作るようにしています。特に重視しているのは、最初は小さくてもいいので仮説を立て、早めに「プロジェクトに主体的にチャレンジするフェーズ」に移行して実際に行動を起こすことです。このプロセスを通じて、会員のチャレンジを後押ししています。
ーーということは、会員全員が最低でも1つはプロジェクトを進めることを目指しているということですね?
丸山:そうですね、それが理想です。
ーーありがとうございます。現在15のプロジェクトがあるとのことですが、今後、まだプロジェクトを立ち上げていない方も含めて、さらに新しいプロジェクトが生まれていくというイメージでしょうか?
そうですね。私が把握している限りでは15のプロジェクトがありますが、実際にはさらに多くのプロジェクトが進行しているかもしれません。まだプロジェクトを始めていないメンバーもいるので、今後も新しいプロジェクトが次々と生まれてくると思います。
ーーちなみに、学生や会員の方々はどのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか?仕事ではないにしても、どのような形で交流しているのか気になります。
丸山:基本的には、富山大学の正門から徒歩30秒の場所にある「面白ベース」を拠点に、オフラインで交流しています。オンラインでは、LINEを活用して自由にコミュニケーションを取っています。
最近特に印象的だったのは、誰かが「チャレンジしてみよう!」と声をかけた際、会員同士が「それ最高だね!」と盛り上がり、LINE上で次々に応援のメッセージが飛び交ったことです。とても前向きで、活気があり、まさに輝かしい瞬間でした。
ーー新しいことに挑戦することで、会員全員のテンションが上がり、一緒にやっていこうという前向きな雰囲気が生まれているのですね。次に、この「面白ベース」を立ち上げようと思ったきっかけや、丸山さんの過去の経験について教えていただけますか?
丸山:根本にあるのは、誰かの成長に関わり、その人が輝き、成長していく姿を見ることに感動し、幸せを感じるという私自身の性格です。こうした仕組みを作りたいという強い思いがありました。
ある意味、利他と利己が混ざった感情ですね。もう少し社会的な視点で言えば、まだ多くの人が「正解」に頼ろうとしていると感じています。しかし、実際のところ、社会に出てからの「正解」は存在しません。それにもかかわらず、私たちは幼少期から「勉強ができると素晴らしい」「親の言うことを聞くのが素晴らしい」「大学を出て大企業や役所に入るのが素晴らしい」という価値観を刷り込まれている気がします。そして、社会人として3年目、5年目を迎えると、多くの人が「この先に何があるのか?」と迷い始めます。「正解」から外れた人々はアイデンティティに関する問題に直面し、無理をしてしまうこともあります。それは、「社会はこうあるべきだ」という強い呪縛に縛られているからだと感じています。
私自身、十数年の社会人経験を通じて学んだのは、誰しもが強みを持っており、それを明確にし、その強みを基に他者に貢献することで、結果として対価を得ることができるということです。しかし、多くの人が「正解」にこだわり、無理して慣れないことに取り組みがちです。私は、もっと自分自身に立ち返り、「自分の強みは何か」「自然にできてしまうことは何か」を考えることが大切だと思っています。これを実証し、証明していくことが「面白ベース」の目指す方向性です。
ーー「面白ベース」を立ち上げようと思ったきっかけは、前職での経験が影響しているのでしょうか?
丸山:実は、前職での直接的な経験はあまり関係ありません。
ーー「面白ベース」は、丸山さんの思いが強く反映されたものなのですね。
丸山:そうですね。2015年頃から、地元で何かできないかと考えるようになりました。当時、私はソフトバンクに勤めていて、努力すればするほどクライアントが喜んでくれる仕組みで働いていました。その喜びが私自身の満足にもつながっていたのですが、地元に帰ると、かつて元気だった友人たちが活力を失っている姿を見て、とても悲しく感じました。
そこから、彼らのために何かできないかと考え、2015年に行動を起こしました。その過程で学生たちと出会い、様々な活動を経て、最終的に2023年に「面白ベース」を立ち上げる決断をしました。
最近、地元に戻った際、昔は勉強が得意ではなかった友人が、今では3人の子供を育て、家族を守るために宅建の資格を取得したという話を聞きました。家族を幸せにしたいという強い意志が生まれた瞬間、そのエネルギーで新しい人生を歩み始めたんです。こうしたきっかけさえあれば、人は大きく変わることができると感じました。「面白ベース」も、そうしたきっかけを提供し、会員が自分なりの正解を見つける場所にしたいと考えています。
ーーなるほど、きっかけ作りが重要ですね。理想を言えば、教育の場でそういったきっかけを提供できるのが一番良いと思いますが、現実的にはなかなか難しいですよね。ソフトバンクのような企業がもっと増えれば良いのですが、そういう企業ばかりではないのが現状ですよね。
丸山:そうですね。経済的に自立していたり、お金には満足している人も多いと思いますが、仕事への情熱やモチベーションが徐々に下がっていく人が多いと感じています。
ーーなるほど、そういった方々に新しいきっかけを提供する場として「面白ベース」を作りたいということですね。
そうです。私は、環境の影響が非常に大きいと思っています。例えば、先週キャンプに行った際、参加者には先生、大手企業の部長、プロカメラマン、海外からの参加者など、非常に多様な人々がいました。それぞれが何を大切にし、どのように働いているのかを見ることは、子供たちにとって良い参考になりますよね。
多様な選択肢を見る機会が多ければ、「自分も〇〇になりたい」というきっかけも増えると思います。しかし、特に地方では、そうした多様な選択肢に触れる機会が少なく、難しい部分があるのではないかと感じます。子供たちは自分で環境を選ぶことができないので、そうした環境を提供できる場を作りたいと考えています。
ーー次に、今後、面白ベースで実現したいことについて伺いたいのですが、やはり子供のための環境提供も一つの目標なのでしょうか?
丸山:そうですね、それは大きな目標の一つですが、基本的には会員を増やしていくことがベースになります。特に、生き生きとした大人たちが増えていくことが重要だと考えています。会員一人ひとりが自分の理想を描き、それに果敢にチャレンジしている姿を見ると、関わるだけでこちらも元気をもらえます。そうしたチャレンジ精神あふれる「面白ベース」をさらに広げていきたいですね。
さらに、会員にファンがついて、応援される仕組みを作ることができればと思っています。資金調達は大変ですが、応援されることで大きなエネルギーが生まれます。その結果、新しい起業や産業が生まれていくのも素晴らしいですし、生き生きと働くサラリーマンが増えるのも喜ばしいことです。個々の活力が積み重なり、活気ある地域や日本を作り上げることができたら最高ですね。
ーー今は富山を中心に活動されていますが、今後はエリアを広げることもお考えですか?
丸山:今は考えていませんが、広げられる方法は常に模索しています。
ーーその文化がしっかり根付けば、波及効果も期待できますね。
丸山:そうですね。まずは富山で100人規模を目指し、その後は他県にも広げたいと考えています。ただ、他県に展開する際は、今のやり方をそのまま再現するのではなく、少し異なるアプローチが必要かもしれません。
「正解だからやる」ではなく、「面白そうだからやってみよう」という気持ちで行動する人が増えれば、きっと面白いことが起こると思います。そうした前向きな姿勢を持つ個人を増やす活動は、これからも続けていきたいですし、全国に広げていきたいですね。
ーー本当に素晴らしいと思います。実際、行動せずに評論ばかりする人は多いですよね。評論しているときは生き生きしているように見えますが、あまり良いことではないですよね。あれこれ言う前に、まずは何か行動を起こしてみればいいのに、と思います。
丸山:本当にそうですね。結局、そういう人たちは自分の人生におけるアジェンダを見つけられていないのだと思います。まだ自分が当事者になれる「ゲーム」を見つけられていないのです。1億人それぞれが自分のアジェンダを持てたら、もっと活力のある社会になるはずです。そんな社会を目指しています。
ーーありがとうございました。最後に、何か付け加えたいことや、伝えておきたいことはありますか?
丸山:繰り返しになりますが、やはりチャレンジできる環境というのは素晴らしいので、これからもどんどんチャレンジの機会を増やしていきたいと思っています。
ーーぜひ、「面白ベース」でチャレンジしたいという方々がもっと増えて、どんどん参加してくれると良いですね。今後、「面白ベース」が主催するイベントや企画の予定はありますか?
丸山:直近では大きなイベントの予定はありませんが、いくつか小規模な企画は進行中です。
ーー例えば、クラウドファンディングのような企画はどうですか?
丸山:クラウドファンディングは考えるかもしれませんね。椅子や机などの設備を整え、メンバーがより快適に過ごせる環境を作りたいと考えています。今使っている椅子が少し硬いので、そこに投資しようかなと。最初は固定費を抑える必要がありましたが、最近少し勢いが出てきたので、そろそろ設備にも投資しようかと思っています。
ーー今日は貴重なお話を伺うことができ、とても有意義な時間でした。今後のご活躍を楽しみにしております。