アメリカで人気の職業 エンタープライズアーキテクトとは?

アメリカで人気の職業「エンタープライズアーキテクト」とは?

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アメリカ最大の求人サイト、グラスドアが発表した2022年のアメリカにおける人気職業ランキング1位は、「エンタープライズアーキテクト」という職業でした。日本ではまだあまり馴染みのない職種ですが、平均年収が2000万円という高給専門職であり、企業において非常にニーズのあるポジションです。

今回は、エンタープライズアーキテクトという職種の概要と、日本でのニーズについて見ていきます。

エンタープライズアーキテクチャとは

Technology Business Application Data Security

エンタープライズアーキテクトという職業の説明の前に、まずエンタープライズアーキテクチャが何を指すものなのかを説明しながら、アーキテクトの担う役割を見ていきます。

エンタープライズアーキテクチャとは

デジタル化が進み、企業に利益をもたらす事業の構造もどんどん変わっている現代では、さまざまなテクノロジーやビジネスツールの導入を通じて、業務を効率化したり、事業モデルの転換をする必要があります。

企業が現在、また将来掲げた事業目標を効果的に達成することが、エンタープライズアーキテクチャという考え方の第一目的です。

エンタープライズアーキテクチャには、そのための企業分析、計画、設計、最終的な実装までが含まれています。

事業目標を効果的に達成するには、ビジネステクノロジーの全体像を把握し、組織内のどのプロセスを統合または排除できるかを分析し、ビジネスの効率と信頼性を向上させる必要があります。

そのためにエンタープライズアーキテクチャフレームワークが用いられます。企業内の全てのテクノロジーの全体像を構築する方法についてのガイドとして機能します。

エンタープライズアーキテクチャが注目されるようになった背景

エンタープライズアーキテクチャというフレームワークが重要視されるようになった背景には、ビジネステクノロジーの進化があります。

1980年代から、コンピューターの一般化や、記録媒体・情報伝送技術の向上に伴い、ビジネスをめぐるテクノロジーも急速に発展しました。

こうした変化をビジネス戦略に取り入れることは、次第に不可欠になっていきました。IT分野だけではなく、さまざまな業種の企業を含むビジネス全体がDXに取り組むようになったのです。

エンタープライズアーキテクチャの定義はさまざまですが、ビジネスの構造に対するアプローチを主眼に据えるフレームワークであることに変わりはありません。

一度はITコストや維持負担などによって、注目度が下がっていました考え方ですが、近年のクラウドサービスの台頭で、低コスト化が一気に進み、さまざまな事業規模の企業で、このようなフレームを導入することが現実的になってきました。

導入することで、意思決定が改善し、非効率・重複プロセスが排除されるだけでなく、長期的な目標に照らしてビジネスを評価できたり、需要や市場環境の変化に対する適応性が向上したりするなど、さまざまなメリットがもたらされます。

エンタープライズアーキテクチャのフレームワーク

エンタープライズアーキテクチャに明確な定義はないとはいえ、マイクロソフトのマイケル・プラット氏は、4つのフレームワークから構造をみることが重要だとしており、この考え方は比較的一般に浸透しています。

1つ目は、ビジネスアーキテクチャの視点です。業務要件の識別や業務構造という視点から検討することで企業全体の組織構造や役割を定義し、業務フローを整理します。

2つ目が、データアーキテクチャのデータ体系です。効率的な運用のために必要とされるデータを定義し、分類する視点を指します。ここには、セキュリティや取得データの品質などの定義も含まれます。

3つ目が、アプリケーションアーキテクチャ適用処理体系です。システムと業務の対応関係や、システム間の規格の互換性に着眼します。

最後が、テクノロジーアーキテクチャです。ハードウェアや、オペレーションシステム、ネットワークツールなど、さまざまなシステムが安定して稼働するためのIT基盤の構築、運用、拡張を重視します。

このように、相互に連関している4つの観点から構造を分析的に見ていくフレームがエンタープライズアーキテクチャにおいては重要です。

エンタープライズアーキテクトとは

ビジネスパーソン 設計

それでは、エンタープライズアーキテクトとは具体的にどのような業務を遂行する職種なのかを見ていきましょう。

仕事の概要

エンタープライズアーキテクトは、組織内のITインフラストラクチャを確立するところから始まり、それを改善、改良しながら、ITネットワークやサービスを維持・保守することを主な責務としています。

サービス、ソフトウェア、ハードウェアの監督から改善、アップグレードを担当することから、最近のソフトウェア、サービス、ハードウェアの知識を備えている必要があります。

また、ITインフラストラクチャを中心としつつも、企業や組織の生産性を高めるために、サービスをはじめとしたさまざまな企業の構成要素全体を横断的に見ていきながら、円滑に企業活動が稼働するようマネージメントをします。

昨今、人気が高まっているデータサイエンティストを抑えて、アメリカで人気職業1位になった背景としては、組織全体の部門プロセスを統一し、調整する役割が非常に重要だという認識が一般的にも高まってきたからではないでしょうか。

こうした観点から、ビジネス全体をマネージメントするエンタープライズアーキテクトが存在することで、複数の部門が、より広範にビジネスモデルを理解し、課題やビジネスリスクを明確化することが可能になります。

どのような経験やスキルが必要なのか

エンタープライズアーキテクトとして優れた実績を生み出すには、やはりITとコンピューターネットワークの専門家である必要があります。

エンタープライズアーキテクトが認知度の高い職種であるアメリカにおいては、通常コンピューターサイエンスまたは関連分野の学士号を取得し、5〜10年IT経験を積んだ人が抜擢されるのが一般的です。

実際には、SQLやデータソージング、エンタープライズデータ管理、ビジネスモデリング、戦略策定、監査、コンプライアンスなど必要となる知識は多岐に渡ります。

また、自分自身もこうした横断的な知識をもつ専門家でありながらも、組織内のさまざまなポジションの人と協力しあうコミュニケーション能力が必要です。あらゆる人の意見を束ね、最適解に導くリーダーシップも求められるでしょう。

エンタープライズアーキテクトは、さまざまな立場の人と協力しながら、企業の持つどのレガシーシステムを更新できるか、どんなサービスや製品を導入すれば、各業務の効率化につながるかを常に見極めます。

こうした側面からみると、ビジネスプロセスの進行において、技術的にどのようなニーズがあるのかを同定する分析能力も必要であると考えられます。

エンタープライズアーキテクチャの日本での展望

ビジネスマン透過 高層ビル群

日本の多くの企業は既存事業の維持に努めつつも、将来的な先細りに備えて新規事業の創造や提携などをまさに積極的に行っている最中でしょう。

長期的な視点で、社会変化を予測しながら事業運営を行っている一方で、既存のIT環境やオペレーションフロー、組織体制など企業を構成する個々の要素に柔軟性がなく、結果的にイノベーションが起こりづらくなっているというケースも少なくないかもしれません。

このような既存の体制が足枷となっている日本企業にとってこそ、レガシーシステムをどう生かしながら、新規システムを導入し、効率化につなげるか、というエンタープライズアーキテクトの視点を持つことは、非常に重要になってくるでしょう。

一般的に、IT業務全体を構造的に把握することがエンタープライズアーキテクトの視点ですが、上記のような課題を抱えた日本においては、ITだけでなく、組織の人材やサービスなどを含めて構造化するという視点が求められるようになるかもしれません。

また、規模が小さい企業の方が、このような改革がスムーズにいく可能性が高いとも云われています。エンタープライズアーキテクチャは、中小企業から大企業まであらゆる事業規模の会社で導入すべきフレームワークとしてニーズが今後益々高まると推測されます。

まとめ:高まるエンタープライズアーキテクトのニーズ

この記事では、エンタープライズアーキテクチャというフレームワークが注目され、エンタープライズアーキテクトのニーズが高まっている現状と要件などについて見ていきました。

アメリカを中心としたビジネスの構造を見ながらDXを推進していくという流れは、日本の大企業だけでなく、中小企業にとっても今後非常に重要になってくるでしょう。ビジネスアーキテクトのような視点を意識して業務改革を行ってみるのはいかがでしょうか。

※参考文献

『エンタープライズ・アーキテクチャー | アクセンチュア』

『What is an enterprise architect? A vital role for IT operations | CIO』

『What is Enterprise Architecture (EA)?』

『Enterprise Architect Job Description [+2023 TEMPLATE].

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