みなさん。こんにちは。金谷 建史氏へのインタビュー記事を掲載します。このサービスを立ち上げるまでの経緯、今後の方向性について語っていただきました。
※大手ITベンダーにて新規ITサービスの立上げを行い、その後、コンサルティング会社(上場企業)の子会社創設メンバーとして参加し2年で40億円の売上まで業績が伸びる。その後上場企業のコーポレートベンチャーキャピタル立上げでは多くのITビジネスへのベンチャー投資(シード)を実行。2016年にテンアップ(現:リアルバーチャル株式会社)を創業し現在にいたる。
ーーメタバースとは何ですか?
金谷 建史氏(以下、略称):一般の方がイメージしやすいのは、オンラインゲームのような世界かもしれませんね。
ーーメタバースは企業にとって、必要なものですか?
金谷:必要なものだと思います。新型コロナが原因で、オフィスに行かなくてもリモートでコミュニケーションをするということについて真剣に考えられるようになってきました。
いまでは「Zoomで打ち合わせする」ことが当たり前になってきましたが、その延長線上にメタバースがあります。
例えばメタバースは、Zoomとは違ってオンライン上で動き回ることができますし、360度を体験することができます。こんなところが、メタバースの可能性になるかと思います。
また、ホームページ上にメタバースの入口を作ることで、誰でもメタバースに入ることができます。ネットワーク内にくっつけてしまえば、すぐにメタバースを導入することができます。
メタバースはちょっと先のもう少し便利なオンライン化というふうに考えれば、企業も色々なサービスをメタバースを通じて提供できるのかもしれません。
ーー具体的には、どのようなケースでの活用が考えられますか?
金谷:新卒採用での活用が考えられます。やはり、若い人は新しいものが好きなので非常に好評でした。
ーーなるほど。若い人はフォートナイトとかやっていますしね。
金谷:そうですね。就活生にとって就職説明会がメタバースであることは、大きなメリットがあります。企業に直接出向くには交通費も時間もかかります。メタバースを利用することで、それらが節約できます。
また、Zoomだと職場の雰囲気がわかりにくいですよね。メタバースを利用すると、360度でその職場の雰囲気を体験することでき、実感することができます。
ーー最近は、動画を活用した採用が流行っていますが、近い将来、メタバースで採用ということは普通になりますでしょうか?
金谷:そうですね。そうなると思います。企業側のニーズというよりも、就職する側のニーズが強いので、そうなってくると思います。
ーーそういう意味では、当たり前のようにメタバースで採用という時代がやってきますよね。
金谷:はい。そうだと思います。また人事の方に聞いたのですが、リアルな新卒採用では、会社説明会と会社見学は別日にやっていることが多いそうです。
その点、メタバースでしたら、会社説明会、会社見学、全てオンラインで完結できてしまいます。しかも、世界中の支社へ一緒に行けるわけですから非常に効率的です。
会社説明会と会社見学の間が空いてしまうと、学生さん側のテンションが下がってしまい離脱してしまう可能性が高いですが、メタバースを利用することでテンションが高いままで維持することができるので、離脱することなしで採用することができます。
ーーちなみに、メタバースをうまく活用するための方法については、まだ発展途上という感じでしょうか?
金谷:そうですね。なので、具体的な使い方について僕らも試行錯誤しています。
例えば人事部のブースです。単に3Dでブースを作ったからといって、人が来るわけではありません。応募から内定までのステップにおいてメタバースをどのように使えばよいのかということについてはノウハウがありますので、お話したいと思います。
1.応募フェーズ
新卒採用ポータルサイトなどで募集します。
「応募」の段階では メタバースを活用すると、珍しいということでアクセスが増えます。つまり、応募時に導入することで、集客力に繋がります。
メタバースでは、中に入って体験できることで、感じることができますから、学生さんは、文章と画像だけの採用サイトではなく、メタバースの方を見ようということになります。メタバースには、確実に集客効果があるはずです。
2.面談フェーズ
面談をします。会社案内では、メタバースでイベントをやることで、応募しなかった人が応募する可能性が非常に高くなります。
例えば、ゼネコンや水道局からは、優秀な工学部の人間が欲しいのに、集まらないという相談が寄せられています。
工学部の人間はIT系の会社に行ってしまう現状がありますが、そこで、ゼネコンの仕事のすごさ、魅力を伝えるのに、メタバースを利用しました。
水道局の場合、サイトなどでダムの画像は、誰でも見たことがあるかと思いますが、メタバースを使うとダムを見るだけでなく体験できます。工学的な技術のすごさを学生に改めて体験させてあげることができるのです。
すると、本来、水道局の新卒採用に応募しなかった学生がメタバースを体験したことで、応募してみようと思い、応募者が増えることとなりました。
メタバースを使うことで、「リアル面接」のところに送客する人数が増えるのです。
私たちは、「面談」は、リアルでするべきだと思っています。メタバースは、興味関心を高め、「面談」に送客する人数を増やすことが出来ると思っています。
3.内定フェーズ
内定を出します。内定を辞退されないように、ずっと魅力を伝えていくのが人事部の仕事になります。「内定をもらった後」のフォローをメタバースでやることで、内定者を引きつけることができます。
Zoomなどでフォローすることも可能ですが、どうしても、一方的になってしまうので、説教くさくなり、学生さんも聞くだけになってしまいます。
心理学上では、共同体験することで親密感が上がることがわかっていますが、そういうのをメタバースでやってあげると、内定辞退者が減ることに繋がります。単に、3Dにするというのではなく、こういう形で、ホップステップジャンプでメタバースを使ってあげるといいと思います。
ーーメタバースを取り入れている企業の事例について教えてください。
金谷:新卒採用以外ですと、某スーパーゼネコンにおいて社員教育に使っていただいています。
現在、多くのゼネコンでは、現場所長の世代が皆引退の時期を迎えていています。
ゼネコンのビジネスモデルは、現場所長の数で売上が決まってきます。なので、現場所長が減り受注できる数が減ってくると売上減少になります。
つまり、会社にとって現場所長育成がとても重要なのです。
そこで、所長育成のツールとしてメタバースを採用いただきました。
現場所長になるには、一級建築士であることだけではなく、色々な施工ミスがあったとしても対応できる現場力が求められます。
ですので、メタバースの中で実際の建築現場で起きた施工ミスを体験して、その解決法も体験することで、仮想ではありますが一気に経験値をあげようと行いました。
通常は、ゼネコンの社員さんは1年で3つ位の現場しか体験することができません。大きな現場でしたら数年で1ヶ所の経験しかできません。ですが、メタバースで1年間に数十か所の実際の現場の施工ミスを一気に体験できると、普通2、30年以上かけて貯まる経験値が、一気に2,3年で貯めることができるのです。
先程述べましたように、現場所長が不足することがゼネコンの経営課題でしたが、これまで2、30年かけていた所長育成を、3年で育てることができるということになれば、大きな課題解決につながります。
多額な費用と時間をかけて現場所長を育てていたのを、メタバース一個で解決できてしまうのです。
「メタバース=3D」ということが目に付きやすいのですが、その本質としては、教育効果が非常に高いのです。
また、学校の教科書で学ぶのに比べ、メタバースで体験するということは体験価値が全然違い、教育効果が高いといえます。
「施工ミスを探すメタバース」では、実際にミスを探すという意味で、教科書で学ぶのと違い、ある意味プロの目を養うことができます。空間の中で、施工ミスが一カ所あるというのを疑似体験できることが、メタバースのすごいところなんです。
おもちゃのゲームだと、偽物ですが、メタバースは本物を再現しており、それがすごいことなんです。
ーーしかも、コストがそんなにかからないという意味合いもありますよね。
金谷:そうなんです。普通CGを作ったら、時間もお金もかかりますが、現場の写真を撮って集めるだけでいいので、コストはほとんどゼロです。
うちは、今はビジネス向けにも展開していますが、元々メタバースで教育をする会社でした。メタバースを使って塾のオンライン教育サービスを提供していました。受講した生徒は、開成高校に受かるという実績があります。
メタバースは頭を良くさせるということが出来るんです。そういうノウハウがあります。
メタバースと企業研修はとても相性がよいのです。
ーー実際に学生たちにしていたやり方を企業用に転用されているということですか?
金谷:そうなんです。偏差値を上げるために勉強しているのと企業研修で学ぶのも同じといえます。学びという意味では、同じノウハウを使います。
ーー他の活用方法はありますか?
金谷:研修効果が高いということと、もう一つは、不動産賃貸です。
不動産賃貸会社が実証実験したところ、メタバースの中に店舗を持っていったら、リアルな店舗より売上が上がるという結果が出ました。これは、すごいことです。
ーーこれは、メタバース上で、実際の店舗が持っている物件情報を体験できるということですか?
金谷:そうなんです。さらにアバターで接客までしてしまいます。
スタンフォード大学の研究では、VRは動画より「理解度」が25%高いという結果が出ています。さらにメタバースはアクセス数が上がりやすく、滞在時間も長いので不動産のPRがしやすくなります。
ーープロモーションにも使えるということですね。
金谷:そうですね。うちでは、まだやり始めたばかりですが、動画やサイトを観ていて、広告が出てくると、すぐに広告を消してしまいますよね。
一方、動画やサイトからメタバースの空間にリンクすることで、リンク先ですぐ閉じてしまう率が下がります。メタバースに繋がれば、楽しい体験ができ、滞在する時間が長くなるからです。広告として、メタバースを利用することで、サイトに来てもらうことが出来れば、滞在時間も長く、理解度も高くなります。
視聴者のニーズに合っていればですが、そこからの購入率も高くなると思います。
ーー実際今、POCでやっている感じですか?
金谷:大手玩具メーカーとの企画では、オンラインの広告でHPにリンクするのではなく、玩具が体験できるメタバースにリンクをしようとしています。Youtubeなどでおもちゃで遊んでいるインフルエンサーがいますが、このインフルエンサーと一緒に遊ぶことのできるメタバースをつくることで消費者の方は玩具の体験ができ、さらに欲しくなるのではと思っています。
ーーそういう意味では、これまで中々広告で表現できなかったことが、メタバースでできるようになってくるということですね。
金谷:はい。他にも、藤沢市と行った事業で、2021年に藤沢市がオンライン上に江ノ島を作りました。来年度版は今まさに作っています。
ーーこれは、どういう座組であったりとか、エンドユーザーとしては、どういう体験をするかといったストーリーみたいなのはあったんですか?
金谷:藤沢市と江ノ島をオンライン上に作ったのは、2021年のコロナ渦で、緊急事態宣言などもあり、藤沢では観光業がぼろぼろになった時期でした。
全国の人が江ノ島の旅行が出来るようなものをということで、オンライン上に江ノ島を作りました。イベントや告知などもやりました。メタバース空間で、藤沢市の海の王子様、女王様というイベントをやったり、オンラインイベントをメタバース上でやりました。
ーー人事に戻りますが、メタバースでやっているのは、採用と若手の育成ですね。
人事軸で、2大課題といっても過言ではないですよね。採用と育成をメタバースを使って検討するというのは、すごいですね。
金谷:面白いのが、メタバースの中で、人は動きますよね。その動きを見ていると人事部は色々指導できるんです。リアルな現場で指導しにくいことも、メタバース上だと指導しやすかったり、トライできたりします。実際は、若い人が落ち込んでしまうような指導も、アバターを介して行うことで、ポジティブに捉えてくれる傾向があるんです。
企業として伝えなければならないことを、若い層に忖度して伝えられないことで、現場で失敗し、結果的に企業にマイナスになっていることが、結構多いです。
「ちゃんと伝えて、後で自分でも実践できるようにする。」これは、私どもが塾でやってきたことに近いんです。
ーーツールとして、安いですよね。3Dと比べたら、非常に安い。
金谷:そうなんです。だから、中小企業でも気軽に利用できます。
ーー最近のスマホの解像度は高いので、それをアップすれば、すぐにメタバース空間が再現できてしまいますよね。
金谷:ひとつネックなのが、スマホの写真は、300度パノラマはありますが、360度が中々ないんですよ。シータとかで撮った方がいいです。
ーーシータもそんなに高いわけではないですよね。
金谷:安いです。1万9,000円くらいで売っていますが、まだ持っている人が少ないのがネックです。
ーーわざわざリアルワールドをCG化させてとか、大手の事例で多いと思いますが、その予算と比べれば、シータで撮影する方がどれだけ安いかですよね。
金谷:有名大学でオールCGでオープンキャンパスをされたんです。多額な費用をかけて、学校のCGを作ったのですが、受験生からは「本物を見たかった」大学の先生からは「本物を見せたかった」という評価になりました。
メタバースはゲームに近いことがあるので、こういうことになりがちですが、メタバースサービスを何の為に提供するか、その本質を見極めてあげると、360度画像でいいのではなく、360度画像がいいということがわかります。
ーーアバターの顔もリアルを重要視しているとか?
金谷:はい、見せる施設をリアルにこだわっているだけでなく、アバターの顔部分もWebカメラにしてリアルな表情を双方に見えるようにしています。先ほどの大学のオープンキャンパスの時もそうですが、大学の先生もアバター、受験生もアバターでは意味がありません。先生は受験生の顔色を見ながら話を切り替えますし、受験生も先生の顔を見ることで信頼感が増します。
「リアルをバーチャルで伝える」というのが重要で、「顔が見える」というのは、リアルを見せていることになります。
人のコミュニケーションで、表情などのノンバーバルな部分は重要になります。普通のメタバースは、この部分が出来ないんです。
ーーメタバースは中小企業では使えないと思っていました。
金谷:メタバースというと、クリエーター、アーティストさんが使うものとおもわれがちですが、ここまで申してきた通り、企業様で活用できますし、会社に貢献できることが沢山あるんです。
具体的には不動産賃貸の業界では、リアルな店舗で接客するよりもメタバース内の店舗で接客したほうが売上があがりました。
顔が見えるメタバースなので営業に使えますし、リアルな部屋を見せれるのでイメージもわきやすいと思います。
ですが、本当の効果はそれ以上にありました。
通常、不動産業界はお客さんが内覧希望で連絡があり、内覧すると終わってしまうのです。つまり営業マンにお客さんがついていない状態です。ですが、メタバースを使うことで営業マンにお客さんがつく仕掛けつくりをいたしました。これにより、お客さんに何度もメタバースに来てもらい、親身に相談に乗ることで売上があがっていたんです。
ーー次回は、是非対客について深掘りさせてください。
金谷:はい、メタバースでの活動とリアルの活動の違いはそこにあります。
リアルだと営業マンが外に出てしまうと、どのような営業をしているかデータ化しにくいと思うのですが、メタバース内だと、どのように行動したか全てデータが残っていますので、PDCAがまわしやすいんです。
ーー実際の業務フローにメタバースをどう入れていくかということですよね
金谷:そうです。それを入れないとメタバースは市民権を得ることが出来ないんです。
ーーリアルとの掛け合わせですね。
金谷:リアルなのが、顔とか空間だけでなく、リアルにエクセルに連携というところまで、リアルとの連携があることが重要なんです。
ーー今後チャレンジしていきたいことは?
金谷:リアルとオンラインのうまい融合をしたいなと思っています。リアルが駄目だからオンラインで、というのではなく、オンラインの方が効果があるじゃない!という世界を築きたいという第一ステップの目標があります。第二ステップとしては、オンラインでよかったから、リアルでやりたい、という逆の発想をしたいんですね。
例えば、人事でいうと、「リアルよりもオンラインでやっている会社案内がいいよね」という世界にまずは持って行きたいと思っていますが、オンラインでやった会社案内を見たから、リアルを見に行きたいね。という風になってほしい。
お互いの相乗効果を上げていけるものを作っていけたらよいと思っています。
ーー所謂世界中には、リアルとバーチャルを掛け合わせるソーシャルセリングはありますが、御社の商品は、極めてロジカルですよね。
金谷:はい。表では、エモーショナルですが、裏では、極めてロジカルに動いていてプロジェクトとして成立しています。ロジカル戦略ありきでエモーショナルをやるということです。
ーー本日はありがとうございました!
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