スタグフレーションで中小企業がやるべきこととは?

スタグフレーションで中小企業がやるべきこととは?

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現在日本経済はスタグフレーションと呼ばれる状況にあります。スタグフレーションにおいて、企業が利益を生み出していくためにはどのような経営を心がけていくべきなのでしょうか。

今回の記事では、スタグフレーションにおいて特に中小企業がやるべきことに焦点を当てつつ、言葉の定義から現在の経済状況の概要まで見ていきます。

スタグフレーションとは

メディアで見聞きする機会が増えたスタグフレーションという言葉。ネガティブなニュアンスであることは想像できますが、実際にどのような経済状況を指しているのでしょうか。言葉の定義から見ていきましょう。

スタグフレーションの定義

日々の生活をしている中で「物価が上がっている」と感じる方も多いのではないでしょうか。昨今はニュースでも積極的に物価高が取り上げられています。

また同時に、日本はそのほかの先進国と比較しても、低賃金だというニュースも見かけることが増えたかもしれません。

スタグフレーションとは、このように景気が悪いために賃金は低いところで据え置きされている一方で、消費財の物価は上昇しているという経済状況のことを指しています。

このような状況においては、投資家も投資を控えてしまい、さらに経済は硬直化してしまいます。

スタグネーションという単語は景気停滞という意味をもっており、それに価格上昇を意味するインフレーションを組み合わせることで出来た合成語です。

スタグフレーション下における日本の経済状況

今の日本経済は1990年代のバブル崩壊以降、最悪の状況だという見方をする人も少なくありません。

1980年代にはオイルショック、1990年代にはバブル崩壊、2000年代にはリーマンショックと、いずれの年代も経済はさまざまな要因で不安定化しています。

これらのほとんどは世界経済も同様でしたが、一方で、このようにさまざまな経済的ショックを経ながらも、他先進国の賃金は上昇を続けています。

一方で驚くべきことに、日本においては30年間賃金は上昇することなく、横ばいを貫いており、それに反して物価は上昇し、負担する税金の額もどんどん増えています。

また、近年は新型コロナウィルスの流行や、ロシアのウクライナ侵攻、イギリスのEU離脱などによって非常に不安定な社会状況が持続しています。

このような状況で、個人が積極的な消費を行うことはあまりありません。とはいえ、個々人の消費の積み重ねが、経済循環にとっては弾みになるので、今は経済が循環していくために必要なピースが欠けている状態と言えそうです。

つまり、賃金が上がらず、物価が上がり続けるから、経済状況も停滞し続けるという悪循環の中から抜け出すことができなくなっているのが、近年の日本の経済状況の概要と言って差し支えはないでしょう。

スタグフレーションにおける日本企業動向

このような停滞のなかで、日本の企業経営はどのような経営を行ってきたのでしょうか。

大きな特徴は、常にコスト削減の方向性で調整を重ねてきたという点にあると言えます。

日本企業は、粛々と事業を維持しながら人件費や設備投資をはじめとした出費を減らし、内部留保を増やすという方策をとっています。

内部留保とは、正確には利益剰余金のことを指します。本来は、この剰余金を使って新規投資を行ったり、雇用者の賃金を上げることで、経済に対してインパクトを与えることができます。

しかし、このお金を企業が内部に溜め込み続けると、それぞれの企業の倒産リスクは下がりはするものの、大局的な視点で見ると、経済状況は現状を維持したまま停滞してしまうのです。

また、日本企業の内部留保が増え続けている間、法人税率が引き下げられ、東日本大震災の復興税も終わりを迎えたことで、企業からお金が放出される機会がさらに失われているのが現状です。

このように企業が利益を溜め込んでいることで、大きな資本の流れが滞り、経済状況が膠着化していると考えることもできるでしょう。

スタグフレーションにおいて中小企業がやるべきこととは

定義を見てきたことで、スタグフレーションは、企業経営にとって逆風であるということがわかりました。特にtoCのビジネスをしている方にとっては、より険しい状況であると言えそうです。

では、このような状況においても健全な企業経営を続けるためにできることは、どのようなものがあるでしょうか。

特に、中小企業がやるべきことに焦点を当てて解説していきます。

商品力を上げるよう努める

マーケティングの観点からまず考えていくと、プロダクトの力を上げていくというのは必須になります。

従来から考え抜いたプロダクトを世に出しているというのは間違いないことですが、消費者のニーズやトレンドは日々刻々と変わっています。

販売してから終わりではなく、リサーチを常に行いながら、プロダクトを少しずつより良いものに改良していくスピードを速めていくというのが鉄則になりそうです。

リサーチだけではなく、CRM構築を確実に行うことで、直接カスタマーからニーズを吸い上げる機会を積極的に持つなど、出来ることは全て行うという万全な姿勢が大切です。

戦に出る

経済状況が変われば、カスタマーの態度も当然変わってきます。つまりプロダクトのクオリティを上げると同時に、今このプロダクトを求めているのは誰なのか、常に選定を行うことも重要です。

プロダクトの力を上げていくような分析を行う際に、もう一度新たなデータを揃えた上で、SWOT分析やセグメンテーションをし直してみるのも有効です。

また、ブランディングやプロダクトの改良をすると同時に、販売チャンネルを常に開拓していく姿勢も必要です。

プロダクトを発案する際に行うこのような一連の流れを、定期的に洗い直しながら、積極的に新規なアイディアを盛り込んでいきましょう。

経営から無駄を省く

スタグフレーションが起きる要因として企業のコスト削減や内部留保増加といった問題も関与していると説明してきました。

しかし、特に中小企業という規模の会社であれば、きちんと経営分析を行い、ある程度の無駄を省いていくことが大切です。最低限の財務体力がなければ、運営自体を続けていくことはできません。

積極的な企業経営や投資は行いつつも、キャッシュフローを計算し直し、約3年程度の中期経営計画において無駄がないかを見ていくことは重要です。

その際に、これまで説明したような経済のメカニズムを念頭において、人件費の削減を出来るだけ避けるなど、働く個人の生活に常に留意することは大切かもしれません。

企業経営者の振る舞いが、大きな経済活動の変化につながっているという視点を持つことが、今後の経営においては重要になってくると考えることもできるでしょう。

公益財団法人 日本生産性本部の2021年の調査によれば、2020年の日本の1人あたり労働生産性(就業者1人あたり付加価値)はポーランドとエストニアと同水準まで下がってきており、スタグフレーションを脱するためには生産性の向上は不可欠です。

まとめ

本記事では、スタグフレーションという言葉の定義から、現在の企業をめぐる経済状況、中小企業が経営において留意すべき点を見てきました。

スタグフレーションという現象は非常に大きく一見、関与が難しく不可抗力に感じるかもしれません。また企業規模によっては苦境を強いられる可能性もあります。しかし、常にそうした険しい経済状況を意識しながら企業経営を行うことで、上手く適応していくチャンスも十分あると考えることができそうです。