ブロックチェーン技術による資格取得歴のデジタル証明は普及するか?

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近年、Web3の台頭で、ブロックチェーンの技術を活用した取り組みが増えています。現在ブロックチェーンを使って、資格の取得歴を管理する動きもあります。しかしまだ世界各国は、法規制が追いついておらず、国レベルではブロックチェーンの活用を検討するもしくは議論をするだけの場合が多いです。

今回は、以下についてご紹介しながら、ブロックチェーンを活用した資格取得歴のデジタル証明が普及していくかどうかを考察していきたいと思います。

  • ブロックチェーンの導入事例
  • ブロックチェーンの活用が検討されている資格
  • 従来の資格証明とブロックチェーンで資格証明をすることの違い

そもそもブロックチェーンとは?

そもそもブロックチェーンとは、インターネット上にある端末同士を接続し、暗号技術を使って分散的にデータを管理する方法です。一つひとつのデータをブロック単位で管理し、鎖(チェーン)のように管理することからブロックチェーンと呼ばれています。分散的にデータを管理しているため、データの改ざんが非常に難しく、安全性が高いです。

ブロックチェーンの導入事例

ブロックチェーンは、現在さまざまな分野で活用されています。

今回は、以下に挙げる代表的な5つの分野を紹介したいと思います。

  1. 金融
  2. ゲーム
  3. 音楽
  4. 医療
  5. 自動車

それぞれ詳しく見ていきましょう。

金融

金融業界では、ブロックチェーンは、以下の3つで使われています。

  1. 暗号資産
  2. 非金融資産
  3. 分散型金融

デジタル通貨を使い、新しい経済圏を作ったり、事業を作ったりできます。また一部の暗号資産は、国際決済の高速化や利便性向上など、リアルの分野で活用が可能です。銀行から銀行に送金するときに、手数料が発生したり時間がかかったりしますが、仮想通貨を活用すれば、早く安く送金が可能です。

他にも、ブロックチェーンは、アートなどの非金融資産にもNFTという形で活用されています。所有者や権利などを明確にでき、改ざんができないため、確かな価値を把握できるためです。

ゲーム

ゲーム分野でもブロックチェーンが活用されています。有名なタイトルは、以下のとおりです。

  • Axie Infinity(アクシーインフィニティ)
  • 元素騎士Online META WORLD
  • Sorare ファンタジーフットボールゲーム

従来のゲームは、任天堂やSONYなどのハードウェアを開発した企業の管理下でしかプレイできませんでした。そのためサービスが終了すれば、ゲームデータが抹消されてしまっていました。

一方、ブロックチェーンゲームは、データをそれぞれが保有しているため、サービスが終了してもNFT市場で販売することが可能です。また一部のゲームは、遊びながら稼ぐこともできます。

音楽

音楽の分野では、SONYが音楽権利ブロックチェーンを活用して管理する実証実験を行っています。

音楽制作や販売は自由ですが、権利関連の証明が必要です。著作権や業界団体が管理や証明を行うため、確認に時間がかかります。ブロックチェーン技術を活用すれば、確認の手間を省き、著作権の登録や証明の簡易化が可能です。

医療

医療の分野でも、さまざまなシステムでブロックチェーンの技術が使われています。現在使われている部分は以下の通りです。

  • 患者の健康情報管理
  • 受信予約システム
  • ワクチン接種証明

医療機関で管理されている患者の健康情報は今まで、サーバーに保管されていました。しかし、万が一サーバーが攻撃を受けてしまうと、そのサーバーを使っているすべての医療機関の患者の情報が流出してしまいます。ブロックチェーンを活用することで、安全に管理ができると注目されています。

オラクル社が開発したエンタープライズ・セキュリティは、必要な情報をすぐにブロックチェーン上に保存可能です。データ保存だけでなく、新しく機能の追加や情報の処理を自動で行うため、医療カルテの管理の簡易化や医療現場の業務効率にも貢献しています。

他にも電子情報の改ざんができないため、システム情報やワクチン証明の管理にも便利に使われています。コロナウイルスのワクチン接種における予約や証明書のプラットフォームにブロックチェーンが活用されました。

自動車

ドイツのメルセデス・ベンツ社は、ブロックチェーンを活用して、中古車の販売管理やサプライチェーンの在庫管理にブロックチェーンを活用しています。

中古車に関して、管理する情報は以下の通りです。

  • 車検記録
  • 事故記録
  • 所有者・元所有者の使用期間
  • 走行距離などの部品記録

車検の改ざんを防ぐことができ、安心して中古車の購入が可能となりました。

他にもサプライチェーンと連携して、必要な部品や供給数を管理し、無駄を減らして効率の良い生産やコスト削減に貢献しています。

ブロックチェーン導入が期待される資格

今後、資格や電子証明の分野でもブロックチェーンを活用する団体が増えていくと考えられています。すでに導入もしくは、検討されている電子証明は以下のとおりです。

  • 大学卒業証明書
  • TOEIC
  • 音楽などの楽曲特許証明

それぞれ詳しく見ていきましょう。

大学卒業証明書

大学卒業証明書にブロックチェーンを活用する動きがあります。

現在ブロックチェーンを活用して卒業証書を発行している大学は、以下の通りです。

  • 千葉工業大学
  • マサチューセッツ工科大学
  • 浦項科学技術大学

他にも、慶應義塾大学や南山大学、欧州の有名な大学などがブロックチェーンを活用した証明書の発行を検討しています。ブロックチェーンを活用することで、学歴証明の偽造防止が可能です。

TOEIC

2023年の4月から、TOEIC Program公開テストのOfficial Score Certificate(公式認定証)について、ブロックチェーンを活用したデジタル公式認定証を導入しました。

従来は、TOEICのスコア結果を紙で郵送していましたが、偽造が可能でした。ブロックチェーンを活用することで、改ざんできないようにしています。また結果をオンラインで確認できるため、スコアの提出が容易になりました。 

音楽などの楽曲特許証明

日本音楽著作権協会(JASRAC)は、ブロックチェーンを活用した楽曲管理システム、「KENDRIX」のサービスを開始しました。音楽証明をデジタルで行うことで、簡単に証明ができ、楽曲権利の保護にもつながります。 

従来の資格証明とブロックチェーンの資格証明の違い

ブロックチェーンを活用した証明では、従来の資格証明でできなかった以下の3つの事が可能になります。

  1. 有効期限を検知し通知
  2. 資格の許可を遠隔で取り消せる
  3. 再発行が簡単

有効期限の検知が可能

ブロックチェーンを活用した証明書は、有効期限を事前に検知することが可能です。紙での証明書の場合、証明が必要なときに「気がついた時には期限切れだった。」ということもあります。事前に検知できることで、期限が切れる前に通知することが可能になります。オンライン更新と組み合わせれば更新手続きは一段と効率的になります。

資格の許可を遠隔で取り消せる

資格がオンライン上に保存されているため、何か不祥事やトラブルがあれば、管理者が資格を遠隔で停止可能です。紙で管理をする場合、一見資格が有効に見えてしまい、資格の停止処分の効果がありません。

ブロックチェーンを活用すれば、資格が有効かどうかすぐに確認できます。

再発行が簡単

従来の資格は、資格証明の再発行が有料だったり、再発行不可だったりするものもありました。しかしブロックチェーンであれば、オンライン上で管理されているため、すぐに発行が可能です。

紛失したときや急に証明が必要になったときに便利です。

ブロックチェーン導入の懸念点

ブロックチェーンの活用により、より社会が便利になりますが、技術的な課題もあります。次に、懸念点として以下の3つについて解説したいと思います。

  • スケーラビリティ
  • 人的エラーによるセキュリティ欠陥
  • 開発コストが高い

スケーラビリティ

ブロックチェーンは、ある一定量のブロックを超えるデータを同時に処理はできません。データの処理は瞬時ではなく、一定の間隔で定期的に行われます。

そのため短い時間に大量のデータの処理が必要な場合、ユーザーに待機時間が発生し、ユーザーは不便と感じます。国家レベルでの導入はまだ難しく、ユーザーが多いプラットフォームやシステムでは、利用されていないのが現状です。

人的エラーによるセキュリティ欠陥

ブロックチェーンのシステムは改ざんしにくく、セキュリティ性が高いです。しかし人的ミスによって、その機能が発揮しない場合があります。

また、51%問題によって、完璧にブロックチェーンの環境を整えても、全く効果を発揮しないこともあります。51%問題とは、ブロックチェーン内で使われるマシンパワーを超えるパワーで、マイニングを行うことです。このパワーによって、ネットワーク全体の書き込みが改ざんされ、ネットワークの乗っ取りが起きます。

開発コストが高い

ブロックチェーン技術を活用するには、莫大な開発コストが発生します。理由の一つに、ブロックチェーンの開発ができるエンジニアが少なく、人件費が高いことがあります。ブロックチェーンのエンジニアが少ない理由は、以下が挙げられます。

  • 技術の学習方法が他のWeb関連に比べて、普及していない
  • 高度な数学を使う
  • 独立して経営者になる人が多い
  • 教育者不足

まとめ

今回は、ブロックチェーン技術を活用したデジタル証明について解説しました。今後ブロックチェーンが普及し、より多くの業界で使われることが予想されます。

電子証明を活用すれば、以下のメリットがあります。

  • 有効期限の検知が可能
  • 資格の許可を遠隔で取り消せる
  • 再発行が簡単

証明書は、まだ紙での管理が主流ですが、技術が進み汎用性が高まり、プロトコルが確立し法整備がされていけば、より身近により多くの業界で利用されていくと思われます。ぜひ今後のブロックチェーン技術に注目しましょう。

※参考文献

『Axie Infinity(アクシーインフィニティ) 公式サイト』
『元素騎士Online META WORLD 公式サイト』
『Sorare ファンタジーフットボールゲーム公式サイト

 

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