Web3はブロックチェーン技術の発展に伴い、今後私たちのインターネット利用におけるスタンダードとなる可能性を秘めています。ただ、既存のWeb1、Web2に比べると機能面で劣る部分もWeb3はあり、発展途上の技術と言えるでしょう。
今回は、これまでのWeb3利用において不足してきたコミュニケーション課題を解決する、メッセージングプロトコルの「DMTP」について解説しながら、その将来性を考えていきましょう。
メッセージングプロトコルの「DMTP」とは
DMTPはDecentralized Message Transfer Protocol の略称で、直訳すると「分散型メッセージ転送プロトコル」です。DMTPの役割は、ユーザーが所有する暗号資産のウォレットベースでコミュニケーションを可能にするというもので、Web2時代のメッセージサービスを利用したり、複数のメッセージサービスをアカウント別に管理・運用したりする必要がなくなることが期待されます。
ウォレットを持つユーザー同士がコミュニケーションをとることはもちろん、分散型アプリ(Dapp)がユーザーへ通知やメッセージを個別に送信する際に活用することが可能です。
ブロックチェーンサービスを利用するに当たって、現在はWeb2時代のメッセージサービスやメールなどのアプリケーションを使うことも珍しくありません。DMTPの方式が確立されれば、Web2時代のサービスを持ち出すことなく、Web3上でコミュニケーションを完結することができるでしょう。
Web2時代におけるメッセージサービスの課題
Web3特化のメッセージングプロトコルであるDMTPが登場した背景には、Web2時代におけるコミュニケーションの課題を解決することが挙げられます。
Web2時代のメッセージサービス利用のあり方が抱えていた課題としては、複数のコミュニケーションツールをユーザーは使い分ける必要があったことです。メールアドレスを使ったメールのやり取り、TwitterやInstagramのDM、LINEやFaceboookのメッセンジャー機能など、私たちは複数のアカウントを一人で別々に使い分けていることも珍しくありません。ビジネスアカウントを持っているなどであれば、さらに倍のアカウントを運営していることもあるでしょう。
メールサービスの場合、各サービス事業者が共通のプロトコルを採用していたことから、プロバイダが違うユーザー同士でも自由にメールのやり取りを行うことはできました。しかしTwitterやInstagramといったSNSの場合、各社は独自のプロトコルを採用しているため、サービスをまたいでの運用はできませんでした。
従来のメッセージサービスとDMTPの違い
このような事態を解消するべく登場したのが、DMTPです。DMTPは暗号資産を保有するユーザーのウォレットアドレスに紐づいて動かすことができるメッセージングプロトコルで、ウォレットアドレスを持っているユーザー同士であれば、どんなメッセージアプリを使っていてもコミュニケーションを直接取ることができます。
DMTPはあくまでプロトコルであり、ユーザーが実際に使用することになるメッセージサービスは別のパートナー企業などが開発します。しかしどのサービスを使っても、ウォレットアドレスさえあればお互いに繋がり合えるというのは、Web2時代には実現し得なかった技術と言えるでしょう。
あれこれとユーザーに合わせてコミュニケーションアプリを切り替える必要がなくなり、自分の好きなツールでコミュニケーションを楽しむことができます。
DMTPを支える技術
DMTPを運用するに当たって、その機能性やユーザビリティを高める上で活躍が期待されるのが、以下の2つの技術です。
Communication to Earn
一つは、Communication to Earnと呼ばれる仕組みです。コミュニケーションそのものがユーザーにトークンをもたらしたり、相互フォロー外にあるユーザーとのコミュニケーションに課金をするといった料金体系を設けたりすることを予定しています。
ブロックチェーンを活用したサービスには、サービスの利用そのものがトークンをもたらす仕組みを採用しているケースが多く見られます。
現状、Communication to Earnを採用しているサービスの例は極めて少なく、代表的な成功事例などはありません。しかし、DMTPを導入しているメッセージングアプリにも、今後、ユーザーとコミュニケーションを取れば取るほど多くのトークンを獲得するようなサービスモデルが確立されていくと期待されています。
Chat Sticker NFT
Chat Sticker NFTは、いわばメッセージングアプリにおけるスタンプ機能をNFT化したものです。NFTを保有することで、チャット上でそのスタンプを利用することができ、テキストベースの淡白なコミュニケーションを華やかにしてくれます。
DMTPではすでにChat Sticker NFTの仕組みを本格的に採用しており、2022年10月には日本最大規模のNFTコミュニティを有するVeryLongAnimalsの配布キャンペーンも行うなど、本格運用に向けた取り組みが進んでいます。
どれだけウォレットベースにコミュニケーションができても、その表現に限界がある場合、どうしてもユーザーに「飽き」をもたらしてしまいます。LINEやFacebookで採用されているスタンプ機能をWeb3でも導入することにより、Web2時代のコミュニケーションノウハウを継承することができるでしょう。
DMTPが可能にすること
DMTPが広く普及することで、具体的にどのようなことが可能になるのでしょうか。Web3領域はまだまだ発展途上であるため、今後どのようなアプリが出てくるかにもよりますが、すぐに想像できるのは円滑なNFTや暗号通貨の取引です。
暗号通貨のウォレットに紐づけられた、ユーザー情報が確固たるアカウントを通じてコミュニケーションができるため、信頼性の高い取引を行うことができたり、迅速なやり取りが可能になります。
あるいは、ブロックチェーンを使ったゲーミングにも良い影響をもたらすでしょう。ゲームとコミュニケーションは切っても切れない縁で結ばれていますが、ゲーム内チャットをDMTPで行うことにより、他のWeb2サービスを利用する手間が省けます。
現在、ゲーマー同士のコミュニケーションやコミュニティ構築はDiscordで行われていますが、ゲームアプリとは別個に立ち上げる必要があるため、少々面倒です。DMTPであればアプリを複数立ち上げる必要がなくなるので、ゲーム内でのコミュニケーションに完結することができるでしょう。
純粋にユーザー間の交流が活性化することも、DMTPには期待されています。ウォレットを持つユーザー同士で直接会話をする機会は制限されてきましたが、DMTPのような共有プロトコルが普及すれば、Web3を通じたコミュニケーションはより広がっていくでしょう。
ゲーム特化のブロックチェーン「TCGVerse」を運営するCryptoGames株式会社は、2023年2月にDMTPとの提携を発表しました。TCGVerseでは今後、ユーザー同士のコミュニケーションはDMTPを使って自由に行えるだけでなく、運営からの連絡や通知も、DMTP上で行われるということです。
DMTPに対応するブロックチェーン
DMTPは、現状Polygonへの対応を予定しています。また、同時にEVMでの開発も進めているため、将来的にはEVMのウォレットアドレスを持つユーザーは、ブロックチェーンの種類を問わずやり取りができるようになるとのことです。
DMTPの資金調達状況
DMTPはその将来性に大きな注目が集まっており、すでに多くの投資家から資金調達を実施しています。
2022年9月時点でシードラウンドの資金調達を行い、複数のベンチャー企業やエンジェル投資家から調達を行いました。
調達した資金はプロトコル開発などの事業投資、エンジニア人材の採用に使われるということで、今後の成長が期待されています。
2024年中にTGEへ上場!?
2024年中にTGEへ上場するらしいです。そのために、BOBG PTEと提携。一方で、BOBGが手かげるトークンは、これまではBlockchain Gameのみでしたが、ジャンルが広がることが期待されています。
まとめ
この記事では、Web3のメッセージングプロトコルである「DMTP」について、その仕組みや役割、導入に伴い期待されるメリットなどについて、解説しました。
DMTPは従来のWeb2のメッセージアプリとは異なり、複数のアカウントをコミュニケーションの際に使い分ける必要がありません。ウォレットベースでユーザー間の対話が行われるため、信頼性の面でも期待が持てるのが特徴です。
DMTPはまだ開発途中の技術ですが、普及が進めばWeb3のコミュニケーション課題の多くが解決されると期待でき、より利便性の高いネット空間が形成されることにも期待が持てます。
コミュニケーションコストが問題でサービスの実現に至っていなかったような企画も、DMTPの普及で風向きが変わるかもしれません。
※参考文献
参考:Announcement of Token Listing Plan within 2024