IEO(Initial Exchange Offering)とは、暗号資産交換業者(暗号資産取引所)を介して暗号資産を発行して資金を調達する方法です。IEOでは、事業者が発行する暗号資産の販売を暗号資産交換業者に委託し、交換業者が事業者や事業内容を調査した上で、問題がなければ取引所に口座を持つ顧客に対して暗号資産を販売し、その後取引所に上場します。
IEOの特徴
IEOは暗号資産交換業者による事業者や事業内容の審査が行われるため、ICO(Initial Coin Offering)と比較して投資詐欺に遭うリスクが低くなります。
事業者は資金調達前にホワイトペーパーを発行し、予定している事業内容や計画を投資家に説明します。これにより、投資家は事業の内容を理解し、投資判断の材料とすることができます。
IEOの仕組み
IEOの仕組みを解説します。
1.事業者が暗号資産を発行
IEOは、資金を調達したい事業者が暗号資産(トークン)を発行するところから始まります。このトークンは、その事業やプロジェクトに関連するものであり、投資家にとって価値があるものとされます。
2.暗号資産交換業者との提携
事業者は、自分たちのトークンを販売するために、暗号資産交換業者(取引所)と提携します。取引所は、事業者の信頼性や事業内容を審査します。この審査には、事業の計画や技術的な詳細、チームの経歴などが含まれます。
3.ホワイトペーパーの作成と公開
事業者は、ホワイトペーパーと呼ばれる詳細な事業計画書を作成し、公開します。ホワイトペーパーには、事業の目的、計画、トークンの利用方法などが記載されています。投資家はこのホワイトペーパーを読んで、投資するかどうかを判断します。
4.トークン販売の開始
取引所での審査が完了し、問題がないと判断されると、取引所は事業者のトークンを販売するための特別なイベントを開催します。このイベントがIEOです。取引所の顧客は、取引所のプラットフォームを通じてトークンを購入できます。特定の投資家にトークンを割り当てる際、抽選が行なわれます。
5.資金調達とトークンの配布
投資家がトークンを購入することで、事業者は資金を調達します。取引所はこの過程を管理し、購入者にトークンを配布します。
6.トークンの取引所上場
IEOが終了した後、取引所はそのトークンを自分のプラットフォームで上場させます。これにより、トークンの売買が可能となり、投資家は取引所でトークンを自由に売買できます。
抽選方式について
IEOは世界中の多くの暗号資産取引所で実施されており、抽選方式は多くの取引所で採用されています。例えば、Binance、Huobi、OKExなどの主要な国際取引所もIEOを行い、人気のあるトークン販売では抽選方式を利用しています。
抽選方式を採用する理由は、人気のあるIEOに対して多くの投資家が申込みを行うため、すべての申込みに対してトークンを公平に割り当てる必要があるからです。公平性を確保するための手段として抽選方式が採られています。
抽選の手続きについて
抽選の手続きは一般的には以下のような流れになります。
1.申込み期間:トークン販売の申込み期間が設けられます。この期間中に投資家は申込みを行います。
2.抽選:申込み期間が終了すると、取引所は抽選を実施し、トークンの割り当てを決定します。
3.結果通知:抽選結果が投資家に通知され、当選者にはトークンが割り当てられます。
4.トークン配布:当選者に対してトークンが配布されます。
IEOの抽選によるトークン割り当ては日本だけでなく、世界中の多くの取引所で採用されている一般的な方法です。抽選方式は、公平なトークン割り当てを実現するための手段として広く認識されており、各国の取引所で実施されています。
IEO(Initial Exchange Offering)の仕組みで抽選が行われるのは、主にトークン販売のプロセスにおいて特定の投資家にトークンを割り当てる際です。以下に抽選が行われる具体的な時点を説明します。
抽選のタイミング
IEOのトークン販売では、事前に募集期間が設けられます。この期間中に投資家は取引所を通じてトークンの購入申込みを行います。人気のあるIEOでは、申込み数が用意されたトークンの数を大幅に上回ることがあるため、すべての申込みに対してトークンを割り当てることができません。
申込み期間が終了すると、取引所は申込みを受け付けた投資家の中から抽選を行い、トークンの割り当てを決定します。抽選により選ばれた投資家に対して、希望した数量のトークンが割り当てられます。選ばれなかった投資家は、トークンを購入する機会を逃しますが、セカンダリーマーケットで取引することは可能です。
抽選が完了すると、取引所は選ばれた投資家に対してトークンを配布します。この段階で、投資家は自分の取引所の口座にトークンを確認することができます。
IEOの抽選は、トークン販売の申込み期間が終了した後に行われ、申込み数がトークンの供給量を上回る場合に実施されます。抽選によって選ばれた投資家にトークンが割り当てられ、配布されます。
国内の取引事業者|Coincheck
金融庁の登録交換業者に認定されている国内の取引事業者の中で、IEOを実施しているのはCoincheckのみとなっています。CoincheckでのIEO購入の流れは次の通りです。
1.Coincheckアプリをダウンロードしてアカウントを開設します。
2.口座に必要な日本円を入金(購入には申込口数分の金額+手数料が必要です)します。
3.プロジェクトを選び、抽選に申し込む
IEO購入申し込み者数が販売口数を下回った場合、まずはIEO購入申し込み者全員に1口、配布されます。その後、残りの口数は抽選になります。
IEO購入申し込み者数が販売口数を上回った場合は、IEO購入申し込み者全員を対象に抽選が行なわれます。1人が2口以上当選することはありません。
IEOとICOの違い
IEOと同じような暗号資産による資金調達の仕組みにICO(Initial Coin Offering)があります。ここではそれぞれの特徴から違いを解説します。
【販売のプラットフォーム】
IEO:暗号資産取引所を通じて行われます。取引所がトークンの販売を管理し、購入者も取引所のプラットフォームを利用します。
ICO:事業者自身のウェブサイトや専用のプラットフォームを通じて行われます。事業者が直接トークンを販売し、購入者は事業者のサイトで購入手続きを行います。
【審査と信頼性】
IEO:取引所が事業者やそのプロジェクトを審査します。取引所の審査を通過したプロジェクトのみがIEOを行うため、投資家にとっては信頼性が高く、詐欺リスクが低くなります。
ICO:事業者自身がトークンを販売するため、第三者による審査は行われません。このため、信頼性は事業者自身の信用に依存し、詐欺のリスクが高くなります。
【マーケティングと顧客基盤】
IEO:取引所の既存の顧客基盤を利用できるため、事業者は新たに投資家を探す必要がありません。取引所が持つ広範なユーザーベースにアクセスできるため、マーケティングコストが削減されます。
ICO:事業者自身が投資家を見つける必要があります。新たに投資家を集めるためのマーケティングやプロモーション活動が必要で、そのコストも事業者が負担します。
【トークンの上場】
IEO:トークン販売が完了した後、取引所はトークンを自社の取引プラットフォームに上場させます。これにより、購入者はすぐにトークンを取引することができます。
ICO:トークンが販売された後、事業者は取引所にトークンの上場を申請しなければなりません。上場が承認されるまで時間がかかることがあり、すぐに取引ができない場合があります。
IEOは暗号資産取引所を介して行われ、取引所による審査があるため信頼性が高く、取引所の既存顧客を利用できるためマーケティングコストが低くなります。一方、ICOは事業者自身が直接トークンを販売し、第三者による審査がないためリスクが高く、新たに投資家を見つける必要がありマーケティングコストが高くなります。
IEOはICOに比べて信頼性が高く、効率的な資金調達方法として注目されています。日本では、2021年7月に国内初のIEOが行われました。このように、IEOはICOと比較してより安全性が高く、効率的な資金調達方法とされています。
IEOのメリット
IEOは、暗号資産取引所を介して行われる資金調達方法で、事業者と投資家双方に多くのメリットがあります。事業者は取引所の顧客基盤を活用でき、投資家は取引所の審査を経た信頼性の高いプロジェクトに投資することができます。
【投資家にとってのメリット】
1.取引所による審査が行われるため、ICOと比較して詐欺リスクが低くなります。
2.取引所の既存のプラットフォームを利用できるため、簡単にトークンを購入できます。
【事業者にとってのメリット】
1.取引所の顧客基盤を利用できるため、新たに投資家を見つけるコストが削減されます。
2.取引所の審査を通過したことが信頼性の証明となり、投資家にとって安心感を与えます。
国内最初のIEO成功事例|パレットトークン(PLT)/ Coincheck
国内で初めて登場したNFT(非代替性トークン)特化型ブロックチェーン「パレットトークン(PLT)」のケースでは、需要が供給を大幅に超え、上場初日から非常に活発な取引が見られました。上場3日目には、公募価格の4.05円から20倍以上の94円台まで急騰しました。
パレットトークン(PLT)は、マンガ、アニメ、スポーツ、音楽といったエンターテイメントコンテンツのNFT流通を目的としたパレットプラットフォーム内で幅広い用途に使用されるユーティリティ・トークンです。クロスチェーン技術や独自のエコシステムにより、柔軟性と効率性を兼ね備えた安全なNFT市場を提供しています。
IEOは株式市場のIPOと似ており、「抽選倍率」や「申込上限に達するまでの期間」が人気のバロメーターとなります。公募価格は新しいプロジェクトへの関心を高め、早期の投資を促進するために魅力的に設定されており、上場後の初値が公募価格を大きく上回る事例も多く見られます。
2023年以降、金融庁の規制緩和により、日本国内でもIEOの展開が活発化し、資金調達を目指す事業者や短期間で利益を上げたい個人投資家にとってチャンスが増えました。
ホワイトリスト
ホワイトリストとは、改正資金決済法に従って金融庁の登録を受けた『暗号資産交換業者』(国内取引所)で取り扱っている暗号資産のことを指します。BTC(ビットコイン)、BTC(ビットコイン)など数十種類の通貨がホワイトリストに掲載されています。IEOやICOを行う際にホワイトリストに掲載されいているもので調達を行うのか、それ以外で行うのかによって調達方法が大幅に変わってきます。
※参考文献
https://kabutan.jp/hikaku/cc-what-is-ieo/
https://lp-ieo.coincheck.com/
https://coinpost.jp/?p=274438