暗号資産の運用は、日本を含め世界中でトレンドとなっている新しい金融資産のあり方です。まだ新規性が高く、一般には定着していない暗号資産ですが、これから社会に暗号資産が普及していくと、それに伴うリスクの到来も予想されます。
代表的なトラブルの例が、暗号資産の救出(サルベージ)です。この記事では、暗号資産の救出とはそもそも何かについて解説しながら、暗号資産救出サービスの登場や、暗号資産救出の具体的な流れなどについて、解説します。
暗号資産の救出(サルベージ)とは
そもそも暗号資産の救出とは、暗号資産保有者が死亡するなどして、死亡者の家族や相続者が暗号資産を引き継ぐ上で必要になる場合がある手続きです。
暗号資産は、暗号資産を有している人にしかわからない秘密鍵で管理されており、秘密鍵を共有しない限りは本人にしか暗号資産を取引することはできません。すでに家族やパートナーに暗号資産の秘密鍵を共有している場合、万が一保有者が死亡しても暗号資産の取引は別の人物が継続することができますが、そうでない場合は暗号資産の取引が不可能になる可能性があります。
このような事態に遭遇した際、必要となるのが暗号資産の救出です。暗号資産の秘密鍵の取得や、暗号資産そのものを何らかの方法で換金することにより、金融資産として相続できる状態に移行しなければなりません。
暗号資産救出サービスの概要
暗号資産の救出は、個人で行うのには限界があります。そこで登場したのが、暗号資産の救出サービスです。
暗号資産救出サービスは、その名の通り暗号資産の救出を手助けするサポートサービスを指します。暗号資産の救出に伴う手数料が発生しますが、現状では手付かずの状態にあった暗号資産を再度復旧したり、存在を認知していなかった暗号資産の発掘が実現することもあるため、資産の把握や取得において非常に有効です。
暗号資産は手元にないものの、暗号資産の存在をほのめかされたことがあるなどの場合、一度調査してみるという名目で、暗号資産救出サービスを利用するというケースも考えられます。
暗号資産救出サービス登場の背景
暗号資産救出サービスは、ここ数年で登場した新しいサービス形態の一つと言えます。このようなサービスが登場した背景としては、暗号資産の取引額が増大しており、日本でも暗号資産取引に携わる人が増えていることが理由に挙げられます。
2021年度に行われた調査によると、日本における暗号資産の残高額は合計でおよそ1.8兆円、口座数は312万口座にのぼると言われています。この数字は現在も増加傾向にあり、今後も増えていくことを踏まえると、暗号資産関連のトラブルも増加することが想定されます。
また、暗号資産取引から生まれた利益については、他の金融資産同様課税対象です。暗号資産を経由した所得金額が確定申告の際に含まれていない場合、脱税とみなされ無申告加算税が発生するケースもあります。
暗号資産の本来の保有者が死亡した場合、自動的にその保有者の権利は相続者に引き継がれます。暗号資産を金融資産として計上するのはもちろん、相続に伴う税の支払いも発生するので、暗号資産救出サービスを活用し、正しい金額を確認しながら換金手続きを行わなければなりません。
暗号資産救出サービスの利用で得られるメリット
暗号資産を救出することで、サービス利用者はいつでも現金化ができる金融資産を手元においておくことができます。暗号資産の存在は把握しているが、すぐに取り出すことができない場合、暗号資産救出サービスを利用すれば換金が可能です。
暗号資産の救出は、自力で行う場合専門的なノウハウが必要になるため、高度な技術が必要なケースもあります。暗号資産救出サービスを活用することで、手数料さえ支払えば労力を必要とせずに暗号資産を手元に確保可能です。
また、暗号資産を具体的にどれくらい保有しているのかを暗号資産救出の過程で明らかにできるので、確定申告などの際に、金融資産の状況を正しく税務署に伝えられるようになります。不透明な保有状況で、具体的な金額を税務署に伝えられておらず不安だったという方は、暗号資産救出サービスが役に立つでしょう。
暗号資産救出の流れ
暗号資産救出サービスを利用する場合、具体的には以下の流れで手続きを進めることとなります。どのような流れになっているのか、ここで確認しておきましょう。
専門業者に依頼
暗号資産の救出は、基本的に専門の業者に依頼することが一般的です。ブロックチェーン技術を使って取引が行われている暗号資産は、一般的なWebアプリのIDやパスワードのように、簡単に復旧できるものではありません。
専門のツールを駆使して、暗号資産救出業者がその状況に応じた救出方法を提案してくれるでしょう。
暗号資産のサルベージ
専門業者への発注を終えた後は、本格的な暗号資産の救出作業が開始されます。暗号資産保有者が元々利用していたデバイスからデータを抽出するなどして、暗号資産取引に必要な秘密鍵などの情報を取得します。
暗号資産の救出は、主にデータ復旧のノウハウなどに優れている事業者がサービスの一環として手掛けているケースが見られます。基本的な救出ノウハウは、デバイスデータの復旧作業などと似ており、独自の手法で資産を抽出してもらえます。
具体的な救出方法については事業者ごとにアプローチが異なり、その方法は明かされていません。データの復旧や復元は使い方によっては犯罪行為に抵触する可能性があるため、公開されていないことが一般的です。
暗号資産の救出を任せた後は、無事に暗号資産が取り出せるようになることを期待しながら待機していましょう。
相続手続きなどの実施
無事に暗号資産を救出できた後は、そのまま自分の暗号資産口座に移したり、日本円に換金したりしたいところですが、故人の暗号資産を扱う場合には注意が必要です。
まず、救出した暗号資産を相続人に譲渡する際には、相続税が発生します。相続税や手数料の差し引き計算を行った上で、振り込み手続きを進めます。また、暗号資産の取得に当たっては、確定申告や納税の手続きも必要です。取得予定の暗号資産を日本円に換算した場合の金額を確認し、手続きを済ませましょう。
最近では相続税の手続きや、確定申告の手続きも合わせて行ってくれる暗号通貨救出サービスも登場しています。別途税理士などがいない場合は、細かな手続きも任せてしまえば便利です。
日本円に換金して振り込み
相続手続きを無事に終え、手数料の支払いも終わったら、日本円に換金して自分の口座に振り込んでもらいます。相続人が暗号資産の口座を持っていない、あるいは暗号資産取引に興味がない場合、暗号資産として保有しておくのは何かと不便が多いため、日本円に換金して銀行口座に納めてしまうのが良いでしょう。
故人の意向で何らかの指示がある場合、その通りに暗号資産も処理することが大切です。
暗号資産の救出サービス利用時のポイント
暗号資産の救出サービスを利用する場合、あらかじめ以下のポイントに注意してサービスを利用することで、余計なトラブルや出費を抑えることができるでしょう。
サービス利用時の費用をあらかじめ見積もる
暗号通貨救出サービスは、サービスによって費用が異なる場合があります。どの段階で費用が発生するかも異なる可能性があり、事前に確認が必要です。例えば暗号通貨の救出そのものに手数料が発生するのはもちろんですが、暗号通貨の有無を調査するのにも費用がかかります。
サービス利用時、最終的にどれくらいの費用がかかるのかを見積もった上で、サービス利用の可否を決めましょう。
周辺サポートの充実度や費用を確認する
暗号通貨救出サービス利用時は、周辺サポートの充実度も比較すると良いでしょう。暗号通貨の有無を調査するサービスがあるかどうか、確定申告や相続手続きのサポートが得られるかどうかなどです。
対象デバイスを確認する
基本的には全てのデバイスを対象に暗号通貨の救出は行なってもらえますが、特殊なデバイスやニッチなデバイスを使用していた場合、対応していない可能性もあります。事前に手元のデバイスから暗号資産の救出ができるかどうか、確認しておきましょう。
対象取引所や通貨を確認する
対象の取引所や暗号通貨も、サービスによって異なる場合があります。近年は暗号通貨や取引所が多様化し、場合によっては取り扱いができないというケースも考えられます。
どの種類の暗号通貨が残されているのか、どの取引所を利用していたのか、わかる範囲で事前に調べておくことで、無駄な調査費用などを支払わずに済むでしょう。
まとめ
この記事では、暗号資産救出サービスの概要や、登場の背景などについて解説しました。暗号資産は現状、若年層の保有が見られますが、高齢者層の暗号資産保有ケースもあり、今後ますます需要は高まっていくことが予想されます。
暗号資産救出サービスは手数料がかかるため、できるかぎり保有者が適切な相続手続きを進めておくのが理想ですが、そうもいかない場合もあるものです。事前に少しでも多くの暗号資産に関する情報を集めておき、迅速に暗号資産を救出できるよう、備えておきましょう。