2024年最新解説:日本銀行のマイナス金利政策と日本経済への影響

2024年最新解説:日本銀行のマイナス金利政策と日本経済への影響

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日本銀行による金融政策は、国内外の投資家から高い関心を集めるだけでなく、企業経営者や消費者の経済活動にも深く影響を及ぼします。そのため、日銀の政策の動向を的確に理解し、読み解く能力を身につけることは、ビジネスパーソンにとって重要です。

本記事では、日本銀行の基本的な役割と、その金融政策の目的と概要を解説します。さらに、日本銀行の金融政策や政策金利の将来的な展望についても、現在の経済情勢を踏まえながら考察します。

日本銀行の機能と役割

日銀の外観

日本銀行は、日本の中央銀行として国の経済を支える重要な役割を担っています。その主な機能は、次の3点に集約されます:

  • 日本銀行券(紙幣)の発行
  • 物価の安定の維持
  • 金融システムの安定化

最も目に見える業務は、日本銀行券の発行です。これは日本銀行だけに許された特権であり、紙幣の発行量が国内の物価に直接影響を与えるため、重大な責任を伴います。

日本銀行は、金融機関に資金を供給することで国内金融システムの円滑な運営を支援しています。これにより、他の銀行にとっての「銀行の役割」を果たすとともに、政府の財政を管理する「政府の銀行」としての役割も担っています。このようにして、日本銀行は日本の中央銀行としての重要な位置を占めています。

しかし、一般の消費者や事業者に直接的なサービスを提供することは少なく、その取引相手は主に政府や他の金融機関に限られています。

日本銀行:金融政策とはそもそも何か

金融の様々なグラフ

金融政策とは、基本的に日本銀行が物価の安定や経済成長を促進するために実施する一連の政策です。これは、日本銀行が担う主要な役割の一環として位置づけられています。

例として、国内の景気が低迷し物価が下落する場合、日本銀行は市場に流通するお金の量を増やし、金利を引き下げることで企業の資金調達を容易にし、経済活動を刺激します。これは、経済成長を促すための対策として行われます。

反対に、景気が過熱し物価が急上昇する時には、日本銀行は流通するお金の量を制限し、金利を上昇させることで経済活動のペースを落ち着かせ、物価の安定を目指します。このようにして、金融政策は経済の安定と成長を目指す重要な手段となっています。

日本銀行:金融政策の目的

交差点を歩く人々

金融政策の主要な目的は、国民が安心して資金を使い、投資できるような市場環境を作り出すことです。

日本銀行の役割を考慮すると、市場の経済活動が過熱している際には、これを抑制する政策を実施する責任があります。表面的には市場にとって不利な措置に見えるかもしれませんが、この目的は物価の安定を保ち、経済活動を適度なペースで維持することにあります。

市場の自由な経済活動は資本主義の基盤ですが、過度な活動は物価の極端な変動を引き起こし、消費者の安心した消費活動を妨げる可能性があります。

このような不安定な市場が形成されないよう、日本銀行は市場のバランスを取る役割を果たし、金融政策を通じてこのバランスを調整することが求められています。

主な日銀の金融政策

木のブロックに下向きの赤い矢印と%と上向きの緑色の矢印

日本銀行が金融政策を行う際には、状況に応じて以下のような多様な政策手段を適切に選択し使用しています。

公開市場調査

公開市場操作(オペレーション)は、日本銀行が現在最も頻繁に用いる金融政策の一つで、金利の調整において中心的な役割を果たしています。この政策は、日銀と市中銀行間で国債の売買を行うことにより、市場における現金流通量を調整する比較的シンプルな方法です。

日銀が国債を購入することは「資金供給オペレーション」と呼ばれ、これによって市場に流通するお金の量が増加し、金利の低下を促進します。反対に、日銀が国債を市中銀行に売却する場合は「資金吸収オペレーション」と呼ばれ、これにより市場に流通するお金の量が減少し、金利の上昇をもたらすことになります。

公定歩合操作

公定歩合操作は、公開市場操作が主流となる前、日本銀行の主要な金融政策の一つでした。これは、日本銀行が市中銀行に対して資金を貸し出す際の基準金利、すなわち公定歩合を状況に応じて調整することで、市場全体の金利水準に影響を及ぼす政策です。

例えば、公定歩合が下がると市中銀行はより低い金利で資金を借りられるようになり、これによって一般的な政策金利も下がる仕組みとなっています。反対に、公定歩合が上がると市中の金利も上昇することになります。

預金準備率操作

預金準備率操作は、日本銀行が市中銀行の資金量を調整するために預金準備率を変更することで、間接的に金利をコントロールする金融政策です。

預金準備率とは、金融機関が保有する預金残高の一定割合を日本銀行に預けることを義務づける準備預金制度に基づくものです。預金準備率が高ければ、日本銀行にはより多くの現金が集中し、市中銀行の利用可能な資金は減少します。逆に預金準備率が低ければ、市中銀行の利用可能な資金は増加します。

したがって、市中銀行が日本銀行に多くの資金を預ける必要があると、企業への貸出資金が少なくなり金利が上昇します。一方で、預けるべき資金が少なくなると、貸出資金が増え、金利を下げやすくなります。

現状解説:日銀のマイナス金利政策とその実施

ビジネスマンが-%を一生懸命引き上げようとしているイラスト

現在、日本銀行は金融政策の一環としてマイナス金利政策を採用しています。マイナス金利とは、市中銀行が日本銀行に預ける預金の金利がマイナスになる、つまり預けるほど日銀に対して費用が発生するという政策です。

通常、金利はプラスであることが普通で、銀行にお金を預けると利息を得ることができます。しかし、日本銀行は経済活動の活性化を目指し、マイナス金利を導入しています。この政策は、市中銀行が日本銀行に多額の資金を預けるのを抑制し、それらの資金を市場に流通させることで経済成長を促進することを意図しています。

マイナス金利の目的

マイナス金利政策が日本経済にプラスの影響を及ぼす理由は、市中銀行が過剰な資金を保有することを抑制し、市場に資金を流通させることを促すためです。

簡単に言えば、マイナス金利政策は市中銀行が日本銀行に資金を預けるほど損失を被るようにする政策です。この政策により、市中銀行は日本銀行に資金を預けることを避け、代わりに低金利で事業者に貸し出すことを選択するようになります。これにより、市場にお金が流れ、経済活動が促進されることが期待されます。

マイナス金利の課題

マイナス金利は、市中銀行に対して日本銀行への預金による損失をもたらし、その結果、市中の金利を下げて経済活動を促進する役割を果たします。しかし、この政策の実行にはいくつかの懸念点があります。

最大の問題点は、マイナス金利政策が銀行の収益性を低下させ、経済活動の仲介機能を損なう可能性があることです。実際に、マイナス金利導入後、いくつかの金融機関で金融商品の取り扱いが終了するなど、金融取引の消極化が見られました。これは市場における不安を増加させる要因となります。

さらに、銀行の収益性が低下すると、家計にも悪影響が及ぶ可能性があります。預金から得られる利息が減少することはもちろん、最悪の場合、消費者の預金口座にもマイナス金利が適用される可能性があるのです。

これらの問題はまだ完全には実現していませんが、一度マイナス金利を導入すると元の金利水準に戻すことが困難であるという点も指摘されています。このため、マイナス金利が経済に与える潜在的なリスクについては、常に注意を払う必要があります。

世界各国の政策金利の現況

黒い背景にブルーのネットワークで描かれた地球

ここで、2023年時点の世界各国の政策金利の状況について見てみましょう。

日本の政策金利に関しては、前述の通り、年率-0.10%のマイナス金利が設定されています。これは、日本銀行が採用している特異な金融政策の一環です。

他方で、世界の主要経済国の状況を見ると、アメリカは年率5.25%から5.50%の間で政策金利が設定されています。この水準は、EU諸国、イギリス、オーストラリアなど他の多くの国々においても類似しており、これらの国々ではより高い政策金利が見られます。この違いは、各国の経済状況や金融政策の方針に基づいています。

2022年時点で、多くの国々の政策金利が0%台だったことを踏まえると、現在の傾向は全体的に金利の上昇に移行していると言えます。

国内外において、2024年に日本がマイナス金利政策を継続するのか、またはいつこの政策から脱却するのかは、大きな注目を集めています。日本経済の今後の動向とともに、日本銀行の金融政策の変化にも目が向けられている状況です。

(参考:SBI新生銀行「2024年以降の住宅ローン金利はどうなる?低金利時代が終焉する場合の対策も解説」)

2024年の展望:日銀金融政策の予測

セピア調の画面にビジネスマンが手をかざし2024の文字が浮かぶ

2024年における日本銀行の金融政策の見通しはどのようなものでしょうか。NRI総研の報告によれば、日本銀行は現在の金利政策に対して消極的な立場を取っているようです。これは、マイナス金利政策の解除がすぐには行われない可能性が高いことを示しています。

市場では、米国の連邦準備制度理事会(FRB)が近い将来に利下げを行うと予想されており、これを踏まえると、日銀が同時にマイナス金利を解除することはあまり考えられないと見られています。

また、ドル高円安の傾向が終わりを迎え、2024年にはドル安円高がトレンドになると予想されています。これを考慮すると、日本銀行によるマイナス金利政策の解除はさらに遅れると見込まれており、今年中の解除の可能性は低いという見方が強まっています。

参考:NRI「2年連続の年末日銀ショック|2023年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight」

結論:日本銀行の金融政策と日本経済の展望

青い空と高層ビル群

本記事では、日本銀行の役割、金融政策の意義、およびマイナス金利と日本経済との関連について概説しました。

2024年においても、当面はマイナス金利政策が継続される見込みですが、ドル安円高へのトレンド変化が進んでいることから、日本経済の改善も期待されています。景気回復が確認されれば、将来的にマイナス金利政策の解除が検討される可能性があります。

しかし、マイナス金利の解除に関しては、日本銀行が非常に慎重な姿勢を取っている点を念頭に置く必要があります。

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