新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中の企業で成長に歯止めがかかっている状況が続いています。中でも資本力が大企業に比べて劣る、中小企業にはコロナ禍を乗り越えることができず、倒産に至っているケースもあります。
コロナ禍の影響は2021年度以降、小さくなりつつはありますが、まだまだ感染爆発のリスクが残されていたり、人や社会のあり方が変容したことによって、ビジネスモデルの大幅な転換が求められている企業は決してすくなくありません。
今回は、そんな未曾有のリスクにも対処できる地盤があり、柔軟なビジネスの継続が可能な体制が整っているかどうかを診断する経営診断ツールについて、ご紹介します。
経営診断ツールの概要
経営診断ツールとは、その名の通り自社の経営状況を大まかに把握するための自己診断ツールです。経済産業省は企業の経営状況の把握を客観的に行えるよう、具体性のあるベンチマークツールの運用を推奨しています。
事業の種類や従業員の数、最新の決算書などの情報や、いくつかの質問事項を記入するだけで、自社の経営状況を客観的に評価してもらうことができるだけでなく、どのような箇所に課題があるのかを指摘してもらうことのできるツールです。
経営診断ツールによって現れた情報だけが全てではありませんが、自社の経営状況は客観的に見てどんな評価なのか、どんな改善点を抱えているのか、ということを把握できます。
なんとなく状況が芳しくないのはわかるが、何をすれば良いのかがわからないと悩んでいる方にも、ぜひ一度体験してほしいツールです。
なぜ経営診断ツールが必要なのか
経営診断ツールは手軽に行える診断サービスですが、手軽に行えるからといって意味がない取り組みというわけではありません。自社の状況についてスピーディに把握できる経営診断ツールを利用することで、以下のような取り組みに繋げていくことが可能となります。
競合との比較が容易に行える
1つ目の理由は、競合との比較です。自社が入力した企業情報は、経営診断ツールに登録されている数百万の中小企業データと照会、比較することで、自社の立ち入りを明らかにすることができます。
自社で用意することは難しい、日本全国の財務データが揃っているデータベースを無料で利用できるので、自社が他社と比較してどれくらいの規模で成長できているのか、どれくらい遅れをとってしまっているのか、ということを客観的に把握できます。
また、単純な競合との「勝ち負け」がわかりやすく表示されるだけでなく、どこの、どんな分野で劣っているのか、あるいはリードしているのか、ということも数値化してもらうことができます。他の会社と比較して、どんな強みが自社にとっての武器になり得るのか、あるいはどんなところにリスクを抱えているのか、ということを冷静に判断できます。
IT導入補助金利用の目安になる
経営診断ツールは、政府が実施しているIT導入補助金の適用条件としても採択されたことのある、重要な指標を提示してくれるサービスです。
IT導入補助金制度の2021年度の要項を見てみると、経営診断ツールの利用は条件として書かれてはいないものの、以前は診断ツールの利用が必須とされていました。行政が申請企業の経営状況を把握するとともに、申請企業も自社の課題を把握し、適切なソリューションを選ぶのに一役買っていたためです。
参考:https://www.it-hojo.jp/applicant/subsidized-works.html
近年は新型コロナウイルスの影響もあってか、IT導入補助金の利用にあたっては経営診断ツールを実施しなくとも、別の要件を満たすことで補助金の申請が可能です。ですが、あらかじめ経営診断ツールを利用しておくことで、適切な課題発見と、ソリューションの検討が行えるため、補助金を無駄にしてしまわないためにも一度は実施しておくべきツールと言えます。
将来的な事業計画の策定に役立てる
経営診断ツールの結果から、将来的な事業計画の策定を正確に行えるようになるのもメリットの一つです。課題を適切に把握し、どんな事業で強みを発揮できるのか、課題を克服することで、どんなビジネスを展開できるのか、ということを予想できるためです。
30分もあれば結果を閲覧できる経営診断ツールですので、新たな事業の動きを発展させていく前に、一度実施しておいて損はない機会と言えるでしょう。
おすすめの経営診断ツール
経営診断ツールとは一言で言っても、多様なツールが複数の組織から提供されています。自社の経営状況を把握するのに役立つおすすめの経営診断ツールについて、ご紹介します。
IT導入補助金 経営診断ツール
こちらは、IT導入補助金の申請に経営診断ツールの利用が必要だった際に構築された、独自の経営診断ツールです。2018年にリリースされたツールで、基本的な事項を案内の通りに入力していくことで、経営状況を診断してもらうことができます。
最もベーシックなツールであるため、すでに使ったことがあるという人もいるかと思います。当時の経営状況と比較する意味も含めて、再度こちらの診断ツールで診断を行ってみるのも良いでしょう。
公式サイト:https://portal.it-hojo.jp/shindan/register
独立行政法人中小企業基盤整備機構 経営自己診断システム
こちらは、独立行政法人である中小企業基盤整備機構が提供している、自動車製造業向けの経営自己診断ツールです。
決算書の財務データを入力するだけで、自動車整備業界内におけるユーザー各財務指標値の優劣を点検することができるほか、収益性、効率性、生産性、安全性、成長性の5つの要素から経営状態を把握することが可能です。
約2万社の自動車整備業の財務データと比較できるので、自動車整備業界の中での自社の立ち位置を瞬時に把握したい方には、嬉しいサービスです。利用に当たっては、登録や料金は必要ないため、公式サイトから瞬時に利用可能です。
結果を出力する際には、経営危険度診断を行い「安全ゾーン」「警戒ゾーン」「危険ゾーン」の3段階で表示してくれます。直感的に自社の立ち位置を理解できるので、初めて経営診断ツールを使うという人にも優しいサービスです。
公式サイト:https://www.jaspa.or.jp/member/introduction/k_shindan.html
中小機構 経営自己診断システム
中小機構が提供している経営自己診断システムは、決算書の財務情報から強みや課題を多角的に把握することのできる、優れた経営分析ツールです。中小企業金融の円滑化を図る目的で開発された中小企業信用リスク情報データベースに掲載されている、200万社以上の中小企業情報と比較することで、財務状況を相対的に把握できます。
簡単な操作で、自己診断にかけることができるだけでなく、分析結果の用語解説もあり、専門知識がなくても経営分析ができます。あまり経営管理について明るくないという方も、積極的に利用できるシステムです。
公式サイト:https://k-sindan.smrj.go.jp/about
経営状況の改善に向けたポイント
経営診断ツールを使って、自社の課題点を把握できるところまでは良いのですが、そこから自社の課題をどう解決しても良いのか、見当をつけるのが難しいという方も少なくありません。最後に、経営状況の改善につながる主要なポイントについて、ご紹介します。
時代に合わせたダイバーシティ経営を実現する
1つ目のポイントは、ダイバーシティ経営の実現です。経済産業省では、中小企業が更なる活躍の機会をものにできるよう、多様な人材の起用を促すダイバーシティ経営を推奨しています。
ダイバーシティ経営実践のための基準を設けたワークシート内では、多方面から経営改善を進められるよう、豊富なチェック項目が設けられています。
経営者の取り組み、人事管理制度の改革、現場管理職の在り方、組織風土、成果の考え方に至るまで、あらゆる項目が網羅されているため、このワークシートを目安に組織改革を進めていくことをおすすめします。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/turusimenban.pdf
補助金を活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する
2つ目のポイントは、補助金を活用したDXの推進です。業務をデジタル化するだけでなく、積極的なデータ活用によって、客観性と確実性に優れる意思決定を実現するDXは、日本企業に不可欠な取り組みとして大いに注目されています。
人材不足の解消や、新しい市場の開拓、そして働き方改革の改善に至るまで、あらゆる経営課題の解決につながっている取り組みであるため、実現に動かない手はないでしょう。
近年はIT導入補助金をはじめ、DXを推進する補助金施策も次々と展開されています。DXコンサルタントなどの専門家のサポートを得ながら、適切なDXに向けた施策を実施していきましょう。
まとめ
経営診断ツールは、自社の経営状況を大まかに把握できるだけでなく、他社と比較したり、客観的に経営課題を把握する上で非常に有効なツールです。
自社の課題を把握するとともに、どんな強みを生かして市場で存在感を発揮すれば良いかの指標にもなるため、一度取り組んでみることをおすすめします。