商店街の活性化に必要な視点とは?注目の事例をご紹介

商店街の活性化に必要な視点とは?注目の事例をご紹介

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昭和の日本を支えてきた全国の商店街では、人口の流出や消費動向の急速な変化に伴い、著しい衰退が進んでいます。シャッター街と化した各地の商店街では、そのまま消滅の一途を辿るところもあれば、再起に向けて積極的にアクションを起こしているところもあります。

再び商店街に人を呼び戻す場合、どのような課題設定と解決策が求められるのでしょうか。今回は、商店街の活性化に必要な視点や、近年の商店街活性化に向けた事例について、ご紹介します。

なぜ商店街は今も必要とされているのか?

スーパーマーケットやデパートが登場し、商店街の必要性は徐々に薄れていくこととなりました。近年ではインターネット、そしてECサイトの台頭によって、商店街の存在意義がますます危ぶまれるようになってきています。

しかしそんな中でも、商店街はまだまだ日本に求められていると考えている人は、少なくありません。公益財団法人世田谷区産業振興公社で理事長を勤める近藤賢二氏は、日本人特有の「多品種小量買い」のライフスタイルを踏まえると、商店街の存在意義は大きいとしています。

「多品種小量買い」は、その文字の通り多くの種類の品を買う代わりに、一人当たりで購入する商品のボリュームそのものは、少ないという購買傾向を指しています。

アメリカのような欧米社会では、日々の食料品購入は週に一度、大型のスーパーマーケットでまとめて購入することが一般的です。というのも、毎日通える場所にスーパーがあるケースは珍しく、車で遠出しなければ買い物ができないためです。

一方で、日本では全国の至る所に商店街が設置され、徒歩圏内で生活に必要なものを全て揃えることができます。そのため、一度に購入する量は少なくとも、毎日買い出しができるため、差し支えはありません。

また、商店街では、コンビニエンスストアやチェーンのスーパーマーケットとは異なり、お店ごとに、その商品のスペシャリストであるオーナーとコミュニケーションが取れる機会にも恵まれています。おすすめの商品の紹介はもちろん、見たことのない魚を美味しく食べる方法まで、買い物を一つの体験として有意義に過ごせる機会を提供してくれるわけです。

日本特有の商店街文化は海外からの注目度も高く、コロナ禍以前は海外からの観光客からも評判の良いアクティビティとして、商店街散策が行われていました。

近隣住民の日々の生活を支えるプラットフォームとして、国内外から観光客を集める観光資源として、商店街は大きなポテンシャルを秘めています。

商店街の活性化に必要な視点

上記のような商店街の魅力や強みを最大限発揮するためには、いくつかの要点に絞って解決策を検討していく必要があります。商店街の活性化に必要な視点として、以下の4点が注目されています。

個店としての魅力の見直し

1つ目は、商店街における各店舗の魅力の見直しです。機能性や利便性を考えた場合、日本では全国に出店されているチェーン系のコンビニやスーパーマーケットに勝つのは難しく、これらの施設が持つ流通網や安定したサービスを個人で上回ることは困難です。

商店街の魅力は、キャラクターのある個人店舗が寄り合いながらプラットフォームを形成し、それが集客につながっている点です。各店舗での経営方針の見直しや、売上改善に向けた新しい施策の投入、プロモーションの展開を推進することで、魅力的なお店が集まる、活発な商店街へと生まれ変われます。

DXの推進

2つ目はデジタルトランスフォーメーション、いわゆるDX策の推進です。テクノロジーの進歩は急速に加速しており、多くの企業や事業者がその対応に追われています。

商店街で小売業を営む事業者にとって、注目すべき主なテクノロジーとしては、キャッシュレス決済が挙げられます。消費者は現金を用意する必要がなくなりますし、買い物の際の負担を軽減できるため、非常に利便性が高い技術として大いに受け入れられています。

事業者にとっても釣り銭の用意の必要がなく、現金を店先に置いておくセキュリティリスクを回避できるため、高齢化が進む商店街や地方都市でも導入効果は非常に大きくなることが期待できます。

DXの推進を妨げているのが、手続きの複雑さや、そもそもどのように運用すれば良いのかわからないという、知識の共有がうまく行われていない点です。DX推進のハードルをうまく引き下げることで、一気に商店街のハイテク化が進みます。

あるいはAIやIoTといった技術を活用し、ビッグデータ活用を商店街レベルで進め、更なる集客や地方創生につながる解決策の実現にも動くことができるでしょう(*1)。

*1(補足):一方で、現状では商店街全体での高度なDX化ということよりも、商店街内の個別店舗におけるインターネットの高速化やWifiの導入などインフラ面からの地道なDX化が進められているケースが多そうです。詳しくはこちらの記事「【プロに聞く】商店街と中小企業のDX化、その現状と課題とは?武蔵野市等の街づくり・活性化のプロに聞きました!」も参考にしてください。

コロナ禍を乗り越えるための解決策

3つ目のポイントは、新型コロナウイルスへの対応です。2019年まではインバウンド観光客の増加も相まって、日本各地の商店街が観光資源として大いに集客効果を発揮していました。

しかし今日では、海外からの観光客はほぼゼロとなり、日本国内の観光客の活動も以前に比べると鈍化しています。観光資源以外の意味を商店街に付与しなければ、強力な持続可能性は見込めないでしょう。

後継者の育成

4つ目のポイントは、後継者の育成です。全国の商店街が衰退の一途を辿っている大きな理由として、少子高齢化によって人口が減少し、地域の産業に従事する人が減っていること、そして多くの若者が都会に流れ、地域に根付いた生活を選ぶ次世代人材が減少していることにあります。

どれだけ現世代の人間が力を入れて商店街の活性化に力を入れても、その商店街の活気を引き継いでくれる人がいなければ、地域のプラットフォームとしての役割を果たすことができません。

地方創生の一環として商店街活性化をプロジェクトに据え、後継者の育成や、後継者となり得る人材の移住をサポートしたり、積極的に人口の多い地域とのコミュニケーションがとれたりする環境づくりが必要です。

商店街の活性化で目指すべきゴールとは

上記のような要点を踏まえ、商店街の活性化によって、どのようなゴールを目指せば良いのでしょうか。具体的な目標は各商店街の課題にもよりますが、大まかには以下の2つのゴールが理想的と言えるでしょう。

SDGsの実現

1つ目のゴールは、SDGsの実現です。持続可能な社会づくりに貢献できる組織づくりは、世界中の先進企業が取り組んでいる最先端のコンセプトとも言えますが、これは商店街の活性化にも同じことが言えます。

商店街の活性化による持続可能な地域づくりは、日本の地方創生や人口分散、そして今後到来する、超高齢化社会に向けたソリューションとしても注目されています。地産地消でローカルな経済圏の確立、そして地域の人がコミュニケーションを取れる場づくりを進めていくことで、お互いに支え合えるコミュニティづくりを推進可能です。

行政や観光資源へ過度に依存しない、次世代の地域活性化を実現できるでしょう。

テクノロジーと「温もり」の融合

2つ目のゴールは、DXの導入に伴うテクノロジーと「温もり」の融合です。ただテクノロジーを導入するだけでは全国にありふれたコンビニなどと変わりがなく、無人レジなどは便利ではあるものの、商店街の魅力であるコミュニケーションを喪失してしまうリスクをはらみます。

商店街の活性化を見据えたDX推進においては、あくまで商店街の強みである人が交差するコミュニティとしての価値をそのままに、余計な部分の業務を効率化したり、集客につながるようなテクノロジーの活用を進めることが大切です。

近年の商店街活性化事例

最後に、ここ数年で商店街の活性化に努めている全国の事例について見ておきましょう。どのようなアプローチで活性化を図っているかについては、各地で大きく異なります。

旗ヶ岡商店会

東京都品川区にある旗ヶ岡商店会は、NTT東日本の地域応援プロジェクトの一環として、近隣の医療系大学との共同で、健康的な食メニュー開発に取り組んでいます。

商店街における飲食店への新型コロナウイルスの打撃は大きく、店舗経営が多くのレストランで難しくなっています。目新しい健康メニューの提供を地域限定で行うことにより、商店街への集客を図ることが目的です。

寺町京極商店街

京都の寺町京極商店街では、QRコードスキャンを導入した商店街のデジタル化が進められています。

今回独自に導入された「寺町京極ポイント」は、来街者が、寺町京極商店街内に設置されたQRコードを読み取り、チェックインするとポイントがもらえるシステムです。貯まったポイントは、商店街事務局で500ポイントを500円に交換でき、更なる商店街での販売促進を促します。

サンモール大塚商店街

東京都豊島区にあるサンモール大塚商店街では、2018年に、新たに完成した地域密着型ホテルと連携し、商店街を巻き込んだマイクロツーリズムを推進しています。

マイクロツーリズムは、自宅からそう遠くない地域への日帰り旅行や、1泊旅行といったコンパクトな観光のあり方を指す言葉です。東京都内の人に向けて、大塚駅周辺の観光や、商店街での体験を楽しんでもらうことが、こちらのプロジェクトの目的です。

観光といえば、遠方への旅行がイメージされますが、地元の人に向けて、地域の良さを再発見してもらうという選択肢も、新型コロナ禍においては重視されつつあります。

商店街の活性化に関連する書籍

以下は商店街の活性化に関連する書籍になります。是非とも参考にしてみてください。

まとめ

商店街は衰退しつつある一方、その価値へ大いに注目し、活性化に向けた取り組みも全国で進められています。商店街の活性化は、地方創生や人口の分散とも深く結びついており、積極的な取り組みが求められているところです。

どのような活性化に向けたソリューションがあるのかを検討しながら、実際の推進事例も参考にしつつ、プロジェクトを進めていくことが重要です。

※参考文献(各事例について詳しくは以下のリンクへ)
『次世代の商店街に求められること。』
『産経新聞 旗が岡商店会』
『CNET JAPAN 寺町京極商店街』
『サンモール大塚商店街 マイクロツーリズム時代の商店街

 

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