2024年に大型調達した日本のディープテックスタートアップとは?

2024年に大型調達した日本のディープテックスタートアップとは?

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国内では、生成AIや核融合などのディープテック分野で有望なスタートアップが次々と成長しています。本記事では、2024年上期に大型資金調達を成功させた国内ディープテックスタートアップ企業を紹介します。

レナリスファーマ (Renalys Pharma, Inc.)

医薬品開発

レナリスファーマ株式会社は、2023年4月に設立された日本を拠点とする研究開発型製薬企業で、腎臓病治療における革新的な薬の開発に取り組んでいます。特に、日本およびアジア地域で今後増加するであろうと言われている腎臓病患者に対する「アンメットニーズ(未解決の医療ニーズ)」に応えることを目指しています。

同社は、米国のTravere Therapeutics社が開発した治療薬スパルセンタン(sparsentan)を、日本やアジア諸国での独占的な開発・販売を進めています。この薬は、IgA腎症という特定の腎臓病に対する治療薬で、2023年に米国のFDA(米食品医薬品局)から迅速承認を取得しています。レナリスファーマは2024年に日本国内での第3相臨床試験を開始し、2025年後半には評価結果を得る予定です。

レナリスファーマは、海外のキャタリスパシフィックとSR Oneがリードとして、ベンチャーキャピタルや投資会社と協力し、シリーズAラウンドで60億円を調達。アジア全域での臨床試験推進のために資金を活用し、同地域での治療薬の開発を加速させています。

社名 レナリスファーマ
設立日 2023.04.05 (2年目)
住所 〒103-0023 東京都中央区日本橋本町2丁目3番11号
HP https://renalys.com/ja/

エネコートテクノロジーズ (EneCoat Technologies Co.,Ltd.)

太陽光発電

株式会社エネコートテクノロジーズは、2018年に京都大学の若宮淳志教授の研究成果を基に設立された次世代太陽電池の開発を行うスタートアップ企業です。同社は、特に「ペロブスカイト型太陽電池」の開発に注力しており、これにより太陽電池の製造コストを削減し、発電効率を高めることを目指しています。このペロブスカイト型太陽電池は、ペロブスカイト構造の材料で製造された太陽電池ですが、軽量で曲げられる特性を持ち、曇りや室内光の下でも高い効率で発電が可能です。また、建物の壁や車両など様々な場所への設置が容易で、従来のシリコン製太陽電池に代わる次世代のエネルギー技術として期待されています。

エネコートは、2024年7月に第三者割当増資を通じて55億円の資金調達を完了し、累計調達額は80億円を超えました。この資金は、生産体制の強化やIoTデバイスへの応用拡大、さらにはモビリティ分野への展開に活用されます。同社はトヨタ自動車(トヨタ自動車CVC、WovenCapital)、三菱UFJキャピタル、INPEXなどの出資を受け、大手企業との協力のもとで製品の商業化を進めています。

エネコートの技術は、特に車載用パネルや建物の壁面に設置できる太陽電池としての利用が広がっており、将来的には大量生産も視野に入れ、太陽光発電の可能性をさらに拡大することを目指しています。

社名 エネコートテクノロジーズ
設立日 2018.01.11 (7年目)
大学発 京都大学
住所 〒613-0031 京都府久世郡久御山町佐古外屋敷43番地1
HP https://enecoat.com/

enechain (enechain Corporation)

タブレットで閲覧する女性

enechain(エネチェイン)は、2019年に関西電力出身の野澤亮氏によって設立されたエネルギー取引所を運営するスタートアップ企業で、日本最大の卸電力取引所を運営しています。同社は、エネルギー取引における価格のボラティリティ(変動)や情報の非対称性といった課題に対応するため、取引支援アプリケーションや決済サポート機能を提供し、取引の透明性と効率性を高めています。

主力サービスである「eSquare(イースクエア)」は、発電会社と小売電力会社の間でリアルタイムで電力を売買できるオンラインプラットフォームで、すでに約250社が利用しており、年間取引高は1兆円を超えています。このプラットフォームでは、1か月から1年先の電力調達価格を事前に決定できる「先渡し取引」が行われ、価格変動リスクをヘッジすることができます。

エネチェインは2024年に第三者割当増資で50億円を調達し、総額66億円を集めました。この資金は、AIを活用した新機能の開発や、エンジニアやビジネス人材の採用に活用される予定です。今後、エネチェインは電力調達の最適化をさらに進め、取引高を3年後には10倍に拡大することを目指しています。

社名 enechain
設立日 2019.07.30 (6年目)
住所 〒107-0062 東京都港区南青山3丁目11番13号
HP https://enechain.co.jp/

Sakana AI

円の中にAIの文字

Sakana AIは、2023年7月に設立された日本発の生成AIスタートアップで、革新的なAI技術を開発しています。同社はわずか1年以内に企業価値が11億ドル(約1700億円)に達し、国内最速でユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)となる見込みです。AI業界で注目される存在となっており、生成AI分野で独自の技術開発を行っています。

Sakana AIは、Google出身のAI研究者であるデビッド・ハ氏とライオン・ジョーンズ氏、さらに日本の外務省出身の伊藤錬氏によって設立されました。特に、ジョーンズ氏は「Attention Is All You Need」という、生成AI技術の基盤となる重要な論文の共同著者としても知られています。また、ハ氏もGoogleのAI研究に携わり、Stability AIでの経験も持ち合わせています。COOの伊藤氏は、メルカリでのグローバル事業を手がけ、同社の組織づくりに貢献しています。

Sakana AIの技術の革新性は、「進化的モデルマージ」と呼ばれるAIモデル開発手法にあります。こースで高性の手法は、複数のAIモデルを組み合わせて新しい高性能なモデルを作り出すというもので、生物の進化の仕組みを模倣して効率的にAIを進化させることが可能です。この技術により、AIモデルの開発スピードが飛躍的に向上し、少ないリソ能なAIを生み出すことができるとされています。

さらに、Sakana AIは2024年に200億円規模の資金調達を実施し、NVIDIAをはじめとする米国の有力ベンチャーキャピタルが大きな金額を出資しています。この資金は、AIの開発やデータセンターの拡充、日本におけるAI人材の育成に充てられ、AI市場でのさらなる成長が期待されています。

社名 Sakana AI
設立日 2023.07.07 (2年目)
住所 〒105-0003 東京都港区西新橋3丁目24番8号山内ビル3階
HP https://sakana.ai/

アスエネ (Asuene Inc.)

CO2を排出しない最新のエコ環境技術。 CO2排出量削減コンセプト。CO2を排出しないクリーンな環境。

アスエネ株式会社は、2019年に設立された日本発のクライメートテック(気候テック)スタートアップで、企業や自治体を対象にCO2排出量の見える化、削減、報告をサポートするクラウドサービスを提供しています。同社のミッションは「次世代によりよい世界を」実現することで、気候変動問題に取り組んでいます。

アスエネは主に以下の3つのサービスを展開しています:

  1. ASUENE:CO2排出量の算定・見える化・削減を支援するクラウドサービス。
  2. ASUENE ESG:企業のESG評価をサポートするクラウドサービス。
  3. Carbon EX:カーボンクレジット取引所を運営し、企業のカーボンオフセットを支援。

アスエネは、2024年に累計101億円の資金調達を達成し、事業を急成長させています。国内でのCO2排出量算定クラウドサービスの導入企業数は9,000社を超え、提携企業は140社以上。さらに、シンガポールやアメリカにも拠点を展開し、グローバルでの事業拡大にも力を入れています。

アスエネは、生成AI技術やM&Aを通じて技術開発と市場拡大を進め、今後もクライメートテック分野でのリーダーシップを目指しています。

社名 アスエネ
設立日 2019.10.02 (5年目)
住所 〒105-0001 東京都港区虎ノ門1丁目10番5号
HP https://corp.earthene.com/

TOKIUM (TOKIUM Inc.)

テーブルの上のラップトップコンピュータの近くに白いノートブックの上にシルバーのペンの横に黒のiPhone

TOKIUMは、法人支出管理(BSM: Business Spend Management)に特化したクラウドベースのプラットフォームを提供するスタートアップ企業で、経費精算や請求書処理などの業務を効率化し、企業のコスト削減と支出最適化をサポートしています。

TOKIUMのサービスは、単なるデジタル化にとどまらず、紙の領収書や請求書をデータ化し、それを活用して企業の支出を詳細に分析・検証できる点が特徴です。また、データ化とシステム化だけでなく、紙原本の取り扱いや保管といったアナログ業務にも対応し、企業の幅広いニーズに応えています。

2024年上半期には、台湾のTGVest Capitalを引受先とする第三者割当増資により、約15億円の資金調達を実施し、累計調達額は約66億円に達しました。この資金は、さらなる新サービスの開発や機能拡充、採用強化、マーケティング投資に充てられる予定です。

TOKIUMは、上場企業250社を含む2,000社以上で導入されており、企業の支出管理を改善することで、無駄な時間を削減し、効率的な業務運営をサポートしています。

社名 TOKIUM
設立日 2012.06.26 (13年目)
大学発 筑波大学
住所 〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目18番2号
HP https://www.keihi.com/company/

Zehitomo

携帯電話を使用する人物の写真

Zehitomoは、家周りの工事やパーソナルトレーニング、ヨガ講師、英語講師など、様々なローカルサービスのプロフェッショナルとユーザーをつなぐマッチングプラットフォームを提供するスタートアップです。ユーザーは提供される複数の質問に答えるだけで、AIがニーズに合ったプロを選び、適正価格で仕事を依頼できるのが特徴です。

Zehitomoのターゲット市場である日本のローカルサービス市場は約30兆円と巨大であり、多くの事業者が集客や販路開拓に課題を抱えています。Zehitomoはこれらの課題に向き合い、1,000以上のサービスカテゴリーで20万人以上のプロが登録するプラットフォームに成長しました。

2024年5月には、複数の海外投資家から新たなラウンドで資金調達を行い、累計調達額は26億円を超えています。Zehitomoは、DG Daiwa Venturesや環境エネルギー投資などから継続的な支援を受け、さらに成長を加速しています。

2015年にJordan Fisher氏とJames McCarty氏によって設立されたZehitomoは、特にコロナ禍においてパーソナルトレーニングの需要が増加するなど、急成長を遂げている注目のスタートアップです。

社名 Zehitomo
設立日 2015.08.27 (10年目)
住所 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目1番1号
HP https://www.zehitomo.com/

お問い合わせ

※参考文献
 
レナリスファーマ IgA腎症でsparsentanのフェーズ3開始  | ニュース | ミクスOnline

レナリスファーマ株式会社|スピーダ スタートアップ情報リサーチ

株式会社エネコートテクノロジーズの会社情報と資金調達 | NIKKEI COMPASS

ペロブスカイト型太陽電池のエネコートテクノロジーズ、55億円調達 - 日本経済新聞

京大ベンチャーのエネコート、総額55億円を資金調達 - ニュース - メガソーラービジネス : 日経BP

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