大熊一慶

【プロに聞く】新規事業立ち上げのプロから見た中小企業のDXとは? 大熊一慶氏インタビュー(実践編)

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みなさん。こんにちは。今回はモンスター・ラボ社にて新規事業・子会社立ち上げ等を行い、同社の成長を支えてきた大熊 一慶氏へのインタビュー記事を掲載します。

現在は独立し、クライアントの新規事業立ち上げだけではなく、
DX推進、M&Aのコンサルティングなどを行っています。「新規事業立ち上げのプロから見た中小企業におけるDXとは?」ということで中小企業のDX化について教えて頂きました。


■経歴

大熊 一慶氏

2011年からモンスター・ラボに入社。当初はエンジニアとしてプログラミングに従事、その後法人ソリューション営業、

オフショア開発マネジメント(ベトナム・中国)等を経て2014年にアプリやシステム開発を世界中の優秀なエンジニアチームにアウトソースできるグローバルソーシングサービス「セカイラボ」を新規事業、子会社として起ち上げ、代表取締役COOに就任。

営業・マーケ責任者として、ビジネスデベロップメント、海外M&AのビジネスDD等も担当。

本事業はM&A戦略を軸にイギリス、デンマーク等の欧米に拠点を構え12カ国で約1,000名ほどのエンジニア、クリエイターの社員を抱えるサービスに成長。

2018年にはARシステムを研究・開発するピスケス(モンスター・ラボグループ)を創業、代表取締役CEOに就任。

2020年から独立し、法人向けにDX推進、経営支援、M&Aのコンサルティングを行いつつ、並行して現行顧客の課題を汎用的に解決できるプロダクト・サービスを企画・開発中。


ーまずは、今取り組まれていることから、おうかがいできればと思います。

大熊一慶氏(以下、敬称略):

運送業、医療、メーカーなど法人・企業様の経営・事業開発領域においてIT・DXをメインに、ご支援をさせていただいております。例えば、メーカー兼卸売をされている企業様では、D2C(Direct to Consumer)の起ち上げ支援もやらせていただいております。

ー面白そうですね。

大熊:そうですね、面白いです。D2Cでは、コンセプトの立案・設計、売れ筋商品のデータを分析した上で、デザイナーや海外の商品調達担当と連携し、新規での商品開発と調達を行い、各種ECプラットフォームや自社サイトで販売するということをお手伝いさせていただいおります。

ー収益的にはいかがですか?

大熊:既に良い商品を開発・調達されていたメーカー様ということもあって、ECは、既に一定の売上規模を達成しております。ただ、利益構造的には改善の余地がありまして、今後は、ECプラットフォーム側の手数料の仕組みを鑑みた商品選定・サイズ設計の改善などを行ったり、倉庫などの物流システムの統合・改善・DX化を行っていくことで、利益構造の改善を進めています。

ー(D2Cビジネスの)メンバーは何人ぐらいでやっていますか?

大熊:現在は、兼業の人員の方も含めて、3~4名ぐらいの規模で対応しております。デザイナー、ITエンジニア、ライターなどDX化にあたって必要な人員は、僕の方で必要なタイミングでチームを組成します。財務面でも、各種ECプラットフォームの売上・費用データをSaaSの会計システムを導入し、リアルタイムで連動させるために、財務メンバーも入れて改善しています。

ーそれはすごい面白いですね。業態転換してしまう勢いですね。

大熊:そうですね。あとは、経営支援もさせていただいております。基本的には、B2Bの事業者様が多いのですが、必要に応じて事業計画の作成なども行います。

また、私が前職の企業では、グローバルでのM&Aを主軸戦略の一つとして推し進めていたのですが、そこで経営にも携わっていた経験もあることから、DX化を目的としたM&Aの支援もさせていただいています。売る側・買う側どちらでもM&Aを検討されている企業様がいらっしゃるのですが、そういった企業様に対しては必要に応じて、専門家チームを組成して支援を行います。

例えば、買収時でのビジネス面や財務面でのDDはもちろん、DX化を進めるにあたり、ITエンジニアを増員していく戦略として、海外の開発企業を買収した企業様における現地でのエンジニア採用・育成・開発マネジメント、財務統合などのPMI支援です。

ー運送業の企業の支援はITプロダクト・システムの開発でしょうか?

大熊:そうですね。完全な新規事業として新しいシステム・サービスの開発も支援させていただいております。

ーこれは仕様策定から関わっていますか?

大熊:基本的には、そもそもの事業戦略の立案から、プロダクトの仕様策定部分から関わらせていただいており、もちろん営業戦略の立案もお手伝いしております。もともとは、私自身もシステム・開発系のバックグラウンドもありますので、開発にあたって、必要不可欠なメンバーであるデザイナーやエンジニアとも適宜連携します。詳細はリリース後にお話できればと考えております。

ー ITシステム・プロダクトはお金がかかりますよね?

大熊:はい、既に世の中で一般的に利用されているアプリやWEBシステムのような立派なモノを最初から開発しようとすると非常にお金がかかりますね。そのため、まずはユーザーを集客するためのLPやホームページをライトに制作して、裏側は既存のSaaSやアプリを組み合わせて、どうしても手が届かない部分は人力でオペレーションを回すことで、最低限のシステムで検証を回してから、開発を進めるようにしています。

ー資金調達の支援にも関わっていたりされますか?

大熊:そうですね、そこを支援させていただくケースもあります。中小企業や初期のスタートアップですと専任のCFOもいらっしゃるわけではなく、そのあたりは社長が一人でやっていることが大半なので、銀行や投資家向けの事業計画や事業説明資料の作成を支援させていただいたりもします。

ー自社でノウハウがないところを、外部の方に任せているという感じですかね?

大熊:はい、僕のような外部の人員でまかなえる部分は、任せていただいています。ただし、企画・起ち上げ段階ではそれで良いのですが、やはり中長期で拡大していくことを考えると、なるべく内製化していくのが望ましいと考えています。プロダクトを拡大していこうというフェーズでは、どうしても高速で営業・マーケ・開発の仮説検証を回していく必要があり、フルコミットで現場を率いる人間がいないと、施策実施・検証の回転がどうしても遅くなってしまいます。事業を安定的に成長させるには、優秀な人材を採用するか、少なくともフルコミットができる人員を定常的に確保する必要があります。

ー優秀な人材を採用するポイントは?

大熊:どこも苦労されているので、一概にこれといった解決策があるわけでもないのですが、中小企業だときちんとしたホームページを持っていないケースが多いため、求職者が間違いなく目にするコーポレートサイトや採用ページは、最低限整備する必要はあると考えています。特に、正社員の場合は、事業内容や条件ももちろんではありますが、ミッションやビジョンも非常に重要だと考えています。

ミッションやビジョンは、社長が既に考えているものを一緒に議論して明文化し、デザイナーやライターと一緒にコンセプトを作ったうえで、コーポレートサイト・採用ページを作ります。それができてから、Wantedly、ビズリーチ、YOUTRUST、クラウドリンクスなどの事業やフェーズに適した採用・アウトソース関連のメディアに出稿します。

事業開発に関しては、一線級の人を入れないと、成長・拡大できないと思いますので、条件もしっかりと設計しないといけません。また、僕個人としては、スキルや実績も重要ですが、会社や事業のミッションに共感してくれる人を採用することが、非常に大切だと考えています。

ーなるほど、例えばどういう条件を考える必要がありますか?

大熊:スキルや実績のある方は、すでに給与などの条件が良いことがほとんどです。スタートアップや中小企業においては、それより良い条件を出すことは難しいケースも多いです。

ただ、条件が他社と比較して相対的に悪かったとしても、チャレンジできる環境、インセンティブ、自身と会社のミッションとの整合性で選択していただけることはおおいにあります。インセンティブでいえば、例えば、ストックオプション等の設計・付与、入社後に成果が出てきたタイミングでの昇給の設計です。ストックオプションとなると資本政策も絡む話になるため、その部分でも一緒に経営者と考えて、必要に応じて、財務の専門家や弁護士も入れて、設計を支援させていただきます。

ーなるほど、新規事業を成功させるには人材採用も重要ということですね。最後になりますが、大熊さんにとってのDXとは?

大熊:「デジタル化を通じて顧客の課題を解決し、利益をあげること」だと思います。

ー貴重なお話をありがとうございました!