みなさん、こんにちは。今回はクライアントに対して、経営企画やコーポレート業務等の支援を行う増田隆史氏へのインタビュー記事を掲載します。「企業が成長するために必要な経営企画業務、人事制度とは?」ということで具体的な取り組みだけではなく、本質論についても教えて頂きました。
▼増田隆史氏経歴
大学卒業後、メーカー、インターネット企業、Sler、保育事業者等の上場企業で、主に経営企画の責任者やグループ会社役員等を歴任。
2022年1月に独立し、複数社の経営企画や新規事業等の業務支援を行う。子ども向け事業等を行う「株式会社ソーシャルインフィニティ」を創業。2022年4月に、企業の経営企画やコーポレート業務等の経営執行を支援する「株式会社経営企画部ホールディングス」を共同創業予定。趣味は料理と子育てで、個人としても保育士資格を有する。
ーまずは、近況について教えていただけますか?
増田隆史氏(以下、敬称略):今は個人で、数社に対して業務委託やアドバイザーの形で、経営企画や新規事業、人事制度構築などの支援をしています。一方で、子ども向け事業や社会的な活動を中心とした株式会社ソーシャルインフィニティという会社を設立しました。また、4月には元々一緒に働いてた仲間と2人でもう1つ法人を設立します。こちらは、一言でいうと経営企画部を中心とした経営執行や人材支援をする会社で、会社名は「株式会社経営企画部ホールディングス」です。
ーそれは面白いですね。具体的にはどのようなことをやる予定ですか?
増田:経営企画部における業務全般を支援したいと思います。短期的には、経営企画のプロ人材を業務委託で繋ぐサービスがメインになるかと思います。また、経営企画部やコーポレート全般に関するノウハウやテンプレートなどをサブスクで提供するサービスなどの提供も考えています。多くの会社で、自社内に意外とテンプレートが無いような状況で、そのため、専門のコンサル会社に依頼すると、数百万円がかかったりします。専門コンサル会社の価値はもちろんありますが、もっと、企業が手軽に役立つサービスができないものかと思っていました。
ーなるほど、それはベンチャー企業にとって嬉しいサービスですね。
増田:ベンチャー企業、中小企業、大企業の子会社などでは、経営企画業務ができる人材が不足しています。だいたいは、その業務を社長が全部やっているというところが多いです。
いざ、採用しようと思っても、経営企画業務ができる若手、ミドル層は市場に少ないです。紹介会社経由で運良く見つけたとしても、面接から入社するまでには半年ぐらいかかり、さらに本格稼働するまで2-3ヶ月を要します。同時に、紹介会社にフィーを35%ぐらい払うことになるので、それなりの時間と金額を払うことになります。そのような課題を解決できるサービスを作りたいと思いました。
多くの企業は、経営企画業務をフルコミットで雇うべきと考えており、実はそこは、週1回、2回の関わり方で一定の役割までは、十分推進できると思います。会社の優先度の高いところに、経営企画がしっかりと入り込むというのをしていけば良いかと思います。
経営企画の経験のある人材が複業的に、ベンチャー企業など複数の会社に短時間関わることで、会社の課題解決に貢献していく世の中が出来ると思います。
昨今、プロ人材派遣のサービスは複数存在しますが、大半が個人のスキルに頼るものですので、私たちの新しい取り組みとして、経営企画やコーポレートのノウハウやテンプレートを標準化させたサービスをセットで提供することで、より高水準の支援が安定的に提供できると考えております。
ーなるほど。ところで、増田さんの場合、ハンズオンで支援をするスタンスですか?
増田:はい、そうですね。アドバイスだけではなく、実際にお客さんの内部に入って、経営全般を支援していくことが多いです。あとは、組織作りのようなことの支援もしたりしています。その他、M&Aやアライアンス、人事制度構築にも関わっていくこともあります。
基本的にはハンズオンで、新規事業に一緒に入って伴走しているところもありますし、人事制度を一緒に作り始めているところもあります。いい意味で、何でも屋というところもありますが、全ては会社の価値を高める、会社の夢をしっかりと実現していくことをゴールに、会社の課題解決に奔走しています。クライアントからは、今まで全然進まなかったことが、ものすごく進むようになったという声が多く聞かれます。
外部の視点や経験を活かしコンサルティングで、経営戦略を立てるということも重要ですが、中に入って一緒に業務執行、経営執行をしていく、一緒に伴走することが、クライアントにとって、本当にやりたいことを実現に繋げていけるのではないかと思います。
ー支援する中で、重要な点はどのあたりになりますか?
増田:まずは、関与者が同じ方向に向かうよう意識づけをし、企業理念や経営戦略、経営計画に具体化していくことです。皆さんが、相互にそれらをしっかりと理解できるようにしていくことかと思います。社内にどうやって伝え、どう一体感を醸成していくかについての工夫をしています。
ー経営計画の策定において増田さんは、どのような役割を担っていますか?
増田:経営企画の責任者として、戦略や計画をまとめて1つに作り上げていく役割を担っています。経営分析や、素案作りや、将来へ向けての経営トップとしての目指したいテーマをまとめたり等になります。また、単年度毎の課題を整理し体系付けをしたり、センターピンの抽出や、優先順位付けを行います。
しかし、作成は2割、実行が8割が大切だと言われているため、実は計画立案よりも実行・推進が大切になってきます。
会社のフェーズや状況によって、求められることは変わるので、機動的に対応できることも必要です。経営企画が全体を取り仕切っていく役割として以下3つポイントがあるかと思います。
1.調整する役割(事務局型)
2.取りまとめて1つの形にする役割(計画策定型)
3.ハンズオンで一緒に推進をする役割(実行推進型)
特に、2つ目のファシリテーターとしての役割は重要で、経営者と一緒に議論をする場を作ります。論点を整理して、一緒に作り上げるプロセスを構築します。
また、経営企画は、経営参謀という言葉がよく使われており、役割が年々広がっていく感じがします。私自身、これまでコーポレート中心に色々経験させていただき、後半は事業そのものを経験させていただきました。これらが、経営企画をする上で、財産になっていると思います。経営企画は、専門性を持ったゼネラリストであることが求められてきています。
今までより、経営と事業の距離感が縮まったことが大きいのだと思います。例えば、ITに関しては、従来は単なる情報処理と捉えられていましたが、DXという言葉が出てきて、ITを経営にインテグレーションしなければ、生き残れないという考え方に変わりましたよね。DX担当やCTOは、システムという切り口で、全体の事業を最適化しなければならないという役割がありますが、経営企画も同様に、経営の計画をまとめる役割だけにとどまらず、事業そのものにコミットするといった幅の広がりを求められるようになってきています。
ー会社の規模が大きくなると、まとめるのが大変になることがあると思いますが、注意すべき点はありますか?
増田:規模が大きくなってくると、調整が大変になります。ですので、とにかくまとめることがゴールになってきてしまいがちで、「どこか落としどころを見つけよう」ということになります。しかし、落としどころを見つけることが目的ではないので、安易に妥協してはいけないです。
また、経営側が作った事業計画を社内や社外に対して、どのように見せていくかということも重要な役割になってくるかと思います。
内部と外部へ伝えたいことは違ってきます。特に社外からの視点を会社にフィードバックし、会社の戦略に落としこみます。
上場企業で経営企画をやっていたときには、IR業務を担当し、四半期でだいたい機関投資家60社とお話をする機会がありました。そのうちの半分は経営者と回り、もう半分は自分で新しい投資家を開拓したり、会社の方向性や目指しているところを、現状の足元の状況などを踏まえて、定量と定性の両面で説明していくということをやっていました。投資家からのフィードバックを社内に落とし込んでいました。
ー人事制度についてもお伺いできればと思います。人事制度の策定をしたということですが、そのあたりは、人事部と一緒にやっていましたか?
増田:直近でいうと、人事制度についての支援をした時は、経営メンバー、人事部と共に進めました。それ以前の事例でいうと、やはり人事部と一緒に制度構築を行いました。人事部との役割分担で言えば、経営視点で、事業側の視点での推進プロセスという観点でかかわりました。
やはり、人事部だけで進めた場合、視点が人に寄っていく傾向になります。一方で、経営企画が入ることで、人事制度の会社の中での位置付けであったり、人件費というコスト面での視点が加わります。人件費が上がっていくことが、会社の今後にどう影響していくかという定量的な部分と、経営戦略上、新しい人事制度がどう位置づけられるかという、定性的な部分を一緒に考えることができるようになります。会社の人事制度は、一年ごとにコロコロ変えられるものではありません。やはり、経営側の視点から、中長期的なスパンで見る必要があります。
ーどういうタイミングで、「人事制度を変えよう」ということになってきますか?
増田:それは、大きく2つあります。会社の状況と制度にずれが生じたときに、見直しが迫られます。具体的には以下の5つのような状況の時にそうなります。
1.企業理念を刷新したとき
2.会社の定着率、退職率が上がったとき
3.会社の目指す人材像がフィットしなかったとき
4.会社の給与体系と今の状態がフィットしないとき
5.社会的情勢に変化があったとき
見直しをする際の議論の方法としては、例えば、フレックスを単に導入するか否かだけを検討するというよりも、
本質的な部分、つまり社員のワークスタイルをどうするか、会社の風土をどうするか等を先に考える必要があります。そして、それを実現するためには、フレックスを導入する必要があるとか、福利厚生をどうしたらよいかという議論をするべきだと思います。
ー「会社の目指す人材像がフィットしなかったとき」についてになりますが、会社が求める人物像は変わってくるものですか?
増田:はい、変わってくると思います。根本的な部分では、人物像は変わらないかもしれません。
ただし、会社の規模が大きくなり、人が増えたときに、会社の理念、風土に合った人材が活躍できる世界にしたいね、ということを改めて考え直す機会があります。
そこで「求める人物像」を設定しなおすことになります。その時にありふれた人物像ではなく、「何に心を留めて行動するか」を煮詰めて考える必要があります。
企業理念があって、その下に経営計画としての中期計画があり、それを実行する事業戦略があります。それを支えるものとして、制度がありますが、そのコアになるものが人事制度です。なので、「求める人物像」の設定は非常に重要になります。
ー参考にする企業はありますか?
増田:会社の業態や目指す姿によって違ってくるかと思います。例えば、以前に在籍したグローバルキッズ社の場合、ディズニーランド(オリエンタルランド社)の行動基準を参考にしました。
ー人物像やモデル像の他に参考にするものはありますか?
増田:例えば、ティール型組織を参考にしています。ピラミッド型でなく、組織がより分散型で、よりフラットになって、上司と部下の関係性ではなく、お互いがミッションで繋がっていこうというものは非常に参考になります。すべてをティール型にするのはハードルが高い場合はありますが、参考になるエッセンスを取り込んだりはしました。
人事制度では、給与、労務といったものは確実に決めていくことになりますが、求める人材像、会社風土に対する考え方という意味で言いますと、共通の価値観のもとに作られていくことが重要かと思います。
ー共通の価値観というと、内容は一般的なものになってしまいがちかと思いますが、その辺はいかがでしょうか?
増田:最近だと、パーパスという言葉がありますが、始めに会社の存在意義をどこに置くかを決めて、次にミッション、会社がそのために何をやっていくかを決め、今度はそれを支える風土で、どういうふうに自分たちがやりたいかを決めていくというのは良いと思います。
ー最後に一言お願いします。
増田:新しいサービスを通じて、経営企画の仕事をやっている人が今の仕事をやりつつ、新しいチャレンジができる仕組みを作っていきたいと思います。そのことでより良い世の中を作ることができればと思っています。
ー貴重なお話をありがとうございました!