【プロに聞く】成長企業における社外取締役・顧問の役割とは?吉野次郎氏インタビュー

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みなさん。こんにちは。今回は電通で主要ブランドのマーケティング、プロモーション、ブランド戦略支援で活躍され、その後独立されてHamee株式会社(東証プライム 3134)の社外取締役や、欧州最大級のテックイベントWEB SUMMMITの日本代表に就任した吉野次郎氏へのインタビュー記事を掲載します。「成長企業における社外取締役・顧問の役割とは?」について教えていただきました。


吉野 次郎氏(よしのじろう)

WEB SUMMMIT, Country Managing Director for Japan

株式会社電通総研、内閣官房内閣内政審議室教育改革国民会議担当室、株式会社電通の営業局を経て2013年に独立。電通営業局では、大手消費財メーカー担当アカウント・エグゼティブとして、主要ブランドのマーケティング、プロモーション、ブランド戦略に従事。2013年にリーダーシップ教育でアジア全体を変革する Center for Asia Leadershipに日本代表として参画。

2021年より、欧州最大級のテックイベントの日本代表に就任。一般社団法人ドローン操縦士協会 代表理事、 Hamee株式会社(東証プライム 3134)社外取締役。その他、アパレル会社のCMO等を歴任。

京都大学大学院経済研究科修了 ハーバード大学行政大学院ケネディスクール 修了(MPA)


成長企業における社外取締役・顧問の役割とは?

-最近はどのようなことをやっていますか?

吉野 次郎氏(以下、敬称略):上場企業やベンチャー企業の社外役員や顧問等をやりつつ、一般社団法人の運営をしたり色々と幅広くやっています。

ー社外取締役・顧問に関してになりますが、どのような役割をされていますか?

吉野:社外役員とか顧問の場合、弁護士とか会計士の方が専門的な見地からアドバイスをするのかと思いますが、私の場合は広告、グローバル展開というところでのバックグラウンドがあるため、それらをベースに経営陣にとって新しい気付きや視点が得られるようなアドバイスを行います。中長期の成長戦略やビジョンについてもアドバイスを行います。

ー具体的にはどのようなアドバイスをしていますか?

吉野:例えば、アパレルの会社のCMOをやっていますが、経営会議において世の中の情勢、政治経済、テクノロジーのトレンド、新しいことについてアドバイスをしています。

小売にとっての決済、EC、在庫管理、デジタルマーケティング等などあらゆるところにテクノロジーが関わってきています。さらには海外展開についてもアドバイスをしています。

現場は現場で日々の売上をどうするか?具体的なことについての課題がありますが、組織は大きくなればなるほど、もう少し抽象的な話が必要になります。それは新しい領域や、方向性などについてになりますが、その部分で社長や経営陣のサポートをしています。

特にテクノロジーに関しては、現場レベルに関わる話が多く、抽象度が高いところでのアドバイスを行います。例えば、決済においては決済大手企業が今後どうなるか?それによって現場レベルでの決済はどう変わっていくのかとか、もしくはBuy Now Pay Laterのサービスの今後の動向とそれが現場にどうインパクトを与えるかなどの話をします。大きな流れを掴んだうえで、売り方をどう変えていくべきかについてもアドバイスをすることはあります。

ー営利企業以外でも支援はされていますか?

吉野:もちろんしています。非営利的な活動をしている組織に対して、顧問として参画しているケースもあります。この場合は、理念に共感しているところが大きいわけですが、やはり同じようなスタンスで、代表の方に対して新しい気付きや視点が得られるようなアドバイスを行います。

アドバイスのポイントは?

ー社長の良い相談相手みたいな感じですね?どういうところがポイントだと思いますか?

吉野:そうですね。相談する方には何か悩みがあります。お金がないとか、人脈がないとか。それに対して、ちゃんと答えるというところかなと思います。お金で買って解決するものであれば、シンプルなのですが、そもそも問題がわからないし、回答もわからないというケース、複雑なケースが多いわけですが、示唆が得られるようなアドバイスができればと考えています。やはり、そういう役割を果たせることがポイントだと思います。

フレーム・オブ・レファレンス、ある一部のことから関係性をひいてくる。そういうのが問われているのかもしれません。世の中はアナロジーになっていることが多いので、今ここで起こっていることは、一見すると別のものに見えるが、実は別のところで起こっているものと同じということがありまして、仮説としてでも、アナロジー的なものが持てるかどうかで、発想とかヒントで違ってくるかと思います。

例えば、スポーツのコーチとベンチャーキャピタルを比べて考えてみると、一見すると全く別のものではありますが、前者は良い選手を育ててメダリストにするということが求められているわけですし、後者はベンチャー企業を支援して上場させるということで、共通点が多いわけです。何が同じで、何が違うのかということについて、常に考えることが、新しい発想ややり方を見つけることができる良い方法ではないかと思います。そういう視点を持つためのアドバイスをすることが重要なのではないかなと思います。

ー今まで見てきて、すごいと思った経営者の特長について教えていただけますか?

吉野:そうですね。一言でいうと「見える人」ではないかなと思います。未来が具体的に見える人です。例えば、 Center for Asia Leadershipでお世話になったマレーシアの大富豪のジェフリーチャー氏はその中の一人であると思います。

彼は元々は、スズ鉱山の開発と輸出をする事業をしていたわけですが、当時のスズのほとんどはマレーシアでしか取れなかったため、大儲けをしていました。ある日突然、世界中でスズが発掘されるようになって、スズの国際価格が100分の1になってしまいました。鉱山がまったく何の価値もないものになってしまい、大損してしまったわけです。

しかし、彼はスズ鉱山の採掘された後の大穴を見て「見えた!」と言い、次のプランを構想しはじめます。大きな穴に水を入れることで湖にして、その周辺に住宅をいっぱい建てたら新しい都市ができる、そういう未来が見えたみたいです。その熱意でシンガポールに行き、お金をたくさん借りて、ディベロッパー開発をします。彼の読みは当たり、マレーシアの経済成長に乗っかることで急成長して、今ではモールを150個所有する規模の財閥になりました。「見える人」でなければこういうことはできないでしょうね。

ー貴重なお話をありがとうございました!