公的セクターにおけるDX成功事例とは?海外と日本の事例をご紹介

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近年、企業だけでなく政府や自治体においてもDXの重要性が叫ばれています。

人口減少や少子高齢化など、様々な課題が残る日本にとって、DXはどのように政府や自治体に必要なのでしょうか。

今回の記事では、公的セクターにおけるDXの大切な視点から、日本・海外の成功事例について詳しくご紹介していきます。

ぜひ最後まで読んで、DXに取り組む上での参考にしてみてください。

DXとは?

まず始めに、最近よく耳にするDXという単語の意味についてご紹介します。

DXとは、英語でDigital Transformationの略語です。

Transformationは「変容」という意味なので、DXは直訳すると「デジタルによる変容」となります。

つまりDXはデジタル技術を用いることで、サービスやビジネスモデルを変容させることを指し、IT導入はDXをするための手段となります。

よくDXとIT化は混同されることが多いですが、ただデジタル技術を導入するだけでなく、その結果ビジネスや生活に変革をもたらすというのがDXの基本的な考え方です。

公的セクターによるDXとは?

次に公的セクターによるDXとは何かについて解説します。

DXと聞くと企業が行うものと思われがちですが、実は、政府や自治体などの公的セクターにおいても、DXの重要性は叫ばれています。

DXそのものの意味はどの組織においても変わりませんが、公的セクターによるDXの中で重要なポイントは、従来の業務を利用者の視点から見直し、より良い仕事・サービスに繋げるということです。

例えば、多くの自治体では、未だに電話やメールといったコミュニケーションスタイルが主流で、手続き等に関しても、対面業務が前提となっています。

しかし、これをDXの視点から変革すると、例えば、生活者が頻繁に使うLINEのようなSNSを活用して、情報発信や手続きが行えるようにするとより業務効率が上がります。

またこのような施策は、自治体の職員にとってだけでなく、市民である利用者にとっても便利で快適なものになります。

このように公的セクターによるDXは、組織の課題解決だけでなくサービスの質向上を通して、利用者の幸福度を高めるためにもDXは行われるのです。

参考:総務省「地方公務員数の状況」

https://www.soumu.go.jp/iken/kazu.html

なぜ公的セクターでもDXが求められているのか

ではなぜ、近年公的セクターでもDXが求められているのでしょうか。

まず一つ目に、少子高齢化の進展があります。

これによって、公共サービスの担い手が減少傾向にあるだけでなく、財政的な制約が伴い、サービスや社会インフラの維持が困難となっています。

実は、全国の地方公務員数は昔と比べると大幅に減少しています。

令和3年4月時点で約280万人であった総職員数ですが、ピークであった平成6年と比較すると約48万人減っているのです。

そのため、公的セクターでは企業と同様、より一層組織全体の生産性を高めることが重要とされてきています。

二つ目に、災害や感染症など予測不可能な出来事も多く、公的セクターのほとんどが日々対応業務に追われている状況です。

例えば、世界的パンデミックとなった新型コロナウイルス感染症では、公的セクターにも大きな影響を与え、早急な対応が求められました。

このような結果から、ニューノーマル社会に対応するための施策が挙げられ、公的セクターにおいても従来の業務スタイルが見直されながら、DX対応が進んでいるのです。

日本における成功事例

では、公的セクターによるDXはどのように行われるのでしょうか。

次に日本におけるDXの成功事例について、いくつかご紹介していきます。

石川県加賀市の事例

まずご紹介するのは、石川県加賀市の自治体です。

加賀市は石川県南西部にある福井県と隣接している地域で、温泉地としても有名です。

そんな加賀市は、地方自治体としても日本創生会議において「消滅可能性都市」に指定された過去があります。

このことをきっかけに、新技術の導入によって市民の利便性を高め、豊かな生活を実現するという目標を掲げました。

高齢化と若者の市外流出によって高齢者が多い加賀市にとって、サービス提供のための「移動」が大きな課題でした。

そして課題解決のために、実際に役所まで足を運ばなくともサービス利用を可能にしました。

具体的には、139の行政サービスがスマホ一つで簡単に電子申請できるようになりました。

これによって市役所への移動時間や番号札の待ち時間、書類の修正や捺印のし直しが不要となり、時間ロスのないスムーズな申請が可能となりました。

また加賀市のDX戦略の特徴として、国と自治体との役割分担が挙げられます。

例えば、加賀市の中でも申請件数の多い住民票の写しは、既にコンビニ交付がサービスとして利用できるため、加賀市独自の電子申請化は行いませんでした。

つまり、どの自治体においてもニーズの高い申請に関しては、電子化の役割を国に委ね、申請件数の少ない細かなメニューを加賀市で対応するという棲み分けを明確にしました。

これによって、最終的な申請メニューの充実に繋がり、市民の利便性を格段に向上させることができました。

参考:加賀市「加賀市役所へ電子申請ができる行政手続き」

https://www.city.kaga.ishikawa.jp/life/1/6403.html

福島県会津若松市の事例

次にご紹介するのは、福島県会津若松市の事例です。

会津若松市も、日本でDXが推進されている地域の一つです。

そんな会津若松市の取り組みの一つに、LINEを使ったAIチャットボットサービスがあります。

例えば、市民からのお問い合わせを電話で受けても、市役所の窓口は受付時間内でしか対応することができず、また電話をかけること自体、心理的ハードルが高いという側面があります。

そこで24時間365日いつでも気軽に問い合わせできる仕組みとして、市民の使用頻度の高いLINEアプリを使ったAIチャットボットサービスをスタートしました。

運用を開始した2018年以降、休日に開いている病院や窓口における証明書の取得方法など、月1000〜2000件の問い合わせが来ています。

またLINEに寄せられる質問に対して、会津若松市では「Data For Citizen」というデータ基盤を利用し対応するようにしています。

このデータ基盤は各種行政データの登録・管理を統括しているもので、情報がひとまとめになっています。

AIがLINEの問い合わせ内容を把握すると、このオープンデータの内容から回答を持ってきて、様々にアウトプットする仕組みとなっています。

この結果、自治体の人々にとってもデジタル技術によって業務が縮小され、他の重要な業務に効率よく時間を割くことができます。

参考:会津若松市

https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp

海外における成功事例

次に、海外における成功事例についてご紹介します。

DXは日本だけでなく、諸外国でも積極的に取り組まれている分野です。

中国政府の事例

まず一つ目に、中国政府の事例です。

中国政府はDX先進国として急速にデジタル推進をしています。

そもそも中国では、モバイルを通じたインターネット網が都市部を中心に広く浸透し、他の国と比べてもインターネットの普及率・利用率ともに高い傾向があります。

中でも、QRコードを活用したキャッシュレス決済が日本よりも広く浸透しており、キャッシュレス決済は、中国人ユーザーの生活習慣となっています。

そこで、中国では、行政サービスのスマホアプリが、アリババやテンセントのような民間企業のプラットフォーム上に作られ、行政サービスに関する支払いがプラットフォーム上で完結できるようになりました。

他にも医療や教育など、中国では様々な分野にデジタル技術を導入することで、国民のQOL向上に寄与しています。

また中国政府の強みとして、産学官民一体となったDX推進をしている点が挙げられます。

中国の場合は他の国と比較しても、非常に大きな政府のリーダーシップによって、DX実現を果たしていると言えます。

インド政府の事例

最後に、インド政府の事例です。

インド政府は、公共デジタルインフラ「India Stack(インディア・スタック)」を保持しています。

India Stacとは、国民の誰もがオンラインでサービスを受けられるようにするための公共インフラのことです。

インドではこのプロジェクトが始まった2009年当時、身分証明書さえ持てない国民がおよそ半数を占めていました。

つまり貧困層を中心に、銀行口座の開設や運転免許証の作成など、基本的なことができない状況でした。

このような状況を打破するために、インド政府は携帯電話の普及と合わせ、急速に国民がオンラインにアクセスできる環境作りを進めました。

特に重要なのが、指紋認証と網膜スキャン技術を活用した生体認証によって、国民全員に「Aadhaar(アドハー)」と呼ばれるデジタルIDを付与したことです。

これによって決済などの各種取引のデジタル化が進んだだけでなく、場所・時間関係なくオンライン上で本人確認が可能となりました。

このようにインド政府によるDXは、国民の生活に革新をもたらしただけでなく、貧困層にサービスを届けるきっかけにもなりました。

おわりに

今回の記事では、公的セクターにおけるDX成功事例について、日本と海外に分けてご紹介しました。

先述の通り、DXはあくまでも目的であり、手段ではありません。

組織や利用者にとって、どのような理由でDXが必要なのか、しっかりと目的を明確にしてから実施するようにしましょう。