「自律型人材」が求められる背景とは?

「自律型人材」が求められる背景とは?李潤天氏へのインタビュー

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みなさん、こんにちは。今回はトヨタや東京海上日動火災保険など大手企業だけではなく、多数の中小企業へ人材開発・組織開発のコンサルティング支援をしている李潤天氏へのインタビュー記事を掲載します。「自律型人材」が求められる背景や育成方法について語っていただきました。

李 潤天氏
株式会社レアリゼ マネージャー。韓国出身で父のビジネスで日本へ。大学卒業後、商社へ入社。商社で営業に従事後、1年間米国のメジャーリーグの傘下のマイナーリーグでスポーツビジネスを経験。
帰国後、企業の人材開発・組織開発のコンサルティング支援をする株式会社レアリゼにて、営業に従事し、現在は営業マネージャー、ビジネススクール企画、講師という立場で、日本を代表する大企業や日本を支える中小企業の変革支援を行っている。

 

株式会社レアリゼについて

ーー株式会社レアリゼについて教えてください。

李潤天氏(以下、敬称略):弊社では、法人向けの企業研修やビジネススクールを提供しています。今年で22年目になります。クライアント先に関しては、日産自動車さんや第一生命保険さんなどの大企業を始め、中小企業まで幅広く支援しています。

ーー株式会社レアリゼのサービス内容、クライアント先、規模について教えてください。

李:サービスの内容は主に3つです。1つ目は「組織の変革」です。自律的な組織にするために、風土変革や主体的な組織にするための支援になります。このサービスを活用しているのは中小企業が多いです。

2つ目は「社員の意識変革」です。例えば、企業には階層別に管理職、中堅社員、若手社員への意識変革と、階層に分けたプログラムを作成しています。これは大企業も中小企業にもご活用して頂いているケースが多いです。

社員の意識変革には、若手社員の自律育成、管理職自律型人材育成、マネジメント変革、サーバントリーダーシップ(メンバーの気持ちを汲んで導くタイプのリーダー)のようにマネジメントスタイルを変えるなどがあります。

最後は「次世代経営リーダーの育成」です。ビジネススクールでは、トヨタさんや東京海上日動火災保険さんなどの次世代リーダー候補が20名程参加されて、次世代経営リーダーの育成というのをやらせていただきました。

ーー李さんがその中でやっている業務について教えてください。

李:主に3つです。営業、ビジネススクールの企画、講師もやっております。

自立型と自律型について

ーー中小企業にしても、大企業にしても、次世代経営リーダーにしても、自立型人材が求められている感じでしょうか?

李:そうですね。弊社は”じりつ型人材”を2つに分けています。自分で立つ「自立型」と自分で律する「自律型」です。

「自立」は他者の助けなく、自分の力で行えることをいいます。一方「自律」は、目的と役割を理解して自ら考えて行動することを指します。弊社が求めているのは、後者の「自律型人材」の育成になります。

ーークライアントさんにとっては、自律型人材の育成が課題なんですね

李:「自立型」の人材は、企業には既に多くいらっしゃいます。一方で「自律型」の人材は意外に少ないんです。例えば、「ドローンについて調べて」と部長から指示を受けたら一般的にどうすると思いますか?

ーー一般的には、グーグルでドローンについて調べて、レポートを書いて上げる。という感じでしょうか。

李:そうですよね。すぐに反応して、「How」の方に行く方は多いと思います。こちらはどちらかというと「自立型」です。

目的と役割を自ら考えて行動する人は、「そもそも部長、何故ドローンを調べるのですか?」と聞くでしょう。「金融関係のお客さんが最新の技術を教えてほしいといっている」という部長の答えに対して、自律型人材は、「お客様が金融関係の方でしたら、フィンテックや暗号資産の情報の方が役に立ちませんか?」と提案するといったように、Why思考なんです。

その後、部長は、「ドローンは調べなくて良いから、フィンテックや暗号資産を調べてくれ」ということになります。つまり、Whyを聞かなかった社員は、無駄な時間を過ごすわけです。ドローンの情報をパワポにまとめるという時間はすべて無駄なわけです。役に立ちませんから。

より良い仕事をしたいので、より本質的な行動「何故ですか?」と部長に聞く。これが「自律型」社員の行動です。

背景、目的を理解して行動する人が意外と少ないという現状があり、クライアントさんの多くが、こういう人を育てる必要に迫られているということです。

ーーWhy思考を持つことでしょうか?

李:自ら目的と役割を理解して、問いを立てて、考えて行動するような「自律型」人間ということです。その中の1つがWhy思考ということです。

自律型人材が求められる背景

ーー企業では、何故そういう人が必要になったのでしょうか?

李:シンプルです。時代の変化が激しくて、正解がどんどん変わっているからです。

これまでは正解がずっと同じでしたから、自律型である必要はありません。

例えば銀行を例にとってみましょう。バブルが崩壊する前までは、取りあえず担保になる物件を見て融資をして、金利で儲けてということがずっと続いてきたわけですが、護送船団方式が崩壊してからはそのやり方が通用しなくなってきました。

銀行はかつては就職ランキング1位でしたが、今は違います。IT企業がどんどん銀行業界に入ってきています。IT企業の方が融資が早いですし、少ない担保で、金利もよかったりします。時代が変われば、お客様のニーズも変わり、異業種であるIT業界に負けることも十分にあり得ます。

正解が変わってきています。銀行もこれまでとは違う事をやるようになってきています。スタートアップと組んで、新しいビジネスの種となるもの、次の飯の種を作っているわけです。

正解が目まぐるしく変わる中、言われたことをやるだけの「自立」した人間だけでは、企業は時代の変化に対応できません。「自律」した人間が増えないとやっていけないです。正解が変わるということに、ピンと気づかないといけないわけです。

社長がスティーブジョブスみたいな人でしたら、正解はわかるかもしれませんが、そうもいきませんから、目的を理解して自分で考える社員の割合を増やす必要があるというわけです。

テクノロジーの変化と価値観の変化

ーー時代の変化が激しく、正解が変わるから、そういう人間が欲しいということですね。時代の変化という意味では、DXということも関係していますか?

李:DXもその中の1つだと思いますし、AIも同様です。テクノロジーの変化というのもあると思いますが、もう一つに価値観の変化もあると思います。

時代の変化が激しくて、正解が変わったとしても、大きな飯の種がずっとあれば、危機意識はそこまでないと思いますが、今はビジネスの飯の種として確固たるものは誰も持っていません。

大手のトヨタでさえ「5年後の車が想像できない」とおっしゃっています。トヨタでは5年後人々の価値観がどういう風に変わって、だからこういう車が売れるというのを考えていくそうですが、今は、5年後何が来ているかわからないのだそうです。

そこで、全張りで展開されているそうです。EV、水素、ハイブリッド、街まで作る。確固たるビジネスモデルはなく、トヨタでさえ、先が見えないくらいですから、一般の企業はもっと見えないと思います。

ーー大企業、中小企業問わず、自律型の人を育てるために教育する必要があるというわけですね。

李:その通りです。そもそもは、自律する必要がなかったわけですよね。管理職は管理型でよかった。性悪説でサボっているかどうかを見ながら、監視をしながら、管理すればよかったんですね。言われたことをやるように、管理するスタイルでずっとやってきましたし、今の管理職が若い時、そういう環境にいましたので、いきなり、自分で考えて、自律といっても中々難しいわけです。野球選手に、明日からサッカーになりますと言われるくらい難しいことなんです。

すぐにできるようなことではないので、時間をかけて始めていかないといけません。すごく良いアイディアが出ても、優秀な人が提案しても、上が管理型ですと優秀な人から辞めてしまいます。管理職がボトルネックになっているわけで、そこを何とか変えたいということです。そもそも管理職が「自律」していないということです。

ーー管理職向けの自律を促すような研修がすごく求められているということですね。

李:そこが、多いですね。また、中小企業の場合は、管理職も中堅社員も若手も丸ごと研修をしたりもします。

カスタマイズされたプログラム

ーー課題に対してどのように解決策を提案されていますか?

李:企業毎に実情や人数や風土が違い、目的も違います。一口に管理職のリーダーシップスタイルを変えるといっても、色々背景が違いますので、クライアントの現状、背景、目的を確認して、プログラムをカスタマイズします。

オーダーメイドで設計されたプログラムを作って、そこに現状、背景、目的を理解した講師を派遣し、どのように「自分事にして気づきを促すか」が設計されたプログラムを各企業さんに提供しています。

そこには、ケーススタディがあったり、ワークがあったり、ディスカッションをする時間もあったりします。

ーープログラムは、画一化されているものではないんですね。

李:ある程度モジュールはありますが、それを組み合わせたり、新しくプログラムを開発したりして提供するという形ですね。

ーーたとえばどういう形でやられているか、具体的な例を教えていただけますか?

李:某金融会社さんでは、マネジメントスタイルを変えたい、上からのリーダーシップスタイルを変えたいという要望がありました。

座学ではなく、腑落ちするようなスタイルで、参加型で気づきを得ることが大切だと思っていますので、体験ワークだったり、心理学を使ったり、モチベーションのメカニズムを提供したりしながら、ケーススタディやワークを中心にやらせていただきました。

部長や支店長に参加して頂き、いかに部下のモチベーション、部下の主体性、やりがいを引き出すようなことをメインとしてやりました。

部長さんを相手に、講師が偉そうに語っても意味がありません。自分で考え、気づき、実践につなげることを後押しするプログラムを作らせていただきました。

レアリゼのプログラムの特長は、マインドに焦点を当てながら、ワークやゲームを使い、気づきを促していくもので、科学的な根拠に基づいて作らせていただいております。参加者の中には、「自分が自然に気づいているという不思議な感覚だった」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

ーー体験ワークというと、ロールプレイングみたいなことですか?

李:ロールプレイングもやります。ゲームもやりますし、ケーススタディーもやりますし、使えるものはすべて使いながら、体験していただきます。大事なのは、理屈で知っているのではなく、「頭ではわかっていても職場では出来ていないということに、自分で気づく」ということです。色々な切り口でカスタマイズしたプログラムで、気づいていただくということをやっています。

ーーワークショップでは、皆さんにどういうことをやってもらいますか?

李:いろいろあります。疑似体験ゲーム、ケーススタディ、映像などを使い、その後互いにディスカッションをしながら深めます。まずは職場ではないことを体験して、「これって職場でも起きているよね」ということを考えるようなワークだったり、ゲームだったりします。自分事化することが大事なので。

ケーススタディーもワークの1つです。疑似体験をして、何らかの気づきを得るようなことをして頂き、「これ、実は職場でも起きていませんか?」を考えてもらい、そこから「これは職場でも起きている」といった気づきを促すようなワークですね。

ーープログラムの内容は、企業毎によって違うということですね。

李:全然違います。狙いが違いますから、プログラムの設計が大事です。決まったパッケージでは、薄い気づきを得られるかもしれませんが、より腑に落ちたというところまでは行かないと思っています。

アプリケーションとOS

ーー企業が独自でやるのは、難しいですよね

李:知識系でしたら可能だと思います。具体的なスキルやテクニックを習得する為のアプリケーション系¹では、社内研修やeラーニングでもよいと思います。

しかし、OS²をアップグレードするのは、eラーニングや社内研修だけでは厳しいと思います。また、第三者が指導する方が素直に聞けることもあります。


¹アプリケーション系:マネジメントスキル、コーチング、専門技術・スキル

²OS:仕事や働くことについての「人間観・世界観・価値観・哲学」

受講者の反応

ーー研修受ける前と後の変化はありますか?企業の反応についてお聞かせください。

李:導入された企業からは、好評いただいており、リピートしていただいております。もちろん全員が変わるわけではありませんが、人事部の担当者様からは「この人難しいなと思っていた人が変わった」というお話をいただくこともあります。

受講生の反応についてですが、某企業さんからは「管理職の受講者ですが、研修後に変わられて、自分からリーダーシップを勉強するようになったり、人事部長が驚いたのは、研修を受けた後に、休日に受講者メンバーで集まって勉強していることです」というように成果を認めていただいております。

ーーロールプレイ型プログラムを自社で実施するのは、難しいですし、外部の専門の方に設計していただいたプログラムで、気づきを得るということでよい循環ができているということですね。

李:そうですね。結局は人が変わらないと始まりません。どんなにテクノロジーが変わっても、それを使いこなすのは人ですから。その人が本質的に自分で立つだけでなく、律するくらいの人でないといけません。

組織の目的が何なのか、自分の目的が何なのか、自分の価値観が何なのか、それに基づいて本質を見抜いて仕事ができるのと、何も疑わず反射的に作業をするだけとでは、全然違うと思っています。

マネジメントスタイルの変革

ーー最後に付け加えたいことなどありましたら、お願いします。

李:「次のビジネスモデルを考えろ」とか「もっと主体的に動け」という言葉をよく聞きますが、言えば言うほど、自律できません。寧ろ自律することを阻害しています。

どんなにすごいビジネスモデルであったり、どんなに優秀な人をヘッドハンティングしても、発意を引き出すような風土で、主体性があって自らが納得して動くような人の集まりでなければ、人的資本を最大限活用できません。

マネージャーのマネジメントスタイルを変えるという根治療法をしないと、制度を変えたり、採用を変えたりしても、自律を阻害するような風土や空気感によって、台無しになります。

また、色々な企業を訪れてみて感じたことは、自律を阻害しているのは実は、経営者と管理職であるということです。管理職は、自身が部下の自律を阻害するボトルネックになっていることを自覚しないと中々難しいと思います。人事部でさえわかっていない場合もあります。

問題解決力だけでなく問題発見力

役員から提示された問題を解決するのは得意でも、どの問題を解くべきかがわからない、これだけ変化が激しい中では、自分で選んで、解くべき問題を自分で発見していくというのは、自律型の人間でなければ難しいといえます。

今の世の中の変化、自分の現状をよく把握して、理想はどういう状態なのか、今の会社、社会の状況とのギャップを埋めるために解くべき問題は何なのかを発見できる管理職は、皆無に近いですので、まずは管理職の「自律」が大事なのかなと思っています。

この変化の激しい時代は、問題解決力よりも、問題発見力が問われています。昔でしたら、モノクロからカラーテレビを作って、ビデオカメラも小さくすれば売れた時代はありましたが、そういう時代ではないですからね。良い物を作れば売れる時代ではないですから。

ーー本日はお忙しい中ありがとうございました。

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