フリーランスという言葉は、行政が提供する補助金や助成金の枠組みでは明確に表記されていないことが多いのが実情です。しかし、フリーランスは働き方の一形態であり、行政上では「個人事業主」として区分されています。フリーランスとして働くためには、開業届を提出し、個人事業主としての手続きを完了する必要があります。従業員を雇用せずに個人で業務を行うため、従業員ゼロの個人事業主として扱われることが一般的です。社会保険や税務の手続きと同様に、行政の補助金や助成金の対象区分を正しく理解することで、申請に迷ったり諦めたりすることなく、支援を効果的に活用することが可能です。
自治体によって提供される支援内容は異なりますが、今回は東京都でフリーランスとして働く人々が活用できる補助金・助成金を例に解説していきます。
小規模事業者持続化補助金 (対象:全国)
2024年10月23日において、小規模事業者持続化補助金の公式ページにおいては、次回公募の実施時期は未定とのことですが、今後再度募集をかける可能性があるため参考のため以下解説します。
全国の小規模事業者が活用できる補助金で、販路開拓や業務効率化のための費用が対象です。具体的には、広告制作費やホームページ制作費用なども補助の対象になる場合があります。
フリーランスの方が小規模事業者持続化補助金を活用するには、以下のようなポイントが役立ちます。
(1) 販路開拓
フリーランスは自ら顧客を見つけ、仕事を獲得する必要があります。この補助金を活用することで、以下のような販路開拓にかかる費用の一部を補助金で賄うことができます。
■ホームページやECサイトの作成・リニューアル
自身のサービスや作品を紹介するホームページやECサイトを新規に立ち上げる、もしくは機能の改善やデザインのリニューアルを行う際の費用を補助。
■オンライン広告の利用
GoogleやSNSなどのオンライン広告費用にも適用可能です。これにより、ターゲット層にリーチしやすくなり、顧客獲得が期待できます。
■チラシやパンフレット作成
オフラインでの販促を考えている場合、チラシやパンフレットの印刷費用も補助対象となります。これらは地元の展示会やイベントで配布し、直接顧客に訴求するのに役立ちます。
(2)業務効率化
日々の業務を効率化し、作業のスピードや精度を高めるためのツール導入も支援されます。これにより、時間を節約し、クライアントへのサービス提供をさらに充実させることが可能です。
■会計ソフトや請求書管理ツールの導入
例えば、会計管理や請求書の発行・管理に便利なソフトウェアの導入費用も補助対象となり、事務作業の負担を軽減できます。
■プロジェクト管理ツールの導入
複数の案件を並行して管理する場合、タスク管理ツールやプロジェクト管理ツールを導入することで、より効率的な運営が可能です。
■業務の一部外注費
サポートスタッフの一時的な雇用や業務の一部を外注するための費用も補助金の対象になるため、必要に応じてサポート体制を強化できます。
(3)新しいサービス・製品の開発
自身のスキルや知識を活かし、新たなサービスや商品を開発するための経費も補助金で支援されます。
■新サービスのプロトタイプ開発
例えば、新たな講座やコンサルティングサービスの内容を開発する場合、そのコンテンツ制作にかかる費用を補助金で賄うことが可能です。
■サンプル制作やテストマーケティング
自身の作品や製品を実際にお客様にテスト提供し、フィードバックを集めるための費用も対象となり、より市場性の高いサービスの提供につなげられます。
補助対象となる経費については、以下から参照できます。
(4)申請方法とポイント
事業内容や将来の計画を明確にして経営計画書を作成することが重要です。商工会議所などの支援を受けながら、具体的な数値目標や成果予測を立てることで、申請が通りやすくなります。
■申請サポート
商工会議所や商工会では申請サポートを行っており、計画書の作成支援や提出までのアドバイスを受けられます。
事業再構築補助金(対象:全国)
第12回の公募期間は、令和6年4月23日(火) ~ 令和6年7月26日(金)18:00まででした。次回第13回の告知は出されておりませんが今後再度募集をかける可能性があるため参考のため以下解説します。
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、需要や売上の回復が見込みにくい状況下で、中小企業等の新たな挑戦を支援するために設けられた制度です。この補助金は、日本経済の構造転換を促進することを目的としています。
概要
次のような取り組みが支援の対象になります。
(1)新市場進出:新たな製品やサービスで新しい市場への参入を目指す取り組み。
(2)事業・業種転換:主な事業や業種を他の分野に転換する取り組み。
(3)事業再編:事業の再編成を通じて、新市場進出や事業転換を図る取り組み。
(4)国内回帰:海外で行っていた製造等を国内に移転し、生産拠点を整備する取り組み。
(5)地域サプライチェーンの維持・強靱化:地域の供給網を強化し、必要不可欠な製品の安定供給を図る取り組み。
この補助金には以下の特徴があります。
(1)補助率:補助対象経費の2/3が補助されます。
(2)補助上限額:最大6,000万円ですが、特定の要件を満たす場合は上限が引き上げられることもあります。
(3)対象経費:建物費、機械装置・システム構築費、外注費、広告宣伝費、研修費などが含まれ、個人事業主でも事業再構築に必要な経費を幅広くカバーします。
事業再構築補助金を申請する場合、以下の申請要件が適用されます。
(1)売上減少要件:申請前の一定期間(通常は直近6か月間や3か月間など)において、売上が一定割合以上(例:10%など)減少していることが必要です。これは、新型コロナウイルスの影響を受けたことを証明する要件です。
(2)事業計画の策定:金融機関や認定経営革新等支援機関と共同で事業計画を策定し、その計画の確認を受ける必要があります。計画には、補助金の使い道や事業再構築の具体的な内容が含まれている必要があり、信頼性の高い計画が求められます。
(3)付加価値額の増加目標:補助事業終了後3~5年で、事業の付加価値額または従業員一人当たりの付加価値額が年平均3.0~5.0%以上成長することを目指す必要があります。個人事業主の場合、従業員数が少ない場合でも、事業全体の収益や価値の向上が見込まれる計画であることが求められます。
申請のポイント
事業再構築補助金を利用する際には、以下のポイントを押さえることが重要です。
(1)申請要件の確認
「売上減少」などの特定要件を満たす必要があります。
売上減少要件においては、直近の一定期間に売上が特定割合以上減少していることを証明する必要があり、確定申告書や収支報告書を活用します。
(2) 必要書類の準備
フリーランスが申請する際には、会社と異なる書類が求められることもあります。特に重要なものは以下の通りです。
- 事業計画書:補助金額に応じて最大10〜15ページ程度の計画書が必要です。
- 認定経営革新等支援機関および金融機関による確認書
- 直近2年間の決算書(2年分を提出できない場合は、1期分のみ)
- 確定申告書や所得税青色申告決算書の控え:個人事業主としての証明となるため必須です。
- ミラサポplusの事業財務情報:経営計画の一環として必要です。
(3)付加価値額要件の達成
事業再構築補助金では「付加価値額要件」を満たすことが求められます。具体的には、補助事業終了後3~5年以内に、付加価値額または従業員一人当たりの付加価値額を年平均3.0~5.0%以上増加させる必要があります。
付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」で計算されますが、フリーランスの場合、「人件費」が計算に含めづらい点に注意が必要です。
フリーランスの方は、特に「人件費」を明確にするための工夫が重要です。自分への給与を「人件費」として計上するため、事業用口座と個人用口座を分け、事業口座から「給与」として定期的に一定額を個人用口座へ振り込む方法が推奨されます。こうすることで、人件費としてカウントしやすくなり、付加価値額要件の達成が容易になります。
(4)売上減少要件の証明
一定期間で売上が減少していることを証明する必要があります。確定申告書や収支内訳書を利用して売上減少を示し、要件を満たすことが重要です。
(5)経営計画の具体性
事業計画が審査で重要視されるため、再構築の方向性を具体的に示すことが必要です。例えば、新規市場進出や事業内容の転換を行う場合、具体的なサービスやターゲットを明確にし、補助金がどのように活用されるかを示すとよいでしょう。
(6)外部の専門機関の協力
認定経営革新等支援機関や金融機関のサポートを受けて事業計画書を確認してもらう必要があります。こうした機関からの助言を受けることで、計画の精度を高め、申請の成功率を上げられます。
(7)申請の加点要素の検討
賃上げ計画や地域への貢献などの加点要素を盛り込むと、採択されやすくなる可能性があります。たとえば、地域経済活性化につながる事業であることを示すことで、加点対象とされる可能性が高まります。
従業員がいないフリーランスの方でも、これらの要点をしっかり押さえて準備することで、補助金の申請に成功する可能性が高まります。
活用方法
事業再構築補助金をどのような用途に活用できるか見てみましょう。
(1)新規事業への挑戦や事業転換
事業再構築補助金は、新しい分野に進出する際の費用や既存のビジネスモデルを刷新するための費用を補助するものです。フリーランスの方も、事業を大きく転換したり、新しいサービスを提供する際に有効です。
(2)新たなスキルやサービスの開発
例えば、既存のビジネスにデジタルスキルを加え、デジタルコンテンツ制作やオンライン講座の提供を開始する場合、それに必要な機材やシステムの導入費を補助金で支援できます。
(3)既存のビジネスモデルのデジタル化・オンライン化
対面のサービスからオンラインサービスに移行するなど、サービスの提供方法をデジタル化・オンライン化する際のシステム導入費やツールの導入費も対象になります。
(4)設備投資やシステム導入にかかる費用の補助
新しいビジネスのために必要な設備やシステムの導入に、事業再構築補助金を利用できます。特に、フリーランスにとって設備投資は負担が大きいため、この補助金は非常に有効です。
- パソコンや機材の購入
新たな分野に参入する際に必要となる機材(パソコン、カメラ、音響機材など)の購入費用を補助金でカバーできます。
- ソフトウェアやツールの導入
新しいサービスを展開するにあたり、専門のソフトウェアや業務効率化ツールを導入する場合の費用も対象です。例えば、動画編集ソフト、デザインソフト、ウェブサイト作成ツールなどの導入に利用できます。
(5)販路開拓やマーケティングの費用
新しいサービスを開始しても顧客に届かないと意味がありません。事業再構築補助金は、販路開拓やマーケティングのための費用も補助対象です。
(6)オンライン広告やSNSマーケティング
新規サービスの宣伝にかかる広告費やSNS広告費用を補助金でまかなうことで、より多くの顧客にリーチしやすくなります。
(7)ホームページやECサイトの制作
新サービスのために新たなホームページを作成する場合や、既存サイトを改良してより多機能にする場合の費用も対象です。特に、オンラインサービスやECサイトで新たな販売チャネルを構築する場合は効果的です。
注意点
事業再構築補助金は大規模な再構築が求められるため、単純なサービスの追加や少額の設備投資ではなく、事業全体を見直す意気込みが必要です。
事業再構築補助金を活用した個人事業主の事例
(1)福井県 鯖江市 株式会社Vivra fleur
美容室が持つ高度な技術や提案力、接客力を活かして、「体験型フォトスタジオ」事業を立ち上げました。子供の魅力を引き出し、非日常的な空間で特別な写真を撮影することで、新しい形の「体験」を提供します。さらに、撮影した写真を迅速にデータ化することで、離れて暮らす家族とも簡単に共有が可能になり、核家族化が進む中でも三世代間の絆やコミュニケーションを深めることを目指しています。この事業を通じて、家族がつながる喜びをサポートする取り組みです。
(2)石川県 七尾市 株式会社下村水産
石川県七尾市で50年間にわたり牡蠣の養殖を行ってきた株式会社下村水産が、「能登かき」を使ったオリジナル商品の開発を通じて事業を再構築する取り組みです。これまでの加熱用牡蠣の卸売に加え、新たに加工品の製造・販売を開始し、小売業へも販路を拡大します。さらに、能登かきのブランド化を進めることで、地域全体の水産業の活性化を目指しています。このプロジェクトは、地元の産業を支える新しい挑戦といえます。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(対象:全国)
18次は令和6年3月27日(水) 17時に締め切られました。19次の告知は出されておりませんが今後再度募集をかける可能性があるため参考のため以下解説します。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)は、賃上げやインボイス制度などの制度変更に対応するため、革新的なサービスや試作品の開発、生産性向上を行う事業者の設備投資を支援する補助金です。個人事業主を含む中小事業者向けに「一般型」と「グローバル展開型」の2種類が用意されています。
一般型:新サービスや新商品の開発、生産プロセスの改善を対象とし、機械装置、システム構築費などが補助対象。枠により補助率は1/2または2/3で、補助上限は750万円から3,000万円です。
グローバル展開型:海外事業の強化を目指す事業者向けで、海外直接投資型、海外市場開拓型、インバウンド市場開拓型、海外事業者との共同事業型の4つの類型があり、補助上限は3,000万円、下限は1,000万円です。
補助金の概要
ものづくり補助金の概要を解説します。
対象者
中小企業や個人事業主で、特にものづくりに関連する業種に従事し、革新性や生産性向上のための設備投資を計画している方が対象です。
製造業以外も申し込み可能です。製造業のための補助金だと誤解されがちですが、「ものづくり補助金」は製造業に限らず、幅広い業種が対象です。形のある「ものづくり」だけでなく、ソフトウェアの導入、知的財産の取得、新しいサービスの提供方式の導入なども対象となるため、多様な設備投資に対応しています。
補助内容
設備投資や試作品開発、システム導入費用などの対象となります。
補助率は1/2から2/3までで、革新性が高い事業ほど補助が手厚くなる傾向にあります。
補助額は通常100万円から1,000万円程度までで、計画の内容や規模に応じて異なります。
補助対象経費について
補助の対象となるのは、機械装置やシステム構築費、技術導入費、運搬費、クラウドサービス利用料、外注費、知的財産権関連費など、指定された「対象経費」のみです。これら以外の経費は補助の対象外となります。
申請方法と手順
GビズIDプライムアカウントを用いて電子申請を行います。
事業計画の策定が求められ、計画の具体性や事業成果の見込みが評価されます。
申請のポイント
申請に必要な主な書類は次の通りです。
- 事業の具体的な内容等
- 賃金引上げ計画を従業員に表明したことを示す書類
- 決算書(直近2年間の貸借対照表、損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表)
- 海外事業の準備状況を示す書類(グローバル展開型のみ)
- 審査における加点を希望する場合に必要な追加書類等
- (経営革新計画承認書・労働者名簿など)
ものづくり補助金の申請にあたっては、具体的な事業計画と目標設定が重要です。申請の準備をしっかりと行い、採択率を上げるために以下のポイントに気をつけましょう。
(1)革新性と成長性を明確に示す
申請するプロジェクトがどのように生産性を高め、成長につながるかを明確に示しましょう。新しい技術の導入や革新性が伝わる内容にすると、審査に有利です。
(2)具体的な数値目標を設定
売上目標や業務効率化による時間短縮など、具体的な数値で目標を設定し、その達成計画を示すことで説得力が増します。
この補助金は、事業の具体的な再構築や新たな革新への投資に役立つものであり、特に事業を大きく変革したい場合に検討する価値があります。
活用方法
「ものづくり補助金」は特に新しいサービスや効率向上を図る設備投資など、事業の成長に役立つ補助金です。フリーランスが活用する場合、以下のような方法が考えられます。
(1)新サービスやプロジェクトの開発
フリーランスの方が新しいサービスやプロジェクトを立ち上げる際、開発に必要な設備投資が補助金の対象となる可能性があります。例えば、新しいソフトウェア開発や、サービスの提供方法を拡張するためのツール導入が補助対象となり得ます。
(2)業務効率を上げる設備投資
業務の効率を高めるための機械やシステムの導入も対象です。例えば、デザイン、動画制作、データ解析などの分野で、より効率的に作業を進めるための専用機器やソフトウェアの導入が考えられます。クラウドサービスの利用費も補助対象となるため、業務効率を上げるためのシステムを積極的に導入できます。
(3)外注費や専門家の活用
専門知識が必要な分野については、外注や専門家に依頼する際の費用も補助対象です。例えば、マーケティングや技術的なサポートが必要な場合、その費用も補助金を活用して賄うことができます。
(4)知的財産権の取得
フリーランスの方が開発した製品やサービスの知的財産権を取得するための費用も補助の対象になります。例えば、商標や著作権の取得、特許の出願費用などが該当します。知的財産権の確保によって、自身のサービスや製品を保護し、将来的なビジネス展開にも役立てることができます。
ものづくり補助金申請から交付までの流れ
(1)申請書類の準備
賃金引上げ計画の証明や決算書、海外事業の準備状況(グローバル展開型の場合)など、指定された書類を用意。採択率を上げるため、書類の精度が重要です。専門家の協力も視野に入れると良いでしょう。
(2) 審査と採択通知
採択委員会による審査が行われ、申請の約4~6割が採択されます。
(3)交付申請
採択後、交付申請を行い、中間監査が入る場合もあります。
(4)補助事業の実施と報告
交付決定後、事業を開始し、実績報告を行います。
(5)確定検査
事務局が費用などを確認し、最終的な交付額が決定します。
(6)補助金請求と受領
確定額に基づき、補助金の請求と受け取りを行います。
(7)事業化状況報告
補助金受領後も、必要に応じて事業の進捗状況を報告します。
補助金申請のサポート
申請手続きには「認定経営革新等支援機関」のサポートを受けることが可能です。これは税務や金融に専門的な知識を持つ認定機関で、税理士や商工会なども含まれます。申請から交付までに1年程度かかるため、認定支援機関の協力も検討すると良いでしょう。
IT導入補助金 (対象:全国)
7次締切分(最終回)が2024年10月15日(火)17:00に締め切られました。次についての告知は出されておりませんが今後再度募集をかける可能性があるため参考のため以下解説します。
中小企業や個人事業主がITツールを導入する際の補助金です。クラウドサービスや顧客管理システムなどの導入にかかる費用が一部補助されます。
概要
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が業務効率化やDXを推進するためのITツール導入を支援する制度です。 この補助金を活用することで、企業は生産性の向上や競争力の強化を図ることができます。
■対象者: 中小企業・小規模事業者など
■目的: 業務効率化やDXの推進、セキュリティ対策の強化
■補助内容: ITツール(ソフトウェア、サービスなど)の導入費用の一部を補助
■補助金の枠組み
IT導入補助金には、企業の目的や状況に応じて以下の5つの枠組みがあります。
(1)通常枠: 自社の課題に合ったITツールを導入し、業務効率化や売上アップをサポートします。
(2)インボイス枠(インボイス対応類型): インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、PC・ハードウェア等の導入を支援します。
(3)インボイス枠(電子取引類型): インボイス制度に対応した受発注システムを商流単位で導入する企業を支援します。
(4)セキュリティ対策推進枠: サイバー攻撃の増加に伴うリスクに対処するため、セキュリティ対策の強化を支援します。
(5)複数社連携IT導入枠: 業務上つながりのある複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツールを導入し、生産性の向上を図る取り組みを支援します。
申請手順
(1)公募要領の確認
公式サイトや交付規程・公募要領を確認し、補助事業についての理解を深めます。
(2) アカウント取得と宣言
「gBizIDプライム」アカウントを取得し、「SECURITY ACTION」宣言を実施します。
(3)経営課題の把握
「みらデジ経営チェック」を活用し、自社の経営課題やデジタル化の進捗状況を見える化します。
(4) IT導入支援事業者とのマッチング
ITツール検索などを利用して、自社の経営課題に合ったITツールとIT導入支援事業者を選定します。
(5)交付申請
必要な書類を準備し、交付申請を行います。
(6)交付決定
申請内容が審査され、交付の可否が決定されます。
(7) ITツールの導入
交付決定後、ITツールの発注・契約・支払いを行います。
(8)実績報告
事業完了後、実績報告を行います。
(9) 補助金の受領
実績報告が承認されると、補助金が交付されます。
(10) 事業実施効果報告
事業実施後、効果報告を行います。
申請のためのポイント
IT導入補助金を受けるためには、導入するITツールの計画が重要です。以下のポイントに留意して申請準備を進めましょう。
(1)導入計画を具体化する
ITツールがどのように業務改善に寄与するかを明確に計画します。例えば、「会計ソフトを導入し、経理業務の負担を軽減して年間100時間の作業時間を削減する」といった具体的な効果を示しましょう。
(2)効果的な目標設定
業務効率化や売上向上など、明確な目標を設定することで、事業計画の説得力が増します。期待される成果を数値化することで、審査での評価も高まります。
(3) IT導入支援事業者と連携する
IT導入補助金の申請は指定の「IT導入支援事業者」を通じて行います。支援事業者と相談し、適切なツールの選定や申請手続きのサポートを受けましょう。
活用方法
フリーランスの方はどのような場面での活用が考えられるでしょうか。以下に活用例をご紹介します。
(1)業務効率化ツールの導入
フリーランスは多くの業務を一人で行うことが多いため、ITツールを活用して作業効率を高めることで、時間を節約し、より多くの仕事に集中することができます。
(2)会計・経理ソフト
フリーランスの方にとって、請求書発行や経費管理、確定申告のための会計処理は負担が大きい業務です。会計ソフトや経理管理ツールを導入することで、手間を大幅に削減でき、効率的に経理業務を管理できます。
(3)プロジェクト管理・タスク管理ツール
複数のプロジェクトやクライアントを抱える場合、タスクや進行状況を可視化するプロジェクト管理ツールが役立ちます。ツールで業務の見える化を進めると、仕事の管理がスムーズになります。
(4) 顧客管理(CRM)システムの導入
顧客管理システム(CRM)を導入することで、顧客とのやり取りや進行中の案件を整理し、顧客関係を効率的に管理できます。
(5)顧客対応の効率化
顧客の情報を一元管理することで、過去の取引内容や問い合わせ履歴を確認しやすくなり、迅速で的確な対応が可能になります。顧客満足度の向上にもつながり、リピーターを増やすことが期待できます。
(6)案件管理と進捗の一元化
各案件の進捗状況やタスクを一元的に管理できるため、プロジェクトの進行がスムーズになり、結果的に生産性を高められます。
(7)ウェブサイトやECサイトの構築・改修
IT導入補助金を活用して、ビジネスのオンラインプレゼンスを強化することも可能です。
(8)ウェブサイトのリニューアル
ビジネスの信頼性を高め、顧客により魅力的に見せるために、ウェブサイトのデザインや機能を向上させることができます。新規顧客の獲得や問い合わせの増加に役立ちます。
(9)ECサイトの構築・運営ツールの導入
物販を行う場合、ECサイトを構築し、顧客が簡単に商品を購入できる環境を整えましょう。ツールを導入し、売上拡大を目指すことができます。
(10)セキュリティ強化ツールの導入
顧客情報や取引データを安全に管理するために、セキュリティ対策も重要です。IT導入補助金は、セキュリティ強化のためのツールやシステム導入にも利用できます。
(11) ウイルス対策ソフトやセキュリティソフト
サイバー攻撃や情報漏洩のリスクに備え、ウイルス対策ソフトやファイアウォールなどのセキュリティソフトの導入が補助対象です。特に顧客の個人情報や重要データを扱う場合、セキュリティ対策の強化は必須です。
(12)バックアップソリューション
データを自動でバックアップするシステムやクラウドストレージサービスを導入し、万が一のデータ紛失に備えることで、業務の信頼性を高めることができます。
東京都創業助成金 (対象:東京都)
第2回 創業助成事業の申請受付は終了しましたが、次についての告知は出されておりませんが今後再度募集をかける可能性があるため参考のため以下解説します。
東京都で新たに事業を始める場合の助成金です。具体的には事業開始にかかる経費や人件費、広告宣伝費などが補助の対象です。
■対象者: 都内で創業を予定している方、または創業から5年未満の中小企業者。
■助成内容: 賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費など、創業初期に必要な経費の一部。
■助成率: 対象経費の3分の2以内。
■助成限度額: 上限400万円。
■助成期間: 交付決定日から最長2年間。
■申請要件
事業計画書の策定: TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援の終了者など、指定された創業支援事業の利用が必要です。
その他: 都内に本店または主たる事業所を有し、活動を行う事業であること。
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業(経営改善計画策定による経営基盤強化支援)(一般コース)(対象:東京都)
この助成金制度は、ポストコロナなどによる事業環境の変化に対応し、既存事業の深化や発展を通じて経営基盤の強化を目指す中小企業および個人事業主を支援する東京都の制度です。本年度の申請期間は令和6年11月1日(金)9時から11月14日(木)16時までで終了しましたが、次回の申請は令和7年1月6日から開始予定です。支援内容は以下の通りです。
■助成対象
既存事業の深化:現在の事業の質を高め、競争力や生産性の向上を目指す取組(例:高性能な機器や省エネ設備の導入、サービスや商品の品質向上)
既存事業の発展:既存事業を基盤に新たな事業展開を図る取組(例:新商品の開発、新たなサービス提供方法の導入、既存事業の知見を活用した新たな取り組み)
■対象条件
売上が2019年以降のいずれかの決算期と比較して減少している、または直近の決算期で損失を計上していること。
計画を作成し、審査で認められた経費が助成対象となります。
■助成内容
助成率:助成対象経費の2/3以内
助成限度額:800万円(千円未満切り捨て)
助成期間:交付決定日から最大1年間
アドバイザー派遣:経営課題に関する助言を行うアドバイザーが最大2回派遣されます
助成金の具体的な活用例
この助成金は、事業者が既存の事業を深めたり、新たな展開を図ったりするための多様な取組に使用できます。例えば以下のようなことに使えます。
高性能機器の導入や省エネ設備の導入:製品やサービスの質を高めたり、効率向上を目指して、省エネ型の空調や照明機器、高性能な製造機器の導入に使用することで、競争力や生産性を強化できる。
品質向上の取り組み:既存の商品やサービスの品質向上を図るために、原材料の見直しや品質管理の強化、パッケージデザインの改善などに投資し、顧客満足度の向上を図れる。
新商品・サービスの開発および販売チャネルの拡大:顧客ニーズに対応する新しい商品やサービスを開発するための開発費や、オンラインショップやモバイルアプリを通じた新たな販路の拡大に使用できる。
マーケティング活動の強化:新規事業展開に合わせたマーケティング戦略や広告活動に投資し、顧客層の拡大やブランド認知度の向上を図ることができる。
このように、助成金は既存事業の成長や新たな挑戦を促進し、経営基盤の強化に活用することができます。
経営力強化支援事業補助金(対象:新宿区)
近年、市区町村レベルで中小企業や個人事業主に寄り添った支援も増えています。ここでは新宿区を例にご紹介します。
新宿区では「経営力強化支援事業補助金」の申請が可能です。この制度は、事業の成長や経営基盤の強化を目指す中小企業および個人事業主に対し、経費の一部を補助するものです。申請期間は本年度、令和6年4月1日(月)から令和7年1月31日(金)まで(消印有効)で、現在も申請を受け付けています。この補助金は最大140万円までの経費をカバーし、以下の事業が対象となります。
(1)経営計画等策定支援
経営計画や販売計画、事業継続計画(BCP)の策定を専門家に依頼する際の経費を補助します。専門家として、行政書士や税理士、中小企業診断士などが含まれます。
例としては、以下が挙げられます。
■事業計画の見直しや新規事業への展開
■売上向上のための販路拡大計画
■デジタル化のアドバイスや特許申請の相談
(2)補助金申請手続き支援
国や東京都の補助金・給付金等の申請代行に関する経費を補助します。
例としては、以下が挙げられます。
■必要な事業計画書や経営計画書の作成支援
■補助金申請に必要な書類作成や代行業務の依頼
(3)販売促進・業態転換支援
新商品の宣伝や広告、新分野への業態転換に係る経費を補助します。
例としては、以下が挙げられます。
■新商品向けのチラシやホームページのリニューアル
■店舗のみからデリバリーサービスの導入
(4)インバウンド対応支援
外国人旅行者向けに多言語対応や店舗設備の改修など、来街者の利便性を高める取組に対する補助です。
例としては、以下が挙げられます。
■メニューや看板の多言語化
■和式トイレから洋式トイレへの改修
(5) 人材確保・定着支援
人材採用に向けた求人活動や職場環境整備、従業員の定着を目指したコンサルティングに関する経費を補助します。
例としては、以下が挙げられます。
■求人用のホームページやパンフレットの作成
■職場環境の改善や社員研修制度の導入
(6) IT・デジタル対応支援
業務効率化やデジタル化のためのIT導入に係る経費を補助します。年度上限80万円までが対象です。
例としては、以下が挙げられます。
■POSレジやクラウド管理システムの導入
■名刺管理、顧客管理のクラウド化
(7)設備等購入支援
省エネ設備や生産性向上のための設備購入を補助します。こちらも年度上限80万円までが対象です。
例としては、以下が挙げられます。
■冷蔵庫や空調設備の省エネ更新
■生産性を上げるための包装機や食器洗浄機の導入
(8)展示会等出展支援
販路拡大を目的とした展示会や見本市等への出展にかかる経費を補助します。
例としては、以下が挙げられます。
■出展小間料や小間装飾費、オンライン展示会用コンテンツ制作費
対象事業者の要件
■法人の場合:新宿区内に本店があり、法人税などを滞納していないこと
■個人事業主の場合:新宿区内に事業所を持ち、個人事業税等を滞納していないこと
この補助金は、経営強化の多様なニーズに対応し、経営の安定化や発展をサポートすることを目的としています。
最後に
フリーランスとしての働き方が広がる中で、補助金や助成金の活用は大きなサポートとなります。個人事業主としての立場を正しく理解し、自分に合った制度を見極め、しっかりと申請手続きを行うことで、さらなるビジネスの成長が期待できます。支援を有効に活用し、経費負担の軽減や業務の効率化、新しい事業の展開に向けた一歩を踏み出しましょう。自身のスキルや知識を最大限に発揮し、補助金を活用してフリーランスとしてのキャリアを一層強化していくことができます。
※参考文献
事業再構築補助金 第11回公募 採択案件一覧