日本の自治体財政は、表面的には大きな混乱が見えにくいものの、内部では確実に危機が進行しています。景気回復は鈍化し、地域経済の縮小は止まらず、人口減少と高齢化が加速する中で、自治体が負担する社会保障費は年々増加を続けています。こうした支出増は義務的経費であり、削減が難しい性質を持っています。そのため、自治体が自由に使える財源は急速に狭まり、政策選択の幅は以前よりもはるかに限定されている状況です。
その一方で、多くの自治体では「緊縮」という言葉は使われていません。しかし実際には、目立たない部分で事業縮小や投資抑制が進む、いわば「見えない緊縮財政」に突入しています。新規事業が立ちにくくなり、公共施設の更新が先送りされ、地域サービスが少しずつ縮小していく――これらは財政悪化のサインですが、住民からは分かりにくいため、問題が表面化しないまま蓄積しがちです。
こうした状況の中、岩手県盛岡市が全事務事業を対象とした大規模な精査に踏み切ったことは、全国の自治体の中でも際立つ動きです。単なる単年度の歳出削減にとどまらず、自治体の財政構造そのものを見直すという踏み込んだ改革に着手した背景には、
- 扶助費の急増、
- 将来の基金枯渇の見通し、
- 人口減少による税収縮小、
といった構造的課題があります。
本稿では、盛岡市がなぜ今このタイミングで全事務事業の精査に踏み切ったのか、そしてその動きが全国的な財政潮流とどのように連動しているのかを分析します。静かに進行する財政危機の実態を明らかにしながら、自治体が持続可能性を確保するために必要となる視点を考察していきます。
盛岡市の現状:急増する扶助費と将来財政の危機

盛岡市の財政は、少しずつ「余裕がなくなる方向」に動いています。背景にあるのは、生活や子育て、福祉を支える扶助費の増加です。ここでは、予算の数字から“何が起きているのか”を確認します。
数字で見る財政の圧迫
盛岡市は約28万人の岩手県の県都で、行政・経済・文化の中心として東北における中核都市の役割を担っています。その盛岡市において、将来財政が悪化することが見込まれており、最大要因の一つが、社会保障関連支出の中核である扶助費の増加です。2000年代以降、扶助費は一貫して増え続けており、近年は市の歳出構造に大きな影響を与える規模に達しています。
2024(令和6)年度当初予算における扶助費は約355億円(35,548百万円)となり、一般会計歳出総額(約1,213億円)に占める割合は約29%に達しています。扶助費はわずか5年間(令和元年度→令和6年度)で約12%増、金額にして約36億円も膨らんだことになります。
(扶助費の推移:R元 31,869百万円 → R6 35,548百万円)
扶助費には、生活保護費、障害福祉サービス、認定こども園運営費、児童手当、保育関連経費など、市民生活に直結する福祉支出が含まれます。これらは「義務的経費」であり、景気対策や公共事業のように柔軟に削減することが難しい性質を持っています。
その結果、市が自由に使える一般財源の余力は年々縮小しており、公共施設の更新、地域交通の維持、子育て支援、産業政策など、将来に必要な投資が後回しにならざるを得ない状況が続いています。
財政指標を見ても、扶助費の増加が市の予算構造を直接的に圧迫していることは明らかであり、すでに政策選択の幅は大きく限定されていると言えます。
毎年公表されてきた中期財政見通し
盛岡市は毎年度、「中期財政見通し」を公表してきました。その中で一貫して指摘されてきたのが、歳入増以上に歳出が増加し続ける構造的な収支不足です。
最新の見通し(令和8〜12年度)では、各年度で収支不足が発生し、特に令和12年度には約36.6億円の大幅な赤字に達することが示されています。
この不足分を補うために財政調整基金を取り崩した場合、令和12年度末には基金残高がマイナス4.0億円に転落し、実質的に枯渇すると試算されています。
財政調整基金は、景気変動や災害などの不測の事態に備えるための“クッション”として位置づけられています。その残高が底をつき、さらに赤字に転じるという事態は、将来の政策選択の余地を著しく狭めることを意味します。
つまり、今回の財政悪化は突発的に生じたものではなく、数年前から一貫して「警告されてきたリスク」であったと言えます。
市民サービスの見直しや事業の選択と集中といった措置も、この収支構造や基金の推移からみれば、すでに不可避な段階に入っていたと評価できます。むしろ、資料が示すところでは、こうした対応は先送りされてきた側面すらあると言えます。
全事務事業を対象とした精査は、自治体としても異例の踏み込んだ改革
盛岡市は深刻化する財政状況に対応するため、全ての事務事業を対象にした一斉精査と、その結果に基づく見直しに踏み込んでいます。この改革は、市が抱える幅広い事業を総点検し、必要性や優先度を再評価するもので、事業規模・対象範囲の広さという点で、自治体としても踏み込んだ取り組みといえます。
公式には、まず123事業について具体的な見直し案の検討が進められており、廃止・縮小・統合などを含む抜本的な再編が視野に入っています。ただし、市はこの123事業に限らず、全事務事業を精査の対象としており、中長期的には行政サービス全体の構造改革を進める姿勢を明確にしています。
市長は今回の施策について「短期的には厳しい判断も伴うが、将来世代の負担を軽減し、持続可能な市政運営を実現するために不可避の改革」であるとの考えを示しています。ここで重視されているのは、単なる事業削減ではなく、“将来世代を優先した財政構造への転換”という視点です。
人口減少や社会保障費の増加、公共施設の老朽化など、盛岡市が直面する課題は年々深刻さを増しています。限られた財源をどの事業に振り向けるかという選択は避けられず、すべての事務事業を対象とした精査は、そうした厳しい現実に向き合うための土台となります。
行政サービスの見直しは、市民に短期的な不便をもたらす可能性があります。しかし、先送りを続ければ将来世代が抱える負担はさらに増大します。今回の改革には、“持続可能な行政運営への転換”を優先するという明確な問題意識が反映されています。
盛岡市が目指す方向性:「より優しく、より強い盛岡」

厳しい財政状況が見込まれる中でも、盛岡市は単なる削減一辺倒ではなく、将来像として「より優しく、より強い盛岡」を掲げています。財政再建を進めながらも、暮らしを支え、まちの活力につながる分野への投資をどう維持するのか。ここでは、市が示す方向性を整理します。
財政再建と同時に未来への投資を継続
盛岡市の財政は今後数年間にわたり厳しい状況が続くと見込まれていますが、市は「より優しく、より強い盛岡」という将来像の実現に向け、単純な歳出削減に寄せた緊縮路線だけには踏み込まない姿勢を示しています。
市の予算方針や説明資料では、財政再建に向けた取組みを着実に進めつつも、地域の活力創出や生活の質の向上につながる分野への投資を可能な範囲で維持する方針が明確に示されています。
その背景には、人口減少や地域経済の縮小といった構造的課題に対応するためには、必要な支援や施策まで一律に縮減すれば、かえって将来的な行政コストの増大や市民生活の停滞を招くという認識があります。
市は事業の整理・統合を進める一方で、子育て支援、中心市街地の活性化、公共交通の維持・改善、防災・減災、さらには地域産業の振興など、中長期的な都市の持続可能性に直結する領域には一定の資源を投入し続けています。
また、現状の財政危機を単なる「削るべきコストの増加」と捉えるのではなく、行政サービスの提供方法の再設計やデジタル活用の拡大、官民連携の深化など、施策の質と効率を高める契機と捉えている点も特徴的です。単に事業を削減するのではなく、「減らすべきもの」と「未来の成長につながるもの」とを仕分け、限られた財源をより効果的に配分していく考え方が強調されています。
このように、盛岡市は財政の健全化を避けて通ることはできないとしつつも、将来への投資を止めないことで都市としての活力を維持し、長期的な収支改善につなげようとする“選択と集中”のアプローチを採用しています。
単なる緊縮とは異なる、持続可能性と成長の両立を目指す姿勢こそが、「より優しく、より強い盛岡」というビジョンを支える基盤となっています。
持続可能な自治体運営の基盤づくり
盛岡市がもう一つの重点として掲げているのが、持続可能な自治体運営の実現です。人口減少と高齢化が進む中で、市役所内部の組織改革は避けて通れない課題となっています。
職員数が減少する状況下でも市民サービスの質を維持するためには、業務プロセスの見直しやデジタル化が求められています。行政手続きのオンライン化、AI・RPAの活用、庁内の働き方改革など、限られた人的リソースで最大の行政効果を発揮するための取り組みが進められています。
さらに、市は財政再建を歳出抑制だけに頼るのではなく、歳入を拡大することで持続可能な財政運営を実現しようとしています。未利用市有地の活用、企業誘致、観光振興による収入増、関係人口の拡大など、多面的な取り組みを通じて「自ら稼ぐ力」を高める方向性を打ち出しています。
これらの施策は、従来の「地方自治体=国の交付金に依存する構造」から脱却し、市が主体的に財源を生み出すための基盤づくりです。都市間競争が厳しくなる中で、盛岡市が将来にわたり安定した行政サービスを維持するためには、こうした財源確保の戦略が重要な位置を占めています。
総じて、市が目指しているのは、生活を支える福祉と強靭な財政運営を両立させる都市モデルです。財政的な制約の中でも市民生活を守りつつ、将来への投資を継続する姿勢が鮮明になっています。
全国の「緊縮財政に踏み込んだ自治体」の実情

盛岡市が現在取り組む大規模な事業精査や財政再建は、決して孤立した動きではありません。人口減少・社会保障費の増加・インフラ老朽化という構造的課題は全国の自治体が直面しており、すでに多くの都市が緊縮路線へ舵を切ってきています。以下では、象徴的な事例を比較しながら、財政悪化がどのように顕在化し、どのような選択が迫られるのかを整理します。
夕張市:最も象徴的な財政破綻例
夕張市は2007年に財政再生団体(実質的な財政破綻)となりました。財政破綻後、市は前例のない大規模な緊縮政策を余儀なくされ、以下のような市民サービスの縮小が行われました。
- 市立病院の閉鎖
- 公共施設の大幅縮小・民間譲渡
- 市職員数の半減
その結果、行政サービスは“最低限”にまで削減され、市民生活への影響は極めて大きいものとなりました。夕張市の事例は、財政悪化が徐々に進行するように見えても、ある時点から一気に顕在化するという重要な教訓を残しています。自治体が財政調整基金の減少などの初期兆候を軽視すると、手立てが遅れ、抜本的な緊縮に追い込まれる可能性が高いのです。
北九州市:人口減少と財政負担の深刻化
北九州市では、高齢化率が30%を超え、人口減少が長期的に続いています。こうした中で、1970〜80年代に整備された公共施設の老朽化が進み、更新・維持に必要なコストが急増しており、市の財政運営は一段と厳しさを増しています。
この状況を踏まえ、市は「選択と集中」を掲げ、行政サービスや都市インフラのあり方を段階的に見直しています。具体的には、
- 公共交通(市営バスなど)の運営見直し
- 体育館・文化施設など市有施設の再配置(集約・機能転換)
- 指定管理者制度の活用拡大による運営効率化
といった取り組みが進められています。
北九州市が抱える課題は、人口減少が進む都市に共通する構造問題を象徴しています。すなわち、増え続ける扶助費と老朽化施設の更新費という二重負担が財政に重くのしかかり、「都市規模を維持するか」「縮小に適応するか」という難しい判断を迫られているのです。
神戸市:震災復興に伴う長期的な財政負担と財政運営の見直し
1995年の阪神・淡路大震災後、神戸市は復旧・復興のために多額の財源を必要とし、その過程で市債残高が大きく増加しました。震災前に比べ、市債残高は大幅に拡大し、ピーク時には約1.8兆円規模に達したとされています。こうした債務増大は、震災後の長期にわたり市の財政運営に影響を与え、公共投資の余力を一定程度制約する要因となりました。このような財政環境を踏まえ、神戸市は次のような取り組みを進めてきました。
- 公共施設の再編(統廃合・複合化)
- 上下水道料金の見直し
- 財政調整基金の積立強化
- 行財政改革による組織や事業の見直し
神戸市の事例は、大規模災害が自治体の財政に長期間影響を及ぼすこと、そして復興後も持続可能な財政マネジメントが求められることを示す典型例と言えます。ただし、これらの施策は震災関連債務だけでなく、少子高齢化や社会資本老朽化など、幅広い要因を踏まえて行われている点にも留意が必要です。
奈良県:少子化・高齢化が進む中での公共施設マネジメントと財政運営の見直し
奈良県では、少子化・高齢化の進行により、公共施設の利用需要の変化や老朽化施設への対応が課題となっています。県は「公共施設等総合管理計画」に基づき、施設の長寿命化や統廃合、更新費用の平準化に取り組むなど、限られた財源の中で効率的な維持管理を進めています。
また、県財政においては、安定的な税源確保を目的として観光振興を重要な政策分野に位置づけています。観光消費額の拡大や周遊促進などを通じて地域経済を強化し、税源涵養につなげようとする取り組みが進められています。
こうした状況のもと、奈良県は次のような「選択と集中」を伴う政策を展開しています。
- 公共施設の最適化(統廃合や長寿命化の推進)
- 需要の高い分野への重点投資(子ども・教育、地域サービスなど)
- 観光政策の高度化による地域経済の底上げと税源涵養の強化
奈良県の事例は、人口構造の変化と財源制約が重なる中で、どの分野に資源を投入し、どの分野を見直すかという自治体経営上の選択が求められていることを示しています。
芦屋市:財政力のある自治体でも避けられない構造的な支出増
芦屋市は「富裕層が多く、財政基盤が比較的強い自治体」として知られています。しかし、近年は高齢化の進行に伴い、医療・福祉などの扶助費が増加しており、市の財政余力は確実に縮小しつつあります。実際、令和5年度決算では、雑収入の減少に加え、公債費・扶助費などの増加が報告されています。
こうした状況を踏まえ、市は持続可能な財政運営の確保に向けた取り組みを進めており、以下のような方向性が示されています。
- 公共サービス提供の効率化
- 公共施設運営の見直し(指定管理者制度の活用を含む検討)
- 歳出の抑制と基金の計画的な確保
芦屋市の事例が示すのは、財政力が相対的に高い自治体であっても、人口構造の変化と社会保障費の増大という全国共通の課題を避けることはできず、多くの自治体で財政運営の見直しや効率化が進んでいるという現実です。
総括:盛岡市も「全国的な流れ」の中にある
これらの事例から明らかなのは、以下の2点です。
- 財政悪化は特定の自治体固有の問題ではなく、全国に共通する構造課題であること。
- 早期の対応を怠ると、夕張市のように“急激な緊縮”を迫られるリスクが高まること。
盛岡市の事業精査や財政再建の取り組みは、この全国的潮流の延長線上に位置しています。財政健全化と未来投資の両立という難しい課題に挑む姿勢は、他都市の教訓を踏まえた戦略的判断といえます。
全国自治体が直面する共通課題

日本の地方自治体は現在、かつて経験したことのない複合的な課題に同時直面しています。財政悪化の進行は盛岡市だけでなく、多くの自治体に共通する構造問題であり、個別の努力だけでは克服が難しい深層的な要因を含んでいます。本章では、その中核をなす4つの課題を整理します。
扶助費(社会保障費)の急増
全国の自治体で財政を大きく圧迫している要因の一つが、扶助費(社会保障関連経費)の増加です。扶助費は、生活保護、児童福祉、高齢者福祉、障がい者福祉など住民への直接給付を中心とした経費であり、高齢化の進展や制度改正の影響を受けて年々増加しています。
総務省「地方財政白書」などに示される地方財政の動向によれば、自治体歳出に占める扶助費の割合は長期的に上昇しており、2000年代以降、一貫して増加基調にあります。とくに市町村では、扶助費が人件費や公債費と並ぶ“主要な義務的経費”として財政の硬直化を招いている点が指摘されています。
この傾向は都市部・地方を問わず広く見られ、地域差が比較的小さいことも特徴です。多くの自治体で、社会保障関連支出の増大が、将来の投資的経費や地域活性化施策に充当できる財源を圧迫する深刻な課題となっています。
公共施設の老朽化
次に深刻化しているのが、公共施設・インフラの老朽化です。
学校、役所庁舎、上下水道、道路、橋梁、体育館など、多くの公共施設は1970〜1990年代に集中的に建設されました。これらは現在、耐用年数の更新期を一斉に迎え、いわゆる「更新費用のピーク」が急速に近づいています。
しかし、施設更新には莫大な費用が必要であり、多くの自治体ではその費用を十分に確保してこられませんでした。特に、人口減少が続く地域では施設の利用率も下がり、「建て替えるべきか/縮小・統廃合すべきか」という難しい選択が迫られています。
もはや全国の自治体が現行規模の公共施設を維持し続けることは困難であり、老朽化問題は今後数十年にわたり財政を圧迫する最大のテーマとなります。
人口減少による税収の縮小
地方自治体の税収基盤は人口に大きく依存しています。特に中核市規模であっても、人口減少が進めば住民税・固定資産税・消費関連税収が減り、財政運営に対して慢性的な“重力”として作用します。
国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口(2023)」などのデータに基づく報道によれば、2040年にかけて多くの地方自治体で人口減少が急速に進む見通しです。人口が現在より20%以上減少する自治体が全国で過半数に及ぶ可能性が報じられており、地域社会の存続や地方自治の運営に深刻な影響が懸念されています。
人口が減ると労働力不足が加速し、地域産業の衰退につながります。若者流出が続く自治体では企業の事業継続が困難になり、地域経済の縮小がさらに税収減を招くという悪循環が発生します。
人口減少が単なる社会現象にとどまらず、「財政危機の直接要因」として作用していることが、全国的に共通した懸念となっています。
今後さらに必要となる「行政の効率化」

こうした構造問題に対応するため、多くの自治体が行政運営の効率化に踏み出しています。今後、地方自治体が生き残るためには、従来の組織やサービス提供のあり方を根本から見直す必要があります。
代表的な施策としては、以下の三つが挙げられます。
事務のデジタル化
窓口業務のオンライン化、手続きの電子化、AIやRPAを活用した事務処理の自動化など、自治体DXの動きが加速しています。デジタル化は人員不足を補うだけでなく、市民サービスの質向上にも寄与します。
民間委託・PPP/PFI の拡大
施設管理、公共交通、給食、上下水道など、民間との協働(PPP)や民間資本の活用(PFI)が広がっています。財政負担を抑えつつサービス維持を図るためには、民間の効率性や技術を取り込むことが不可欠となっています。
市町村間連携(広域連携)
人口減少や少子高齢化の進行により、単独の自治体だけでは行政サービスを安定的に維持することが難しくなるケースが増えています。こうした状況を受け、消防・ごみ処理・公共交通などの分野では、複数自治体が連携して事務を共同で実施する「広域連携」が全国的に広がっています。
現在、多くの自治体が広域連合や一部事務組合、広域協議会など、何らかの広域的な枠組みに参加し、行政サービスの効率化や持続性の確保に取り組んでいます。
総括:課題は“全国的な構造問題”、盛岡市もその渦中にある
以上の4つの課題は、自治体ごとに程度の差はあるものの、全国に共通する構造的な問題です。盛岡市が事業精査や財政改革に踏み切った背景には、まさにこうした全国的潮流があります。つまり、盛岡市の対応は特異なものではなく、人口減少時代の自治体が生き残るために不可欠な政策選択であり、他都市でも同様の動きが加速しています。
“緊縮財政化=悪”ではない:必要なのは「未来に残る選択」

財政が厳しくなると、「緊縮」という言葉がしばしば否定的に語られます。しかし、自治体運営においては、緊縮そのものが悪ではありません。むしろ重要なのは、どの分野を縮小し、どこに投資を続けるのかという“選択の質”です。
盛岡市のように、
- 事務・事業の大胆な棚卸し(非効率の削減)
- 歳入を増やす政策(稼ぐ自治体化)
- 未来への投資の維持(教育・交通・産業など)
を同時に進めようとする自治体が近年増えています。この潮流は、人口減少時代における「持続可能な自治体モデル」を模索する動きの一環ともいえます。
未来投資を削る緊縮は「破綻への道」
財政が厳しいからといって、安易に未来投資を削減すると、その影響は中長期的に自治体の活力を奪います。教育、子育て支援、公共交通、産業政策、都市魅力の向上といった領域は、税収基盤の維持・人口流出の抑制・地域経済の再生に直結しています。
これらを削る緊縮は、一時的には財政指標が改善するように見えても、以下のような“破綻の連鎖”を招きかねません。
- 若者の流出加速 → 人口減少の加速
- 産業の衰退 → 企業流出・雇用縮小
- 交通や公共サービスの低下 → 住み続ける魅力の喪失
- 結果として税収が縮小 → さらに財政悪化
つまり、未来投資を止める緊縮は、長期的には自治体自身の首を絞めることにつながります。財政規模を縮小する局面でも、「将来の成長に寄与する支出」を明確に守ることが重要です。
一方で事業見直しなしの拡張は「財政破綻の道」
逆に、既存事業を見直さずに新規施策や拡張政策を重ねると、自治体は急速に財政破綻に近づきます。多くの自治体で問題になっているのは、
- 過去に作った事業が惰性で続いている
- 施設数が人口規模に対して過剰なままである
- 効果の薄い補助金やイベントが継続している
- 高コスト施設が更新期を迎えているのに整理されない
という構造的な硬直です。
これらを整理せず拡張を続ければ、夕張市のように「見える化した時にはもう手遅れ」という状態に陥ります。財政の持続可能性を確保するには、事業の棚卸しと優先順位づけが不可欠であり、これは行政の痛みを伴う判断を避けられません。
“どのサービスが本質的か”を見定める自治体経営の時代へ

人口が増え続けた時代とは異なり、これからの自治体は限られた財源の中で「何を残し、何を手放すのか」を戦略的に判断する時代に入っています。つまり、問われているのは“緊縮するか否か”ではなく、“どの分野に資源を集中させるか”です。
盛岡市が進める改革が示しているのは、
- 行政効率化により“無駄を削る”
- 歳入増加策で“財源を生む”
- 未来への投資で“地域の成長力を確保する”
という三位一体のアプローチが、人口減少期の自治体にとって最も合理的な戦略であるということです。緊縮財政は必要な局面で有効な手段となり得ますが、それは目的ではなく、持続可能な地域社会を残すための選択にほかなりません。
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