転職が当たり前になっている現在、企業は優秀な社員の流出を防止しなければいけません。優秀な社員は成長意欲があるため、そのような人材の流出を防止するためには、キャリアアップを実現できる環境を作らなければいけません。
しかし、キャリアアップを実現できる環境を整備するにはコストがかかります。このようなコスト負担に悩んだら、キャリアアップ促進に活用できる助成金を利用しましょう。
この記事では、中小企業がキャリアアップを促進した場合に活用できる「キャリアアップ助成金」と「人材確保等支援助成金」について詳しく解説します。
キャリアアップの助成金(1) キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者(有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者)のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇の改善に取り組んだ企業に支給される助成金です。
対象条件
キャリアアップ助成金の対象条件は、キャリアアップ管理者を置き、以下の取り組みを行った雇用保険適用事業者です。
- 正社員化コース:非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換して雇用する
- 賃金規定等改定コース:非正規雇用労働者の基本給を改定して2%以上の増額をする
- 賃金規定等共通化コース:非正規雇用労働者と正規雇用労働者との共通の賃金規定を規定する
- 賞与・退職金制度導入コース:非正規雇用労働者を対象に賞与・退職金制度を導入する
- 選択的適用拡大導入時処遇改善コース:被用者保険の適用と働き方を見直す
- 短時間労働者労働時間延長コース:非正規雇用労働者の労働時間を3時間以上延長して社会保険を適用する
支給額
キャリアアップ助成金の支給額は、各コースによって変動します。また、条件を満たすと加算措置が講じられます。
■正社員化コース
一般 | 非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換 | 57万円 |
無期契約雇用労働者を正規雇用労働者に転換 | 28万5,000円 | |
加算措置 | 派遣労働者を正規雇用労働者として直接雇用する | 28万5,000円 |
対象者が母子家庭や父子家庭 | 9万5,000円 | |
人材開発支援助成金の特定訓練を終了させた | 9万5,000円 | |
勤務地限定、職務限定、短時間正社員制度を導入した場合 | 9万5,000円 |
■賃金規定等改定コース
一般 | 賃金規定等改定コース | 1~5人:32,000円/人
6人以上:28,500円/人 |
加算措置 | 3%~5%の賃金の増額改定した場合 | 14,250円/人 |
5%以上の賃金の増額改定した場合 | 23,750円/人 | |
職務評価の手法の活用により賃金の増額改定した場合 | 19万円/1事業所 |
■賃金規定共通化コース
一般 | 賃金規定共通化コース |
57万円/1事業所
|
■賞与・退職金制度導入コース
一般 | 賞与・退職金制度導入コース |
38万円/1事業所
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加算措置 | 賞与制度と退職金制度を同時に導入した場合 | 16万円/1事業所 |
■選択的適用拡大導入時処遇改善コース
一般 | 選択的適用拡大導入時処遇改善コース |
19万円/1事業所
|
加算措置 | 社会保険の被保険者となった労働者の基本給を上げた場合 |
19,000円/人 ※基本給の増額割合で変動 |
研修制度や人事評価を導入した場合 | 10万円/1事業所 |
■短時間労働者労働時間延長コース
一般 | 短時間労働者労働時間延長コース |
22万5,000円/人
|
加算措置 | 手取り収入が減らないように基本給を上げた場合 | 55,000円/人 |
申請方法
- 各コースの実施日の前日までに、キャリアアップ計画書を作成して「都道府県労働局」へ提出して認定を受けます。
- キャリアアップ促進に取り組み、6ヵ月分の賃金を支払った翌日から起算して、2か月以内にキャリアアップ計画書の認定届と必要書類を用意して、助成金の申請手続きをします。
【必要書類】
- キャリアアップ助成金支給申請書(認定書)
- 支給要件確認申立書
- 支払方法・受取人住所届
- 転換前後の就業規則または労働協約等
- 転換前後の雇用契約書または労働条件通知書等
- 転換前後の賃金台帳等
- 賃金増額に係る計算書
- 対象労働者の転換前後の出勤簿
キャリアアップ助成金の申請先である都道府県労働局は、「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」で確認してみてください。
キャリアップの助成金(2)人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、魅力ある職場づくりを行った事業所に支給される助成金です。キャリアアップ関連の助成金に利用できるものとして「建設キャリアアップシステム等普及促進コース」があります。
対象条件
建設キャリアアップシステム等普及促進コースは、中小建設事業者が、建設労働者の技能の向上などを図った場合に受けられます。
【対象となる技能実習】
- 安衛法による教習及び技能講習、特別教育を実施した
- 能開法による技能検定試験のための事前講習を実施した
- 建設業側による登録基幹技能者講習を実施した
- 教育訓練給付金の対象となる技術検定に関する講習を実施した
支給額
建設キャリアアップシステム等普及促進コースの助成額は、建設事業者の労働者数で変動します。
労働者20名以下の中小建設事業主 | 【一般】8,550円/人
【CCUS登録者数(※)】9,405円/人 |
労働者21名以上の中小建設事業主 | 【一般】7,600円/人
【CCUS登録者数】8,360円/人 |
※技能者が、技能・経験に応じて適切に処遇される建設業を目指して、技能者の資格や現場での就業履歴等を登録・蓄積し、能力評価につなげる仕組みを整備している中小建設事業主のこと。
申請方法
建設キャリアアップシステム等普及促進コースの助成金の支給手続きを以下の流れで行います。
【支給手続きの流れ】
- キャリアアップ計画書を作成する
- 実施日の2週間前にキャリアアップ計画書と事業目標・効果検証報告書を労働局へ提出する
- キャリアアップ促進に取り組む
- 助成金支給の申請書と検証結果の報告書を提出する
建設キャリアアップシステム等普及促進コースの助成金の申請先である都道府県労働局は、「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」で確認してみてください。
(参考資料:厚生労働省「人材確保等支援助成金 建設キャリアアップシステム等普及促進コース概要」)
まとめ
今回は、中小企業がキャリアアップを促進する場合に活用できる「キャリアアップ助成金」と「人材確保等支援助成金」について解説しました。
主体性に富み、成長意欲が高い優秀な人材の流出を防止するためには、キャリアアップができる職場環境を整備しなければいけません。職場環境の整備にはコストがかかりますが、キャリアアップ助成金を活用すればコストの負担が軽減できます。
この記事では、キャリアアップ促進に活用できる助成金をご紹介したため、ぜひ、これを機会に利用してみてください。
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