インバウンド需要を予測する

2023年以降のインバウンド需要を予測する

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2022年はインバウンド需要が徐々に回復し、主に宿泊業や百貨店などの小売業においても、コロナ前以上の売上水準を記録したという話が散見されました。インバウンドをめぐる経済状況は現在は好調なのでしょうか?また2023年以降のインバウンド需要はどのような経過をたどっていくと予測されているのでしょうか。

本記事では、これまでの日本のインバウンド政策や水準を振り返りつつ、昨今のインバウンド需要の増加について、要因と展望を考えていきます。

インバウンド需要をめぐる近年の動向

新型コロナウィルスの流行をきっかけに大きく減少してしまった外国人観光客ですが、それ以前は、日本のインバウンド需要はどのような状況にあったのでしょうか?

訪日外国人のデータや政府のインバウンド施策などを元に、まず日本のインバウンド需要をめぐる状況を時系列に確認していきましょう。

2019年までは7年連続で順調に増加

実は訪日外国人旅行者数は、2019年まで7年連続で過去最高を更新していました。

東日本大震災で一度落ち込みはあったものの、日本政府があらゆる側面からインバウンド政策を積み重ねてきたからこそ、このように好調に推移してきたと考えられます。

ビザの戦略的緩和や訪日外国人旅行者向けの消費税免税制度の拡充、航空・鉄道・港湾等の交通ネットワークの充実に加え、さらには多言語表記をはじめとする受け入れ環境の整備、魅力的なコンテンツの造成、日本政府観光局による対外プロモーションなど、その施策は多岐に渡ります。

2013年には1,036万人だった外国人旅行者数は、2019年には3,188万人とおよそ3倍に推移していたのです。

こうしたさまざまな取り組みが一気に結実する大きな目玉イベントとして、2020年の東京オリンピックが見据えられていました。

都内の宿泊業や交通機関なども2020年を目指して開業やリニューアルが相次いでおり、インバウンドの受け入れ体勢はまさに整いつつあったと言えます。

2020年の新型コロナウイルス流行でインバウンドは激減

このようにそれまで順調に推移してきたインバウンド数でしたが、2020年1月以降、日本でも新型コロナウィルス感染者数は急増し、水際対策が強化されたことで激減します。

2020年は、国内においても緊急事態宣言や外出自粛、休業要請などが続き、観光についても、水際対策の徹底に加え、移動の制限や消費者の旅行控えの動きが世界的に一般化しました。これを受けて日本国内のみならず、世界各国の経済状況は非常に厳しい局面を迎えました。

2019年までは、7年連続で過去最高を更新していた訪日外国人旅行者数も、2020年は前年比87.1%減の412万人となりました。

繰り返される緊急事態宣言の中で停滞するインバウンド需要

その後、流行当初に比較すると、いわゆるウィズコロナの生活様式が一般化し、人々の行動制限も多少緩和されました。

一方で、変異株の不規則な流行に伴って緊急事態宣言も度々発令され、緩やかに制限された暮らしが続いたのが2021年から2022年前半の様子と言えるでしょう。

ビジネスや留学など目的を持った渡航は条件付きで認可されつつも、旅行目的の外国渡航や来日は引き続きあまり目立ちませんでした。

その結果、2021年の訪日外国人数は、2020年をさらに大幅に下回るおよそ24.5万人となりました。これは日本政府観光局の統計開始以来、最低の水準とされています。

2020年は、1月〜3月の4半期がまだ本格的な流行を免れていたことから、ある程度旅行者がいた一方、2021年は年間を通じて制限状態であったことも、前年からさらに大幅に落ち込んだ理由と考えられます。

現在のインバウンド需要

新型コロナウィルスの流行は明確に収束の時期が分かるわけではありません。そのためこの数年間、不規則な水際対策や行動制限が絶えず行われてきていましたが、昨年度あたりからそうした環境に変化が生じてきました。

2022年下期以降、それまでと比べてインバウンド需要をめぐる状況に変化が生まれてきました。2023年の見込みも踏まえて、数値を見ていきましょう。

2022年の下期を境に増加傾向

2022年も上期にウクライナへのロシア侵攻が始まったことを受け、物価や航空券代が高騰し、飛行ルートの変更によるフライト時間の増加など、観光業をめぐる状況は新たな局面を迎えました。

このような影響は、主にヨーロッパからの外国人旅行客の未回復という結果に繋がっています。

一方で、日本は6月から観光目的の入国受け入れを再開し、段階的に水際対策を緩和し始めました。

結果的に2022年の訪日外国人数は、前年比15.6倍の383万人にまで回復してきました。

2023年のインバウンド需要はコロナ前を上回るという予測も

2022年11月には93万人とコロナ前の4割程度の水準まで増加しました。世界各国の航空需要の予測を参考にしたところ、訪日外国人の客数は、2023年末には2,000万人をこえる水準まで回復するという見通しも立っています。

また外国人観光客の回復は、日本総研によるレポートでは2023年のGDPを0.4〜0.9%も押し上げるという予測が散見されます。更に、UNWTO(国連世界観光機関)の「世界観光指標」によれば、
2023年の世界における国際観光客到着数を、コロナ前の80~95%と見込みます。ほぼコロナ前の水準になると見られており、世界的にインバウンドの大活況期になるものと予想されてます。

インバウンド需要が増加している要因

このように一度は大きく落ち込んだインバウンド需要が、2022年の後半からにわかに回復してきています。急激な増加の要因については、実はいくつか明確な要因が考えられます。今後の展望も踏まえて、具体的に見ていきましょう。

新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和された

2022年10月に新型コロナウィルスの水際対策が大幅に緩和されたことは、現在のインバウンド需要大幅増加に大きく関連しています。

大幅緩和が実施される直前の2022年9月の段階では、コロナ前の2019年と比較すると、1/10に止まっていた外国人観光客数が、2023年の1月時点で2019年比、約50%の水準まで大幅に復活しています。この数値をみるだけでも、この水際対策がいかに重要な要因かは明白です。

昨年までは、インバウンド需要がコロナ前の水準に戻るまで、少なくともあと1年半先の2024年下半期までかかるとの予測が一般的でした。

しかし、この大規模な水際対策の緩和によって、これまでの予想よりも半年ほど早くコロナ前の水準に戻るという予測も散見されるようになりました。

一人当たりの消費が上振れしている

水際対策の大規模緩和と同等のインパクトを持つ、インバウンド需要急増の要因としてもう一つ挙げられるのが、昨年からの大規模な円安です。

過去を振り返ると、およそ32年ぶりの低水準と言われるほどの円安で国内の経済状況は逼迫していますが、一方で円安であることから、インバウンド一人あたりの旅行消費単価が増加傾向にあるのです。

2019年の訪日外国人一人当たりの消費額は15.9万円でしたが、2022年の同月は21.2万円と大幅に増えています。

また、訪日外国人一人当たりの消費額と為替レートの関係を見てみると、円安が進行するにつれて、消費額も増加するという比例関係も確認されています。

現在の円安の要因となっている日銀の大規模な金融緩和は、今後も継続される見通しとなっています。

円安は、訪日外国人が旅行先を日本を選ぶ際の決め手にもなっています。円安が継続する限り、訪日外国人数も現在の水準を下回ることはないと考えられるのでしょう。

訪日中国人が増加すれば、さらなる需要増につながる見込みも

2022年から2023年の消費額の上位を占めたのは韓国人観光客で、次点に香港、ついで米国、その後台湾、中国と続いています。

円安のおかげで、近隣のアジア諸国からの来日のハードルが下がったことが、今回のインバウンド需要の増加に大きく関係していると考えられそうです。

一方で、コロナ前に1/3を占めていた中国人観光客が5位に落ち込んでいるのは、中国人訪日客に対する水際対策が原因と考えられています。

現在も対中の水際対策は引き続き実施されていますが、中国国内のロックダウンが落ち着きを見せ、水際対策が緩和されれば、減少していた分の中国人観光客が回復し、それに伴ってインバウンド需要はさらに急速に拡大すると推測できます。

まとめ

今回は、これまでの日本のインバウンドをめぐる状況を踏まえて現状や将来の展望をデータに沿って見てきました。

大幅な水際対策や円安といった明確な要因で、近隣のアジア諸国からの観光客が急増していることがわかりました。円安などの経済状況は国内の消費にとっては非常に厳しいものですが、インバウンド需要という側面においては、日本の経済を好転させる要因にもなっており、今後もこうした傾向は継続・加速する見込みです。