NFTの登場は、デジタルコンテンツに資産価値を与え、新しい市場の形成を促す大きな転換点をもたらしました。また、NFT単体では運用上の課題も出てくるところですが、新しい技術やサービスによって、その弱点を補う動きも進んでいます。
この記事では、そんなNFTの利用やユーザーの増加につながると期待される、NFTfiと呼ばれる新しいサービスについて、解説します。
NFTfiとは
NFTfiはNFT financeの略称で、NFTを担保として仮想通貨を他のユーザーへ貸し出すことのできるプラットフォームです。
そもそもNFTは、デジタルコンテンツに独自性を与え、複製ができなくなったトークンを指します。実在する美術品のように、作品を直接売り買いすることで、取引ができるという仕組みです。
仮想通貨の普及とともに現れたNFTですが、円滑な市場の取引を促す上では課題もあります。というのも、NFTは通貨ではなく、美術品のように唯一無二の存在であるため、気軽な売買ができないという問題があるからです。NFTを売却することは可能ですが、一度売却してしまうと、再び同じ価格で、売却先のユーザーから確実に手元に戻ってくるとは限りません。
このようなNFTを取り巻く取引の不便を取り除くため、登場したのがNFTfiです。NFTfiはNFTを担保にして、仮想通貨を借りることができるサービスなので、借りた仮想通貨を返すことができれば、担保にしているNFTを取り戻すことができます。
いわば仮想空間に展開される、質屋のような役割を果たすプラットフォームと考えれば、わかりやすいでしょう。
NFTfiの役割
NFTfiが登場したことで、NFTを取り巻く環境にはどのような変化があるのでしょうか。NFTfiの登場は、まずNFT市場に流動性を与え、NFTfiを介して活発な取引を行える点にあります。
上でも少し触れましたが、NFT単体で取引をする場合、単純な売り買いをユーザー間で行うこととなり、市場に流通させつつNFTを手元に置いておくためには、いつでもNFTを買い戻せるだけの経済力が必要です。
しかしNFTfiが登場したことで、NFTを担保に仮想通貨を借りることができるようになりました。これにより、NFTを元手に資金調達を行うなどの、柔軟な活用が期待できます。
NFTfiが特徴的なのは、個人間での貸し借りができる仕組みを採用していることです。従来の金銭の貸し借りや資産を担保に入れて資金を調達する手法は、常に第三者の介入が必須とされており、個人間ではトラブルに発展することもありました。
しかしNFTfiを活用することで、無形資産のNFTを安全に担保に出し、仮想通貨を獲得することができるため、高い流動性を獲得することができます。
また、貸し借りに当たっての条件設定は、ユーザー間で自由に決められる点もポイントです。間に仲介業者などを挟む必要がなく、お互いが納得のいく条件でNFTの取引が行えます。
NFTfi活用のメリット(貸し手)
NFTfiの活用は、具体的にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。まずNFTの貸し手が得られるメリットですが、貸し手はNFTを手放す必要がない点に最大のメリットがあります。
NFTを売却したい場合、株式や外国為替と同じく一度NFTを手放さなければならない問題があります。これから価値の上昇が期待できるものの、売却する場合は買い戻しにコストがかかるため、価値上昇の恩恵が小さくなってしまいます。
そこでNFTfiを活用することで、NFTはあくまで「貸す」だけで良いので、所有権が他人にうつる心配はありません。NFTの価値上昇の恩恵を受けつつ、将来的にリターンが期待できます。
NFTfi活用のメリット(借り手)
NFTfiを活用すれば、借り手のメリットも大きいのが特徴です。というのも、仮想通貨を調達するに当たって、借り手はNFTさえあればいつでも資金調達ができるからです。
通常の資金調達手法では、現実世界に実在する金融資産や、固定資産を担保に入れなければ現金を得ることはできません。そのため、資金調達もある程度実績や資産を持つ人にしか認められておらず、経済格差が広がるリスクをはらんでいます。
一方、NFTfiを使うことで無形のNFTさえ用意できれば、誰でも等しく仮想通貨を調達することができます。融資のチャンスが現実世界よりも対等に開かれているので、ゼロからビジネスを立ち上げたいと考える人などに有益なサービスと言えるでしょう。
NFTfiの活用方法
NFTfiの特徴や役割が分かったところで、具体的にどのように活用すれば良いのか、ここでは主なケースを確認しましょう。
仮想通貨を貸し出す場合
NFTfiは、NFTを使って仮想通貨の貸し借りを行うためのサービスです。仮想通貨を貸し出す場合、貸し手は仮想通貨を貸し出した分だけ、利息を獲得して所得にすることができます。
NFTfiを使って仮想通貨を貸し出したい場合、まずはイーサリアムやDAIといった、NFTfiに対応するトークンを用意しなければなりません。その後、仮想通貨の残高を有するウォレットをNFTfiに接続し、仮想通貨の借り手を探します。
借り手を探すに当たっては、貸付条件を設定する必要があります。担保に設定されたNFTを参考にしながら、希望する貸付条件に合った借り手を根気よく探すと良いでしょう。
貸付の条件を設定したら、あとはオファーを借り手候補に送り、前向きな返事を待ちます。オファーが受諾されれば、貸付が行われます。
仮想通貨を借りる場合
仮想通貨を借りたいと考えている場合、借り手としての準備をあらかじめ済ませておかなければなりません。まずは貸し手と同様、手持ちのウォレットをNFTfiに連携しましょう。ウォレットにNFTを入れておけば、NFTfiから手持ちのNFTを確認し、仮想通貨の貸付を受ける際の担保として利用可能です。
NFTを担保に出す場合、希望の金額や貸付期間を設定することができます。仮想通貨の貸し手は、NFTと希望金額などの条件を見ながら貸付先を探し、条件の合いそうな借り手にオファーを提示します。
借り手側がやることは、NFTを担保に出せばあとはオファーが来るのを待つだけです。オファーが来た場合、こちらが希望している条件に則ったものかどうかを確認しましょう。オファー内容に問題がないことが確認できたら、オファーを受諾します。
オファーを受諾すると、手持ちのNFTは担保に出され、ロックがかかります。
NFTfi利用の懸念事項
このように、NFTfiを使ったNFTや仮想通貨のやり取りは、質屋や金融機関を利用するよりもはるかに手軽であるため、使いやすさや資金調達の難易度は非常に易しいことがわかります。
ただ、NFTfiはまだまだ発展途上であるだけでなく、使いやすさを優先するが故に、気をつけておかなければならない点もあります。
まず、NFTfiは第三者の介入しない金融取引であるため、取引の責任は自身で負うことが大前提です。NFTの価値は変動性が高く、また利息の設定についても完全に貸し手側に委ねられているので、場合によっては法外な利息が設定されたり、NFTの価値に合わない取引を持ちかけられることもあります。
現状、こういったNFT取引を規制する法律は日本に存在しないため、取引によって生じた損失や利益については、自分で管理しなければなりません。利用前にはある程度の相場感やなどを自分で感じた上で、責任の範疇で取引を実行しましょう。
また、貸付の際に預かったNFTについては、期限内に仮想通貨の返済が行われなかった場合、担保として抑えている貸し手側がNFTを差し押さえることができます。差し押さえを実行した場合、未払いの仮想通貨の請求は放棄されますが、NFTの所有権は没収先に移譲されることも覚えておく必要があるでしょう。
仮想通貨の貸し手としてNFTfiに参入する場合も、注意点があります。貸し手は仮想通貨をNFTと引き換えに貸付け、利息を得られるのが最大の魅力ですが、利息の5%は自動的にNFTfiへ手数料として支払われます。利息収入を期待している場合、手数料の発生を加味した設定にすることを忘れないことが大切です。
NFTfiの今後
NFTfiの利用は非常に簡単で、ウォレットやNFT、そして仮想通貨を持つ人であれば、個人・法人を問わず簡単に参入することができます。ただ、その簡単さとは裏腹に、NFTや仮想通貨取引についての知識が浅いと、簡単に足元を見られたり、詐欺まがいの取引を持ちかけられる場合もあります。
運用に当たっては、こういったリスクを加味した上で向き合う必要があるでしょう。
ただ、それを見越してもNFTfiの可能性はまだまだ無限に広がっており、NFTの経済的価値の向上に一役買うサービスであると言えます。NFT関連のサービスが充実すればするほど、NFTの流動性は高まり、より大きな資産価値を獲得することが期待できます。
早いうちからNFTを獲得しておけば、今後の市場拡大やNFTの価値向上による経済的な恩恵が得られるかもしれません。
まとめ
この記事では、NFTfiの役割やメリット、運用上覚えておきたいポイントについて、確認しました。NFTfiの利用価値は非常に高く、これからさらなる普及が期待できる金融サービスです。
特徴や使い方を理解し、機会があれば積極的に使ってみるといいでしょう。