負担軽減に役立つ事業承継・引継ぎ補助金の活用方法とは?申請のポイントについて解説

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事業を新しい世代の人間に渡し、会社を存続させる事業承継は、高齢化の影響や人材不足の深刻化によって、多くの中小企業において喫緊の課題となりつつあります。政府が提供する補助金を活用することで、その負担を軽減することができます。

事業承継・引継ぎ補助金が、政府の2022年度(令和4年度)当初予算案に16億円計上されました。申請手続きをスムースに進めるためには、補助金事業の概要を知り、申請のポイントをつかむことが大切です。今回は、お忙しい事業主様の負担軽減に役立つ事業承継・引継ぎ補助金の概要とその申請のポイント、注意点について、ご紹介します。

事業承継・引継ぎ補助金について

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継に伴い新規ビジネスの創出や、雇用の拡大など新たな取り組みに着手する中小企業を対象とした、補助金制度の一種です。ただ事業を承継するだけであれば適用することはできませんが、一定の要件を満たす承継手続きを踏むことで、経費の一部を国が負担してくれます。

事業承継は、経営者が第一線を退く際に必要な手続きですが、事業を引き継ぐ際に、負債を抱えてしまったり、雇用の維持がままならなくなる可能性があります。事業承継、事業再編という節目を活かし補助金による支援を得て、事業の立て直しや、更なる成長の機会を得る事が可能です。

また、事業の引き継ぎや統合といった手続きには時間と費用がかかるため、手続きを先延ばしにしてしまいがちです。承継の遅れによる経済的負担を発生させない、あるいはその負担を少しでも軽減し、スムーズな承継を促す上でも、事業承継・引継ぎ補助金は利用されています。

事業承継・引継ぎ補助金の申請類型と補助額

事業承継・引継ぎ補助金には大きく分けて2つの申請類型があり、それぞれで補助額は異なります。類型の違いと補助額の違いについて、確認しておきましょう。

経営革新

一つ目は、経営革新というカテゴリに分類される補助金で、ここからさらに【Ⅰ型】経営者交代型と、【Ⅱ型】M&A型の2種類に派生します。事業承継に伴う経営者の交代、あるいはM&Aを契機として、経営革新にチャレンジする中小企業を支援する目的で補助金が給付されます。

【Ⅰ型】の経営者交代型は、事業再生を含めた事業承継を実施する中小企業に適用される補助金制度で、以下の要件を満たす事が求められます。

・事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者であること。

・産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は、認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であること。

・地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業等創業を契機として、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組む者であること。

このように、事業承継者が経営を引き継ぐに相応しい人物であるとともに、産業の活性化に意欲的であることが必要要件となります。

参考:https://jsh.go.jp/r3/business-innovation/

補助金の額については、基本の上限額が250万円で、事業転換などに伴う廃業経費が発生する場合、ここに200万円が上乗せされた450万円が上限となります。また、補助率は最大で補助対象経費の2分の1と定められています。

参考:https://jsh.go.jp/r3/assets/pdf/business-innovation-requirements.pdf

一方の【Ⅱ型】とされるM&A型は、事業再編や事業統合を実践する場合に適用される補助金制度です。要件については【Ⅰ型】と大きな違いはありませんが、補助額において微妙な違いがあります。

M&A型の場合の補助額は、最大で500万円となっています。廃業経費が発生する場合、ここに200万円が上乗せされるため、700万円の補助金を最大で受け取る事ができます。補助率については、最大2分の1と【Ⅰ型】と変わりはないので、注意が必要です。

専門家活用

専門家活用は、事業への設備投資などに限らず、コンサルタントなどの専門家からセカンドオピニオンを得るために、必要な経費を賄うための補助金です。専門家活用の場合は、【Ⅰ型】の買い手支援型、【Ⅱ型】の売り手交代型の2種類の申請アプローチがあります。

【Ⅰ型】の買い手支援型は、事業再編・統合によって経営資源を引き継ぐ中小企業で、以下の要件を全て満たしている事が求められます。

・事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。

・事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。

補助下限額は50万に設定され、上限は250万円です。補助率については経営革新同様、最大2分の1とされています。経営革新とは違い、廃棄経費分の上乗せ制度は無い点に注意が必要です。

参考:https://jsh.go.jp/r3/experts/

https://jsh.go.jp/r3/assets/pdf/experts-requirements.pdf

【Ⅱ型】の売り手交代型の場合、以下の要件が絶対となります。

・地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。

補助上限額や補助率については【Ⅰ型】と変わりはありませんが、こちらは200万円の廃棄経費上乗せが可能となっています。必要に応じて申告する事ができます。

事業承継・引継ぎ補助金の対象になる経費

事業承継・引継ぎ補助金の対象として経費を認めてもらうためには、以下の3つの要件をクリアする必要があります。

事業遂行に必要であることが明らかな経費

1つ目の要件は、使用目的が明らかに事業の遂行に必要である事が、客観的に把握できる経費であることです。ITツールの拡充に伴う設備投資やコンサルティング料など、事業と密接な関係にある経費は、基本的に補助金の対象と見なしてもらえます。

補助事業の期間内に発生した経費

2つ目の要件は、補助事業遂行中に発生した経費であることです。事業期間外の経費は、たとえ事業承継や企業のための支出であっても、補助の対象外となる可能性があります。

期間終了後に金額が証明できる経費

3つ目は、事業期間が終了した際、実績報告のフェーズで金額や支払いの具体的な証明ができる書類を用意できる経費である事です。領収書などは、補助金が交付されるまで保管し、要件を満たす必要があります。

FA業務又は仲介業務に係る相談料等に関しての注意

専門家活用において、注意点があります。委託費のうち、「FA業務又は仲介業務に係る相談料、着手金、成功報酬等の中小M&Aの手続進行に関する総合的な支援に関する手数料」に関しては、「M&A支援機関登録制度」に登録された登録FA・仲介業者が支援したものに限り、補助対象経費となります。つまり、「M&A支援機関登録制度」に登録していないM&A仲介業者に依頼した場合は、相談料、着手金、成功報酬に関しては本件補助の対象外になってしまいます。

事業承継・引継ぎ補助金交付までの流れ

事業承継・引継ぎ補助金の交付を受けるまでのステップは、以下のようなフローで進行します。あらかじめ確認しておきましょう。

対象事業の確認

まずは、事業そのものが補助金の対象となり得るかどうか、把握しておく必要があります。要件を満たせていなければ補助金の交付がうけられません。適用条件に当てはまっていることを確認しましょう。

gBIZIDプライムの取得

事業承継・引継ぎ補助金の申請は、オンライン上で行います。手続きを進めるためには、経済産業省が運営する補助金の電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」の利用が必要です。利用に際しては「gBIZIDプライム」と呼ばれるアカウントの取得が求められるため、事前に用意しておきましょう。

交付申請

要件を満たし、申請のためのアカウント取得が終わった後は、交付申請に進めます。無事要件をクリアできた場合、交付の決定通知が送られてくるため、到着を待ちましょう。

補助対象事業の実施

交付が決定した後は、補助金の到着を待たずに補助対象事業を遂行します。申請の際に記入した事業計画を実行し、成果報告のための実績を作ります。

実績報告

補助金の交付にあたっては、実際に申請時の計画が遂行されたかを確認するため、実績の報告が必要になります。どのような成果や変化を産む事が出来たのか、どれくらいの出費が発生したのかを丁寧に報告しましょう。

補助金交付

実績報告において問題がなければ、補助金の交付が行われます。具体的な金額については、実際に発生した額を考慮の上決定されるため、どれくらいの補助金が得られるのかは、通知を待つ必要があります。

事業承継・引継ぎ補助金活用のポイント

補助金を効果的に活用するためには、制度についての理解もある程度深めておく必要があります。活用のポイントについて、ご紹介します。

補助金は後払い

まず、補助金そのものの交付は、事業が実施されてから行われるため、事業を推進するための現金が必要な場合には、別途資金調達の手段を用意しなければなりません。銀行から融資を受けるなどの方法を合わせて検討しておきましょう。

電子申請が必須

事業承継・引継ぎ補助金の申請は、電子申請でのみ受付を行なっています。直接行政サービスを提供する施設を訪問しても、電子申請でなければ申請は受け入れられないため、気をつけましょう。

要件は緩和傾向にある

事業承継・引継ぎ補助金は、厳しい適用要件があるように思われますが、近年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、緩和傾向にあります。令和3年度の補助金交付では、経営革新の補助金において、新事業展開等要件又は生産性向上要件が無くなりました。

そのため、最低限の要件さえ満たしておけば交付の対象となり得るため、申請して損はない制度と言えるでしょう

まとめ

中小企業向けの補助金制度は拡充が進んでおり、事業の継続性はもちろん、更なる成長や雇用の拡大のチャンスを容易に得られるようになりつつあります。公共サービスをフル活用して、事業コストを削減し、スマートな経営を目指しましょう。

 

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