コロナによって、売上が急激に減少し、資金繰りが苦しくなりました。銀行からの借入金をどうにかしなければならず、返済猶予を取引金融機関に依頼しなければいけません。
最近では、「支援協」がその場合によく活用されています。この記事では、支援協について詳しく説明します。
「支援協」とは?
正式名称は、中小企業再生支援協議会といい、中小企業の事業再生に向けて取り組みを支援する「国の公的支援機関」です。
中小企業再生支援協議会は47都道府県に設置されており、窓口相談では経験が豊かな公認会計士や税理士、中小企業診断士、金融機関経験者が相談に乗ってもらえます。各専門家には無料で相談することができ、取引金融機関への対応方法や資金繰り・事業計画の作成など幅広く相談を引き受けてもらえます。また、対象の中小企業には個人事業主も含まれており、どの企業でも相談が可能です。
中小企業再生支援では安心して相談ができるように、3つの基本原則があり、内容は次の通りです。
・中立的立場の第三者機関
中小企業再生支援は債務者企業の代理人という立場ではなく、何の金融機関側にも立たない公正な第三者機関として相談を承ることです。
・守秘義務を守る
中小企業再生支援は必ず守秘義務を守り、企業名や相談内容などは外部に漏らすことはありません。
・事業の見直しを支援する
事業が抱えている問題に対して、課題解決のために具体的な方法を提示し、事業の見直しを支援しています。
参考:https://www.tokyo-cci.or.jp/regene/saisei.html
「支援協」にお願いできること
支援協にお願いできることは、事業再生です。事業再生は次のように行われます。
・従来型
財務上、問題を抱えている企業が再生支援の要請を行い、資料の提出、ヒアリング、簡易調査、検討を行います。調査の結果、主力債権者の協力を得て数値基準達成の見込みがある場合は、外部の専門家によって事業再生計画を立てることができます。
作成された経営改善計画書に基づいて金融機関に支援要請をし、同意を得られた後は計画を実行します。
・持込型
従来型とは違い、自ら計画書を作成して持ち込む方法です。金融機関や企業は、事業の必要な情報などの活用によって再生計画を作成し、支援協に持ち込みます。
支援協は持ち込まれた作成書を確認し、公正かつ妥当なものであるかを調査し、仲介者として公平中立な立場として債権者間の調査を行います。また、金融機関が行うモニタリングの状況を確認して適切なアドバイスをしてもらえるのです。
参考:https://www.daylight-law.jp/110/110017/tousanqa/qa4
「支援協」を活用するメリット
支援協を活用するメリットは、以下の5つです。
・信憑性の高い資料で作成できる
中小企業再生支援協議会を利用することで、公認会計士など専門家が資料を作成してもらえるため、第三者視点から正しい評価がされていると銀行から判断されます。自ら資料を作成するよりも、信憑性が高くて正しい計画を作成できるでしょう。
・安い費用で済む
中小企業再生支援協議会には無料の相談窓口があるため、安いコストで計画を作成することができます。コンサル会社などを利用するよりも費用を抑えられるので、コストが圧迫されている企業におすすめです。
・秘密保持をしてくれる
中小企業再生支援協議会は秘密保持性が高く、経営不振を取引先に知られたくない場合におすすめです。取引先に経営不振を知られないことで、様々なリスクを回避できます。
・専門家のアドバイスが受けられる
中小企業再生支援協議会では公認会計士などの専門家のチームがいるため、財務面や事業面からアドバイスを受けることが可能です。自社だけでは辿り着けないスキームやローンの導入についてなど、様々な面からアドバイスがもらえます。
・事業の継続が可能
保証協会を利用した融資の債務免除などができない場合もあり、事業を継続するのが難しい企業もいるでしょう。中小企業再生支援協議会を利用すれば、信用を得やすくなるので、融資を受けられやすくなります。
参考:識学総研_経営
「支援協」を活用するデメリット
支援協を活用するデメリットは、次の2つです。
・債権者の同意が必要
支援協を利用して企業再生をする上では、全てにおいて債権者の同意が必要となります。借り入れ銀行が多い企業においては、交渉が難しくなるでしょう。また、今までに粉飾決算を行ったことがある企業の場合は、銀行から「また繰り返すのではないか」と思われてしまい、同意を得るのが難しくなります。さらに、銀行から断られた場合は、プランを練り直す必要があり、時間がかかってしまうことがあります。
・事業戦略に特化した専門家が少ない
支援協における専門家は公認会計士や税務士などが多く、財務に関するアドバイスを得られることが多いです。その反面、事業戦略に特化した専門家が少なく、専門のコンサル会社と比べると頼りないかもしれません。そのため、財務的なサポートは受けられても、事業経営について満足できないケースがあるでしょう。
参考:識学総研_経営_「中小企業再生支援協議会を活用するデメリットとは?」
「支援協」を活用して再生したケース
最後に、支援協を活用して再生したケースについて説明します。
・複数金融機関のリスケジュールによる再生
相談したのは園芸卸売業者であり、支援協に相談に至った経緯としては、業界全体の需要が減少して売り上げが減る中で、利益の回収が、あまりできていなかったことです。借入金の返済が近づく中で、利益が少なくて返済できない状況に陥っていました。
実際に行った再生計画は、事業体制の強化と財政面の改善です。事業体制では月次業績管理体制の構築、ファンド派遣役員やメイン行からの定例会議出席、役員登用による責任体制の明確化です。財政面では、役員報酬の削減、仕入管理の強化などをしました。
効果としては、従業員37名の雇用を確保、取引先への悪影響を回避できたそうです。
・DDSによる再生
DDSとはデッド・デッド・スワップ、債務の劣後ローン化のことであり、一部の債務の返済を他の債務に対して劣後ローン化することで、資金繰りが安定する方法です。
相談したのは、北海道を代表する老舗業者であり、平成20年のリーマンショック以降に利益と売り上げが減少したことが相談する原因でした。売上債権が不良化し、大幅な債務超過を起こしていたそうです。
実際に行った再生計画は、支援取引先より外部人材を登用してガバナンスを強化、役員の大幅入れ替え、取引先の支援など事業再生の強化、取引先の増資による信用不安の解消、営業面のサポートでシェア回復などの事業面の改善、役員報酬の削減や退職金の減額、資産売却や増資など財務面の改善をしました。
効果としては、従業員80名の雇用を確保し、取引先400社への悪影響を回避できたそうです。
参考:https://www.sapporo-cci.or.jp/saisei/case/
まとめ
事業の再生は専門の知識を要するため、コンサル会社などに依頼すると高額になってしまうことが多いです。それに対して、支援協は公認会計士や税理士などの専門家チームが無料で相談に乗ってもらえるため、費用を抑えたい中小企業におすすめです。