株式会社クラリスキャピタル代表 牧野安与氏インタビュー

【プロに聞く】M&Aを考えている中小企業がまずやるべきこととは? 牧野安与氏インタビュー

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みなさん。こんにちは。今回は中堅中小企業へM&Aアドバイザリー業務を行う株式会社クラリスキャピタル代表 牧野安与氏へのインタビュー記事を掲載します。「M&Aを考えている中小企業がまずやるべきこととは?」ということがメインテーマになりますが、最近のM&Aの動向についても教えていただきました。


牧野安与氏

2000年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。意匠建築設計事務所やコンサルティング会社を経て、かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社にて約8年M&Aアドバイザリー業務に携わる。

(※かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社時代に共著『M&Aによる事業再生の実務』中央経済社 (2013/7/6))

2014年に株式会社クラリスキャピタル(M&Aアドバイザリー業)創業、代表取締役就任(現任)


ーまずは、これまでの経歴について教えていただけますか?

牧野安与氏(以下、敬称略):大学を卒業後、 まずは意匠建築設計事務所に入りました。その後、コンサルティング会社などを経て、かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社にて国内M&Aのアドバイザリー業務に携わりました。M&Aはお客様の人生の一大イベントであるということを感じまして、一つ一つの案件について丁寧にサポートしたいと思い独立をしました。 今は主に中堅中小企業様のM&Aのお手伝い・M&Aアドバイザリー業務を行っております。

ーコロナ環境下になって案件が変化したことはありますか?

牧野:リーマンショック不況の時はセルサイド、バイサイド共に動きが悪くなりました。企業としてはとにかく手元に現金を置きたいというマインドが強かったことから、M&Aが成立しない状況でしたが、今回の新型コロナウィルス環境下においても引き続き案件は活発に動いています。しかしながら、新型コロナウィルスの影響で、資金繰りが悪化したことを理由とする案件が増えてきました。特に観光業や飲食業界、そしてリアルイベント関係での売り案件が増えてきたと思います。買い手候補先は、資金力がある同業が多い印象でした。

―また、コロナ環境下での生き残り戦略としてのM&Aはありますか?

牧野:コロナにより大きな事業上の痛手を負った売り手の生き残り戦略としては、事業存続・雇用を守るために売却(M&A)を選択するというケースがありました。

一方で、買い手側も生き残り戦略としてシェアを拡大するために、コロナの影響をうけて業績が厳しくなっている会社を安く買える好機とらえて積極的になるケースもありました。

ちょっと変わったケースとして、コロナ融資が借りられたことで、それを買収資金として活用しようとする企業もありました。

ーDXという文脈でのM&Aなど事例はいかがですか?

牧野:DXという文脈では、コロナによる悪影響がない業界であるといえるためM&Aでの傾向は特に変わらない印象です。DXに関しては対面営業をオンライン営業にかえるニーズなどがあり、コロナでむしろ特需に沸いたお客様もいらっしゃいました。コロナ特需により業績がより良くなったことで(DX関連は)高値で売れる等のケースもありました。

DX関連のM&Aでいいますと、上場企業などは「DX」がキーワードとなる企業を買収すると株価が反応する良い材料になるので、(DX企業を)買いたいというニーズはよくあります。例えば、不動産業界では「不動産テック」が台頭してきており、「不動産テック」企業への買収ニーズは強いです。また、「AI」や「VR」がバズワードになっていますので、高いバリュエーションが付きやすい傾向にあるかと思います。

ークライアント(セルサイド、バイサイド)を支援している中で印象的なことはありましたか?

牧野:印象的というか、様々な業種・業界の方とお話するので、多くのビジネスモデルに触れることができるのは非常に面白いですし、初めて知るようなビジネスモデルに感動することもあります。とても興味深くて仕事としてというより個人的な興味の方でM&Aアドバイザリーに関係のないこともお話を伺ってしまいます。

ー一方で苦労された点はありますか?

牧野:かなり交渉が佳境にはいった段階で我々がコントールできない理由により売主様や買主様が交渉を辞退されるときはそれ自体が苦労というより、それまでの苦労がすべて水の泡になってしまいますので、力が抜けることはあります。

弊社は完全成功報酬制でM&Aが成就しない限りは報酬をいただかない料金体系ですので、ブレイクするとそれまでのアドバイザリー業務が徒労に終わってしまうのです。

ーM&A仲介のプロとして、これからM&Aを考えている企業に対してまずやるべきこと等ありましたら、教えてください。

牧野:売手としてM&Aを考えるか、買手としてM&Aを考えるかで変わってくるかと思います。

まずは、売手側で考えますと、要素が多くあるので、細かく説明は省略しますが、一言でいうと「高値で売れる、早く売れる」ような事業・会社づくりを心掛ける必要があるかと思います。

ー具体的にはどういうところがポイントになりますか?

牧野:そうですね。ポイントは幾つかありますが、売り手側に関しては以下の点が重要です。

(1)組織的な経営ができているか否か?

キーマンが抜けても大丈夫なのかという点になります。例えば、オーナーのカリスマ性で引っ張ってきた会社においては、オーナーがチェンジした場合において、従業員が付いてこなくなるのではないのか?また、その会社のコアになる技術やノウハウが属人化している会社において、その人がいなくなったらどうなるのか?という問いに対して答えられるか否かです。いずれにしても、特定の人に依存しない組織的な経営ができていることが重要です。

(2)月次ベースで試算表があるか?事業部別のPLを作成しているか?

最低限、月次試算表は必要になります。これは買い手が季節要因や特殊要因などを確認するための材料となります。また、事業部を売却する場合においては、事業部PLが必要になります。だいたいの中小企業においては事業部でPLを分けて作成していませんので自社の事業部ごとの損益を把握して経営に役立てる意味でも準備をした方が良いです。

(3)事業に関係ない資産の整理を行う、社長の個人的な経費や資産は会社から切り離したほうが良い

社長の個人的な経費、財布を分けた方がよいです。この部分が不透明ですとディスカウントされる要因になってしまいます。また、金融機関からの借り入れに関しては、オーナー社長個人の連帯保証は無ければ無いほど良いです。連帯保証があることによって、M&Aで取り得る選択肢が狭まることもときにあります。金融機関から借入をする際にできれば連帯保証無しでの交渉ができるのであれば、はじめからダメだとあきらめずに試みてみるのもよいかもしれません。

M&Aを考えている買い手側については当然のことにはなりますが、自社のM&Aの目的・方針・判断基準を定めた方が良いです。あやふやなままですと思ったような成果を出すことができません。

ー貴重なお話をありがとうございました!

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