事業を継続させるための資金調達方法は多岐にわたりますが、特に注目されているのがファクタリングです。ファクタリングには瞬時に現金化できるという明らかな利点がありますが、手数料の高さなどのデメリットも無視できません。
この記事では、ファクタリングの基本とその特性を詳しく説明し、手数料の詳細やその軽減策についても触れていきます。
ファクタリングと銀行融資の違い
資金調達において最も一般的な方法は、銀行融資です。ファクタリングと銀行融資の間には、資金を手に入れるまでの時間に大きな違いがあります。通常、銀行融資は審査に数週間から数ヶ月を要することが多く、短期間での資金必要性には適していないと言えます。
対照的に、ファクタリングは最短で当日、または数日内に資金を調達できるため、急な現金ニーズに応じる際に非常に有用です。
ファクタリングの方式:買取型と保証型
ファクタリングとは、資金調達の手法の一つで、売掛金を他社に売却して現金化することを指します。具体的には、売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、その際に発生する手数料を差し引いた金額を即座に現金として受け取ることができます。
例を挙げましょう。あなたが取引先A社に2023年8月1日に100万円分の商品やサービスを提供し、「末締め翌月末支払い」の条件で取引を行ったとすると、A社からの入金は2023年9月末を予定しています。
A社への販売後、あなたは100万円の請求書を発行します。この請求書をファクタリング会社が買い取ることが可能で、この方式を「買取型のファクタリング」と称します。
また、ファクタリングには買取型以外にも「保証型」という方法が存在します。この保証型ファクタリングは、買取型とは異なり、速やかな現金化を目的としていません。
取引先の信用が不安定で、売掛債権の回収が倒産などの理由で困難になった際、保証型ファクタリングを活用すれば、ファクタリング会社から補償金を受け取ることが可能です。
例を挙げると、あなたが取引先B社に毎月1,000万円分の商品やサービスを提供しているとします。しかし、B社は業界での評判が芳しくなく、潜在的な倒産リスクがあるとの噂が立っています。
もし「末締め翌月末支払い」の条件での取引をしている場合、B社からの支払いは次の月の月末を予定しています。このような不安定な状況下で保証型ファクタリングを利用すれば、仮にB社が倒産してしまっても、ファクタリング会社から補償金として資金を回収できます。ただ、その見返りとして、ファクタリング会社への保証料の支払いが必要です。この仕組みは保険に似ています。
保証ファクタリングには、審査を基に定められる保証可能な上限額が存在します。さらに、保証の期間は無期限、または有期(例:1年や1ヶ月など)として設定することが可能です。しかしながら、リース債権、貸付債権、債権の発生から回収までに1年以上を要するもの、あるいは現在支払いが滞っている債権など、保証対象外とされるケースが多いため、細心の注意が求められます。
ファクタリングの方式:2社間と3社間
ファクタリングには、2社間と3社間の2つの方式があります。
2社間ファクタリングは、ファクタリング会社と利用者の間だけで進行します。この方式では、取引先にファクタリングの利用を知られることがないので、企業の信用を傷つけるリスクが低減されます。手続きもシンプルであり、その点での魅力があります。しかし、3社間ファクタリングと比較すると、手数料が高めに設定されることが多いので、その点を考慮する必要があります。
3社間ファクタリングは、ファクタリング会社、利用者、そして取引先の3者間で進行する手法です。この方式では取引先の同意が必要となるため、2社間ファクタリングよりも手続きが増え、時間がかかることがあります。しかし、手数料を比較的低く設定できる利点があります。
※補足:ファクタリングの手数料は、ファクタリング会社が負担するリスクと密接に関係しています。これは、例えば、倒産リスクの高い企業に対して銀行が高い金利を求めるのと同じ理由です。2社間ファクタリングの場合、ファクタリング会社は実質的に売掛債権を担保として持つことが難しく、信用の根拠として利用者の信用のみに依存します。これが高いリスクとなり、その結果として手数料も高くなります。対照的に、3社間ファクタリングでは、売掛債権を担保として扱うことが可能なため、利用者と取引先の双方の信用を考慮し、リスクは相対的に低くなります。これにより、手数料も低めに設定することができるのです。
ファクタリング:注目すべきメリット
ファクタリングの利用は、他の資金調達方法とは異なるメリットを有しています。ここで確認しておきましょう。
現金化までのスピードが速い:
ファクタリングの一番の魅力は、その迅速さにあります。以前触れたように、ファクタリングを活用すれば銀行融資と比べて大幅に早く、最短で当日中に現金を確保できます。とにかく現金の調達を急いでいるという場合、ファクタリングは積極的に利用したい手段です。
自社の業績に関係なく資金調達できる:
ファクタリングは、取引先の審査を基に行われるため、申し込む企業の業績は主要な審査基準ではありません。銀行融資では、業績の低迷が融資のハードルとなることがありますが、ファクタリングでは、状況が厳しくても資金を調達しやすくなります。
保証協会の枠が無くなった場合に頼りになる:
前掲の「自社の業績に関係なく資金調達ができる」と内容がやや重複しますが、保証協会の枠が無くなった場合において、業績が良く、財務内容が良好であれば、保証協会付きではない融資を受けられるものの、そうでない場合においては、それ以上借りることはできません。その場合において、ファクタリングは銀行の融資枠、保証協会の枠とは関係がないため、急な資金不足に対して活用することができます。
※補足:最近では銀行が取引先に対して保証協会の枠がなくなった先に対して、プロパーでの貸し出しができない場合、子会社のファクタリング会社の商品を紹介するケースがでてきています。
ファクタリング利用者の取引先が東証プライム上場企業であったり、中堅優良企業であったりする場合など確実にお金が振り込まれる場合においては、提案されることでしょう。
取引先の倒産リスクを軽減できる:
取引先の倒産は売掛債権の回収リスクを増大させますが、ファクタリングを活用すればこのリスクを軽減することができます(※ただし、償還請求権がない場合)。もし売掛債権をファクタリング会社に売却した後で取引先が倒産しても、ファクタリングを利用した企業が直接の責任を問われることはありません。売掛債権の未回収リスクを最小限に抑えたい場合、ファクタリングは有効な選択です。
※償還請求権が存在する場合、取引先の倒産時にファクタリング会社はファクタリング利用者に対して未回収分を請求することが可能です。
ファクタリング:注意すべきデメリット
ファクタリングには魅力的なメリットがある一方、注意すべきデメリットもあります。以下に挙げます。
現金化の範囲は売掛債権額に制限される:
ファクタリングは売掛債権の売却を目的とするサービスであるため、債権の額を超える現金化は不可能です。任意の額を現金化することはできないので、この点を理解して利用することが重要です。
売掛先の業績が不十分だと審査が通らない場合がある:
ファクタリングの特徴として、自社の業績よりも売掛先の業績が審査の焦点となります。したがって、売掛先の業績が十分でないと、ファクタリングの利用が難しくなる可能性があるので、その点を注意深く考慮する必要があります。
手数料が高くなる場合がある:
ファクタリングを実施する上でネックとなるのが、手数料の問題です。取引の内容や規模に応じて変動しますが、場合によっては最大で20%程度の手数料がかかることも。銀行融資と比較するとコストが高くなる可能性があるため、迅速な資金調達の利点と並行して、この手数料の問題もきちんと意識することが重要です。
手数料が高く設定される場面も:
初回取引の際、ファクタリング会社からの信用が確立していないため、特に2社間ファクタリングを選択すると、手数料は高めに設定されることが一般的です。
具体的には、売掛金100万円の取引で、手数料が15%だった場合、その手数料は15万円になります。
ただ、取引を継続し信頼関係が構築されると、手数料は徐々に低下します。たとえば、10%に減少した場合、同じ100万円の売掛金の取引での手数料は10万円となり、前述の15%時と比べて5万円の差が生じます。
手数料が利益を大きく減少させる場合がある:
例を挙げると、A社への100万円の販売で、売掛金が100万円となった場面を想像してみましょう。この取引での利益が20万円の場合、ファクタリングの手数料が15%(つまり15万円)だとすると、実際の収益は5万円に縮小します。これはA社との取引での利益が大きく圧迫されるという事態を意味します。そのため、利益率が高めに見込まれる取引先でのファクタリング利用が理想的です。
ファクタリング:手数料と金利の違い
ファクタリングの手数料と金利は、計算の根拠が異なります。金利は通常、年率で表示され、1年間にかかる利息を示します。例として、100万円を金利3%で銀行から借りた場合、1年間の利息は3万円になります(元本固定の場合)。
しかし、この借入を1か月で返済すれば、実際にかかる利息は2,500円となります(期限前返済に手数料が発生しない場合を仮定)。
一方、ファクタリングの手数料は、買い取り額に直接適用される料率です。100万円の買取で手数料が3%の場合、回収までの期間が1か月であっても、手数料は3万円となります。
このロジックに基づき、毎月100万円をファクタリングで調達する場合、年間の手数料は合計36万円になるのです。このように、金利3%と手数料3%とは、実質的な負担が大きく異なることがわかります。
ファクタリング手数料の詳細解説
ファクタリングは、企業が売掛金を即座に現金化するサービスです。これにより、資金繰りの困難さやリスクを軽減し、ビジネスの安定を図ることができます。しかし、この便利なサービスの利用には手数料がかかることが一般的。
具体的には、どんな費用がかかるのでしょうか?ここでは、ファクタリングの手数料の内訳を解説します。
ファクタリングの基本手数料について:
ファクタリングを利用する際、まず発生するのが基本手数料です。これは、ファクタリング会社のサービス利用料として設定されており、多くの企業で明示されています。手数料の範囲は会社により異なり、低いものでは1%から、高いものでは20%までの場合も。サービスを利用する前に、見積もりで手数料を正確に把握することが必要です。
債権譲渡の登記費用:
3社間ファクタリングを利用する際には、債権譲渡の正式な手続きとして登記が必要となります。これは、債権の譲渡が公式に行われたことを確認する公文書のためのものです。この登記には、登録免許税として7,500円と、さらに司法書士の手数料が数万円かかることが一般的です。対照的に、2社間ファクタリングでは、このような費用は発生しない点に注意が必要です。
審査および事務関連の手数料:
審査・事務手数料は、取引先の審査や関連する事務処理にかかる費用を指します。この手数料は、個別に請求されることもあれば、登記費用などの他の手数料と合算されて一括で請求されることもあります。そのため、具体的な料金内訳をしっかり確認することが重要です。
印紙代の概要:
印紙代は、売掛債権の譲渡契約を正式に結ぶ際の費用です。この費用は、譲渡する売掛金の額によって変わり、数百円から数十万円の範囲で変動します。しかし、売掛金の総額が5万円未満の場合、印紙代は不要となるため、小規模な取引の際は気にする必要がありません。
ファクタリングの手数料を安くする方法
手数料が発生する背景を理解することは、節約方法を見つけるうえで欠かせません。ファクタリングの手数料は、金融機関が売掛金の回収リスクを負担する代わりに発生します。つまり、リスクの高い取引先や、回収期間が長い売掛金には高い手数料が設定される傾向があります。
ファクタリング手数料を小さく抑えることができれば、その分現金化した際の自社の取り分を大きくすることができます。
手数料を減少させるためには3つのポイントがあります。1つ目は、取引先の信用度を高めること。信頼性の高い取引先ほど、回収リスクが低くなるため、手数料の軽減が期待できます。2つ目は、売掛金の期間を短くすること。3つ目は、複数のファクタリング業者を比較して、最も条件の良い業者を選ぶことです。
これらの要点を念頭に置き、ファクタリングの手数料を節約するアプローチを以下で紹介します。ぜひ、活用してみてください。
3社間ファクタリングを実施する
ファクタリングの手数料を確実に小さくするためのアプローチとして、3社間ファクタリングが挙げられます。3社間ファクタリングを選ぶことで、2社間ファクタリングよりも手数料を小さく抑えられます。
3社間ファクタリングは審査や手続きにやや日数を要し、取引先にファクタリングが明らかになってしまうデメリットはあるものの、手数料を小さく抑えたい場合、取引先が協力してくれそうな場合には検討したい手法です。
ファクタリング会社を比較検討する
ファクタリングは、会社によって手数料が大きく異なる点も忘れてはいけません。こちらでは10%の手数料が、あちらでは15%というケースも珍しくなく、同じ条件で安い手数料の会社を探すことに力を入れましょう。
近年、オンライン完結型のファクタリングの利用が増加しています。これは、非店舗型であるため人件費が不要で、手数料が低く抑えられ、事務手続きも簡素化されていることが特徴です。しかし、オンライン完結型であっても、見えにくい追加費用が発生することがあります。そのため、利用する際には、ユーザーの評判やサービスの実績を比較して検討することが重要です。
ただ、あまりに安い手数料の場合は、何らかの条件や別途費用が発生する可能性もあるため、注意して比較検討しなければなりません。
取引先の信用力を証明する
ファクタリング手数料は、取引先の信用力に応じて変動することもあります。売掛債権を買い取っても問題のない会社であることを証明できるような、請求書などの書類をこちらからも提出することで、低い手数料で買い取ってもらうことができます。
基本手数料以外の費用に注目する
上でも紹介しましたが、ファクタリングを実施する際には、基本手数料以外の料金が発生することがあります。ファクタリング会社によっては、これらの手数料を基本手数料に含めている場合もあれば、基本手数料とは別途徴収しているケースも見られます。
どのような項目であるにせよ、費用が発生している場合はどれも手数料に違いはないため、ファクタリングに伴いどれくらいの額が差し引かれてしまうのか、この点を踏まえた上で検討することが大切です。
期間に応じて手数料の条件が変動することも
一部のファクタリングの商品では、30日までの期間は低い手数料が設定されていますが、その後は1日ごとに追加の手数料が発生することがあります。具体的な条件は詳しく確認することが大切です。
ファクタリング契約の際の留意点
ファクタリングを利用する際には以下の点に特に注意が必要です。
・契約書の控えは必ず保管しておく
・適正な手数料か?
・ファクタリング会社が貸金業登録をおこなっているか否か
・さらなる資金繰り悪化の可能性に注意
詳細はこちらの記事「ファクタリングで注意しなければならないこと」をご参照ください。
ファクタリング会社の選び方のポイント
ファクタリング業は、免許や資格が不要なため悪徳業者の存在があり、金融庁による注意喚起もされています。よって、悪徳ではないきちんとした会社を選ぶ必要があります。ファクタリング会社には以下のパターンがあります。
・大手銀行
・上場企業
・業界特化型
・未上場ノンバンク
・その他
更に、きちんとしているか否かは以下で見ることがある程度できます。
・手数料と金利が相場と同等か
・運用歴が長さと評判
・契約書に「償還請求権が無い」ことを確認する
・現金化までの速度
・必要書類の量
詳細はこちらの記事「抑えておきたい!ファクタリング会社選びの秘訣」をご参照ください。
ファクタリング申し込みの参考情報
ファクタリングの申し込み手続きは各会社によって微妙に異なります。以下の記事を参照して、具体的な手続きの流れを確認してみてください。
ファクタリング申込後の対応:注意点
ファクタリングサービスを利用する際、担当者とのコミュニケーションは主に電話を通じて行われます。オンライン申し込み後、業者の担当からの連絡が期待されるため、迅速な手続きを希望する場合は、電話対応をスムーズに行えるよう事前に準備しておくと良いでしょう。
折り返し電話の場合は、担当者が忙しいことが多く、なかなか捕まらないケースがよくあります。一方で、電話ではなくメールでやりとりする場合においては、こちらの「ビートレーディングに申し込みをしてみたものの…【体験記事】」にあるように、まったく連絡が来ないということが良くあります。
ファクタリング業者において担当者は複数の案件を同時並行で進めているため、非常に忙しいということが背景にあるようです。急いで現金化をしたい場合においては、積極的に電話を活用しましょう。
ファクタリングのチョイス:オンライン完結型
オンラインファクタリングは、全ての手続きをオンライン上で完結させる資金調達手段です。手軽に申し込めるのがその大きな特長です。詳しい情報はこちらの記事「オンラインファクタリングご紹介」でご確認いただけます。
ファクタリングのチョイス:個人事業主向け
個人事業主もファクタリングの利用は可能ですが、サービス提供先が個人事業主対応をしているか確認が必要です。また、売掛金の額が小さいと、取り扱いが難しい場合が多いので、一定の金額以上の売掛金が必要とされることが多いです。
ファクタリングで効果的な資金調達を!
この記事では、ファクタリングのメカニズム、そのメリット、そして手数料を効果的に抑える方法について詳しく解説しました。ファクタリングは迅速に資金を調達する手段として非常に便利で、最短で即日現金化も可能です。しかし、取引先の信用問題や審査日数による手数料の変動など、注意すべきポイントも存在します。
手数料を最小限にするため、ファクタリング会社の比較や手数料の詳細な内訳の確認は欠かせません。企業の資金繰りをサポートする有効なツールであるファクタリングですが、その手数料には目を光らせる必要があります。信頼度の高い取引先を選択し、売掛金の回収期間を短く保つこと、そして複数の業者との比較を行うことで、手数料の軽減が期待できます。ビジネスの発展に伴い、ファクタリングの利用を定期的に見直し、より効率的な資金調達を目指してください。