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ステーブルコインの全貌:安定性の高い暗号資産の役割と未来

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暗号資産の理解を深める上では、基本的な用語を把握しておくことが大切です。中でもステーブルコインは基本的なキーワードで、その役割や動向を把握しておけば、ブロックチェーンの意義を把握する上でも役に立つでしょう。

この記事では、そんなステーブルコインの役割や種類、そして今後の動向について、解説します。

ステーブルコインとは

ステーブルコインとは、円や米ドルといった法定通貨と連動して価値が変動する、比較的値動きの幅が小さい暗号資産のことを指します。

ビットコインなどのポピュラーな暗号資産は価格変動の幅、つまりポラリティが大きいことが特徴ですが、ステーブルコインはそのような値動きが発生するケースは稀で、法定通貨のような感覚で仮想通貨を運用することが期待されます。

ステーブルコインが注目される背景

一般的なイメージとして、暗号資産は、ビットコインやイーサリアムのような値動きの幅が大きいものが注目されがちで、その値動きの大きさが魅力の一つとも考えられています。しかし、暗号資産や仮想通貨といった概念のそもそものコンセプトは、特定の組織や政府機関の影響を受けない、自由な取引を仮想通貨を通じて実現することです。

現状、ビットコインなどのポピュラーな仮想通貨は、あまりに値動きが激しく、法定通貨のような感覚で運用することができず、完全な投機目的で購入する人が大多数を占めます。

このようなトレンドとは一線を画す通貨として誕生したのが、ステーブルコインです。仮想通貨でありながら、実際の為替市場と連動して価格が決定するので、暴落や高騰といった、極端な値動きが起こりづらい性質を備えています。

ステーブルコインの市場規模

ステーブルコインはその安定性の高さから、外国為替のような感覚で購入・運用を実践する人が多く、大きな市場を形成しています。

2022年4月時点で、ステーブルコインのシェアは仮想通貨市場全体の12.4%に達しており、暗号資産取引に関わる人であれば、保有する人も少なくないという状況です。

ただ、注意したいのはこのシェアは最高値であり、2022年末には一度大幅な下落とシェアの低下が見られました。2022年12月、集中型取引所において36億5000万ドルのステーブルコインの流出が確認されましたが、これには主流ステーブルコインだったテラUSDの暴落が主な理由に挙げられます。

詳しい動向については後ほど改めて解説しますが、本来安定した通貨価値を維持していることが魅力であったステーブルコインが、大きな暴落とシェアの低下を経験したことで、その信頼性に揺らぎが現れはじめているというトレンドは、把握しておくことが大切です。

ステーブルコインの種類

ステーブルコインにはさまざまな種類がありますが、種類の違いを定義しているのが、通貨価値を安定させるための仕組みの違いにあります。ここでは主なステーブルコインの種類について解説するので、価格安定の仕組みへの理解を深めましょう。

法定通貨担保型

法定通貨担保型とは、仮想通貨でありながらその価値は、法定通貨によって担保されているステーブルコインです。ステーブルコインの代表的なタイプとも言え、主なステーブルコインとしては、アメリカドルと連動しているUSDTやUSDCが挙げられます。

法定通貨と1:1で取引ができるこれらのステーブルコインは、仮想通貨の発行元がその資産価値を保証できる、十分な資産を保有しているからだとされます。発行元は定期的に詳細な資産レポートを公開しており、ステーブルコインが一斉に償還された場合でも、法定通貨に滞りなく変換できることを証明してきました。

暗号通貨担保型

暗号通貨担保型は、その名の通り暗号通貨によって資産価値が担保されているステーブルコインを指します。ポラリティの高い暗号通貨に通貨価値が裏付けられているのは、少々不安が残りますが、発行元は暗号資産の価値が大幅に下落しても、ステーブルコインの価値を担保できるよう、法定通貨などに比べて多めに保有する過剰担保で価値を保っています。

また、暗号通貨の価値が大幅に下落した場合でも担保割れが起きないよう、強制決済の仕組みが導入されているのが特徴です。例えば、暗号通貨担保型の代表格であるDAIの場合は、暗号資産が暴落し、最低担保比率を下回ってしまった時、追加の担保資金の投入か、強制決済が行われる仕組みになっています。

無担保型(アルゴリズム型)

無担保型はアルゴリズム型とも呼ばれる、価値を裏付ける資産を持たない代わりにアルゴリズムによってその価値が維持されるという、ユニークな仕組みを備えたステーブルコインです。市場の需給を常に把握しており、「売り」が増えれば「買い」を促進し、その逆も自動で実行されます。

売り買いの判断は、法定通貨の需給に基づいて行われることもあります。代表的な無担保型のステーブルコインであるUSTは、アメリカドルの価値の変動に応じてアルゴリズムが作用し、一定の価格を維持しています。法定通貨に基づいて価格がコントロールされているとはいえ、発行元の資産に裏付けられていないという点で、法定通貨担保型とは仕組みが異なります。

コモディティ型

コモディティ型は、現物資産によって通貨価値が裏付けられているステーブルコインです。現物資産とは、例えば原油や金といった資源が例に挙げられます。

現物資産と同等の価値をもつコモディティ型のステーブルコインは、輸送や現物取引にコストがかかる現物資産を直接やりとりするよりも、はるかに取引コストが小さいため、重宝されています。

現物資産が抱えるデメリットをうまく解消できるため、現物資産の価格維持や向上にも貢献することが期待できるでしょう。代表的なコモディティ型ステーブルコインに、PAXGやZPGが挙げられます。

ステーブルコインのメリット

仮想通貨を利用する多くの人は、現状投機目的の購入や保有が目立つ中、安定性の高いステーブルコインを利用するのには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

資産の防衛に役立つ

ステーブルコインは大幅な価格の上昇が期待できない一方、大幅な下落の心配もないため、安心して保有ができるというメリットがあります。法定通貨や現物資産、株式などは常に価格が変動するため、分散投資で資産を守る必要がありますが、ステーブルコインは低リスクで資産を保有できる手段として注目を集めます。

法定通貨よりも取引しやすい

ステーブルコインは、法定通貨並みの安定性を有しているだけでなく、時に、法定通貨以上に取引コストが小さいケースもあるというメリットがあります。ステーブルコインは価格が安定していますが、仮想通貨であることには変わりありません。

仮想通貨を使った取引は、迅速な売買の成立や手数料を抑えた決済が可能なことがメリットですが、ステーブルコインを使って取引をすれば、法定通貨を使用した際よりもスピーディに取引ができたり、手数料を抑えられたりできます。

ステーブルコインの規制動向

ステーブルコインは、ここ数年で台頭してきた新興の仮想通貨ですが、上でも少し触れた通り、現在は規制強化が各国で進みつつあるのが現状です。

その主な背景にあるのが、やはりステーブルコインへの不信感にあります。元々は大幅な下落が起こり得ない、信頼性の高い仮想通貨として注目を集めていたのにも関わらず、2022年に暴落したことで、風向きが大きく変わっています。

20兆円規模にもなるとされるステーブルコインですが、同仮想通貨の規制は日本も例外ではありません。日本政府は2022年6月、ステーブルコインを規制する改正資金決済法を成立させ、ステーブルコインの取引に関与する仲介業者を登録制として、従来よりも取引のペースを低下させ、価値の大幅な変動を抑制するよう促しました。

ステーブルコインそのものの取引を規制する法律は定まっていないものの、今後、ステーブルコインの価値が大幅に下落したり、高騰したりを繰り返すようであれば、新たに規制されることもあり得るでしょう。

ステーブルコインの今後

ステーブルコインは、その安定性の高さから注目を集めた仮想通貨ですが、複数回暴落が発生したことで、現在その通貨価値に疑問が投げかけられています。仮想通貨全体のシェアは以前ほどではないものの、現在も一定の割合を維持しており、事態が収束すれば再度その価値が高まる可能性はあります。

また、現状ではステーブルコインの取引そのものを禁止するルールはなく、ビットコインなどのポラリティの高い通貨に比べると、リスクは小さいので、投機的な警戒はされていないと考えて問題ありません。

現状、仮想通貨関連のサービスや取引形態については発展途上であるため、ステーブルコインの価値は、過小評価されていると言えます。今後、Web3関連のサービスが普及し、日常的に仮想通貨取引が行われるようになれば、ステーブルコインの価値も再評価され、より多くの利用機会に恵まれるかもしれません。

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